2021年12月01日

(2021)今年の年間ベストセラー本20冊(1位は人は話し方が9割、2位はスマホ脳)



出版取次会社の日本出版販売(日販)およびトーハンは12月1日(2021年)、「今年日本でもっとも売れた本」を発表しました。
(日販調べの年間ベストセラー(総合)のトップ20を記事末尾↓にまとめます)




 年間1位は『人は話し方が9割』


年間ベストセラーは日販調べでは、

『人は話し方が9割』

トーハン調べでは、

『秘密の法 人生を変える新しい世界観』

でした。
『人は話し方が9割』はコミュニケーションスキルについての実用書。
『秘密の法 人生を変える新しい世界観』は幸福の科学による宗教出版です。



2位は、日販・トーハンともに『スマホ脳』。
スマートフォンの使いすぎや依存に警鐘を鳴らす翻訳本です。



3位は、日販・トーハンともに『推し、燃ゆ』。
2021年上半期のベストセラーにも輝いた、第164回芥川賞の受賞作。
推し(他人に”推”薦したいほど好きなアーティストやアイドル)を”推す”ことについて考えさせられる純文学です。



4位以降も、本屋大賞受賞作の『52ヘルツのクジラたち』や、ひろゆきさんの『1%の努力』など、話題の本が続々。
「鬼滅の刃」「呪術廻戦」「おしりたんてい」等、人気アニメの関連本もチャートインしています。


全体の結果を受けて、日販は……

2021年は昨年に引き続き新型コロナウイルス感染症が社会全体に大きな変化を与えた1年であり、社会環境の変化による自身の生活への影響や対処法について関心が高まったと考えられる。



と分析しています。

 昨年(2020)の1位は?


ちなみに、去年(2020)年の年間ベストセラーは、日販は『鬼滅の刃 しあわせの花』、トーハンは「THE WORLD SEIKYO 2020年春号」でした。

来年はいったいどんな本が頂点に立つのでしょう。




関連記事:
(2020)今年の年間ベストセラー本20冊(1、2位は鬼滅、3位はどうぶつの森)
(2019)今年の年間ベストセラー本20冊(1位は希林、2位はおしり)
(2018)今年の年間ベストセラー本20冊
(2017)今年もっとも売れた本〜2017年の年間ベストセラー(ニッパン調べ)
(2016)今年もっとも売れた本〜2016年の年間ベストセラー(ニッパン調べ)



テレビのニュースや新聞で目にする「年間ベストセラー」の情報ソースは、出版取次会社の日本出版販売(日販)やトーハンのニュースリリースです。

以前の記事(今年もっとも売れた本〜年間ベストセラーの調べ方)でもお話ししたとおり、日販やトーハンのサイトで誰でも確認することができます。
ジャンル別のランキングなどもありますので、ぜひ”一次情報”にもふれてみてくださいね♪

日本出版販売株式会社
http://www.nippan.co.jp/
TOHAN website
http://www.tohan.jp/



それでは2021年の「年間ベストセラー」20冊をど〜ぞ♪

 2021年の年間ベストセラー


(日販調べ。「全集」「文庫」「コミック」を除く総合ランキング。集計期間=2020年11月24日〜2021年11月21日)

1位

2位

3位

4位

5位

6位

7位


8位

9位

10位

11位

12位

13位

14位

15位

16位

17位

18位

19位

20位


ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪

あきか(@akika_a)

【関連記事】

上半期(2021年)のベストセラー本は『推し、燃ゆ』(o・▽・)σ(炎▽炎)
(2020)今年の年間ベストセラー本20冊(1、2位は鬼滅、3位はどうぶつの森)
(2019)今年の年間ベストセラー本20冊(1位は希林、2位はおしり)
(2018)今年の年間ベストセラー本20冊
(2017)今年もっとも売れた本〜2017年の年間ベストセラー(ニッパン調べ)
(2016)今年もっとも売れた本〜2016年の年間ベストセラー(ニッパン調べ)
今年もっとも売れた本〜年間ベストセラーの調べ方

【関連リンク】

日本出版販売株式会社
http://www.nippan.co.jp/
TOHAN website
http://www.tohan.jp/
芥川龍之介賞(公益財団法人日本文学振興会)
http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/akutagawa/
直木三十五賞(公益財団法人日本文学振興会)
http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/naoki/
本屋大賞
http://www.hontai.or.jp/





【関連する記事】
posted by 姉崎あきか at 17:27| ベストセラー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月30日

【映画/ドラマ】「脚本・シナリオの書き方」の本10冊【漫画/ゲーム】


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「脚本・シナリオの書き方」の本10冊をまとめました。

前半は映画の脚本術を中心にした概論。
後半はジャンル別です。映像/ラジオドラマ、漫画、ファンタジー映画、ホラー映画、ゲームに特化した5冊をさがしてまいりました♪

当ブログでは「小説の書き方」を特集したことは幾度かありますが、脚本・シナリオははじめて。

関連記事:
【ワナビ】作家志望者が読まなければいけない「小説の書き方」本10冊【公募】
最近読んだ「小説の書き方」本10冊〜文章力をめきめきアップさせるために



読んでみると……意外というか当然というか、共通項は多い。
物語の創り手さんにとって学びが多い本ばかりなので、向かいあってらっしゃるジャンルを問わず、参考にしてみてくださいね。

どんなにつまらない作品でもとにかくエンドマークまで書く。
(中略)
傷ついても、立ち上がって書き続けるんです。
『シナリオを書きたい人の本』「わたしはこうしてプロになった�B 坂田義和」より


後に紹介する『シナリオを書きたい人の本』のインタビュー記事に出てくる言葉です。

なんとしても完成させろ!
つくりあげてきた作品の山は、いずれお前の糧となる!


あなたのオリジナリティや作家性を輝かせるために。
型を知って型を破る10冊をど〜ぞ♪



定番中の定番



定番中の定番。
プロの映画監督でさえ、本書にのっとって作品をつくっていると公言するほど。持ってきゃヤバいレベルの鉄板本です。

コンセプトづくりから、ログラインの練り方、主人公やストーリー設計、三幕構成、何をどう修正すべきか、まで。
脚本術のすべてを過不足なく伝えてくれます。

個人的に好きなのはChapter2の”あらゆる映画は10コのジャンルに分類できる!”という理論です。
10のストーリー・タイプとは……

家のなかのモンスター/金の羊毛/魔法のランプ/難題に直面した平凡な奴/人生の節目/バディとの友情/なぜやったのか?/バカの勝利/組織のなかで/スーパーヒーロー

……なにこれ。ホラーとかラブストーリーとかのジャンルじゃなくて?
そうなんです。この10コは、その映画の”何が面白さの要なのか”をもとにした、独特の分類法。
いわば”物語の本質”に名前がついているようなもの。
すべてのシナリオライターが知っておくべき10コだと私は勝手に想っています。

ユーモアたっぷりの語り口で、楽しく読める名著v
あらゆる物語創作に使えますが、基本的には映画向けのシナリオ指南書です。

物語とキャラの鉄則



人が面白いと感じる物語には、共通の法則がある。
物語研究の分野で有名なキャンベルやプロップを援用しながら、ストーリーやキャラクターの”あるべき形”を教えてくれます。

ストーリー運びやキャラクター造形において、すぐに使えるツールが満載。
本書を読んだあとでは、さまざまな物語が、まるでプログラミング言語で書かれたコードや数式のように想えてきます。

質のいい脚本は、”求めるもの”に向かおうとするキャラクターに、たえず選択を迫る。
第10章「キャラクターの代数方程式(及び不自然な仕事について)」より


巻末の解説を書いているのは大塚英志さん。
以前の記事(【ワナビ】作家志望者が読まなければいけない「小説の書き方」本10冊【公募】)で紹介した『ストーリーメーカー』の著者です。
ぐっと理解がふかまるので、『ストーリーメーカー』や『キャラクターメーカー』とあわせて読むのがオススメ。



入門者に強くオススメ



入門者に強くオススメしたい脚本・シナリオ指南本。
前半は、心構えや全体の構成のつくりかた。
後半は、浦島太郎や桃太郎をモチーフにしたオリジナル脚本が教材です。

体裁から小技まで、具体例をとおして学べるようになっています。
オーバーラップ、屋台崩し、アバンタイトル……などなど、ドラマや映画でよく出てくるテクニックをがんがん身につけちゃってくださいv

ちなみに本書、冒頭にシナリオライター三人へのインタビュー記事があります。
プロの方々が口をそろえてアドバイスすることは……

「最後まで書け」ということに尽きますね。
 1つの作品をエンドマークまで書いて、ようやく分かることがたくさんある。
「わたしはこうしてプロになった�@ 井上由美子」より

どんなにつまらない作品でもとにかくエンドマークまで書く。
(中略)
傷ついても、立ち上がって書き続けるんです。
「わたしはこうしてプロになった�B 坂田義和」より


以前の記事(【ワナビ】作家志望者が読まなければいけない「小説の書き方」本10冊【公募】、最近読んだ「小説の書き方」本10冊〜文章力をめきめきアップさせるために)で紹介した書籍でも、多くの作家さんがおなじことをおっしゃっています。まさにそれだし、それしかない!

密度の濃い入門書



シンプルなタイトルながら、密度がとても濃い。
”精神論でなく、とことん具体的に”との方針が全体をつらぬいています。

会話で伝えるのでなく、映像で語る。
セリフを洗練させるには「削る、ひっくり返す、たとえる、嘘をつかせる」。
長いセリフは分割する。
ドラマチック(劇的)とは、人物の本音があきらかになること。
安易に回想や独白を使うな。


……などなど、なにをどうすれば良いシナリオになるのかが明確に示されています。
ここまで細かく”正解”を差し出す本はあまりない。

本書が教えるすべてを身につけて執筆にのぞむために。
何度でも読み返したい1冊です。

面白さの本質



物語における”面白さ”とは何か。
ともすれば哲学になってしまいそうなこのテーマを、とことん実践的に掘り下げていく良書です。

「感情」と「納得」が視聴者を楽しませる。
プロットを構成する「13フェイズ構造」と、その「重ねがけ」。
主人公の「成長葛藤」と「破滅葛藤」。
その作品の”らしさ”特徴づける「リマインダー」。


いますぐにでも使える本質的な話ばかり。
どんなジャンルのクリエイターさんも参考にできる、普遍的なメソッドがぎゅっとつめこまれています。

「千と千尋の神隠し」「ONE PIECE」「魔法少女まどか☆マギカ」など、有名な映画やアニメのストーリーやキャラクターで具体例を示してくれるので、とても伝わりやすい。
面白いと感じるストーリーが”なぜ面白いのか”を、とことん明確にしてくれるすごい本です。オススメ。

性格・感情辞典



後半に行くまえに、11冊とは別のおまけを。ちょっと変化球です。

人の「性格」や「感情」をあらわす言葉をまとめた辞典。
心理学やコミュニケーションスキルの本ですが、とても創作の役に立つので紹介します。

「愛」から「笑う」まで、五十音順に掲載された性格や感情は……なんと272種類!
目についた単語……たとえば「おっとりした」のページが気になったら、のんきなキャラクターをつくってみればいいし。
「後悔」の項目にピンときたら、無念さが残るようなプロットやシーンを考えてみればいい。

脚本家が読むことを想定した本ではありませんが、キャラ造形やシーンづくりの実践で、とことん助けになってくれます。
↓こんな感じの、示唆に富む言葉も。

負けず嫌いの性格の人が屈辱的な体験をすると野心家になる。
「野心」より


この法則がどんな場合も正しいかどうかはべつとして。
「負けず嫌いの性格の人が屈辱的な体験をする」シーンを書いてみようかな〜、とネタ出しに使えるような文言がたくさん。
272種類すべての項目にそえられたイラストからもアイディアを拾えます。オススメ!

☆★☆


後半はジャンル別の「脚本・シナリオの書き方」です。
ジャンル別とはいえ、志をもって読めば拾うべきものは多い。
書く予定のない分野の指南書でも、読んでみれば発見があるかもしれません♪


テレビドラマ・ラジオドラマ



ドラマの脚本に特化した指南書。
映像ドラマ(テレビドラマ)だけでなく、ほかの本ではほとんど見られない、オーディオドラマ(ラジオドラマ)の書き方も解説している貴重な1冊です。

シナリオの中身以上に「体裁」の整え方に多く筆を裂いているのがありがたい。
抽象的な技術論を避け、守るべきルールやコツを丁寧に教えてくれます。

「第4章 書き方の違い」はとくに面白い。
おなじ物語を題材に、映像ドラマとオーディオドラマの2パターンのシナリオを読むことができます。
おなじ素材がまるで異なる脚本に仕上がっていくのが壮観。
若干手に入りにくいのかもしれませんが、ドラマの脚本家を志す方は必携です。

ファンタジー映画



ちょっと珍しい、ファンタジーに特化した脚本ライティング指南書。
細かいテクニックというよりは、世界観やキャラクターをつくっていく段階で役に立つ本です。

ファンタジーのサブジャンル、リサーチの方法、ストーリー&キャラクター、動物や魔法、舞台、戦闘や宗教、政治、ロマンス……。

「ロード・オブ・ザリング」や「ハリーポッター」など、具体的な作品をたくさん取りあげて話してくれます。
物語やキャラについての本質的な、大きな話が多い。脚本家志望でなくとも、ファンタジーをつくりたいすべての方が参考にできます。

セイブル・ジャックさんはくりかえし強調します。
固定観念やステレオタイプにとらわれるな。ファンタジーというジャンルを選んだのだから、もっと自由に羽ばたけ、と。

↓悪役について、個人的にハッとする文章があったので私的メモ。

現代人にとっては、誰かを生まれつきの悪人だと考えるのは難しい
(中略)
”単に悪い奴だから”悪人では、ひどくつまらないキャラクターしか作れない。最高の悪人キャラクターというのは、何か目的をもった悪人だ。
「4 多面的なキャラクターを作る」より

ホラー映画



怖さとはなにか。恐怖の種類。シーン配置やせりふのコツ……。
ホラー映画に特化した、シナリオの書き方指南書です。
本書オリジナルの脚本を材料に、ホラーエンターテイメントの作り方を考えていく。

「人物の変化」こそ語る価値がある
せりふはストーリーを前進させるものでなくてはならない
顔をつきあわせて喋るだけの”トーキング・ヘッズ”シーンに注意


……などなど。ホラーを超え、あらゆる物語創作に役立つコツが満載。思わずたくさんメモをとってしまった1冊でした。

第1章の「地獄へのガイド付きツアー」も魅力的。
ホラー映画史のまとめです。”その作品がなにを成し遂げたのか”を解説する……いわば、イノベーションの記録。
恐怖映画はつねに”新しい怖さ”を生み出してきた!

マンガ



マンガ創作の指南書。
作画ではなく”ストーリーのつくりかた”に特化している本です。

モチーフからアイディア、プロット、箱書き、ネーム(コマ割りをつけたシナリオのこと)から推敲まで、具体的なテクニックをふたつの短編作品をみながら学べます。
ふたつの作品とは、高橋留美子さんの「Pの悲劇」と山本おさむさん自身の「UFOを見た日」。末尾に収録されています。

黒澤明監督の方法論をひいたり、ジョージ・ルーカスの「アメリカングラフィティ」が出てきたり、漫画よりも映画への言及が多いほど。
映画のシナリオで勉強した著者ならではの語り口です。

山本おさむさんは強調します。
編集者はストーリーづくりのプロではない。自分の作品を自分で批評できるようになれ、と。
新人さんが編集者とともに迷走してしまう可能性に警鐘を鳴らしているのは、そんな例を数多く見ているからかもしれません。

たった1コマの構図や短いセリフでも、必ずそうすべき理由がある。考え抜け!
なんとなく物語をつくっているクリエイターの気持ちをひきしめてくれる1冊です♪

ゲーム



ラストはゲームのシナリオ指南書。
映画やドラマとは圧倒的に異なるジャンルです。並列や分岐し、フラグによってプロット自体が変わってしまうこともある。やっかいだ。

「E.T.」や「スターウォーズ」などハリウッド映画をお手本に”起承転結”を学んだあとは、実際のゲームソフト2本を題材にした講義にうつります。
その2本とは、「天外魔境�U」と「ルナ エターナルブルー」。
名作といわれている、90年代のRPGです。

テキスト、グラフィック、システム、インタラクティブ性……。
ゲームができるあらゆる手段を使い、キャラクター性や物語を表現する。
多彩な工夫の数々は、この分野以外のシナリオライターが読んでも参考になるものばかり。

”天地人(※)””時間を盗む(※)”など、これまで紹介した本で学んできたシナリオ関係の用語がふんだんに使われています。

※ 時代、舞台、登場人物のこと。早めに受け手に伝えるべき物語の3要素。
※ 時間や空間を飛ばすことで、重要でないシーンを省略すること。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪

あきか(@akika_a)

【関連記事】

【ワナビ】作家志望者が読まなければいけない「小説の書き方」本10冊【公募】
最近読んだ「小説の書き方」本10冊〜文章力をめきめきアップさせるために
真実とは何か。(フェイク)ドキュメンタリー映画と関連本10コから考える
「生物学」が本格的で面白いSF小説と映画10コ
【私的メモ】アイディアを”強制的”に生み出す「オズボーンの73質問」
「マンガのストーリー・ネーム」の作り方を学ぶ本5冊(作画以外!)







posted by 姉崎あきか at 00:08| 10冊シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月31日

後宮が舞台の小説10冊


大和市上草柳ふれあいの森台湾亭

皇帝の妃や側室たちが住まう場所。
そこでは陰謀や策略がめぐり。
金や物、地位、ときには命までもがやりとりされる……。

さまざまな思惑がからまりあう”心理戦のコロシアム”。
それが、後宮――という名の魔窟。


というわけで。
「後宮が舞台の小説10冊」をまとめました。

前半は、一般エンターテイメント小説。
後半は、ライトノベルやライト文芸(キャラ文芸)からピックアップ。

あ。べつに私が内容をみて「これはライトだ!」と判断したわけではなくてね。
ラノベやライト文芸とされているレーベルからリリースされている小説を、後半は選んでいます。


追記)
後宮小説特集、第2弾↓もまとめました。
ライト文芸(キャラ文芸)とライトノベルに絞った10冊です♪

後宮が舞台のライト文芸とライトノベル10冊



↑冒頭で”魔窟”などとあおってしまいましたが。
後宮ものといっても、もちろん雰囲気はさまざま。

中国や中華風ファンタジーから、中央アジアや琉球といった変わり種。

恋愛ものも。謎解きミステリも。ファンタジーも。
歴史や料理がメインだったりするものもあります。

さまざまなジャンルをのみこむ後宮小説。
読みはじめたらとまらない10冊をど〜ぞ♪



後宮小説



田舎で生まれ後宮へ入った少女・銀河を主人公に据え、素乾国の興亡を描く歴史ファンタジー。
素乾国の後宮は独特で、「女大学」という”性の技法”と”哲学”を教える学校が存在しています。

……素乾国?
ものすごく中国っぽいけれど、実在しない国です。「素」も「乾」も”からっぽ”の意。
背景や細部、登場する史料(これも架空です)などがとても細かくて。
史実にもとづいた小説だと言われたら、完全にだまされてしまいそう。

銀河をはじめキャラクターが魅力的。「女大学」の様子は、後宮のヒミツをのぞき見ているようで刺激的です。
ページをめくれば緻密な世界がそこにある。「雲のように風のように」というタイトルでアニメ化↓されています。東洋ファンタジーの古典的名作。



烏に単は似合わない



後宮もののなかでも、とりわけ異色なのが本書。
後宮というか、”後宮入りの直前”を描いてます。皇子の后を、四人のなかから選ぶお話。
以前の記事(【記紀神話】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(後編)【古神道】)で紹介した『玉依姫』とおなじ”八咫烏シリーズ”の第1弾です。

舞台は山間の異界。人と鳥、どちらの姿をとることもできる”八咫烏”たちが飛び交う、和風の世界です。
くせものぞろい、それぞれの背景をもつ四家の姫が、后の座をめぐって争ったり争いから降りたりする。
この争いが策略と陰謀に満ちていて、韓流ドラマや華流時代劇が好きなひとにはぜひオススメ♪

ラストには怒涛の伏線回収があってびっくりします。「序章」からミスリードが仕掛けられていたとは……。

後宮ものとしてもファンタジーとしてもユニークな1冊。
↑は文庫版です。四家の姫を描いた単行本版↓の表紙も綺麗なので紹介v


とはずがたり



舞台は鎌倉時代の日本。
……といっても幕府ではなく、朝廷側の後宮事情を描いた古典文学です。

佐々木和歌子さんによる現代語訳。
逐語訳ではなく、物語としての読みやすさを優先した文章がありがたい。
古典文学が原作とは思えないほど、すらすら読めます。敬遠不要。

語り手の二条は、事情もわからないまま14歳で御所に入る。
後深草院の女になるわけですが、正妻や側室でもなく「女房」としてお世話をすることに……。

登場人物たちが入り乱れる(性的な意味でも)、目が離せないスピード展開。
二条が女房であるせいで、いろいろとやっかいなことになっています。

「女房」は妻ではなくて使用人。ほかの後宮ものでいう”侍女”や”女官”のような役割です。
ゆえに二条は後深草院に抱かれながらも、彼がよその女と逢うのを手引きしたり、ときには他の男にみずからを差し出すことになったりする。
たびたび出産をするのですが……父は毎回違う。

前半は「どこの海外ドラマだよ!」というくらいのドロ沼の日記文学です。
ニガテな方は注意><

後半、二条が出家すると雰囲気はガラリと変わります。
憂いを帯びつつ諸国を旅する紀行文学の様相に。
壮絶な半生があるからこそ、ひとつひとつの風景のわびしさ、無常さが心に刺さる。
前半とは違った魅力があります。

二条の詠む和歌も面白いものが多い。
歌を鑑賞するのをメインにして読むのも楽しいかもv

いけそうな方は原文↓でどうぞ><
講談社学術文庫版は、あらすじも訳も、注釈も解説もついているので安心。



逆に、初読は漫画版↓で大筋を把握しておくのもアリかも。


あとは野となれ大和撫子



今日紹介するなかで、もっとも異色なのが本書です。
舞台は「アラルスタン」。大部分が陸と化したアラル海に興った架空の国。

中央アジアの後宮というだけでもなかなかレア。
さらに後宮のあり方も、ほかの物語とはひと味違います。
アラルスタンの後宮は、”王の世継ぎを残す”という当初の機能を失い、女性たちの”高等教育機関”としての役割を担っています。

この国の大統領が暗殺されてしまい、後宮の少女たちが政権をにぎるお話。
現実にはない国ですが、大量の資料を用い、アジアのリアルな地政学を詳細に描き出しています。

ちなみに、この後宮。
かつてはフツーの後宮だったので、以前の大統領の妃たちがまだ居座ってたりするのね。
教育施設としての後宮で育ったジェネレーションと、古参たちとで、世代間の対立もあったりします。

一風変わった後宮をのぞいてみたいあなたにオススメ♪

テンペスト





続いて、琉球の首里城です。後宮が舞台というより、”後宮も舞台”といったほうが正確かも。

幕末にあたる時代。日本に属す前の琉球王朝のお話です。
龍がさかり狂う嵐の夜、望まれぬ女児として生まれた少女・真鶴。彼女は女の身でありながら男しか受けてはいけない科試に合格し、宦官といつわって王府にあがることになる……。

史実をベースに、呪術や龍などファンタジー要素もとりいれて描かれる濃厚な物語。
真鶴のジェットコースターのような人生もさることながら、首里城の内部や、政教が混然となった琉球のまつりごとの雰囲気など、細部の描写も面白い。
ところどころで琉歌が挿入されていて風流です。

”表”の政治の世界が主ですが、表と裏、男の世界と女の世界が一体となっているのが首里城。とくに後半は、後宮での出来事がおおきな役割をもつ展開になっていきます。

でね。
この壮大な物語、ラストの無常観がすごい。
ネタバレというか史実なので書いてしまうけれど、日本の開国とともに琉球王国も終焉を迎えます。
それぞれの立場で王府にかかわってきた登場人物たちが、おのれの人生を振り返る。
いやおうなく流れていく時間を感じさせます。一生をささげたはずの「国」は、時代の流れによってあっけなく崩れてしまう幻。ただの概念である、と。

↑文庫版の表紙からわかるように、仲間由紀恵さんや 谷原章介さん、GACKTさん出演でドラマ化↓されています。
琉球の魅力がたっぷりとつまった大長編。沖縄にあこがれるあなたはぜひv


☆★☆


ここからはライトノベル、ライト文芸(キャラ文芸)を。
とくに少女小説系のレーベルから、豊富な後宮ものがリリースされています。

↓レビューは1巻に対してですが、すべての作品が2巻、3巻……とシリーズ展開されています。
気になるシリーズがあれば、続きもど〜ぞ♪

薬屋のひとりごと



中国をモデルとした架空の国の後宮が舞台です。
主人公は猫猫(マオマオ)という少女。妓楼育ちの後宮勤めですが、遊女でも妃でもなく「薬師」。
後宮で起こるさまざまな事件を名探偵風に、ときには暗躍して、解決していく……。

猫猫の冷めた語り口が魅力的。
後宮のうわさ話や、美貌の宦官にもまるで興味を示さないのですが、毒や酒を前にすると豹変。
危険な毒を口にふくみ、その味にうっとりと頬を染めるヤバイ奴。それが猫猫です(笑)。

ひとつひとつのエピソードがこまかく分かれています。
全部で31話+終話を収録。
完全に独立しているわけでない続きもののですが、スキマ時間に読み進められるのが嬉しい構成になっています。

主婦の友社のラノベレーベル、ヒーロー文庫より。

コミック版↓も大人気。
いまもっともホットな後宮ライトノベル♪


一華後宮料理帖



こちらは薬ではなく料理!
「崑国」という架空の国の後宮を舞台にした中華風ファンタジーです。

主人公の理美は、古代日本を思わせる「和国」から献上されて崑国に来た少女。
神にささげる食事をつくっていた経験を活かし、新天地を生き抜いていく。
異国の姫なので理美の位は低く、女官として後宮に仕えることになります。

後宮ものとはいえ、皇帝の寵愛を争うようなお話では全然ありません。
いかにして崑国の者に和国の出汁の味わいを理解させるか……みたいな、ほっこりとしたミッションに挑みます♪
いちおう命の危機があったりするのですが、全体的にほんわか(笑)。

少女向けレーベルならではのキュンキュンなシチュエーションがたっぷり。
ラノベらしい読みやすい文章……なのですが、丁寧に置かれた伏線やサブストーリー等々、物語のカタチがとても綺麗な小説です。オススメv

少女向けライトノベルの角川ビーンズ文庫より。
↓コミック版♪


威風堂々惡女



架空の「瑞燕国」を舞台にした中華風ファンタジー。
転生というかタイムスリップというか、ちょっと不思議な構造のお話です。

下女として報われない人生を終えたかに思えた主人公の少女。
しかし、まるで別人の姿になって目を覚まします。しかも、時間をさかのぼって。
少女はかつての皇帝の側室・柳雪媛として、すでに確定したはずの歴史を変えようと策をめぐらす……。

序盤からどんでん返しに満ちていて、目が離せない。
過去と未来が交差する壮大な史劇です。
手段を選ばない、堂々たる惡女のほんとうの心は……。

ライト文芸レーベルの、集英社オレンジ文庫。
↓コミック版♪



彩雲国物語



うってかわって、古き良き1冊を。

舞台は「彩雲国」。中華風の架空の国です。
主人公の秀麗は名家のお姫さま。だけど、家計は火の車。アルバイトをいくつもかけもちして、その日その日を暮らしています。
あるとき秀麗に妙な仕事が舞いこみます。それは、即位したばかりの王の教育をするため、”妃”として後宮にあがることでした……。

お嬢さまのくせに、使用人よりもなんでもできる秀麗。
宮中の調度品を”売り払ったらいくらになるか”計算していたり、貧乏キャラが魅力的です。
男色家だとウワサされている王さまのキャラクターも、ページが進むごとにどんどん深みを増していく。

アニメ↓にもなった、後宮ライトノベルの古典的名作♪
↑は角川文庫版ですが、もとは少女向けラノベレーベルの角川ビーンズ文庫から出版された作品です。



後宮の烏



「霄(しょう)」という架空の国の後宮が舞台です。
主人公の寿雪(じゅせつ)は、後宮にいながらも夜伽をすることはない、侍女も置かない、孤独な「烏妃」。
烏妃は”不思議な術”で祈祷し、幽鬼を祓う力をもつ存在です。
あるとき、帝が彼女のもとをおとずれ、頼みごとをするが……。

架空の国ですが、これも中華風ファンタジーと呼んでいいと思います。
雰囲気もキャラクターとても魅力的。

気位が高く、ツンデレというよりツンツン、お菓子に目がない寿雪。
優しいがときに強引で、めったに感情を表に出さない皇帝、高峻。
皇帝を守る、忠実すぎて融通がきかない宦官、衛青。
なりゆきで寿雪の侍女になってしまった九九。
さわがしい鶏、星星。

みずから孤独であろうとする寿雪の心を、まわりの人物が溶かしていく。
心の交流が丁寧に描かれていて素敵。

心理だけでなく、小道具などや建物、植物などの描きこみも濃厚なファンタジー。
いずれアニメ化してもおかしくなさそう。青田買いするなら今。

ライト文芸レーベルの、集英社オレンジ文庫です。


追記)
ほんとうにアニメ化が決定しました! びっくり><
白川紺子「後宮の烏」シリーズ、アニメ化決定! - 集英社 オレンジ文庫
http://orangebunko.shueisha.co.jp/news/20211214.html




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あきか(@akika_a)

(冒頭の写真は大和市上草柳の「ふれあいの森」の四阿”台湾亭”です)

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2021年06月01日

上半期(2021年)のベストセラー本は『推し、燃ゆ』(o・▽・)σ(炎▽炎)



出版取次会社の日本出版販売(日販)およびトーハンは6月1日、「2021年上半期に日本でもっとも売れた本」を発表しました。
(日販調べの上半期ベストセラー(総合)のトップ20を記事末尾↓にまとめています)




上半期1位は『推し、燃ゆ』


2021年上半期のベストセラーは、日販・トーハンともに

宇佐見りん『推し、燃ゆ』

でした。
第164回芥川賞の受賞作品です。
推し(他人に”推”薦したいほど好きなアーティストやアイドル)が炎上したことで変化していく周囲や自身をつづる純文学。
6月現在で累計発行部数が50万部を超える大ヒットとなっています。

芥川賞の受賞作は毎年ベストセラーリストに名を連ねますが、『推し、燃ゆ』は頭ひとつ抜けてよく読まれている印象。
最新の月間チャートでも高順位につけており、ロングセラーへの道をちゃくちゃくと歩んでいます。

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2位は、日販では『スマホ脳』。スマートフォン依存に警鐘を鳴らす新書です。
トーハンでは『秘密の法 人生を変える新しい世界観』。幸福の科学の宗教出版です。





3位は、日販では『星ひとみの天星術』。テレビなどで人気の占い師さんの著作です。
トーハン調べの3位は、前述の『スマホ脳』でした。




4位以降にも話題の本が続々。
社会現象継続中の「鬼滅の刃」関連では、「塗絵帳」や小説がランクイン。
「鬼滅」のあとを追う人気漫画&アニメ「呪術廻戦」のノベライズも顔をみせています。

注目のコミュニケーションスキル本『人は話し方が9割』は日販で4位、トーハンで7位。
2021年本屋大賞を受賞した町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』は、日販で6位、トーハンで5位です。

昨年の年間ベストセラー『鬼滅の刃 しあわせの花』は日販・トーハンともに12位でした。


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ニュースで目にする「ベストセラー」の情報ソースは、出版取次会社の日本出版販売(日販)やトーハンのニュースリリースです。
日販やトーハンのサイトで誰でも閲覧することができます。
ジャンル別のランキングなどもありますので、ぜひ”一次情報”にもふれてみてくださいね。

日本出版販売株式会社
http://www.nippan.co.jp/
TOHAN website
http://www.tohan.jp/


それでは2021年の「上半期ベストセラー」20冊をど〜ぞ♪

 2021年の上半期ベストセラー

(日販調べ。「全集」「文庫」「コミック」を除く総合ランキング。集計期間=2020年11月24日〜2021年5月21日)

1位

2位

3位

4位

5位


6位

7位

8位

9位

10位

11位

12位

13位

14位

15位

16位

17位

18位

19位

20位


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(2017)今年もっとも売れた本〜2017年の年間ベストセラー(ニッパン調べ)
(2016)今年もっとも売れた本〜2016年の年間ベストセラー(ニッパン調べ)
今年もっとも売れた本〜年間ベストセラーの調べ方

【関連リンク】

日本出版販売株式会社
http://www.nippan.co.jp/
TOHAN website
http://www.tohan.jp/
芥川龍之介賞|公益財団法人日本文学振興会
https://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/akutagawa/
直木三十五賞|公益財団法人日本文学振興会
https://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/naoki/
本屋大賞
https://www.hontai.or.jp/
posted by 姉崎あきか at 14:29| ベストセラー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月31日

日本の見世物・興行・芸能がわかる本10冊


浅草西参道お祭り商店街

今日は日本の見世物や興行、芸能界にまつわる10冊を紹介していきます。

前半は、古代からその原形があるという”見世物”と”興行師”の歴史を。
後半は、”現代の興行”です。寄席、歌舞伎、宝塚歌劇、ジャニーズ、インディーズ(地下)アイドルの5つ。

……なんだかバラバラでまとまりのない印象かもしれませんが、どれもが深くつながっているともいえる。
見世物研究の大家、朝倉無聲は言います。
(↓文中の「之(これ)」は、見世物のことね)

観覧料を徴収して公衆に縦覧せしむるのを云ふ、されば若し之を広義に解すれば、能楽演劇相撲等の諸興行物は、総て見世物の一種類なりと云うを憚らず
『見世物研究 姉妹編』「見世物年代記」より


なにが人々のまなざしを集めてきたのか。
昔と今の”沼”にまつわる10冊をど〜ぞ♪



見世物研究の第一人者



「見世物探偵」こと川添裕さんが、興味のおもむくままに各地に足をはこぶ紀行エッセイ。
川添裕(古谷祐司)さんは、「見世物文化研究所」という団体の代表。
江戸の見世物の研究を主として、演劇やさまざまな文化史に造詣のふかい、”この分野”の第一人者です。

本書が紹介する見世物のジャンルは……

中国雑技、菊人形、象、水上人形(水傀儡)、力持、曲馬、水芸、口上、つくりもの、サーカス、足芸、貝細工、大道芸、猛獣など。

日本だけでなく海外もめぐり、川や塔、島など景観そのものを”見世物”としてとらえる自由な語りが素敵ですv
冒頭のカラーをはじめ、写真資料も楽しい1冊。個人的には、「ベトナム水上人形」のあやしさ満点なたたずまいがツボです。キモいのすき。

空前絶後の研究書



見世物の研究書。原本はレアな専門書だけど、ちくま学芸文庫としても上梓されているので手に取りやすい。
聴いたこともないような資料を大量にひいて、見世物興行の歴史を余すところなく概説していく、とんでもない労作です。

技術、奇物、細工の3つに分けて、具体的な見世物をみていきます。

技術は、手品や話芸、軽業、人形使いなど、ワザをみせるもの。
奇物は、動物や草、木、石、人(!)など、ちょっと変わったものをみせます。
細工は、アート作品です。

図版の資料も掲載されているのでイメージがわきやすい。
復刻にあたり末尾に収録された守屋毅さんの解題が、本書の価値を端的に言いあらわしています。

発行以来半世紀近く経た今日に至るも、なお他に類を見ない、当該分野唯一の概説書であり、その完備した構想と資料の充実に接するならば、今後に及んでも、この水準を抜く研究の出現は、容易に期待できぬ
「『見世物研究』解題」より


ちなみに、本書には↓「姉妹篇」があります。


朝倉無聲がのこした59篇の文章を収録。大道芸、物売りなど見世物の”周辺”にまつわる論考も掲載されています。『見世物研究』には未収録の原稿ばかりです。
「見世物年代記」や「見世物版画年表」など、ここにしかない貴重な資料目録は圧巻。

こちらは編者である川添裕さんが解説を書かれています。↑で紹介した”見世物探偵”。
この解説でもさまざまな文献が紹介されており、見世物を中心とした庶民文化や演劇研究のブックガイドとして参考になります。

小説で描かれる見世物のセカイ



もう1冊、見世物関連を。こんどは小説です。
本所両国界隈の”見世物小屋”や”岡場所(私娼窟)”が舞台。怪しく妖しい、江戸怪談を描く、短編連作形式の時代小説。

主人公は遊び人の萬女蔵(まめぞう)。彼は香具師のような仕事もしています。萬女蔵が女を買ったり、見世物を興したりするなかで出逢うのは、この世のものだけとはかぎらない……。

ところどころに七五調の文章をはさむ文体。リズム感が心地いい。
まるでこの本自体が見世物の口上であるかのような、粋な演出です。

見世物や岡場所が細かく描きこまれていて、江戸の下町にタイムスリップした気分。
あやしくてうさんくさい見世物がたくさん登場します。
色町の物語ということで、色っぽいのが好きなひとにもオススメ。///

本書の参考文献2冊を私的メモ↓(上で紹介した『見世物研究』も挙がっていました♪)

『大江戸岡場所細見』江戸の性を考える会 三一書房
『見世物研究』 朝倉無声 ちくま学芸文庫


松竹、吉本、大映、東宝



歌舞伎、喜劇、ミュージカル、映画……。芸能や興行の歴史を5人の”興行師”の人生を通じて紹介する入門書です。
その5人とは……

  • 十二代目 守田勘弥(新富座、近代興行の父)
  • 大谷竹次郎(松竹)
  • 吉本せい(吉本興業)
  • 永田雅一(大映)
  • 小林一三(東宝)


まさに現在につらなる歴史。錚々たる顔ぶれの創業者たちの苦労話や成功譚がのぞけます。
明治から昭和にかけて、あやしげだった興行は近代的なビジネスとなっていく。
ノンフィクションの新書ではありますが、ところどころ物語風の文体で書かれていて、お芝居を観ている感覚で読める良書です。


☆★☆



ここからは、現代の興行を具体的にみていきます。
ジャンルは……寄席、歌舞伎、宝塚歌劇、ジャニーズ、インディーズ(地下)アイドルの5つ。
ハマれば底のない、沼地へようこそ。

寄席・演芸



演芸雑誌「東京かわら版」の編集長さんが、寄席の魅力をたっぷり紹介。
イラストがたっぷりの寄席入門書です。

基本的な知識から、建物や場内の構造、見どころ、用語、歴史を図解つきで解説。
有名な4劇場(鈴本演芸場・浅草演芸ホール・池袋演芸場・国立演芸場)のイラストは、写真とは違った味わいがありますv
紙切りやコントなど、色物にももちろんふれています。

末尾では噺家、芸人さん46名の紹介。寄席でよくかかる古典落語50コのあらすじ解説も。
大物芸人のインタビューまで収録した、豪華すぎる寄席ガイド。読めばぜったいに行きたくなる!

歌舞伎



花形役者さんへのインタビュー、コミックエッセイ、名作のダイジェストや登場人物紹介。
歌舞伎を描いたマンガや小説のリスト、久生十蘭や江戸川乱歩の随筆も収録。

いわゆる入門書とは方向性がちょっと違う構成です。
基礎的な知識の解説というより、歌舞伎にまつわるトピックをさまざまな角度でとりあげていく。バラエティゆたかなつくりです。
「どんな入り口からでもいいから、歌舞伎を観てみてよぉ〜」と全力でお誘いしてくれる本。
紗久楽さわさんのイラストもかわいくて素敵です。

タイトルは「乙女のための〜」ですが、そこまで乙女色が強いわけではありません。誰が読んでも楽しめます。
関連本の紹介がたくさん。芋づる式にほかの本へとアクセスできる、ブックガイドともなる1冊です。当ブログ的にもオススメv

宝塚歌劇



100年を超える歴史をもち、圧倒的な集客力をほこる宝塚歌劇。
その盤石さのヒミツを、ビジネスモデルやファン、コンテンツの分析をとおしてあきらかにしていきます。
5つの”謎”が提示され、森下信雄さんなりの答えが明確に示されます。
その5つとは……

謎その1 小林一三、偶然の物語〜なぜ「宝塚」で「歌劇」だったのか
謎その2 「何でも自前主義」の効用〜なぜ、宝塚歌劇は孤高の存在なのか
謎その3 なぜ「ロングラン」しないのか〜「ボロ儲け」しない本当の理由
謎その4 「どこでもファン」の謎〜なぜ繰り返し見るのか
謎その5 「ファンクラブ」の真実〜タカラヅカの力の源泉

タカラヅカの裏側までじっくり知ることができる本。演劇研究というよりも完全にビジネス書寄りの新書です。
終盤ではタカラヅカの、スターが育っていくモデルを「未完成マネジメント」として、住宅や家電業界にまで広げて語っています。
エンターテイメントだけでなく、新時代のビジネス全般のヒントが詰まった1冊。

タカラヅカ



もう1冊、タカラヅカを。
ひるがえってこちらは、とことんファンの気持ちを描いた漫画です。

人が集まる場所が好きではなく、長く座っているのもニガテな女の子が宝塚歌劇と出逢ってしまう物語。
後半は、作者の細川貂々さん自身の宝塚遍歴を語ったコミックエッセイ。

沼にどっぷりハマっていく過程が細部にわたって描かれています。
3日間の5公演を、まるで修行のように全部観にいったり。観劇好きなら、宝塚のファンでなくても共感できる描写がたくさん。

好きなものがあるのは幸せだ。
理知的な↑『タカラヅカの謎』ではみえなかった、”幸福すぎる”ファンの想いを追体験してみて♪

以前の記事(心の時代を生きるための本10冊)で紹介した↓『浪費図鑑』とセットでどうぞv


ジャニーズ



”努力”を斬り口に、ジャニーズがスターを生み続ける仕組みについて考えていきます。
前半は、現役で活躍する16人を、エピソードやテレビ、雑誌等のコメントとともに紹介。その16人は……

(敬称略)
中居正広、木村拓哉、長瀬智也、国分太一、岡田准一、井ノ原快彦、堂本剛、堂本光一、櫻井翔、大野智、滝沢秀明、風間俊介、村上信五、亀梨和也、伊野尾慧、中島健人

ひと口にジャニーズといっても、それぞれが全然”別の道”を歩んでいることに驚く。仕事への向き合い方もさまざまで興味ぶかい。

後半は、著者・霜田明寛さんの総論。そしてジャニー喜多川さんの”才能を育てる力”について迫っていきます。
ショービジネスだけでなく、仕事や人生全般に通じるヒントが満載。「ゴシップ抜きのジャニーズ論」です。

インディーズ(地下)アイドル



ラストは地下アイドルとも呼ばれる、インディーズアイドルの概論です。
これまでみてきた「興行」とは異なる論理が走っているのがこのジャンルかもしれません。
著者の姫乃たまさんは、地下アイドルでありライターでもある方。

インディーズアイドルとファンの実態を、アンケートを通して深掘りし、その”心のカタチ”をあぶりだしていきます。
”一般の若者”に対するアンケート結果と並置して地下アイドル業界の精神性をみていく。
ジャーナリスティックな手つきもさることながら、著者の実体験からくる言葉もとても強い。
客観、主観の両面から地下アイドルの世界にふれられる良書です。

姫乃たまさんは言います。

地下アイドルの世界は、誰かが自分にも居場所があることを確認するために存在しています。
「プロローグ」より

地下アイドルの女の子も、そのファンの人たちも、生活するための居場所が確保された現代の中で、高次元な欲求を満たすために、精神的な居場所を探している人たちです。
「第四章 地下アイドルたちの精神と生活」より


ライブの現場では、アイドル側の承認欲求と、認知(アイドルに顔や名前をおぼえてもらうこと)を求めるファンがたがいを満たしあっていると分析。

独特の祝祭空間。
集客数や興行収入ではけっして語れない、”深度のふかい”世界が素描されています。


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