今日のなぞなぞ
「もし国家が破産してインフレや円安が起こったらどうすればいい?」
今日紹介するのは、以前の記事(最近読んだ「金融を学べる」本10冊)でも取りあげた橘玲さんの著作。マネーリテラシーの本です。
もし日本の財政赤字がふくらみすぎて、国債(国の借金)の暴落あるいはデフォルト(債務不履行)が起こったとしたら。
私たちはいかに資産を守ればいいのだろうか?
本書はこれに対する答えを、とことん具体的に教えてくれます。
追記)
改訂をくわえた文庫版もリリースされています。→『国家破産はこわくない』 (講談社+α文庫))
……いや。
国家破綻とかハイパーインフレ(※)とか。さすがにないと私は思いますが。
※ 通貨の価値がさがり、物の値段が極端にあがっていくこと。
じっさい橘玲さんも、国債デフォルトまではさすがにありえないだろうというニュアンスです。
逆に、「国家破綻のシナリオ」を”営業ツール”にして、無知な高齢者などにリスクの高すぎる海外投資商品を売りつける金融マンをなじっています。日本の破綻リスクよりもおおきな信用リスクを負わせているじゃないか! と。
(トルコリラ建てでハイイールド債(ジャンク債)(※)を詰めあわせた商品(ファンド)とかがあるんですって……ひどいね)
※ 高利回りをうたったリスクの高い債権。ジャンクボンド。2007〜9年の金融危機をひきおこすきっかけとなったサブプライムローン債が有名。
とはいえ。
以前の記事(未来は予測なんてできないし、売れてる本が良い本とはかぎらない)でお話したとおり、ブラックスワン(※)は、誰もみたことがないからこそブラックスワンなのであり。ひとたび黒鳥が見つかれば、世界はひっくり返る。
※ 黒い白鳥のこと。金融市場などで、統計や経験則から予測できないものが突然に起こってしまうリスクのたとえとして使われる用語。
金融リテラシーはあってありすぎることはないので、
今日は橘玲さん流の「資産防衛術」を私的メモとしてシェアします♪
3つのシナリオと「破滅」の3つのステージ
まず。
橘玲さんは、アベノミクスやそれにともなう日銀の大規模緩和がもたらす未来として、以下の3つの道を可能性としてあげています。
楽観シナリオ アベノミクスで日本経済は大復活する
悲観シナリオ 現在と同じデフレ不況がこれからも続く
破滅シナリオ 財政が破綻して経済的な大混乱が起こる「第3章 普通預金は最強の金融商品」より
現在(2018年)がまだ「デフレ不況」なのかは、ひとによって意見が異なると思いますが、
(本書は2013年の本なので、円高デフレがまだ記憶に新しかったころです)
要はあの「失われた20年(※)」はまだ終わらないというのが「悲観シナリオ」だと読みかえてかまいません。
※ 1991年から長く続いた(続いている)日本経済の低迷期間のこと。
橘玲さんは、「破滅シナリオ」が起こったとき、
そこには3つのステージがあるだろうといいます。
第1ステージ 国債価格が下落して金利が上昇する
第2ステージ 円安とインフレが進行し、深刻な金融危機が起き、国家債務の膨張が止まらなくなる
最終ステージ(国家破産) 日本政府が国債のデフォルトを宣言し、IMFの管理下に入る
「第3章 普通預金は最強の金融商品」より
IMFは国際通貨基金(International Monetary Fund)のことです。
世界の金融の安定をめざす、国際的なビッグファンドね。マネー版の国連みたいなものかな(ざっくり)。
第1ステージまでは普通預金でOK
橘玲さんはたとえ「破滅シナリオ」が起こっても、初期段階までは普通預金を持っているだけで資産防衛になる、と説きます。
「楽観シナリオ」の場合は、好況が続くのでそもそも防衛する必要がない。
「悲観シナリオ」なら、デフレ(物の値段が下がっていく)が進むので「円」はもっているだけで価値をあげていく。
「破滅シナリオ」でも、第1ステージでは、金利上昇と一時的に起こるであろう円高によって、「円での普通預金」にメリットがある。
いざ備えなくてはならないのは
「第2ステージ」に移ったときの円安やインフレに対してです。
第2ステージで有効な3つの金融商品
財政破綻がもたらす経済現象として、橘玲さんは以下の3つをあげています。
国債価格の下落(金利の上昇)
円安
インフレ「第4章 たった3つの金融商品で「国家破産」はこわくない」より
で。
「第2ステージ」で購入すべき3つの金融商品をズバリ断言しています。
その3つとは……。
【国債ベアファンド】
【外貨預金】
【物価連動国債ファンド】
順番に説明すると。
「国債ベアファンド」は国債(国の借金)が信頼を失うほど、逆に価格(基準価額)を上昇させる仕組みの投資信託です。証券会社とかでふつーに売ってます。
「外貨預金」は、ドルなど海外の通貨による預金です。銀行でも行なえますし、たとえばレバレッジをおさえたFX(外国為替証拠金取引)なんかでもおなじ意味を持つ投資行動ができます。
「物価連動国債ファンド」は、インフレ率に連動して価額が推移する仕組みの投資信託です。こちらはあまり流通していない、ちょっと手にはいりにくい金融商品です。
国債下落、円安、インフレに備える、まさにストレートな商品群ですね。
橘玲さんは金などのコモディティ(商品)への投資は、この文脈ではオススメしていません。
コモディティの値動きはこれら3つのリスクに対するヘッジ(備え)にはならないからです。
そしてさらに、「最終ステージ」まで進んだ場合。
日本という「国」が財政的に崩壊するとき、あなたにはなにができるのか?
最終ステージでは「預金封鎖」も視野にいれる
最終ステージ(国家破産) 日本政府が国債のデフォルトを宣言し、IMFの管理下に入る
ここまで事態が進行したとき。
もはや日本の銀行や証券会社に置いてある資産はすべてなくなってしまうかもしれない。
「破滅シナリオ」が最終ステージに入ると、これまでの資産防衛戦略はほとんど無効になってしまいます。「第4章 たった3つの金融商品で「国家破産」はこわくない」より
国債が債務不履行になってしまったら、たとえば「物価連動国債ファンド」の価値はゼロになってしまうし、
かりに「預金封鎖」が起これば銀行に預けている円や外貨もすべて差しおさえられてしまうかもしれない。
とんでもない未来だよね。
ないとは思うよ。ないとは思うけれど、そんな事態になっても資産を守れる2つの「究極の国家破産対策商品」があると橘玲さんはいいます。
その2つとは……。
【海外銀行の外貨預金】
【日本国債ベアETF】
もう、お金を海外に逃がせということですね。
順番に説明すると……。
「海外銀行の外貨預金」は、外国の信頼できる銀行(HSBCなど)で外貨を持っておけ、ということです。
「日本国債ベアETF」は、海外市場(ニューヨーク市場など)に上場されている、日本国債の価格とは反対の値動きをするETF(上場投資信託)です。もちろん円建てじゃないやつね。これをたとえばアメリカの証券会社で買っておけ、ということです。
信じる/信じない、じゃない
なんというか、すごい未来だよね。
預金封鎖とか、現代の日本からみればいかにも前時代的な言葉だけど。
もしかしたら、ブラックスワンはあらわれるかもしれない。
信じるか信じないかは、アナタ次第です
……。
…………という話ではないんだよね、べつに。
信じる/信じないじゃない。ひとによってはもっともらしく国家破綻シナリオを語る論者もいるけれど、本書はべつに「日本が崩壊するぞ〜」とあおっているわけではありません。
「そうなったときにどうするか」をしっかりと実践的に教えてくれる良書です。
かりに兆候があったとしても、第1ステージまでは普通預金が最強なんだから。
準備する時間はじゅうぶんにある。
財政破綻とかハイパーインフレとか関係なしに、
シンプルにマネーリテラシーの本として読んでかまわない。
為替やファンドについての注意点など、こまかいけれど役に立つ知識も満載です。
金融リテラシーは、あってありすぎることはないので
いくらでも読むのがいいと私は思っています。
橘玲さんは金融リテラシーについて実際的に語ってくれる、ほんとにいい作家さんだよね。
だけど、なんだか最近は、以前の記事(【新しい脳】進化心理学を学びたい人のための11冊【究極要因】)で紹介した『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』のような不安をあおるアジテーションな語りが多くて(↓『言ってはいけない』とかも)。
なんだか、好きなバンドがメジャーデビューして音楽性が変わってしまったときのようなさみしさを感じていたりもします(笑)。
あおらないとみんなちゃんと勉強してくれないから、みたいな意図があるのかな。進化論や進化心理学に強くコミットしているのはなにか理由があったりするんだろうか。
でも、アジテーション系の本も刺激的で面白いといえば面白いので
けっきょく好きな作家さんであることに変わりはないんだけどねv
そんなこんなで。
今日は
橘玲さんの『資産防衛マニュアル』っていう本が
オススメだよぉ〜☆(*´∇`*)ミ☆
というお話でした。
ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪
あきか(@akika_a)
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