2014年11月06日

私の好きな「歌舞伎町」本3冊

 
今日のなぞなぞ
「"歌舞伎町本"のオススメは?」

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こんばんは。
歌舞伎町生まれ、歌舞伎町育ちの、あきかです。
……いや、ホントに。

私の生まれ育った劇場は、いまはもう
大手食品会社のビルになってしまったけれど。
治安の問題とか、課題はいろいろあるけれど。

やっぱり、私にとっては故郷。
大好きな街です。
(……↑こんな”地獄”な写真のっけといてアレですが。
ちなみに写真は歌舞伎町とは関係ない、としまえんのラーメン屋です)


なので、
歌舞伎町を題材にした本をみると、つい手にとってしまう。

今日はこの街を題材にした”歌舞伎町本”のなかから、
厳選した、とっておきの3冊
を紹介します。


 魂を賭したフォトジャーナリズム


写真家・権徹さんのフォトエッセイです。
いや、フォトエッセイなんていう言葉じゃ弱すぎる。
フォトジャーナリズムです。

15年以上にわたって(デジカメができる前から!)、歌舞伎町を撮り続けてきた
”スナイパー”権徹さんの、魂を賭した写真集。
ものすごく強いものが宿っていて、鳥肌がとまらない写真ばかりです。

魂を賭した……というのは、誇張でもなんでもなくて
このひと、何度も警察のお世話になったり、死にかけています。
でも撮る。撮り続ける。


外国人。
風俗店。
路上の子供。
男女の酔っ払い。
事故。
発砲事件……。



いちばん印象に残っているのは、
食い逃げの犯人を連行しようとしている警察官の写真。


生活苦に泣き叫ぶ食い逃げ犯と、
なんだかすごく楽しそうな笑顔で、彼の髪の毛を引っ張る警官
とり囲む野次馬たちの、顔。顔。顔。

ありふれた映画よりずっと、物語のたちこめる1冊です。


 ”やさしい街”歌舞伎町


僧侶でもあるノンフィクション作家・家田荘子さんのルポタージュ。
家田荘子さんは社会が”見なかったこと”にしてしまいがちなマイノリティの人々におもいっきり寄りそって、声なき声を拾ってゆく、私の好きな作家さんです。

本書は、歌舞伎町を庭とするひとたちがどんなふうにシノギ(稼ぎ)を得ているのか、
に迫ってゆきます。


極道者。
トイチ(高金利の貸出業者)。
家出した未成年。
歌舞伎町の”女”たち……。



この本を読めばおそらく、歌舞伎町の見方が変わるかもしれません。
怖い、とか、危なそう、とかイメージがひとり歩きしているけれど、
ほんとは歌舞伎町は、どんな人間だって受けいれてくれる
”やさしい街”
です。


 極上のラブストーリー


小説です。映画にもなったし、有名ですよね。
私はこの作品をミステリでもサスペンスでも犯罪小説でもなく、
”恋愛小説”としてみています。

日本人と台湾人のふたつの顔をもつ、そしてどちらにも属せない健一。
似たもの同士でもある謎の女、夏美と惹かれあうのですが。
心をゆるしていいのか、あるいは、夏美もじぶんを利用しようとしているだけなのか
いつまでもわからない、ゆえに「おれ」はずっと孤独である

ノワールとしても一級品だけど、
恋愛の部分もとても切ない、名作です♪

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 お仕事に疲れた夜に……

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Muzai Moratorium (Innocence Moratorium) - 椎名林檎(iTunes)

3冊と言っておきながら、おまけでCDを1枚紹介。
伝説の名曲「歌舞伎町の女王」を収録した、”新宿系アーティスト”椎名林檎さんのアルバムです。
レトロ感漂うロックがツボv

このアルバムの9曲目「おなじ夜」
「加爾基 精液 栗ノ花」というアルバムの「おだいじに」
ビジネスパーソンのあなたに、ぜひオススメしたい。

お仕事に疲れた夜に聴くと、
無防備な心に歌詞がひたひたと染みこんでいきます。


空は明日をはじめてしまう
(おなじ夜)

身体はまだ自由が利く
(おだいじに)
 


こういうストレートな言葉が音楽にのって聴こえてくると、やばい。
なんか、泣いちゃいます。

加爾基 精液 栗ノ花
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Karuki Zahmen Kuri No Hana (Kalk Samen Chestnut Flower) - 椎名林檎(iTunes)


 大沢在昌さんは未読です


そんなこんなで。
最後はすこし脱線しちゃったけど、
歌舞伎町を舞台にしたオススメ本の紹介でした。


なんだよ〜、『新宿鮫』(大沢在昌)ナシかよ〜と思われた方。
すみません、未読です^^;

すでに何冊も出ている人気シリーズなので、
なんとな〜く避けてしまって……。

以前の記事(【ワナビ】作家志望者が読まなければいけない「小説の書き方」本10冊【公募】)で紹介した『売れる作家の全技術』で、
大沢在昌さんが↓のようなことをおっしゃっていました。


大沢在昌は読まない、と決めている人が一定数いる。


……はい。
まさに私が”食わず嫌い”なひとりです。
だって、いっぱいありすぎて(>_<)。
いずれ読みます。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか



【関連記事】

【ワナビ】作家志望者が読まなければいけない「小説の書き方」本10冊【公募】

 
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2014年11月03日

ちきりん『自分のアタマで考えよう』に仕掛けられた3つの壮大などんでん返し

 
今日のなぞなぞ
「考えること、をどう考える?」



今日は”おちゃらけ社会派”ブロガー、ちきりんさんの
『自分のアタマで考えよう』をさくっとレビューします。

本書は”考えるチカラを鍛える”本
選挙やプロ野球の将来、自殺、報道……などさまざまな問題について、
考え倒します。

分類やグラフ、マトリクス図(縦軸と横軸にいくつかの項目を記した表のことです)などを使いながら
ロジカルシンキングっぽい手つきで
思考を”みえる”化し、結論を導く。


この「結論」がクセモノで。
導かれた主張には「なるほど!」と思えるものもあれば、
「いや、自分はそうは思わないよ?」というものもあると思います。

だけど、この「結論」に目を奪われ、
賛成だ反対だ〜とやりはじめてしまうと、本書をちゃんと読んだことにはならない。



たまたまさいきん読んだ雑誌に、ちきりんさんのインタビューが載っていたのですが、
そこでちきりんさんは次のようなことを言っていました(↓引用でなく意訳です)。


特定の主張の賛同者を増やすことには、ぜんぜん興味ない。
みんなが「自分で考えられる」ようになってくれればいい。




本書でも、大切なのは
結論ではなく「プロセス」です。
”特定の主張”を凝視すれば、すべてを見失ってしまう。
……ものすごく面白いつくりの本だと思いました。



☆★☆




んでだ。
じゃあ、この本を読んで
「私も自分のアタマで考えてみよっと」って思うよね。
幸い、考えるためのヒントは本書にたくさんある。


・じぶんのなかにある知識が先入観となって思考を誘導していないかチェックして
・対象を分類してみて
・ときには、グラフや図で”みえる化”し
・なぜ? だからなんなの? と問い続け
・「思考の棚」を形成してゆく……。




そんな感じで本書の指導どおり
マトリクス図を描きはじめたとします。
そうすると、心の声がする。


「パクリじゃん!」


って(笑)。



「自分のアタマで考えた方法じゃないじゃん!」


って。



もしかしたら、うがちすぎかもしれません。
ちきりんさん自身は
「このフレームを使ってじぶんのアタマで考えてみてね」というつもりで
思考の技術を紹介したのかもしれない。

でも、やっぱり。
考える方法をパクったら、それはもう思考停止じゃん
……と思う自分がいたりして、
「考える枠組み」さえも「じぶんのアタマで」考えたくなる。


この本はそんな仕掛けになっています。
「考え方も考えろ!」……と行間から強制してくる構造なんですね。
トリッキーすぎる(>_<)。




☆★☆




じゃあ、どうしよう……。
「考え方をゼロから考える」方法は、
直接的にはこの本には載っていません。

”考え抜く態度”は奨励しているけれど、
ではどうしたら……と立ち止まってしまう。

そして、ふと天啓が降りてくる。


「なにを真剣に悩んでるんだ。
この本はエンターテイメントだよ?」




!!
そうだ、この本は「思考の技術」とうたっているけれど
「知的エンターテイメント」として読めるじゃん!
たしかにイッキ読みしちゃうくらい面白かったし。

そこではじめて、
ちきりんさんの”おちゃらけ社会派”という肩書が
伏線となって、回収される
わけです。


この本は、
思考エンターテイメントだ!


ここまでたどり着いて、表紙のちきりんさんのイラスト(アイコン)をながめてみると
「おつかれさまぁ〜」と舌を出しているように見えるのは私だけでないはず(笑)。



☆★☆




でね。
じゃあ、エンターテイメントだから
「あ〜面白かった」とそれだけでいいのかと”考える”と、
どうもそれだけじゃない感じが残る。

すでに↑でぐるぐると
「”考え方”さえ自分のアタマで考ねば」という視点を獲得してしまった私はもう、
あともどりはできないわけです。

「面白かったね」で終わらせることができなくなってる。
そこで、はたと気づく。
この本の”真の仕掛け”は、これなんじゃないか。


考えずにはいられない


そんな、焦燥にも似た情動に読者を突き動かしてしまう。
そこで、”おちゃらけ”であると同時に”社会派”である、という肩書が
ふたたび伏線となって活きてくる。


ああ、これは読んだひとを「思考」させる方向に動かしてしまう
”政治性”
が仕掛けられた本なんだ。ある意味、社会運動……だよなぁ。



”考えながら”読みこむことで、
どんどん本書の<意味>がひっくり返ってゆく、たくらみにみちた1冊。
良書でした♪



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか



【関連リンク】

Chikirinの日記
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/





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2014年11月02日

最近読んだ「発声・演技力をきたえる」本10冊

 
今日のなぞなぞ
「声や演技力をきたえる本は?」


今日は、最近私が乱読したなかから
”発声・演技力をきたえる10冊”をぷちレビューしていきます。

歌手や声優、俳優、ナレーター志望の方はもちろん、
プレゼンや会議、接客、営業などすべての”コミュニケーションの現場”で役にたつ本です。

「なにを伝えるか」も大切だけど、
「どう伝えるか」もやっぱり重要!

いっぱい技術を磨いて、夢をかなえましょ♪


あなたのお口にあう書はございますでしょうか?


 耳がよくなる


ちょっと変わったボイストレーニング本。技術的なボイトレにくわえ、サザンやB'z、MISIAや宇多田ヒカルさんなどアーティストタイプ別の発声法指南があります。声帯の締まり具合や息のあたる場所なども解説していて、読めば声に対する感度が高まる。モノマネを特技にしたいひとにもオススメ!? 新版はこっち↓



 いい声とは、自分の声のこと


「この世に『悪い声』など存在しません。声を悪くする『癖』があるだけです」……かけがえのない楽器は、ありのままの自分の声。自分の「声質」が好きじゃないと思っているひとは読んでみて! いままでの考え方ががらりと変わる、希望のボイトレ本♪

 独学でここまでできる!


日々のトレーニングのお供に。メニューがたくさん載っているのが嬉しいです。いつもそばに置いて、ボロボロになるまで反復練習したい。滑舌・抑揚・イントネーション……発声練習は、独学でここまでできる!

 お芝居の”本質”


演劇集団「キャラメルボックス」のトレーニングが学べる1冊。演技とは、練習したものを反復することではない……お芝居の”本質”がぎゅっとつまった良書です。いっさい準備をしないまま、大勢の前で長時間のひとりエチュード(※)をする……そんな怖ろしい練習風景の描写もあります。オススメ♪

※ アドリブ芝居のこと。

 マイクはどっちに向けて置く?


歌い手さんやデモテープを作成する必要がある歌手・バンドの方へ。パソコンを使ったデジタル録音のハウトゥーを、手とり足とり教えてくれます。自宅録音のとき、マイクはどの場所に、どっちを向けて置いたらいいか……など、知っていると便利な”コツ”も満載です。

 トレーニングの合い間に


小説です。子役からはじめて芸能人へと育ってゆく夕子の成長や葛藤を描く。母親の干渉、恋愛、スキャンダル……こまかな描写がひたひたと心に染みいる、純文学です。トレーニングの合い間には、物語で気分転換を♪

 ちょっと、お勉強的な


ボイトレ本。ですが、この本はちょっとだけ”お勉強”風味かな? 発声のメガニズムに裏打ちされた、姿勢やブレス、ストレッチなどを図入りで解説しています。声楽の授業に出たつもりで、声を仕組みを1から学んでいきましょ♪

 オーディションという「お受験」


オーディションもいってみれば、「お受験」なわけで。そこには傾向や対策など、知っておくと便利な情報がたくさんある。デモテープでは、歌のうまさではなく声質をみている場合も……など、トレーニング本じゃないけど、面白くて一気読みしちゃう1冊です。

 もっと、傾向と対策


「今は『素人』のほうがチャンスがある」。芸能界の現場がいまどんなことになっているのかを語りつくす1冊。デビューの方法から、生き残っていく術まで、芸で身を立てていきたいひとは、いつかは読んでおきたい本です。じゃあ、いつ読むか? 今でしょ(東進予備校ふうに)。

 凡人であること。そこからはじめる


シャ乱Qのボーカルであり、アイドルプロデューサーでもあるつんく♂さん。彼は誰よりも「平凡である自分」に向かいあってきたひとです。ちょっと意外でした。自分は凡人である、そこからひとつひとつ、できることをはじめる。かんばるあなたに寄りそって、そっと背中を押してくれる、素敵な本です。



お口にあう本はございましたでしょうか?
それでは、今日もボイトレがんばってくださいね♪


ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか


追記)
良書を見つけたので追加♪


音響監督さんが語る「売れる声優」になるための方法。「どんなポジションを目指すのか」などセルフプロデュースや、オーディションやボイスサンプル作成のコツもあります。
……でも。

本書の大半は演技について。これがすごい。「感情は下半身に落とせ」「調子で喋るな」「台詞は記号」「声圧について」など、ひたすらお芝居の真髄に迫っていく。声優だけでなく、俳優や監督志望のひとにもオススメな良書です♪



カンロ ボイスケアのど飴 90g×6袋
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2014年10月26日

最近読んだ「未来を予測する」本10冊

 
今日のなぞなぞ
「未来を見通すための本は?」


今日は、最近私が乱読したなかから
”未来を予測する10冊”をぷちレビューしていきます。

未来予測……といっても占いのような超自然的な方法ではなく。
現在の経済や社会を見つめることで延長線上の未来を見通す、
そこからまた現代を眺めたとき
「今」が、よりクリアに見えてくる……そんな10冊です。

「今」どう動けばいいか、その指針となる
まさに ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"! な本たちです♪


あなたのお口にあう書はございますでしょうか?




 未来の日本のパノプティコン

PSYCHO-PASS サイコパス Blu-ray BOX 6枚組
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本10冊と言っておきながら、1発目はアニメ。その人が「どれだけ犯罪に手を染める確率が高いか」(犯罪係数)を計測する「シビュラシステム」。これが社会インフラとなった日本を描く、近未来SFです。車は完全に自動運転になっていたり、ホログラムの技術がかなり発展していたり、ホントにありそうな未来の姿。システムに主体性を委ねてしまった人々の姿は、そのまま現代の日本にも通じます。フーコーのいうパノプティコン(※)型社会の描写でもある。

※ 中央に高い監視塔がある刑務所では、監視者の姿が見えないため、たとえ監視者がいなくても「見られているかもしれない……」と囚人が規律に従って行動する。この監獄のように、絶対的な権力者がいないなか、市民が自発的に自らを律するような仕組みが作動している社会のこと。



 どう考えれば未来がみえるか


イギリスの経済誌「エコノミスト」が未来を予測。経済だけでなく、健康や文化、環境、宗教、政治、科学、メディア……など、あらゆる分野を「予言」します。あてずっぽうではもちろんなく、人口(および高齢化)など統計的に高い精度で分析できる対象も。どれくらい的中するだろう、ではなく「どういうふうに考えれば未来がみえるか」という視点で読むのがオススメ。以下、目次。

第1部 人間とその相互関係
人口の配当を受ける成長地域はここだ/人間と病気の将来/経済成長がもたらす女性の機会/ソーシャル・ネットワークの可能性/言語と文化の未来
第2部 環境、信仰、政府
宗教はゆっくりと後退する/地球は本当に温暖化するか/弱者が強者となる戦争の未来/おぼつかない自由の足取り/高齢化社会による国家財政の悪化をどうするか
第3部 経済とビジネス
新興市場の時代/グローバリゼーションとアジアの世紀/貧富の格差は収斂していく/現実となるシュンペーターの理論/バブルと景気循環のサイクル
第4部 知識と科学(次なる科学/苦難を越え宇宙に進路を/情報技術はどこまで進歩するか/距離は死に、位置が重要になる/予言はなぜ当たらないのか


追記)
↓文庫化されました♪


 ミステリ作家が描く未来像


近未来SF小説です。コールドスリープ(冷凍睡眠)を研究する施設で迷ってしまい、目覚めたら30年後の世界にいた。そんな少女の物語。未来予測たっぷりな細部の描写が面白い。化粧ではなくマスクを着けるのが主流になっていたり、ギャルっぽい子が笑えることに対して「わかす〜」と言っていたり。ウケる、じゃなくて、わかす。ありそう。以前の記事(【ミステリ】読み始めたら止まらない徹夜本10冊【SF】)で紹介した『リピート』とセットで読みたい、時間旅行ものの傑作。

 拡張現実、アーキテクチャ


以前の記事(碇シンジは夜神月を止められない――宇野常寛『ゼロ年代の想像力』)で紹介した宇野常寛さんと、おなじく評論家の濱野智史さんの対談本。震災後の社会の「希望」をおもにネットメディアを足場にして語ります。直接未来を予測した本ではありませんが、拡張現実(※)やアーキテクチャ(※)の議論は、将来をながめるうえでかなり強力な補助線になります。

※ ネットワーク上の情報が加わることで現実が”拡張”するように作用する技術や、その仕組み。リアル/ネットという対比構造をもつ「仮想現実(バーチャルリアル)」に代わって、近年注目されている概念。強化現実。増強現実。
※ 建築物の様式をいうが、コンピュータのシステム設計を指し、現在は社会システム全般の構造についても用いられるようになった。


 もっと、アーキテクチャ


以前の記事(ネットいじめ、スクールカースト、キャラ戦争)で紹介した荻上チキさんの新書。テレビで発言するときもそうですが、チキさんはたんに主義主張を叫ぶのではなく「構造(=アーキテクチャ)をどう変えればよりよい社会になるか」という眼でものを見ています。「ダメ出し」でぼやいているだけじゃ、現実を変革するうえでなんの有効性もない。「ひとりひとりが〜を心がけるべき」という「心でっかち」な意見も意味がない。幸せな未来へ向けて、考え方のヒントがぎゅっと詰まった1冊。

関連記事:
「心でっかち」とは何か

 ウェブ社会はどこへ行く?


もう1冊、荻上チキさん。私はチキさんを「リテラシー(情報に対する読み書き能力)の専門家」として見ています。ウェブで起こった祭り・炎上事象のケーススタディをしている本書も、本質はリテラシー論です。ある立場に反対か賛成かと問うとき、その”トピック”のみが重要だと思われてしまい、他の話題はかき消えてしまう(争点のカスケード)。くりかえされた過去を正確に読み解くことで、しっかり未来がみえるはず。↓以下は引用。

私たちの歴史をひもとけば、既に数多くの騒動を経験しています。
そのような騒動が、これからも形を変えて起こっていくのです。

「四章 ウェブ社会はどこへ行く」より


 脳科学の最先端


脳科学のあらたな分野、ソーシャルブレイン=社会脳。他者とのかかわりのなかでの脳の働き研究する、心理学などもふくんだ学問越境的なジャンルです。本書は現在の社会脳研究の議論をわかりやすく整理・紹介しています。「つながり」がおおきなテーマとなっている昨今、この分野から出てくる成果が、未来の人々の「つながりかた」を左右するかも。

 ノマディズムとリゾーム


国内最大級の匿名掲示板「2ちゃんねる」の管理人ひろゆき氏は、いかにしてサイトを売却したのか! ……という本では全然ない(笑)。ひろゆきさんが本書を担当するライターさんとお喋りしてるだけです。テレビやネットの未来予測もありますが、この本をどう使うかはあなた次第。とはいえ、これからはひろゆきさん的なものがたくさんあらわれてくると個人的には思います。ぽっとゲリラ的に生まれたサービスがたくさんの人々に影響を与えていくような。ノマディズム(※)的な人が創っちゃう、リゾーム(※)的なものが。

※ ともにフランスの哲学者、ジル・ドゥルーズが提示した概念。ノマディズム(ノマドロジー)は、定住しない遊牧民のように、流動する社会や人間の”ひらかれた”在り方を志向する。リゾームは地下茎。ごちゃごちゃと張りめぐらされ、何にでもつながってみせる、流動性や自由を称揚する概念。



 電通マーケティングが未来をズバリ当てる


広告代理店・電通の「ソーシャル・プランニング局長」が2015年を大胆予測! ……って来年!? 2009年の本なので、およそ5年先の超近未来の予測です。「答えあわせ」をするように読んでみてくださいね。スマートフォンは「パソフォン」、3Dプリンタは「三次元プリンタ」など細かい言葉の違いはあれど、だいたい的中しています。現状を分析した本だよね、これ? ……という感覚。あと、ありえるかもしれない商品やサービスの企画が満載。クリエイティブなアイディアをたくさん拾えます♪ 以下、目次。

PART1 若者観測 ココロも人間関係もフラット化していく男女
コミュニケーションと若者のライフスタイル 「脱・アイデンティティ型の自分」へ動き出す“キャラ型ケータイ・ネイティブ”/仕事と結婚 トランスジェンダー化の中で、「隠れおひとりさまニーズ」が増えていく
PART2 シニア観測 細胞の代謝で延びゆく青春時代
ビューティ アクティブエイジングと「全方位キレイ」の追求でビューティ複合市場が誕生する/身体と健康 バーチャルからリアル、ケミカルからナチュラルへ 「細胞の声を聞くシステム」が病気を防ぐ
PART3 ファミリー観測 拡大する「食の絆」と「父親の家庭力」
食シーン 多用な「共食縁」が人のネットワークを再活性化する/育児 育児を取る「ポジティブ・ダディ」が生む、消費のアップ・スパイラル
PART4 情報社会観測 文化・技術の底力が市場をジャパンシフトさせる
クリエイティブ・ライフ デジタル表現力の力がコンシューマーをクリエイターに変身させる/ネット起業 「趣味は経営です」マイクロビジネス・ブームが拓く(誰でも社長時代)/携帯電話 「1人3回線3端末」へ ガラパゴスの眠りから目覚める日本ケータイの底力/ゲーム 高収入プロゲーマーも出現 ゲームは公告サービスの巨大メディアに
PART5 コミュニティ観測 新しい信頼関係が人の心と身体を活性化させる
心と健康 地域の新たな連帯が生む「ソーシャルキャピタル」が健康格差を緩和する/ スポーツ 2016年東京五輪へ スポーツの「みる」「する」「ささえる」が大融合
PART6 観光力観測 グローバル時代における、新しい日本の魅力
観光立国 日本人の「ホスピタリティ」と「ダイバーシティ」が世界の人々を引き寄せる/訪日中国人 大陸からやってくる新しい消費者の巨大なポテンシャル
PART7 環境社会観測 「サステナブル消費の時代」を創造する
エコロジー 「環境か経済か」から「環境も経済も」へ CO2本位制の徹底で創エネ社会に転換する/食料 食料の安定確保と地産地消に向けて自給率を5%アップ/生態系 個人、自治体、企業―さまざまな主体が始める「生物多様性を守る消費」


 「啓発された利益」が地球と市場を支える


ハーバードビジネススクール(HBS)のメンバーが、ビジネスを起点に未来を見通す。企業の社会的責任(CSR)が叫ばれてひさしいですが、この本が提示するのは利益を犠牲にして社会貢献する企業の姿ではありません。利潤を追求することがそのまま経済や環境の持続可能性につながる「啓発された利益」とそのビジネスモデルです。未来予測であると同時に、「次世代のリーダー達にはこうあってほしい」という啓発としても良書。ところで、かつて宮沢賢治は言いました。

世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない
「農民芸術概論綱要」より


高度成長の時代なら、しめっぽいヒューマニズムに聴こえたかもしれないこの言葉も、成長が鈍化してきた今となっては「やっぱり、その方向しかないよなぁ」という妥当性をもって響きます。ルール(資本主義)にのっとってゲーム(ビジネス)をすることが、サステナビリティ(持続可能性)に直結するモデル……ある種アーキテクチャの議論でもあります。長い目で未来を見たときに「サステナビリティ」はぐんぐん大切なトピックになっていくので、いまからしっかり考えておきたいテーマ。




追記)
池上彰さんの”未来予測本”を追加♪


これからなにが起こるか、を見通すための情報リテラシーを教えてくれます。具体的に、どんなメディアにアクセスすればいいのか。つねにチェックしていることで、”いつもと違う動き”の萌芽に敏感になれる。経済の話が多め。投資家のあなたにもオススメです♪


追記)
グーグル元CEOの”未来予測本”を追加♪


技術がこう発展するからこういう社会ができる……理詰めで見通す本書の未来像は、かなりの確からしさがあります。描かれるのは「私たち」「アイデンティティ、報道、プライバシー」「国家」「革命」「テロリズム」「紛争と戦争」「復興」の未来。万人のコネクティビティ(つながり)は、世界をここまで変容させる。




お口にあう本はございましたでしょうか?
それでは、みなさまひとりひとりの”しあわせな未来”を願いつつ……


ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a


【関連記事】

【ミステリ】読み始めたら止まらない徹夜本10冊【SF】
碇シンジは夜神月を止められない――宇野常寛『ゼロ年代の想像力』
ネットいじめ、スクールカースト、キャラ戦争
2010年代を見通す7つの大胆予測
未来は予測なんてできないし、売れてる本が良い本とはかぎらない
「心でっかち」とは何か

 





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2014年08月26日

最近読んだ「世界観がダークな」本10冊

 
今日のなぞなぞ
「世界の見方を深めるための本は?」


今日は、最近私が乱読した本のなかから、
"世界観がダークな10冊"をぷちレビューしていきます。


よのなかには明るいものがあふれている。
ハッピーエンド。予定調和。ポジティブシンキング。
テレビをつければいつも、タレントさんたちが笑っている。

でももちろん、世界はそれだけじゃない。



ひとの心や社会の闇に寄りそう10冊です。
ある種の方々にとっては”常備食”となるであろう本もあるかも。


あなたのお口にあう書はございますでしょうか?


 同調しすぎないで


自殺した編集者さんのウェブ日記。本オタクでコスメマニア。ふかく同調しながら、でもシンクロしすぎないように注意して読んでください。読める本の幅がひろがります。本、人形、ファッション、コスメ、自傷好きなあなたに。以下は引用です。

何不自由なく満ち足りたこの世界で私はなぜだか戦場にいるような気がします。
ほんの小さな失敗でもしたら私はここにいることを許されなくなってしまうような気がします。
挨拶はきっと複雑な合図で、それを間違えれば即座に虐殺されるような気がします。
私をかこむ隣人達の中に入っていくとき、砲弾の飛び交う中を進んでいく気がします。
時限爆弾を解体するかのように息をつめて仕事をします。
世間話をしながらも銃弾が耳を掠める音が聞こえます。
私の微笑みは自然に見えますか? 口の中には恐怖の味がします。


 畸形、サディズム、頽廃


みんな大好き澁澤龍彦のエッセイ集。古今東西の歴史、芸術、文学、哲学……のなかから、澁澤が”俺ツボ”なものを取りあげ、考察する。さまざまな変身譚をコレクションしていく「メタモルフォーシス考」の項は、資料としても◎。以前の記事(【フェテイッシュ】ジャケットがアングラすぎるトーキングヘッズ叢書10冊【マニアック】)の雰囲気が好きなひとは、例外なく澁澤ファンでしょう。

 ゴスロリ! ゴスロリ!


ファッション誌「ゴシック&ロリータバイブル」で連載されていた短編小説集。筋肉少女帯の大槻ケンヂさんの作品です。キュートでダークでゴスロリ満載の、好きなひとにとっては幸せあふれる1冊。物語としての完成度も高く、ほろりと涙したり深く考えさせられる話ばかり。面白いです。



 1冊まるごと少年の尻


1冊まるごと、少年の尻について語っています。あらゆるものごとを尻に結びつけ、尻は至上であると諭す。その過剰さに思わず笑ってしまうのだけど、そういう「笑い」ですら、尻への憧憬を抑圧している証だ、と指摘される。チュートリアルの漫才以上に突き抜けてる。これぞ文芸。すごい本。

 想い出のマーニーとセットで


魅力的なブロンド少女テリィと、いじめられっ子メリッサ。母の虐待。次々と起こる事件。少女の「悪意」は、とどまるところを知らない……。ジョン・ソールの文章も雰囲気も、私は手放しで大好きです。『想い出のマーニー』とセットで読んでみてもいいかも。世界は、一枚岩じゃないと感じられる。↓『暗い森の少女』もオススメです。少女の狂気と暴力は、加速する……。




 少年少女の異形な関係


詩人コクトーがアヘン中毒のまっただなかに書きあげた物語。でも、ドラッグ小説ではありません。文学です。母が死に、身よりがなくなるエリザベートとポール。その「いびつな」姉弟関係には、なんともいえない脆さがあります。漫画化、映画化もされている名作。




 りんご病の明けない夜明け


詞と音から、椎名林檎の音楽を論じます。”Jポップを聴くじぶん”の心の動きを、ここまでこまかく言葉にできている本は、ほかにはないかも。アルバム『加爾基 精液 栗ノ花』の全曲レビューあり。なにを隠そう『加爾基〜』は私がいちばん好きな邦楽アルバムです。JポップのCDのなかで最高峰だと断言できる。



 地図にない異郷


弟・襾鈴(あべる)の死の謎を追い、珂允(かいん)は地図にない村にもぐりこむ。襲いかかる鴉、陰陽五行のような土着信仰、人形、錬金術、指のない男……そして、連続殺人。ミステリですが、すべてが解決してもなお、昏い異郷の雰囲気が心を蝕むようです。

 世界と異界のあいだ


消えたひとりの少女。誘拐か、神隠しか、それとも……。かつて一緒にUFOを呼んだ子供達の運命が、なにかに導かれるようにふたたび絡みあう。以前の記事(【ミステリ】読み始めたら止まらない徹夜本10冊【SF】)で紹介した『コンセント』もそうですが、田口ランディさんはほんとうに、世界と異界のキワのキワまで描きこむ方です。オカルトから科学、哲学、人類学までを幅広く用いながら、世界の本質に迫っていくエンターテイメント。

 あなたにかける呪詛のことば


絵本です。語り手の「悪い本」が”本を読んでいるあなた”に呪詛の言葉を投げかけます。「いつかどこかであなたはだれかをきらいになります」……と。読み聴かせたら子供がドン引きする本ナンバー1。というか、ドン引きしたり笑える子供はきっとすでにオトナなんだろう。私とっては、ただひたすらに怖い本。




お口にあう本はございましたでしょうか?


ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか





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posted by akika at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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