2019年10月30日

【民話伝承】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(中編)【フォークロア】


今日のなぞなぞ
「日本のフシギな言い伝えを知る10冊は?」

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昔。ある山奥に、竈門炭治郎(かまどたんじろう)という炭焼きの少年がおった。
家族で仲よう暮らしておったが。
あるときを境にぱったりと、炭を売り歩く姿がみえなくなった。

不思議に思って、山にのぼった者の言うことにゃの。
竈門家の居間が血にまみれておったと。鬼の仕業と思われたそうな。

ところがの。
いたましい光景のなか、炭治郎と妹の禰豆子(ねずこ)の身体だけが行方不明じゃった。

その後、浅草で炭治郎をみかけた者があったそうな。
またある者は、枷を口にくわえた禰豆子の姿を目にしたという……。


「俺は長男だから我慢できた!」


……と、「鬼滅の刃」の話はさておき。
(未読の方、すみません><)



今日は以前の記事(【奇習邪宗】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(前編)【民俗神】)にひきつづき、この国の土着信仰を学ぶ10冊を紹介していきます。

地方のフィールドワークや民話など、今回はさらにフォークロア寄り。
炭焼き職人もいろんな本で登場しています(炭治郎は出てこないけど)。

日本人の感性にダイレクトに響く、
あやしくも心惹かれる10冊
をど〜ぞ〜♪



 本当にあった奇妙な話


著者と一緒にフィールドワークをしている気分になれる、民俗研究の本。
集められた逸話はものすごくディープです。

即身仏(ミイラ)になるための修行の場、入定窟
山奥で贋金をつくる、漂泊の民
人を圧死させてしまうこともあった、オス(熊を獲る罠)。
猿を食べる風習。
墓だらけの村墓のない村
狐憑きの家系。犬神筋……。

「この尾根は、村では姥捨て山といってます。
(中略)
入り口がこんなに狭くなってるのは、中に入れられた老人が外へ出られないようにしてるんだと思いますよ。入り口が広かったら、いくら老人でもはい出してきますからね」
「第1章 修験の里の奇怪な石室」より


こんな話がふつーに出てきます。
ちなみに、この石室。「中に頭骨が転がっていた」そうです……。
(筒井功さんは、地元民の語るこの姥捨て話を鵜呑みにはせず、”伝説”である可能性も冷静に考慮しています)

ひたすら現場を歩き、足で集めたエピソードの数々。
ほかのどこにも載っていない、レアでディープなフォークロア。

 俗信・迷信

日本俗信辞典〈動・植物編〉 (1982年)
鈴木 棠三
角川書店
売り上げランキング: 480,804

動物・植物にまつわる、いわれ、信仰、禁忌、まじない、迷信などを大量に集めた辞典です。
ちょっとした辞書より分厚いほどで。たとえば、神話や民話によく出てくる「蛇」なんかは15項目に分かれ、40ページほどの解説が続く。

〇ヘビを屋敷或いは家の守り神と考えている地方は広い。だから、屋敷の周りや屋敷内のヘビは殺してはならぬ(埼玉・山梨・長野・新潟)ものとする。富山県小矢部市では
(後略)
「蛇(1) 家の守り神 神秘の蛇」より


こんな感じで各地の言い伝えを網羅していきます。
読み通すというよりは、好きな部分をひいて調べる感じの本。
たかが迷信とあなどるなかれ。食べあわせの良し悪しや、天気の予測、健康の秘訣など、生活の知恵が存分にこめられている……はず。

カエルを箱に入れて置くと消え失せる
「蛙(2)」より


こんなのもあるけど。
どういう意味なんだろうこれ。なんの手品?
(跳んで箱をあけて逃げちゃうから気をつけて、かな)

 神隠し


民話や伝承で語り継がれてきた「神隠し」譚を分析していきます。
何者が、いつ、どうやって”隠す”のか。捜索は? 失踪者は戻ってくるのか? 帰還した者が語る異世界は?

類型や約束ごとを丁寧に整理していくと、かなりパターン化されたテンプレがみえてくる。
泉鏡花や大江健三郎など、文学に描かれた神隠しの具体例も。
怪異のヴェールにつつまれた物語の外で「本当は何があったのか」についても推理しています。
神隠しとは何かを探る興味深い本。参考文献も豊富にあがっています。

 民俗宗教


学部生・大学院生の強い味方、世界思想社の「学ぶ人のために」シリーズより1冊。
12人の研究者がそれぞれの得意分野を概説。
↑で紹介した小松和彦さんも「ノロイ・タタリ・イワイ」の項目で執筆しています。

その小松和彦さんが、『日本書紀』の記述をひいて「タタリ」の構造をとらえている部分が面白かったので、まとめ。
あらすじとしては……

大物主神「私をまつれ。さすれば災厄はおさまる」
崇神天皇「言われた通りにしたのに、おさまらないじゃないですかやだー」
大物主神「おまえじゃだめだ。我が子、大多々根子に私をまつらせろ」
崇神天皇「さ、先に言ってよー」

こんな感じのお話です(いろいろひどい笑)。
ちょっとマニアックで申し訳ないのですが、私的メモ。

 この話には、災厄の発生→巫女の神がかり・託宣→大物主の祟り→大物主の祀り上げ→祀り上げの失敗→夢占い→大物主の夢告→祟り神による祭主(神主)の指定→祭主による祀り上げ→マツリの受納、というように、日本のタタリ信仰の構造・メカニズムが集約された形で表現されている。
「3 ノロイ・タタリ・イワイ」より


本書は、考古学やジェンダーなど周辺領域もおさえていてオススメ。
神仏、霊、魂、他界、血、性、祭、夢……民間信仰・民俗宗教でかならず出てくるテーマがひと通り論じられています。
もちろん参考文献も豊富。興味をひろげていく足がかりになります♪

 みうらじゅん


以前の記事(最近読んだ「好きを仕事に」する本10冊)で『「ない仕事」の作り方』を紹介したみうらじゅんさん。
”なかったジャンル”を”一人電通”的に流行らせていくサブカリストです。
「勝手に観光協会」を結成しご当地ソングを”勝手に”リリースするなど、地方を応援する立役者でもあります。
”勝手に応援”活動はとどまることを知らず、もはやフォークロワの域に!?

天狗、仏像、奇祭。
銅像、菊人形、即身仏。
なぜか日本にあるキリストの墓、鍾乳洞……。


研究対象は多岐にわたり、サックス吹く銅像ゴムヘビ(ヘビのおもちゃ)の”生態系”までリサーチまでしはじめる。
飛び出し坊や(飛び出し注意を喚起する、子供をかたどった看板ね)なども。
無駄で無益なエネルギーにしびれる、みうらじゅんさんワールドv

関連本として、各地のへんなお祭りを集めた『とんまつり』と、もらってもあまり嬉しくないお土産を蒐集した『いやげもの』もどうぞ♪




 柳田国男


日本の民俗学の始祖、柳田国男の代表作ふたつを収録したオトクな1冊。
「遠野物語」は岩手県遠野に伝わる民話伝承を聴き書きした説話集。
サムトの婆や、ザシキワラシ、マヨイガ、オシラサマなど、有名なお話がたくさん。

「山の人生」(と「山人考」)は、怪異もふくめ山で生きる人・モノたちのエピソードを集め考察をくわえています。
『神隠しと日本人』でもたびたび引用されています。

誰にも頼れない人が一種の選択として「山に入る」例がある……と説きながらも、柳田国男は続けます。

それだけならよいが、人にはなおこれという理由がなくて、ふらふらと山に入って行く癖のようなものがあった。少なくとも今日の学問と推理だけでは、説明することの出来ぬの人間の消滅、ことにはこの世の執着の多そうな若い人たちが、突如として山野に紛れ込んでしまって、何をしているかも知れなくなることがあった。
「三 凡人遁世の事」より


「山の人生」のメインテーマはこのあたりだ、と柳田国男は言います。
そして自分も「神隠しにあいやすき気質」だと語る。

あらゆる本で言及され続けている、フォークロア文学の名著。
未読の方はぜひ。


☆★☆



柳田国男や遠野が出てきたところで。ここからは東北にまつわる民俗学を。
伝承と民間信仰の宝庫、東北地方特集! です。
ふかく踏みいった先には、得体のしれないセカイがあった……。
(青森・岩手・秋田が中心です。福島・宮城・山形の方はすみません><)

 イタコとオシラサマ


東北地方の土着文化を「イタコ」「オシラサマ」にフォーカスして綿密に取材した1冊。
イタコは、自身に死者を憑依させる”口寄せ”を行なうシャーマン。
オシラサマは、東北を中心に広く信仰されている、服を着た木の棒。民俗神です。

イタコとオシラサマがメインですが、「V 東北彷徨」ではほかの民間信仰の様子もレポートされます。

地蔵信仰、百万遍の数珠送り(念仏回し)、虫送り。
稲荷、能舞、冥婚(死霊結婚)、絵馬……。


れっきとした伝統ある信仰だけど、なんだかオカルトの香りがするのがこの地方かもしれない。
じつは私自身、東北に縁があるのですが、こういう豊かで怪しげな(!)習俗の数々はぜんぜん知りませんでした。
死者に婚礼をあげる風習があるなんて……。
(ちなみに、全編とことん誠実なルポタージュですが、「川倉の冥婚式」の場面では怪奇現象が出てきます)

レアな写真や、イタコの生の声も収録されている、貴重な本。
東北の民間信仰を知るなら、この1冊から。

 寺山修司

田園に死す [DVD]
田園に死す [DVD]
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本10冊とは別に、いっこだけ映像作品を。
寺山修司の歌集「田園に死す」(↓『寺山修司全歌集』に収録されています)を原作というかモチーフにした映画です。監督も寺山修司。


舞台はなんと、恐山。
閉鎖的な村で育った少年の、思春期のもやもやが描かれていきます。

ぜんたい的におどろおどろしい色使いで、くらくらするほど。
主人公の顔が不気味な白塗りだったり、かなりアートな作品です。
なんともいえない不思議なレトロ感。お笑いのくっきーさんとか日本エレキテル連合はこのへんがルーツなのかな〜なんてふと思いました。
サーカス(見世物小屋)の雰囲気も怪しすぎて好きv

でね。
イタコの口寄せもそうだし、長〜い数珠をみんなでまわす場面があったり。
知っていると「あっ」って想う民俗的なシーンが散りばめられています。
ひな壇がまるごと川を下ってくる場面は……流し雛!?

↓ラストの独白にしびれます。

新宿区新宿字恐山。


もちろん、新宿に恐山っていう字(あざ)はないわけで。
都会に生きている自分だけど、ほんとうの心の住所は、幼少期を過ごした「恐山」にあるのだ……みたいな。
アルタ前の交差点がずっと映し出される、じわじわと鳥肌が立つエンディングです。
(私信。観ました♪ アングラでレトロな雰囲気、なんでいままで観なかったんだろうってくらい、好みのど真ん中でした!)

 青森

津軽のカミサマ―救いの構造をたずねて (自然誌選書)
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カミサマは、神のことじゃなくて、東北地方の祈祷師たち。
↑の『イタコとオシラサマ』でも言及されています。
オカミサンやゴミソなどとも呼ばれる「民間巫者(巫女)」です。

巫術をもって相談者の悩みに答える霊能者……イタコのような存在ですが、いちおう区別されていて。
たとえば、イタコの多くは盲目で、口寄せを行なうけれど、ゴミソはそうでもない。
「成巫過程」(霊能力を得るプロセス)は、イタコは師弟制だけどゴミソは自発的、など。
(イタコを含めた拝み屋の総称としてカミサマを用いる場合もアリ)

たんにフィールドワークだけでなく、宗教学として信仰の構造を分析しています。
著者のスタンスは↓こんな感じ。

どんな社会でも、宗教の専門家を自称したり、自分をとりまく世界に統一的な原理や秩序を求め、これを体系的に説明したがる人はいる。
(中略)
しかし、ひとたび一般の人びとが実際にこれらの神々を拝んだり祀ったりしている場所へ入ってみると、かならずしもそれほど体系化された神観念が共有されているとは限らない。
「第二章 救いの構造」より


人びとは明確な他界観や霊的世界の見取図を十分に理解し、これに納得したから礼拝するのではなく、むしろ単なる慣例であるという理由だけで儀礼に参加したり、願いが叶えられるであろうという期待だけで神々を拝むのだ、という方が真相に近いこともあるだろう。
「第二章 救いの構造」より


安易に結論に飛びつくことなく、研究者らしい慎重な手つきで構築されていくロジック。
提示されたモデルはものすごく面白くて、なんというか、統一理論がふいにあらわれた感じです。
救いとはなにか、を普遍的にとらえていく刺激的な1冊。

 岩手


以前の記事(【奇習邪宗】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(前編)【民俗神】)で『隠し念仏』を紹介した門屋光昭さんの、宮沢賢治研究書です。

鹿踊りや鬼、馬、河原の坊……賢治の文学に出てくる民話的なモチーフにスポットをあてる。
といっても、たんに近隣の伝承との類似を指摘するのではなく、作品の世界そのものを民俗学的な手つきでさぐっていくようなおもむきです。
門屋光昭さんはこの方法を「イーハトーブ・ふぉくろあ」と名づけています。

賢治と交流のあった佐々木喜善(鏡石)も登場。座敷童の話など「遠野物語」も引用されています。
宮沢賢治ファンはもちろん、フォークロアが好きなひとも楽しめる文学研究書。

 秋田

秋田むがしこ
秋田むがしこ
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無明舎出版
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秋田県全域に散らばる昔話を採集してまとめた、資料的価値の高い1冊。
表記が原話の方言のままなので、なんだか現地のじいちゃんばあちゃんからお話を聴いているようなあったかさがありますv
わかりにくい言葉は、カッコつきのルビで標準語を併記しているので安心。

ダジャレのお話がけっこう多い。
たとえば「旅人とわだしッコ」という物語。
ある娘にわだしッコ(焼き網)を借りて返した木綿売りがいたのね。
すると、娘は……

貴方にくっついで行く。


と、彼を追いかけていく。
まさか求婚されているのか!? と思い、彼が走って逃げても。
「私はあなたについていく!」と、娘は追いかける。

わだしが 貴方にくっついで行く。


じつは、彼の荷物の上に、返したつもりの焼き網(わだしッコ)が引っかかっていましたとさ。
(秋田弁では、カ行やタ行は濁音になります。名詞には〜ッコがよくつきます)

「これ、わだしッコ このとおり、貴方さ くっついで来たのし。」
「六 旅人とわだしッコ」より


縁側で民話を味わうような気分でどうぞ♪




ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(冒頭の写真は河口湖ミューズ館・与勇輝館です)

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【失踪】人間が消える小説10冊【神隠し】
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秋田のことば
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2019年09月29日

【奇習邪宗】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(前編)【民俗神】


今日のなぞなぞ
「日本人のフシギな信仰をかいまみる10冊は?」

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「トトロ」と「千と千尋」が好き。
「ラピュタ」や「ナウシカ」よりも。

なぜだろうととくに深く考えたことはなかったのですが。
もしかしたら、日本の土着的な”あやしさ”に惹かれるのかもと、ふと気づきました。

雨の夜に妖怪バスを待つ、土着の神。
日が暮れると廃墟に集う、八百万の存在たち。

ありがたいだけじゃなくて、ときには災いをもたらすような。
あるいは、ただ”そこにいるだけ”の。

気まぐれな日本の神々は、なんだかキャラが立っていて愛嬌があると想う。



そんなわけで。
今日は最近読んだなかから、「日本の土着・民間信仰」を学べる本を紹介していきます。

いろいろと面白いのがいっぱいあって、一度にオススメしきれないくらい。
なので、このテーマでは記事を複数に分けてアップしていきますね。

追記)「中編」をアップしました♪
【民話伝承】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(中編)【フォークロア】


土俗の信仰と外来の宗教が習合・共存し、ほとんど”闇鍋”状態になっているのがこの国かも。

ちなみに記事のタイトルでは「奇習」だの「邪宗」だの煽っちゃいましたが。
ほんとは、ある風習を”奇妙”と感じるかどうかは、そのひとがいる社会の”常識”しだいなわけで。

たとえば、短冊に願いをこめて笹に飾るのだって、七夕を知らない人にとっては

「ちょw なに変なことやってんのwww」

ってことになるかもだし。

その信仰が”邪”かどうかも、なにが”正統”とされているかによって、いくらでも左右されるよね。


……と、多様性の時代っぽいことを言ってみる。
「ミステリと言う勿れ」の久能整(くのうととのう)きゅんふうにまとめるならば……


真実はひとつじゃない。
人の数だけある!



ということになります。
(私信、読みました♪ 脱線しまくりの雑学トークがツボv)


それでは。

日本人の感性にダイレクトに響く、
不思議でどこか懐かしい10冊
をど〜ぞ〜♪



 わけがわからないよ


現在も残る日本の奇祭・珍祭を集めた1冊。

米俵にくるまって”雨がやむこと”を願う「水止舞い」
女装して”ない毛が生えた!”と歌う「お札まき」
異形の蓑のおばけが跋扈する「カセ鳥」
新婚さんを崖から落とす「むこ投げ」

……カオスすぎて、もう「わけがわからないよ」と言うしかない。
じっさい、歴史に埋もれて起源が不明のまま、ただ”伝統”として続いている行事もあるようです。

混沌をあおる文章でレポートされる、ナンセンスな世界。
写真が満載のにぎやかな1冊。

このような現実を知ると、僕らの思っている「常識」というものがいかに小さなものであり、「非常識」なものであるかがわかるだろう。
「はじめに」より


以前の記事(幻想と異形の獣人写真集――シャルル・フレジェ『WILDER MANN (ワイルドマン)』)で紹介したシャルル・フレジェの写真↓に心惹かれる方にもオススメですv




 キャラ、立ってます


クリエイターさんの強い味方、新紀元社の「Truth In Fantasy」シリーズより1冊。
日本で信仰されている神々を、デッサン風の綺麗なイラストとともに紹介しています。
神話の登場人物(イザナギ・イザナミなど)ではなく、土着的な”民俗神”のほう。

七福神、招き猫、疱瘡神、要石。
お地蔵さん、鬼子母神、カマド神、オシラ様。
照る照る坊主。犬神。牛神。役行者……。


いろいろな名前で呼ばれている神は別称も網羅。系統(ルーツ)や”何にご利益/祟りをもたらすか”など、情報量が膨大です。
神様だけでなく、宝船や天狗面、だるまなど、アイテムを解説したコラムも。

ものすごい種類の神がいて、それぞれみんなキャラが立っている。
あなたのなかの”日本的な感受性”をちくちくと刺激する、どこか懐かしくて幸せな気持ちになれる資料集。

 失われゆく土着

民間信仰と現代社会―人間と呪術 (1971年) (日本人の行動と思想〈9〉)
桜井 徳太郎
評論社
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ハヤリ神。田の神、山の神。ジンクス。雨乞い。憑き物。呪術。口寄せ。シャーマン。トウビョウもち。村落共同体……。
民間信仰にかかわるあらゆるトピックを紹介しながら、俗信の本質を考えていく。
事例が豊富なのにもかかわらず、通低音のように著者の思想がずっと流れていて、とても良い本です。古いけどオススメ。

たとえば、新興宗教の台頭について……

都市住民が地域社会から浮きあがっていること、周囲から隔絶した生活を送らざるをえないことは、人々に深い孤独を与える。
(中略)
この孤独感、不安から逃れ、精神的な安定をうるための要求が湧然として起こってくる。そうした民衆の要望に応える形で出てきた一つが、今日都市の底辺層に喰いこみ大きな勢威を振るっている、もろもろの新興宗教である。


と、さらっと分析していたり。
進んでいく文明と失われゆく自然や土着性……ジブリ映画がくり返し描いてきたテーマを感じさせる文章も多いです。

もうひとつ。
たとえば、のろい針(夜中にわら人形に釘を打つアレね)についても……

自分の意見を自由に開陳できない構造をもつ地域社会でおこる呪法である。


と、やっぱり社会との関連のなかで説明される。
「コンピューター情報」や「スポーツとナイター」など意外な項目もあって、民俗学と社会学を同時にあじわえる良書です♪

 猫さん


猫の神様がまつられている神社やお寺、祠を集めた本です。
実際に足を運んで由緒や伝承をひとつひとつレポートしていきます。写真もたくさん。

ネズミを捕ってくれるため、養蚕が盛んな地域でありがたがられている猫さん。
猫又(化け猫)のエピソードや、報恩譚(猫の恩返し)、猫と姫の伝説など、それぞれの地域にいわれが残っています。
でね。場所はぜんぜん違っても、驚くほど似たような伝承が各地に伝わっているのが面白い。

神通力で棺桶を宙に浮かせる。
和尚のいないあいだに袈裟を着て出かける。
斬られた首が飛び、天井裏にひそんだ大蛇を退治する。
かわいがっていた猫を殺されてしまう姫。


おどろおどろしかったり、かなしい民話も多いけれど、全体としてはほっこりする、ユニークなテーマの1冊。猫好きなあなたはぜひv
(私信。読みました♪ 民話の数々がかなり興味ぶかかったです)

 動物さんたち大集合


こちらは猫だけじゃなく、神社に祭られているさまざまな動物たちを紹介しています。
生息地によって章分けがされていて。陸、水辺、空……さらに、河童や龍、鵺(ぬえ)など想像上の「霊的な生き物」も。

それぞれの動物がどんなご利益をもたらしてくれるのかを丁寧に解説。
どこの神社に行けば”逢える”のかも載っています♪
狛犬だけじゃなく、いろんな動物が「ア・ウン」のポーズをとっていてほっこり。

岡崎体育さんふうに言うならば……

どうぶつさんたちだいしゅうごうだわいわい!

という感じです。

感情のピクセル
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感情のピクセル - 岡崎体育(iTunes)


他愛ない生き物にも、それぞれユニークな伝承や信仰がある。
敬虔な気持ちになれる1冊です。
(私信。読みました♪ クマやカメもアウン!)


☆★☆



ここまでは教祖も仕掛け人も(ほぼ)いない俗信でしたが。
翻って、こんどは”開祖がいる”タイプの信仰を取りあげていきます。
世界宗教である仏教やキリスト教も、この国では変容し土俗化してく……。

 隠れ念仏と隠し念仏


「隠れ念仏」と「隠し念仏」を題材に庶民の精神史を考えていく、紀行&エッセイ。
両者はどちらも浄土真宗系の一派。ですが、別物です。

「隠れ念仏」は九州。幕藩権力によって弾圧され、”隠れて”信仰を守った人々です。京都の本願寺からは認められているので、いちおう”正統”。
「隠し念仏」は東北。こちらは藩の圧力からも本願寺からも信仰を”隠して”きた”異端”の存在です。

神棚の裏に仏壇を隠す、ちょっと異形な「カヤカベ」教も登場。
宮沢賢治や高村光太郎、柳田國男と隠し念仏との関わりにも触れています。
研究書ではなく、作家らしくのびのびと想像力を羽ばたかせていて魅力的。オススメです。

 隠し念仏

隠し念仏 (民俗宗教シリーズ)
門屋 光昭
東京堂出版
売り上げランキング: 875,597

その「隠し念仏」の、数少ないまとまった研究のひとつがこれです。
東北地方にひそやかに息づいている、秘密主義の信仰「隠し念仏」。

ほとんど酸欠になりながらタスケタマエと唱え続ける「オトリアゲ」
生まれたばかりの子供を入信させる「オモトヅケ」
その信仰内容は、けっして部外者には語ってはならないと戒められる……。

怪談として語られることも多い「隠し念仏」を、しっかり民俗宗教として研究した論文集です。
地誌などを集めた文献リスト。信者による貴重な体験談。地域による差異。オシラサマなど古くからある土俗の風習との共存、融合。
専門書ではありますが、土着信仰系(※)が好きなひとはかなり面白く読めるかも。

※ 秘境の村など地方を舞台に語られる、奇妙な習俗や信仰、祭などを題材にした怪談・都市伝説。

 隠し念仏(小説)


そんな「隠し念仏」を題材にした小説がこちら。ミステリです。
これはずごい。隠し念仏だけでなく仏教全般、かくれキリシタンもふくむキリスト教や民族史……埋もれてしまった”歴史の闇”をひき金に起こる、不可解すぎる連続殺人。

主人公は女子大で教鞭をとっている食文化人類学の専門家。アイヌの血をひく人物です。
3部構成で、第一部は、安藤昌益にまつわる歴史ミステリといった色合い。
第二部は、ある教育者が牛耳る閉鎖的な街を描いた、カルト的なサスペンスです。
第三部は、主人公や失踪した妹の出自があきらかになり、すべての謎がひとつにまとまっていく……。

四〇〇字詰め原稿用紙換算で1854枚の、大長編です。すごくぶ厚い単行本で……はかってみたら、厚さ4センチもありましたΣ(・ω・ノ)ノ
読み進めるほどに、加速度的に面白くなっていきます。ムーアの法則のように。
調査や推理の場面では、文化人類学や宗教学の専門的な話が展開されていて、とてもアカデミック。
ミステリの面白さを歴史・文化探求の魅力にまで拡張させていく徹夜本ですv

 真言立川流


「立川流(たちかわりゅう)」は、仁寛という開祖(流祖)のいる真言宗系の密教です。
(落語の立川談志一門のほうは「立川流(たてかわりゅう)」ね)
その教えはまさに”邪教”っぽくてすごい。

男女が「交合」して、その「和合水」を「髑髏(ドクロ)」に何べんも塗りつけて、これを「本尊」とする……。
反魂香をたき、ひたすら真言を唱える……。

反魂? ドクロ本尊!? 和合水ってなに。///
仏教ではあるのですが、お釈迦様の教えからはずいぶん遠く。
「なんでこんなに異形の信仰が!?」と思うけれど、<性>と<死>をめぐる秘術の内にはなにかしらの”真理”がふくまれているようにも感じられて……。

曼荼羅(マンダラ)美術など写真の資料も豊富。
史料や、著者の想像もまじえて、立川流の”宗教的なロジック”に肉迫していく学術書です。

 真言立川流(小説)


その「真言立川流」を題材にしたミステリがこちら。
『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』に続く、「百鬼夜行シリーズ(京極堂シリーズ)」の第3弾です。

海辺の断崖に棲む朱美の、幻覚とも妄想ともつかない奇妙な記憶。
朱美の話を聴いた登場人物たちは、それぞれの”解釈”をつくりあげていくが……。
坊主も神主も牧師も登場する、宗教大集合! なミステリ。
フロイトやユングなど心理学的うんちくもたっぷり。

立川流をたんに”邪”であると斬り捨ててしまうわけではない、京極堂の歴史観を私的メモ。

立川流が邪法として貶められたのは、その特異な教義の所為ではない。立川流以前にも性を取り入れた宗教は沢山あったし、髑髏を呪術に利用する民間宗教や左道密教は存在した。天台からも玄旨帰命壇が出ている。立川流が不当に指弾されるのは文観が権力に固執したからです。現世利益の茶吉尼の邪法などに耽ったからです。


海からドクロが発見されたり、謎めいた集団自殺が起こったり。
バラバラすぎる事件が次第につながっていく、読み応え抜群の大長編ですv




ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(冒頭の写真は御殿場の時之栖にある「ありがとう寺」です)

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2019年09月04日

最近読んだ「生産性を上げる」本10冊

 
今日のなぞなぞ
「生産性を高めるためには?」



今日は、最近乱読したなかから
”生産性をあげる本10冊”をぷちレビューしていきます。


仕事の能率を向上させる直球な本はもちろん、
ちょっとした意識・習慣・考え方のカイゼンをもたらす変化球まで、雑食読書家ならではのラインナップに仕上げました。

生産性は、さまざまなアプローチでアップさせることができる。

なるほど言われてみれば。この方法があったのか!
そんな発見があればうれしいかぎりですv




 「生産性」とは何か


生産性とは何なのか、を知りたいあなたに。マッキンゼー出身の伊賀泰代さんが「生産性」を明確に定義。生産性はリソース(コスト)/アウトプットにおける改善/革新のマトリクスで表現できる。人材採用なら「たった10人の応募しかなく、全員内定」という最高パフォーマンスを目指せ。後半は”ムダのかたまり”である会議・プレゼン・資料づくりを狙い撃ちします。

 がむしゃらに、はNG


なんでもかんでも手をつけてしまうあなたに。生産量のひくい仕事をカットしていくことで、どんどんみずからの時給をあげていけ、という本。文章にスピード感があるので、リズムに乗って脳がショートするほどの速さで読むのを推奨♪

 スマホのトップ画面を見直して!


スマートフォンに時間を奪われているかも……と感じるあなたへ。逆に、時間やアウトプットを生み出すスマホの使い方を教えてくれます。本書で推薦されている「lino」という付箋アプリは、私もめちゃめちゃオススメです。使い方も小山竜央さんのおっしゃるとおりでOK。「5キロやせたい」とか書いてちょこちょこ眺めるだけでいいんだけど、「何の魔法だよ!」っていうくらい夢や目標がかないます。

 何もしない時間が集中力をやしなう


集中力がとぎれやすいなぁ……と思っているあなたに。”今”に集中するマインドフルネスを伝授。起業家にはなぜか瞑想を習慣にしているひとが多いですよね。オフィスに「瞑想室」をつくっているベンチャー企業もあるくらい。ただ呼吸だけに意識を向ける時間が、とんでもない集中力をやしなうことにつながる。レッツ・只管打坐♪

 ゲームの”本質”を見抜け!


今の努力が”見当違いかも”とあやぶんでいるあなたに。億単位のお金を奪いあう過酷なゲームを描いたマンガです。どのエピソードにも共通していえるのは……ルールの”本質”を見抜くのがなにより重要ということ。見えてないヤツはまるで意味のない頑張り方をして沈んでいく……。怖いね。「少数決」はチーム戦だし、イス取りゲームは「国盗り」だ。コミックですが、このブログでいつもオススメしている良書ですv

 小技だけどチリも積もる


ファイルの上書き保存をマウスで操作しているあなたへ。コピー&ペーストだけじゃない、パソコンのショートカット操作を網羅して教えてくれます。意外と知らないワザも多い? ちょっとした時短テクニックですが、チリも積もれば山になる。早いうちに身につけておくべし。

 こんまりっ!


探しものがいつも見つからないあなたへ。みんな大好きこんまりさんの片づけ本。「片づけはこの1冊でOK」といえるほどの名著です。どこが生産性? と思うかもしれませんが、じつは今日一番のオススメが本書。ヘタなビジネス書や啓発本を読むより、こんまり流に部屋の片づけをしたほうがよっぽど効果があります。決断力も段取り力もあがる。こんまりっ!

 グーグル時代の情報整理エッセイ


情報の扱い方について考えたいあなたに。元グーグルCIO(最高情報責任者)によるエッセイです。ツールの使い方……みたいな実践的な話よりも、増えつづける情報にいかに接していくか、俯瞰的な視点に寄っています。何を捨て、何をどう選ぶべきか。

 生産性は「省エネ」とは違うよ



ここですこしカウンターパンチぎみに『ユダヤ人大富豪の教え』をセレクトしました。原作↓も名著だけど、コミック版↑も秀逸。ダイナミックなコマ割りが素敵で、ケンの物語にうるっときます。

生産性というと「効率化」や「コスト削減」みたいな話につながってしまいがちだけど、本書が教えてくれるのは熱量の大切さです。気持ち、熱意、ヴィジョン……数字で測れないものが小手先の改善に勝る瞬間が必ずある。大切なものまで「コストカット」しないで。ぜったいに。


 反脆さ(はんもろさ)



ラストは私の大好きなタレブの著作から1冊。本書のいう「反脆弱性・反脆さ」とは、予期せぬ事態に対する強さのことです。強さといっても、頑丈さとは異なる。むしろ常でない出来事が追い風になるような存在こそが”反脆い”といえます。たとえば、誹謗中傷が知名度アップにつながるアーティストなど。

それは、いわゆる生産性とは真逆の世界です。リソースを減らしアウトプットを極限まで高めていくと、そこに残るのはブラックスワン(統計からはずれるような想定外の出来事)にとても脆いシステムだ。でも、黒鳥はいつかかならずあらわれる。そのときに輝くのは”いままで生産性がひくいと思われていたもの”なのかもしれません。


……じゃあ、どうすればいいの? って話じゃないよ。タレブは哲学だから。でも。たとえすぐには役に立たないとしても「反脆さ」という”概念”を手にいれておくことは、とても重要だと私は思います。時代はがんがん変わってくのだし。『反脆弱性』はとっておきのオススメ本です♪





お口にあう本はございましたでしょうか?




ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a



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2019年04月26日

最近読んだ「未来の社会・経済を予測する」本10冊

 
今日のなぞなぞ
「未来のセカイはどうなる?」

P1400641done.jpg
ビル・ゲイツ「パソコンのメモリは永遠に640キロバイト以下だろう。うはははは!」


……なにこの出オチ?



えっと。
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツさんは、1981年の段階では「メモリはずっと640キロバイトを超えない」と語っていたそうな。

関連記事:
【私的メモ】未来予測はむずかしいという実例「世界10大失敗ハイテク予言」




今日は、最近乱読したなかから、「未来の社会や経済を予測する」10冊をぷちレビューしていきます。

未来予測本は以前の記事(最近読んだ「未来を予測する」本10冊)でもまとめましたが。すこし古くなってきた感じなので、改元にともない最新版を♪
(未来予測が「古くなる」というのも妙な話ですが)


未来予測はたいてい当たらない。
当たらないけれど、当たらないとわかったうえで未来を考えてみるの、私はけっこう好きです。

ピンポイントな未来は予測できなくても、
おおまかにみえた方向性が「今の行動」に、なにかしらの洞察を与えてくれるかもしれない。

とつぜんの技術革新で、世界は思いもよらないベクトルに舵をきる可能性だってあるけれど。でも。

いろいろな未来が予測されているのを知れば、たったひとつの”予言”だけを妄信してしまうあやうさからは自由になれるはず。
(ちなみに今日の記事で扱う「未来予測」はあくまで社会的な現象のみを指しているつもりです)


今を生きるための羅針盤として。
さまざまな「未来」を描く豊饒な10冊をど〜ぞ〜♪



 ネットの次


原題は“The Inevitable”(不可避、必然)。人工知能を語るときにたまに出てくる Cognify(コグニファイ)という造語の生みの親、ケヴィン・ケリーさんの名著です。
コグニファイは、ざっくりといえば、膨大なデータや知能とつながることによって、モノやコトがより洗練された賢い存在になっていくイメージかな。
(地図帳がコグニファイするとカーナビとかグーグルマップになる……みたいな感じです)

本書はコグニファイもふくめた、12個の”避けようのない”未来の方向性を提示しています。

BECOMING(ビカミング、なっていく)
COGNIFYING(コグニファイング、認知化していく)
FLOWING(フローイング、流れていく)
SCREENING(スクリーニング、画面で見ていく)
ACCESSING(アクセシング、接続していく)
SHARING(シェアリング、共有していく)
FILTERING(フィルタリング、選別していく)
REMIXING(リミクシング、リミックスしていく)
INTERACTING(インタラクティング、相互作用していく)
TRACKING(トラッキング、追跡していく)
QUESTIONING(クエスチョニング、質問していく)
BEGINNING(ビギニング、始まっていく)


まるで近未来小説のような詳細な描写もあるのですが。当たった/外れたという単純な予測ではなく、おおきな流れや変化の本質が浮かびあがってくる濃厚な1冊。

 もっとケヴィン・ケリー


↑の『〈インターネット〉の次に来るもの』がすごく良かったので、もう1冊ケヴィン・ケリーを読みました。
テクノロジーの進化の歴史をまるで生物学のように描きだし、それが”必然の方向性”をはらんでいると指摘する。

テクニウム(Technium)もケヴィン・ケリーの造語です。
科学技術だけでなく、芸術や学問、社会組織まで、人間の知が生んだあらゆるものをふくむ概念。
人間がつくったはずの文明なのに、<テクニウム>は、まるで独立した生態系のようにふるまっている。世界の観方を変えてくれる刺激的な本です。

 ジャンル横断


ゼミにことごとく落ちてしまい、人気のない内村教授の個人授業を受けることになった絵玲奈。教授がはじめに出した課題は、マンガ「進撃の巨人」を読んでくることだった……。

主人公が講義を受けていく、小説形式です。歴史や宗教といったおおきな視点から、現代にただよう漠然とした不安の正体をあぶりだしていく。
経済学の解説がはじまったかと思えば、「セックス・アンド・ザ・シティ」について語り。一神教と多神教の違いを説きながら、RADWIMPS の歌詞を味わう。

ニューヨークへ行き、現代アートにふれまくるシーンも。
基本的には「世界の経済」についての本なのですが、縦横無尽にジャンルを横断していてすごく面白いv

↑の増補版で読むのがオススメです(ソフトカバー版は「前期」の講義しか収録していないので注意)。

 シンギュラリティ


シンギュラリティ(※)が本当にあるかどうかはわからないけれど、あると思って行動しても損はないはずだよね……そんなスタンスで、起こるかもしれない「革命」をひもといていきます。

※ 人工知能がとんでもない速度で進化をはじめてしまう、技術的特異点(テクノロジカル・シンギュラリティ)のこと。2045年頃と予想されていますが、「もっと遅いのではないか」あるいは「シンギュラリティなんてないんじゃないか」など、様々な意見がわかれています。

原子プリンター、強いAI、エネルギー問題の解決、水や食料不足の解決、ゲノム編集、働かなくていい社会、ベーシックインカム……。
どんなビジネスや企業が成長するかだけでなく、「シンギュラリティを前提にしない努力や工夫は無駄になる」など個人の生き方についても言及しています。

 未来の業界地図


AI、シェアリング・エコノミー、IoT(モノのインターネット化)、フィンテックの4つの視点から、今後の経済を考えていく。描かれるのはさながら「未来の業界地図」です。
よく出てくるGAFA(※)や Uber だけでなく、身近な日本の会社の”未来図”が盛りだくさん。

※ Google、Amazon、Facebook、Apple の4社。

ヤマト、佐川、日立、三菱、東芝、日本電産、ソフトバンク、楽天、すき家(ゼンショー)、ベネッセ……。
すでにみえている現状の分析からスタートして未来の可能性を探っているので、とてもロジカル。未来予測のお手本のような1冊です。

 東京オリンピック以降の日本


ずいぶん先の未来の話が続いてしまったので、もうすこし近い将来を。
2020年の東京五輪が終わったあとの日本は、かなり厳しい時代を迎えるのではないか……そんな危機意識にもとづいて、本書は”改革を急げ”と警鐘を鳴らす。
前半は日本がどう持続的に成長していけばいいか。後半は個人がいかに生き抜くかを考えていきます。

 東京オリンピック以降の日本と世界


2020年以降の日本を案じて、政府・企業・個人の三者いずれにもイノベーションが必要と説く。
↑の『オリンピック恐慌』ととてもそっくりな構成の本です。
五輪は日本が変わる”最後のチャンス”……など、言いまわしも似ていて、両方ともマクロ経済のトピックが多め。
どちらも、いたずらに危機感をあおるのではなく、「じゃあどうするのか」と前向きな視点で書かれています。2冊セットでど〜ぞv

 未来の年表


2027年まで1年ごとに、以後2065年までは数年刻みに、起こる出来事を記した、まさに「年表」。
……というと「そんなの当たるかよ!」みたいに思ってしまうけれど、本書が語るのは日本の人口減少とその影響についてです。
(人口の推移は統計的な現象なので、高い精度で予測できるジャンルだったりします)

東京の人口も減りはじめ、輸血用血液が不足し、国土の大部分が無人に……。
思いもしない技術革新や、それこそシンギュラリティがあればまったく違う世界線をたどる可能性もぜんぜんあるけれど。
現時点ではこれほど壮絶な未来さえ推定されている……。
”日々の生活になにが起こるか”に重点をおいた続編↓も出ています。


 メディアがつくる未来

メディアはマッサージである
マーシャル マクルーハン クエンティン フィオーレ
河出書房新社
売り上げランキング: 467,142

うってかわって、みんな大好きマクルーハンのメディア論を。
そこでなにが語られているかではなく、メディアの”形式”こそが、人々を変容させていく。

本書は「どんなアート雑誌だよ!」っていうくらい写真やイラストなどビジュアルイメージに満ちています。文章が鏡文字になったり、天地が反転したり、めっちゃアヴァンギャルド。
上梓は1967年なのでインターネットの普及以前の本ですが、現代にもふつうに応用できる普遍的な議論が展開されています。

今日が”不安の時代”であるなら、その原因の大半は、今日の仕事を昨日の道具――つまり、昨日の概念で処理しようとする結果である。
『メディアはマッサージである』より


私は旧版で読みましたが、↓新訳・新装の文庫版のほうが手にはいりやすいかも。



にぎやかですごく楽しいけれど、断片的&実験的な本なので、マクルーハンをじっくり学びたいなら平凡社ライブラリーの『マクルーハン理論』↓がオススメです。
(もちろんマクルーハンの”実践”をダイレクトに味わいたいなら『〜マッサージ』を♪)


メディアがもたらす未来を考えるとき、マクルーハンは絶対に外せない。まだマクルーハンにふれたことのない方は、ぜひ!

 なぜ未来は予測できないのか


「イングランド銀行を破産させた」伝説のトレーダー、ジョージ・ソロスによる哲学書です。
抽象的な議論も多いのですが、ある意味では”なぜ未来は予測できないのか”という問いに答えてくれる本。
私たちは、現実を「認知」するとともに「操作」する主体でもある。
観察者でもあり参加者でもある「再帰性」のせいで、社会は不確実性のかたまりになる。

現実は「再帰的」であるがゆえに、きちんと理解することが難しく、そのいっぽうで、人間は単純で簡単な回答へと、たとえそれが間違っていようとも容易に誘導されてしまいます。ある予測が正しかったからといって、その予測のもとになっている理論もまた正しいとは限らない
『ソロスの講義録』第三講義 開かれた社会 より


……再帰性、重要な概念かも。
たとえば↑であげたマクルーハンは、自分たちが発明したメディアじたいが人々の思考を変容させると言っていますし。
ケヴィン・ケリーも、文明の発達が人類の身体(歯や筋肉や体毛)を変化させた例をあげて↓こんなふうにおっしゃっています。

道具を作り直したとたん、それがわれわれ自身をも作り直していた。
『テクニウム』 第2章 われわれ自身を発明する より


でね。
不確実性に対する鋭い考察を重ねながらもソロスさん、本書のラストでは未来の大胆予測! をはじめてしまいます。ちょ、ソロスさん><;。
ここは思想家としてというよりも、数々の予測を的中させてきた投資家としての自負なのかな。

「アメリカが最大の敗者になる」と予測する「第五講義」。
信じるか信じないないかは、アナタ次第。




ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(冒頭の写真は江の島で撮った仁王像です)

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未来は予測なんてできないし、売れてる本が良い本とはかぎらない
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「PSYCHO-PASS(サイコパス)」はノベライズから先に読んでもいいかもしれない
小説版『PSYCHO-PASS<0>(サイコパスゼロ)』の心理描写がスゴくてほとんどBL(ボーイズラブ)
心の時代を生きるための本10冊






posted by akika at 23:22| 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月29日

最近読んだ「幸せについて考える」本10冊〜三大幸福論を中心に〜

 
今日のなぞなぞ
「”幸せ”を考える10冊は?」

P1220198done.jpg

こうなったら幸せだろうな、と考えてそれを目指すのだけど。
”こう”なったときにほんとうに幸せと感じるかどうかは、いまの自分にはわからない。だって自分は”こう”なったことがまだ一度もないものね。

目指すその状況は、ホントに幸せなのか。
想い描いていた未来が訪れたとき、今度はどう生きていけばいいのか。
それを知るために、人は幸福論を学ぶ。


……そんな感じかな。


今日は最近乱読したなかから、「幸せについて考える」10冊をぷちレビューしていきます。
おぉ、壮大v
でも直球な幸福論や哲学だけでなく、マンガや小説、投資までバラエティに富んだセレクトにしてみました。


「今のじぶんの感覚や知識」だけですべてを判断してしまうと、いろいろと見落としてしまうものがあるかもしれない。
じゃあ、どうずれば別の視点を持てるかっていうと……。


いっぱい
本読もうよぉ〜☆(*´∇`*)ミ☆



って、このブログは基本、それしか言っていません(笑)。


というわけで。
誰もが向きあうべきテーマ「幸せ」について考える10冊をど〜ぞ〜♪



 三大幸福論はラッセルから


世界三大幸福論(ラッセル・アラン・ヒルティ)のひとつ。幸せにまつわる様々な本でよく引用されています。前半は「不幸の原因」、後半は「幸福をもたらすもの」。ひとは誰でも幸福になれる。競争がもたらす弊害、退屈や興奮に対する考え方、熱意や愛情や”幅広い興味”の大切さ……幸せについて考えるときに普遍的なテーマがぎゅっと詰まっていて、色あせない名著です。幸福論は、まずはラッセルを♪

 アラン幸福論は文学・哲学的


三大幸福論のひとつ。アランの幸福論は、無数のプロポ(哲学断章)を集めた1冊です。どこから読んでもOKなつくりですが、書き散らばっているわけでは全然なく。むしろどの断片にも一貫したテーマが流れています。文章が文学・哲学的でかっこいいv

情念から自由になる方法として身体的な体操(運動や行動)をとくに重視。幸福になることは義務、しかも自分ではなく「他人にたいする義務」だと言い切っています。↓以下、好きな一節。

幸福を世界の中に、自分自身の外に求めるかぎり、何ひとつ幸福の姿をとっているものはないだろう。
(中略)
君が将来幸福であるように思うとしたら、それはどういうことかをよく考えてみたまえ。それは今、君はすでに幸福をもっているからだ。期待を抱くこと、それはつまり幸福であるということなのだ。
『アラン幸福論』87 克服 より


幸福は外からもたらされるものじゃない……みたいなことはアランもラッセルもヒルティも共通して述べています。金言♪

 ヒルティ幸福論は宗教・道徳的




三大幸福論のひとつ。ヒルティの幸福論はめっちゃキリスト教推し! です。キリスト教圏じゃない私たちにはちょっととっつきにくいかもしれないけれど、厚めの3冊を通して語ってくれるので、じっくりつきあえば大丈夫。ラッセルもアランもあまりふれていない「信仰と幸福」のテーマをどこまでも深く掘り下げます。私は新装版で読みましたが、持ち歩きやすい文庫版↓も出ています。

『幸福論 第1部』
『幸福論 第2部』
『幸福論 第3部』


 幸福力


幸せになるには「幸福力」が必要。生きるうえで大切なことをこれ以上ないくらいストレートに伝え、「これしかないよね」と締めくくる斎藤一人先生の教えに心が洗われます。「よい本は7回読め」と読書を強くすすめているのも素敵♪ 斎藤一人先生のトークを味わえるCDつき。

 アーリーリタイアをするには?


経済的自由を達成して早期リタイアを実現するための方法を手取り足取り教えてくれます。早めのリタイアというと「そんな、早々に何もやることのない人生を手に入れてどうするの?」みたいな議論も起こりがちですが、本書はそのへんにも先まわりして、リタイア後も幸せに生きる秘訣を伝授してくれます(あえてリタイアしない選択もアリ)。

好奇心。持続性。楽観性。柔軟性。冒険心。ヒントでなく「答え」がまるごとのっている感じですごい。ラッセル等の幸福論にもしっかり目配せされています。金融リテラシーもあり幸福論も充実の良書。
(私信。手にとるきっかけをくださってありがとうございます。何度でも読み返したい本ですv)

 つみたて投資


↑の『幸せの確率』でインデックス投信の積み立て(※)がオススメされていたので、関連して読みました。積み立てが一般的でなかった時代から研究に研究を重ねていた”つみたてへの情熱”がすごいv 長期間の積み立てがなぜ有利なのかを完全解説してくれます。いくらで買ったかよりも、何口買えたかが重要。

※ 市場平均に連動する投資信託を定期的に一定額を買い増していく投資手法。安い時にたくさん買えて、高い時には少ししか買えないので、期間が長くなればなるほど、リスクを抑えながらリターンが見込めるとされています。ドルコスト平均法。

 もっと、つみたて投資


おなじく星野泰平さんの”つみたて本”をもう1冊。相変わらずの情熱ですv 『半値になっても〜』では架空の値動きのグラフで積み立て投資の有利さを説明していましたが、こちらは日経平均株価など実際の市場でもちゃんと有効なことを解説しています。低迷もまた良し。

 投資本の名著中の名著


本書もインデックスファンドへの長期投資を強く推奨しています。およそ4年に1度改訂を重ねているロング&ベストセラー。↑最新版です。以前の記事(マネーのスペシャリスト3氏(竹中平蔵・竹川美奈子・勝間和代)のオススメ本7冊投資をはじめる前に読みたい15冊)でも、金融のスペシャリストたちがこぞって推薦している、名著中の名著。


……金融関連の本が続いてしまいましたが、幸せについて考えるとき、どうしてもお金は避けては通れないテーマだよね。もちろん、お金がそのまま幸せに直結するわけじゃないと、ラッセルもアランもヒルティも言っています。ただ、ある程度のお金があることで”不幸を避ける”ことができる……ラッセルはそうも言っています。できることも増えるし。

金というものが、ある一点までは幸福をいやます上で大いに役立つことも、私は否定しない。
『ラッセル幸福論』第1部 不幸の原因 第3章 競争 より


あと、ヒルティさんもするどい観方を展開しています。

金銭に対して非常にきびしい誠実さを持ち、人生の目的としてはこれを完全にまた率直に蔑視するが、しかしより高い目的を達成するための手段としてはこれを正しく評価する
『ヒルティ幸福論 U』 教養とは何か より


「幅広い興味を持つことの大切さ」はラッセルさんも強調していますし。あまりなじみがない方も、食わず嫌いせず、金融リテラシーの本をがんがん読んでみて!

 仕事と幸福の関係


幸福論そのものではないけれど。度をこえた疲労は、人から判断力を奪ってしまう。コミックエッセイなので、多忙ななかでもさくっと読めます。本書のラストでも『ラッセル幸福論』が引用されていました。

人間疲れれば疲れるほど、仕事をやめることができなくなる。ノイローゼが近づいた徴候の一つは、自分の仕事はおそろしく重要であって、休暇をとったりすれば、ありとあらゆる惨事を招くことになる、と思いこむことである。
『ラッセル幸福論』第1部 不幸の原因 第5章 疲れ より


三大幸福論のなかではとくに『ヒルティ幸福論』が、仕事について多く筆をさいています。幸せについて考えるとき、”仕事”もまた外せないテーマ。

 年をとったら人はどう感じる?


ラストは話題の本を。主人公は78歳。帯にある反響の言葉の数々も高齢者だらけで「新『終活』小説」とのキャッチコピー。いわゆるシニア小説なのですが、かなりエンターテイメントしていて、年齢関係なく楽しく読めます。

主人公のハナさんは、ものすごく外見に気をつかっていて、雑誌にも載っちゃうほどのオシャレ。ときおり娘に「これ以上気合いいれるとイタくなっちゃうからね」的なことを言われていたりします(笑)。みんなキャラが立っていて、ユーモアも効いているし面白いのだけど、やっぱりシニアならではの描写がもちろんあって。たとえば将来、親や自分が”歩幅の狭さ”を気にするようになったりするのかなぁ……みたいな視点で読むといろいろな発見があるかも。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(冒頭の写真は横浜の里山ガーデンで撮ったシーズーたちです)

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