2020年07月31日

最近読んだ「遺伝学・分子生物学・進化論」の本10冊


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今日は最近読んだなかから「遺伝学・分子生物学・進化論」の本10冊を紹介していきます。


誰に頼まれたわけでもないのに、
生き物たちは、キャラを立てようと必死だ。

集まったほうが有利!
みんなで役割を分担すると便利!

オレよりちいさいやつは食べてしまえ!
いや、追いつかれないほど逃げ足がはやければいい!

敵のいない陸に住んでみよう!
いっそ空を飛んでしまえ!


そうして無数に枝分かれする進化の系図が描くのは、
優劣とか弱肉強食じゃなくて。

ただひたすらにあらゆる可能性を試す、多様性の世界だ。


……そんな感じかな。


教科書あり、エッセイあり、難易度じたいはバラバラの10冊です。
どれも面白いので、直観で心ひかれたものを手にとってみてくださいね。

発生学から進化論まで
刺激に満ちた、センス・オブ・ワンダーな10冊
をど〜ぞ♪



 遺伝子の不都合な真実


性格、好み、行動、習慣、知能、ある分野に対する向き/不向き……。
あらゆるものに、じつは”遺伝”の影響がある。そんな”言ってはいけない真実”をつまびらかにしていきます。

いたずらにあおるわけではなく、双生児研究をとおして科学的な態度で「事実」と向いあっていく。
”不都合な真実”じたいが問題なのではなく、「機会の平等があるじゃないか」と欺瞞を続けている社会の方が問題。そうきり返す指摘に、ハッとさせられます。

いまある文化環境、社会環境に適応させることのみを目的とし、その意味での望ましい行動へ変化させるという考え方一辺倒では、常に私たちは環境のなすがまま、社会環境から与えられる価値観の制約に服従し続けねばなりません。
「第4章 環境の不都合な真実」より

不自由さの原因は遺伝の側にあるのではなく、遺伝にとって不都合な環境の方にあるという逆の側面がみえてきます。
「第4章 環境の不都合な真実」より


多様さを多様さのまま受けいれる、新たな時代の指針として。
いま読んでおきたい1冊♪

 遺伝マインド


『遺伝子の不都合な真実』の前編にあたる本。
テーマは一緒でそれぞれ独立しているので、どちらから読んでもOKです。

本書のいう「遺伝マインド」とは、人間の心や行動、社会との関係などすべてに”遺伝の影響”があるとみるスタンスのこと。
一卵性双生児の研究からはじまり、人の活動と遺伝の関係を洗いだしていきます。

『不都合な真実』と同様、”遺伝的な資質の差”をないものとする現代こそ逆に「優生社会」ではないかと問題提起をしています。

遺伝的な差異による不平等を正当化する社会を優生社会とよぶならば、われわれの社会はこんにちまさに紛れもなく優生社会である。環境が平等だと考えられ、心構えを正そうと試みられたところに、なおかつ生じた差異と不平等は、もはや本人の責任として正当化されてしまうからだ。
「終章 遺伝マインドで考える」より


『遺伝子の不都合な真実』よりも哲学的な記述が多め。
哲学書のように、”新たな概念”も出てきます。
個人的に好きなのが↓これ。

遺伝的コックさん豚さんごめんなさい感情切実性

「終章 遺伝マインドかで考える」より


……なにこれ(笑)。
えっと、量が多いカツ丼を出されたときに、がんばって食べきるか残すかという選択にも遺伝的な性格傾向が影響してるんだよ、という例で登場する言葉です。
(食事を残すことを)切実に”ごめんなさい”と感じてしまうひとは、がんばって食べる。
それが「遺伝的コックさん豚さんごめんなさい感情切実性」( *´艸`)

関連記事:
【遺伝と環境】行動遺伝学を学びたい人のための19冊【生まれか育ちか】

 ゲノム編集


ゲノム編集とは、細胞のDNA塩基配列を狙いどおりに書き換える技術のこと。
塩基配列は……A・T・G・C がつらなるアレね。

本書は遺伝の仕組みから、ゲノム編集の方法、さまざまな分野への応用、最新技術、テクノロジーの未来まで、この領域の基本的な知識をコンパクトにまとめた良書です。

先端技術の紹介では専門的な言葉やむずかしい解説も出てきますが、発生学の基本から教えてくれるので大丈夫。
事前の知識がなくても、驚くほどすんなりと理解できるはず♪
よく耳にする PCR(polymerase chain reaction)の説明もあります。

医療や農業など応用分野は広く、ゲノム編集はいまもっともホットな”未来の技術”。
とてもわかりやすい本なのでぜひ。

関連記事:
最近読んだ「未来の社会・経済を予測する」本10冊


 分子生物学


さらにふかく学びたいひとのために、ナツメ社の図解シリーズを。
タイトルは「分子生物学」ですが、扱う分野は↑の「ゲノム編集」とおなじです。
図解シリーズというと入門書のイメージがあるけれど、本書はかなり本格的。
厚くて、内容もほとんど教科書といっていいくらいです。

第1章 DNAの秘密
第2章 RNAの秘密
第3章 タンパク質の秘密
第4章 遺伝子翻訳の調節
第5章 遺伝子操作技術
第6章 遺伝子技術の応用


各章末に「理解度チェック」のクイズがついていて、かなり歯ごたえがある。本気でこちらの理解度を試してきます><
難易度は↑『トコトンやさしいゲノム編集の本』よりはるかに上ですが、この分野に興味があれば楽しい1冊。
創薬や再生医療など、最新のバイオテクノロジーを知るうえでも基本となるジャンルなので、一度概要をつかんでおくといろいろな場面で役にたちます♪

 利己的な遺伝子


みんな大好きドーキンス♪
生物学や進化論にかぎらず、あらゆるジャンルに影響を与え続けているロング&ベストセラーです。
(私信。や、やっと読み終えました>< 名著!)

”タイトルのせいで誤解をまねいている本ナンバーワン”と言っていいかも。
なんだかまるですべての生物が自分の利益しか考えていないような印象を受けるタイトルですが、じつは本書は”利他的行動”にもかなり筆をさいています。

「利己的」なのはあくまで”遺伝子”。
生物は遺伝子を乗せて運ぶための「生存機械」。
遺伝子はじぶんの分身を増やし、後世に残るべく、様々な策をこらす。

そんな世界観。
ダーウィンの『種の起源』を遺伝子の視点から洗練させた、ネオ・ダーウィニズムの本です。




もちろん遺伝子に意志があるわけではなくて、たんに自分本位に”見える”だけ。
遺伝子にとってのメリットと個体にとってのメリットは異なるので、自己犠牲的に子供や血縁者につくしたり、子孫を残せない構造の個体があらわれることにもなる……。

「遺伝子プール」と「ESS(進化的に安定な戦略)」のモデルを使えば、ほんとうにいろいろなことが説明できます。
知識ではなく”考え方を得る”本。
生き物の世界の複雑さがどんどんほどかれていきます。

さらに、本書が語ろうとする”原理”は、既存の地球の生物をこえた普遍的をめざしてゆく。

たとえ炭素の代わりに珪素を、あるいは水の代わりにアンモニアを利用する化学的仕組みを持つ生物が存在したとしても、また、たとえマイナス一〇〇度で茹で上がって死んでしまう生物が発見されても、さらに、たとえ化学反応に一切頼らず、電子的な反響回路を基盤とした生物が見つかったとしても、なおこれらすべての生物に妥当する一般原理はないものか。
「第11章 ミーム 新たな自己複製子」より


……。
電子回路を基盤とした生物!





関連記事:
ぜんぶAIが決めてくれる世界ってどう思う?〜人工知能社会での「選択」と「自由」を考える本10冊



”自己複製子”を文化や概念など形而上の空間にあてはめて考えてみたり(「第11章 ミーム 新たな自己複製子」)、”遺伝子の表現型”を環境や他の個体にまで広げて語ったり(「第13章 遺伝子の長い腕」)、自由な思考実験も魅力的。

刺激的でほんとうに面白い。殿堂入りの名著です。
おもに末尾の「補注」など、版を重ねるごとに改訂がくわえられているので、↑最新版で読むのがオススメ。

すべての生物は、自己複製する実体の生存率の差に基づいて進化する

「第11章 ミーム 新たな自己複製子」より


☆★☆


ここからは生物学の学習からちょっと離れ、純粋に読み物として面白いエッセイや自伝をピックアップしていきます。

 動的平衡2


以前の記事(最近読んだビオトープをつくるための本10冊)で紹介した『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』の続編。
続編ですが、独立した話なので前作を読んでいなくても大丈夫。

生物学者の福岡伸一さんが、アートや音楽、ときにはダンスにまで視点を広げて、「生命とは何か」を考えていく。
今回のテーマは「自由」。
たんに”遺伝子の乗り物”なだけではない命の豊饒さを、美しい文章で語ります。

ドーキンスが『利己的な遺伝子』(邦訳/日敏隆ほか、紀伊國屋書店)を書いてから、はや三〇年余り。私達はもう少しリラックスして生命を捉えなおすべきではないだろうか。
「第1章 『自由であれ』という命令」より

遺伝子は私たちを規定し、運命づけているように見えるけれど、それは楽譜の音符のように使う音の高さと長さを指定しているだけだ。
(中略)
どれくらいの強度で、どんなフレージングで、どんな指使いで弾くのかはすべて奏者に委ねられているのだ。
「第1章 『自由であれ』という命令」より


遺伝子を”楽譜”ととらえる感性、いいですね。
エッセイなので専門知識がなくても読みやすい。
とても綺麗で、上品な文学作品の香りがただよう文章が素敵v

生物の多様性を知るということは、その姿形の多様性を知ることだけにとどまらない。その生きざまの多様性を知ること。そこにこそ目を瞠るようなワンダーがある。
「第2章 なぜ、多様性が必要か」より


おおきく加筆修正し新書として生まれ変わった新版↓もリリースされています。
お好きなほうををどうぞ♪



 動的平衡3


せっかくなので「3」も読みました♪
水、老化、ゴルジ体、遺伝子、腸内細菌、がん……生物学のお話から、音楽やアートまで。
自由に飛躍する美しい文章は相変わらずですv

フェルメールの光もストラディヴァリウスの音も、最初から動的なものとして作られ、絶えず息吹を吹きこまれ、温度を受け入れ、記憶を更新し、解釈されつづけるもの、つまり生命的なものとしてこの世界に生み出され、今もなお生き続けるものだからである。
「第8章 動的平衡芸術論」より


フェルメールやストラディヴァリウスが登場する生物学の本はなかなかない。
↓でお話しする「STAP細胞」騒動についてのコメントもあります。

 あの日


「STAP細胞」騒動の渦中で苦しんだ研究者・小保方晴子さんの手記です。
(私信。読みました♪ まさに小説のようにひきこまれてイッキ読みでした)

STAPとは……
刺激惹起性多能性獲得(Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency)の頭文字をとったもの。

特定のストレスを与えることで、分化が済んでいる(すでに役割がきまっている)細胞から何にでもなれる細胞をつくりだすことができる「STAP現象」が確認された。
学術誌にそう発表されたことではじまったのがこの騒動です。

先行していたES細胞やiPS細胞の研究に劣らず画期的で、受精卵の一歩手前の多能性をもつ細胞をつくれる可能性がある。
当時は世界じゅうから大注目されたそうです。

本書は小保方晴子さんの個人史とともに、専門的な研究の概要もしっかり描きこまれていて魅力的。
ラボの風景、実験の様子、科学雑誌に論文を掲載する過程など、まったく知らない世界で興味をそそられました。

でね。
この本、文章がすごく良いの。
抑制のきいたとってもおいしい文体です。

 あの日に戻れるよ、と神様に言われたら、私はこれまでの人生のどの日を選ぶだろうか。一体、いつからやり直せば、この一連の騒動を起こすことがなかったのかと考えると、自分が生まれた日さえも、呪われた日のように思えます。
「はじめに」より


↑書き出しの文章です。
後半の、マスメディアに追いつめられていく場面の心理描写もすごくて。
正直、読みながらつらくなってしまうくらいの迫力がありました。

以前の記事(最近読んだ10冊U最近読んだ「世界観がダークな」本10冊)で紹介した『八本脚の蝶』や名作『夜と霧』のような感じ。
共感しすぎに注意、です。

騒動の顛末や著者のキャラクターとは関係なしに(このブログで本を紹介するときは、なるべく〈作者〉や〈社会〉とは切り離して”作品自体”をレビューしているつもりです)、1冊の本としてオススメv

 小保方晴子日記


『あの日』が素晴らしかったので、小保方晴子さんの本をもう1冊読んでみました。
2014年12月〜2016年10月の日記をまとめたものです。
独立した作品ですが、状況の説明などはかなり省かれているので、『あの日』を先に読んでいたほうがスムーズかも。

マスコミから逃れるための放浪の旅。
いわれのない刑事告発。
学位の取り消し。
精神科の病棟……。

『あの日』におとらず本書も、ページをめくるのがキツくなるほど迫ってくるものがあります。
今回は日記文学や私小説のような味わい。
以前の記事(最近読んだ純文学(J文学・L文学)10冊〜青山七恵さんの”ぼっち文学”について)で紹介したような純文学が好きなひとにオススメです。

雪道を走っている間、完全に雪にハンドルを取られ車がコントロールを失い回転スリップ。真っ白な狭い山道が回った。「あ、死ぬ」と思った途端に車が止まった。死ぬ、と思った時、ものすごく久しぶりに深い安堵感に包まれた。
「とにかくどこかへ」より


『あの日』も『日記』も良書ですが、かなり”強い”本なので取り扱い注意! です。
とても感情移入してしまう文章。メンタルが弱っていないときに読まないとココロをもっていかれるかも><

『夜と霧』『八本肢の蝶』と同様、こういう、極限を描いた本を読むのは大切だと私は思っていて。
その理由が、奇しくも本書の「あとがき」で語られていました。

私は分けられた火をまた誰かに分けながら生きていく。今日の日記にはそう書くつもりだ。
「あとがきにかえて」より


重たいけれど、誰かの”灯り”になれる本だと想いますv
末尾には瀬戸内寂聴さんとの対談が収録されていています。




 働かないアリに意義がある


アリの集団のなかには、よく働くヤツとサボりがちのヤツがいる。なぜか。
以前の記事(ニートが読むべき12(プラス9)冊)でも紹介した1冊です。

”サボリアリ”だけをまとめてみても、やっぱり働くヤツとサボるヤツがあらわれる。
めっちゃ不思議……ですが、「反応閾値」の違い(「仕事に対する腰の軽さ」の個体差)を想定すると、きれいに説明できる。

この美しい理論だけでなく、さまざまな生物の奇妙なふるまいを”進化(淘汰)の過程でなぜその性質が残されてきたのか”という視点でひもといていく刺激的な1冊。
↑でとりあげたドーキンスの『利己的な遺伝子』が面白かった方にオススメです♪

女王アリに仕えることが、自分が子を生むよりも”合理的”である「血縁選択」
集団のなかで利益だけを享受する「チーター(フリーライダー)」
血縁も種も関係なく、群れること自体にメリットがある「群選択」
遺伝的なクローンだけを次世代に伝える「コカミアリ」と「ウメマツアリ」

もちろん、コロニーじたいをひとつの生命体と見立てる「超個体」のお話もあります。
逆に、ひとつの身体を無数の細胞がおりなすコロニーと考える視点も。

 われわれヒトもたった一つの細胞である受精卵が分かれて増えてたくさんの細胞になり、それらが様々な器官に分化してできたことはご存じですよね? そう考えると、われわれの体そのものが一つの「社会(群れ)」なのではないでしょうか?
「第5章 『群れ』か『個』か、それが問題だ」より

多数の細胞が集まった個体を一つの「社会」と考えると、その進化と維持も血縁選択や群選択、長期的適応度の観点から解釈できるわけです。
「第5章 『群れ』か『個』か、それが問題だ」より


なんだかそのままガイア理論(地球をひとつの生命体とみなす)へ広がっていきそう( *´艸`)
ドーキンスの世界観ともリンクしています。

私はやがて人々が、じつは私たちの遺伝子一つひとつが共生単位であるという急進的な考えかたを受け入れるだろうと思っている。私たちは、共生的な遺伝子たちの巨大なコロニーなのだ。
『利己的な遺伝子』「第10章 ぼくの背中を掻いておくれ、お返しに背中を踏みつけてやろう」より


しっかりと生物学の本なのですが、語り口はとてもやさしく。
アリやハチのセカイを人間や会社になぞらえて話してくれるので、ビジネス書のような感覚で読むことができます。
未読ならぜひv
(↑で紹介した『動的平衡2』でも「面白い」と推薦されていました)



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪

あきか(@akika_a

(冒頭の写真は蓼科高原のバラクライングリッシュガーデンで撮ったアマガエルです。2匹いるの、気づきました?)

【関連記事】

【遺伝と環境】行動遺伝学を学びたい人のための19冊【生まれか育ちか】
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ニートが読むべき12(プラス9)冊







posted by 姉崎あきか at 00:35| 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月30日

神社がわかる本10冊


今日のなぞなぞ
「神社を知るための10冊は?」

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神社あるある。

・鈴とお賽銭、どっちが先か迷う。
・絵馬にかいてある他人の願いごとが気になる。
・なにかかがいる気がして後ろをふりかえるが、ナニモイナイ……。


今日は最近読んだなかから「神社がわかる本10冊」を紹介していきます。

今年もいっぱい
本読もうよぉ〜☆(*´∇`*)ミ☆


このブログがあなたの読書のきっかけになれば嬉しいかぎりです。
本年もよろしくお願いいたしますv


ちなみに。↑鈴とお賽銭の順序はとくに決まりはないようです。
(共通の決まりごとはないけれど、個々の神社が参拝の仕方を定めているケースはあります)

ルールがあるようでないのが神道のセカイ。
初詣に行ったとき、「?」とちょっとでもひっかかりをおぼえたなら、あらためて学んでみるのも一興かも。


入門書からディープなものまで、
神社がわかる10冊をど〜ぞ〜♪



 通して読むのも◎


定義、歴史、祭神、祭祀、社格、信仰形態、参拝、境内、社殿……。
ひととおりの知識が網羅されていて、”神社入門はこの本から”という1冊。
こまかい目次がついていて、調べたいときにひける事典のような使い方ができます。
ちょい厚めの新書。通して読むのも全然アリです。
情報の密度がとても濃く、知らないことだらけだった私は付箋まみれにしてしまいました><
手もとに置いておくのにオススメですv

 お寺も


神社とお寺にまつわる基本を、写真とイラストがいっぱいの読みやすい編集で教えてくれる良書です。
1〜2時間で読めて、かなり詳しくなれるすごい本。

建築様式や聖職者のオシゴト。神話やブッダの教え。美術や歴史まで。
さくっと読めるムックでありながら、知りたいことがぎゅっと凝縮されていてオススメ。
行っておきたい神社とお寺を具体的に紹介する↓続編も♪


 祭りや有名な神社の由緒も


参拝の作法から境内をみるときの知識まで、入門とうたいながらも詳しく網羅。
写真はありませんが、イラストが豊富です。
伊勢神宮、出雲大社、日吉大社、日光東照宮……著名な神社の祭神・由緒・歴史も解説しています。各地の有名なお祭りも。
情報量が豊富な1冊です♪

神社の入門書は、それぞれの本で取り扱っている情報がかなり異なる。
良いのを選ぼうとせず、いろいろ読んでみるのがいいかも。

 御朱印


全国のお寺や神社の御朱印を”鑑賞”する。
写真をメインに、カルチャー雑誌のような文章で寺社のセカイを案内してくれます。
御朱印帳をいれるカバーやポーチ、バッグのつくりかたも掲載。
印や文字の意味、参拝マナー等の解説もありますが、知識をふかめるというよりは、御朱印という”アート”を楽しむ本です♪

 神社検定テキスト


神社本庁が監修する神社検定(https://www.jinjakentei.jp/)のテキストです。
教科書らしく横書きで、大事な単語は赤い文字で印刷されています。

これまで挙げた本でも解説されている基本知識のほか、各地によくある神社(八幡さん、お稲荷さん、天神さん、熊野神社……)についての詳しい説明があります。
公式テキストだけあって情報量が膨大。続編↓は10冊以上出版されています。

神社検定公式テキスト2『神話のおへそ』
神社検定公式テキスト3『神社のいろは 続(つづき)』 (神社検定公式テキスト 3)
神社検定公式テキスト4『遷(せん)宮(ぐう)のつぼ』 (神社検定公式テキスト 4)
神社検定公式テキスト5『神社のいろは要語集 宗教編』 (神社検定公式テキスト―1級用)
神社検定公式テキストE『日本の祭り』 (神社検定公式テキスト 6)
神社検定公式テキストF『神社のいろは要語集 祭祀編』
神社検定公式テキストG『万葉集と神様』
神社検定公式テキスト9『神話のおへそ『古語拾遺』編』
神社検定公式テキスト10『神話のおへそ『日本書紀』編』
神社検定公式テキスト11神社のいろは特別編『伊勢神宮と、遷宮の「かたち」』 (神社検定公式テキスト 11)


問題集↓も!



☆★☆



ここからはちょっとディープに、祖霊や氏神など”地域のちいさな神社”に関する本をとりあげていきます。
神宮・大社などおおきな神社もありがたいけれど、地元にひっそりとたたずむお社にもナニカガイル……。

 氏神と氏子

柳田国男全集〈14〉 (ちくま文庫)
柳田 国男
筑摩書房
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「神樹篇」「祭日考」「山宮考」「氏神と氏子」を収録した柳田国男全集です。

「神樹篇」は、神の宿る、あるいは天との懸け橋になるような樹木について。神木や柱など神籬(ひもろぎ)全般。
「祭日考」は、祭りについてです。各地のお祭りがどの季節のどの日に行なわれるかを徹底考察し、氏神信仰の移りかわりをみていきます。
「山宮考」は、神域。神をまつる場所についての論文です。
「氏神と氏子」は、氏神や神社の起源や変遷について。地域の神だけでなく、家や氏族がまつる神様にも目を配っています。

どれも”祖霊信仰”にふかく関わるお話です。
以前の記事(【記紀神話】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(後編)【古神道】)で紹介した「古神道」にもつながるテーマ。

 氏神と鎮守


個別の神社の成り立ちや変遷をたんねんに見て、この国の神道をひもといていきます。
↑柳田国男もあつかっている祭りや、宮座など氏子の活動にまつわる研究などなど。
信仰の対象は、ローカルで素朴な自然への崇敬から、外来のものや武士たちが導入した”神々”へとうつり変わっていく。

「第四章 神と神社と民俗学と」では「柳田國男の氏神論」と「折口信夫の神道論」を概説。
民俗学の大家ふたりの研究が簡潔にまとまっていて、とても参考になります♪

 鎮守の森


以前の記事(じつは読書案内? 『神様』に出てくる民俗学の本と用語16コ)でも紹介した1冊です。
各地にぽっこりと林をかまえ、お社を胎内にいだく、鎮守の森。
本書は、文化と環境の両方の視点から鎮守の森を研究しています。

意味と意義。地域社会との関係。
植物の生態。地形のなかでどう”配置”されているか……まで。

滋賀県全域にわたるこまかい調査結果が収録されています。
概論もありますが、調査書の色あいが強いかな。鎮守の森をめぐる状況を詳しく知りたいひとにオススメです。

全国どこにでもあって、地域の産土神や氏神をまつることが多い神域。
森が社を守り、そして社も逆に森を守っている……という指摘にハッとしました。

 社叢学


こちらも鎮守の森関連。社叢、は寺社を囲うようにしげる森林のこと。
本書は、「社叢学会」という鎮守の森を学究的に調査研究する団体の出版物です。

歴史学、民俗学、植物学、文化人類学、都市計画学。

の5つの視点から鎮守の森をみた概論を収録しています。
↑で紹介した上田篤さんも、都市計画学の節と巻末の講演で登場しています。

社としてだけじゃなくて、森として。生態系の息づく場所としても意味がある。
参考文献が大量に掲載されています。”神と森”のテーマに興味がある方は芋づる式に、どうぞv

 ひとはなぜ神社にいくのか


ラストはちょっと毛色の異なる本を。
神社の神さまとご縁をふかめる方法を教えてくれます。
徳川家康や安倍晋三さんなど”天下を取った”人物がどこの神社に参拝したのか……など、ほかの本では見られない情報が多数。

でね。じつは本書はビジネス書の皮をかぶりながらも、内容はかなりスピリチュアルに寄っています。
マインドフルネス、ヒーリング、チャクラ、次元上昇、見えないネットワーク……。
以前の記事(非二元(ノンデュアリティ)の本は「読んでも読まなくてもかまわない」?)でお話しした「ノンデュアリティ」も出てきます。

著者は科学者で霊能者。
統計学も超能力も扱う、とてもユニークな神社本。面白いですv



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(冒頭の写真はうちの愛犬、モモ・マオです)

【関連記事】

【記紀神話】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(後編)【古神道】
じつは読書案内? 『神様』に出てくる民俗学の本と用語16コ
非二元(ノンデュアリティ)の本は「読んでも読まなくてもかまわない」?
心の時代を生きるための本10冊
最近読んだ「幸せについて考える」本10冊〜三大幸福論を中心に〜

【関連リンク】

神社検定 - 神道文化検定 / 知ってますか?日本のこころ
https://www.jinjakentei.jp/






posted by 姉崎あきか at 00:36| 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月30日

【記紀神話】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(後編)【古神道】


今日のなぞなぞ
「日本のフシギな神話を学ぶ10冊は?」

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石神村に降りたったのは6柱の神々でした。
村人たちは、この神々の末裔です。

神は百の物語を遺しました。
この物語を後世に伝えるのが、巫女であるわたしの役目。

病におかされながら、
来る日も来る日も、おつとめをはたしていたのです。

あるとき。
石神千空(いしがみせんくう)という少年が村をおとずれました。
その名を、わたしはよく知っておりました。

なぜって。
その名前は、百の物語の、最後の段に登場するのですから。

彼は、わたしたちの村をおこした氏神様の御子なのでしょうか……。


「100億万点やるよ!」


……と、「Dr.STONE」の話はさておき。
(未読の方、すみません>< 本格的な科学が楽しいファンタジー漫画です♪)


今日は以前の記事(【奇習邪宗】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(前編)【民俗神】【民話伝承】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(中編)【フォークロア】)にひきつづき、日本の信仰を学ぶ10冊を紹介していきます。

今回は神話や古神道(後述)にまつわる本でまとめてみました。
後半は、日本の神話をモチーフにした小説を紹介していきます。

国家神道という言葉もあるので、”公式”っぽいイメージがわきますが、
おおもとをたどれば各地の原始的な信仰からはじまっていたりするのが、かんながらの道。

日本人の感性にダイレクトに響く、
ありがたくてカオスな10冊
をど〜ぞ〜♪



 古事記・日本書紀


原文で読もうとしたらかなり骨の折れる「古事記」。
本書は、とても読みやすい語り口ですべての物語をあじわえる良書です。

 なにもなかったのじゃ……、言葉で言いあらわせるものは、なにも。
「神代篇 其の一」より


こまかい注釈がついているので、背景もしっかり学べる。
けっこう厚いです。なので、もっとさくっと読みたい方は↓こういうのでも。


「古事記」「日本書紀」を新書1冊の分量でわかりやすくまとめた入門編です。
すべてのページに地図や図表があって、理解を助けてくれます。
年表、神や天皇の系譜(系図)も付録。全体を見渡すのに◎。
あらためて読むと、知っているようで知らないことだらけで新鮮。

類書はたくさんあるので、お好きな本でどうぞv ↓漫画版もアリかも。
荒ぶりすぎ! な神々の物語を駆け抜けろ♪



 やまと教


神道ってちょっとわかりづらいですよね。
明治時代にお上が整えた国家神道と、記紀が整理した神話と、いにしえからの素朴な信仰とがごっちゃになって、ややこしすぎる。
さらに仏教もふかく関わって習合したり分離したり、カオス感がすごい。
そのへんのぐちゃぐちゃを綺麗にほどいてくれるのがこの本です。

日本の「民族宗教」として、古神道(後述)と似たような意味で「やまと教」という造語がつかわれています。
わかりやすくてオススメ。
ひろさちやさんは、以前の記事(心の時代を生きるための本10冊)でも『面白いほどよくわかる 世界の宗教/宗教の世界』を紹介しました。

1 ホンモノ宗教
2 ニセモノ宗教
3 インチキ宗教
4 インポテ宗教

の大胆な分類は本書でも健在(4つめは、前は「オドカシ宗教」だったような)。
読みやすい語り口で、神道のセカイを案内してくれる良書です。

 古神道


神職さんが「古神道」の”こころ”をわかりやすく教えてくれる1冊。
古くから……それこそ仏教や儒教がはいってくる前から、わが国に存在した原初の信仰のカタチ。日本の精神的な底流。それが古神道。

一文字にも意味がある大和言葉。神が降りる神籬(ひもろぎ)。
言霊。数霊。身を清める禊(みそぎ)の意味。お供えもの。記紀に登場する神々。

などなど。たんなる説明ではなく、奥にある”精神”を見据えつつ語ってくれます。

ヒモロギというのは、「霊天降る樹」という言葉がつづまっています、古語では、日、霊、火、水、氷もみな「ひ」と読みますが、天界にいらっしゃる神々の火・霊という「ミタマ」がこの地上に降りて来られる聖なる域をヒモロギといいました。
「第二章 日本文化の源泉は古神道」より


こんな感じ。
ちょっとスピリチュアルっぽいね。本来の意味でのスピリチュアル。霊性。

ちなみに、この本。末尾ではムー大陸が出てきたり、ピラミッドと失われた文明について語られていたりします。
「それって神道なの!?」みたいな(笑)。このへんは著者の雑談としてとらえて大丈夫。
聴き書きでつくられた本でよくある”話の脱線”だと思います。……たぶん。

 禁足地


オカルト研究家の吉田悠軌さんが、”行ってはいけない場所”をレポート。
詳細な取材によって外堀を埋めつつ、じゃあ禁足地って本質的には何なのだろう、と問うていく姿勢がとても面白いです。

神職の者しか入れない、沖ノ島。
原生林の繁る、対馬のオソロシドコロ。
男子禁制の、沖縄の御嶽。
将門の首塚。ニソの杜。シガイの森。天狗の森……。

ルポタージュであると同時に、社会学的な視点も。
天皇陵についても言及していたり、末尾では「犬鳴村」「杉沢村」「異界駅(きさらぎ駅)」など、ネットロア(※)に登場する”実在しない禁足地”にも目をくばっています。

※ おもにインターネット上で広まる都市伝説。ネットワーク+フォークロワ。

 巫女論


民俗学の第一人者、柳田国男が”妹萌え”を語る。
……わけでなくて。ここでいう「妹」は女性全般のこと。

玉依姫、巫女石、姥石、人柱、小野於道、稗田阿礼……。
神話や民話に登場する”霊的な力をもつ”巫女的な女性を考察した論文集です。
たくさんの事例がとりあげられる、濃厚な1冊。

 一つ意外であった話は、兄妹の親しみが深くなってきたということである。その中でも兄が成人するにつれて、妹をたよりにして仲よくつき合うこうとは、今はほとんど世間一様の風であって、しかも以前にはまるで知らなかったことであるという。
「妹の力」より


と、ちゃんと妹ラブコメ(?)もあります。巫女や妹が気になるお兄ちゃんはど〜ぞv
フォークロアにジェンダーの視点を導入した、シャーマニズム研究書。


☆★☆



後半はフィクション作品をピックアップしました。
「日本の神話を題材にした小説」特集。
神話からつむがれる、あらたな物語……。

 出雲


大学院で民俗学を専攻する新米研究者、橘樹雅。
研究テーマを「出雲」に定め、縁結び祈願をかねて島根をまわるさなか、奇妙な殺人事件に遭遇する……。
といっても、犯罪ではなく民俗学的な”謎とき”のほうに重きが置かれています。

出雲大社、黄泉比良坂、スサノオ、もちろんオオクニヌシも。
神話や神道、神社をめぐる雑学が盛りだくさんで、ふつうの小説だと思って読むと、その情報量の多さに圧倒されてしまうくらい。
謎の多い出雲神話に挑む、歴史ミステリ。

 奥出雲


その続編。
こんどは舞台を「奥出雲」にうつし、神話に頻出する「櫛」の意味を探る。
さらなる殺人事件が発生しますが、今回もメインとなるのは犯罪ではなく歴史、民俗学的な謎のほう。四柱推命もからみます。
スサノオやヤマタノオロチ、たたら製鉄にゆかりのあるスポットをめぐる。
旅情ミステリのような味わいもあって、主人公と一緒に旅をしている気分です♪

 玉依姫


記紀に登場する女神、タマヨリヒメをモチーフにした物語。
志帆は祖母の故郷の村に足を踏みいれ、おそろしい儀式に巻きこまれる。
そして、異形の”山の神”を育てることに……。
八咫烏や神の使いである猿なんかも登場し、異界の雰囲気が素敵な小説。

ちなみに、冒頭のエピグラフには↑で紹介した柳田国男の『妹の力』が引用されています。↓この部分。

玉依姫という名はそれ自身において、神の眷顧をもっぱらにすることを意味している。親しく神に仕え祭に与った貴女が、しぼしばこの名を帯びていたとてもちっとも不思議はない。
「玉依姫考」『妹の力』より


神武天皇の母。大物主の妻。賀茂の玉依姫。そして柳田国男のいうような”巫女”全般をさす一般名詞……。
この女神には様々な姿があって、イメージをかきたてられます。
タマヨリビメファンの方はアニメ「緋色の欠片」↓もど〜ぞv



 スサノオのオロチ退治


ある片親の兄弟の運命と、べつの兄妹の犯罪計画がからみあい、もつれ、謎を生んでいく……。
現代が舞台のミステリですが、神話が下敷きにされています。
ヤマタノオロチを退治するスサノオの、あの有名なエピソード。

全編にわたって雨の降るシーンが多くて、描写がすごく綺麗です。
降り方や場所によっていろんな表情をみせてくれる。
イッキ読みしてしまうストーリーもさることながら、雨のシーンを味わう目的で読んでもいい。そんな本。

 イザナキ・イザナミ


こちらは、イザナキ・イザナミの国生み&黄泉の国訪問が出てきます。
これはすごいです。もうひとつの神話がここにある、という感じ。

主人公はある南国の島に生まれた女の子。島の掟を破って、ある男を愛してしまい、命を落とす。
そして黄泉の国へ行き、イザナミに出逢う。

まさに神話の時代を描いた物語。
ファンタジーといえばファンタジーなんだけど、なんというか、「オトナの事情で古事記に収録できなかった物語を電撃掲載!」みたいな。

かなり引いた視点、登場人物から距離を取った語り口も神話っぽい。
古事記のエピソードをなぞる場面もあるので、記紀を知らなくても平気。オススメです。




ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(冒頭の写真は諏訪大社下社秋宮。神楽殿のしめ縄です)

【関連記事】

【奇習邪宗】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(前編)【民俗神】
【民話伝承】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(中編)【フォークロア】
神社がわかる本10冊
心の時代を生きるための本10冊
【禁忌】読んではいけない本10冊【超刺激】
じつは読書案内? 『神様』に出てくる民俗学の本と用語16コ






posted by 姉崎あきか at 03:16| 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月30日

【民話伝承】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(中編)【フォークロア】


今日のなぞなぞ
「日本のフシギな言い伝えを知る10冊は?」

P1610404done.jpg

昔。ある山奥に、竈門炭治郎(かまどたんじろう)という炭焼きの少年がおった。
家族で仲よう暮らしておったが。
あるときを境にぱったりと、炭を売り歩く姿がみえなくなった。

不思議に思って、山にのぼった者の言うことにゃの。
竈門家の居間が血にまみれておったと。鬼の仕業と思われたそうな。

ところがの。
いたましい光景のなか、炭治郎と妹の禰豆子(ねずこ)の身体だけが行方不明じゃった。

その後、浅草で炭治郎をみかけた者があったそうな。
またある者は、枷を口にくわえた禰豆子の姿を目にしたという……。


「俺は長男だから我慢できた!」


……と、「鬼滅の刃」の話はさておき。
(未読の方、すみません><)



今日は以前の記事(【奇習邪宗】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(前編)【民俗神】)にひきつづき、この国の土着信仰を学ぶ10冊を紹介していきます。

追記)「後編」もアップしました♪
【記紀神話】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(後編)【古神道】


地方のフィールドワークや民話など、今回はさらにフォークロア寄り。
炭焼き職人もいろんな本で登場しています(炭治郎は出てこないけど)。

日本人の感性にダイレクトに響く、
あやしくも心惹かれる10冊
をど〜ぞ〜♪



 本当にあった奇妙な話


著者と一緒にフィールドワークをしている気分になれる、民俗研究の本。
集められた逸話はものすごくディープです。

即身仏(ミイラ)になるための修行の場、入定窟
山奥で贋金をつくる、漂泊の民
人を圧死させてしまうこともあった、オス(熊を獲る罠)。
猿を食べる風習。
墓だらけの村墓のない村
狐憑きの家系。犬神筋……。

「この尾根は、村では姥捨て山といってます。
(中略)
入り口がこんなに狭くなってるのは、中に入れられた老人が外へ出られないようにしてるんだと思いますよ。入り口が広かったら、いくら老人でもはい出してきますからね」
「第1章 修験の里の奇怪な石室」より


こんな話がふつーに出てきます。
ちなみに、この石室。「中に頭骨が転がっていた」そうです……。
(筒井功さんは、地元民の語るこの姥捨て話を鵜呑みにはせず、”伝説”である可能性も冷静に考慮しています)

ひたすら現場を歩き、足で集めたエピソードの数々。
ほかのどこにも載っていない、レアでディープなフォークロア。

 俗信・迷信

日本俗信辞典〈動・植物編〉 (1982年)
鈴木 棠三
角川書店
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動物・植物にまつわる、いわれ、信仰、禁忌、まじない、迷信などを大量に集めた辞典です。
ちょっとした辞書より分厚いほどで。たとえば、神話や民話によく出てくる「蛇」なんかは15項目に分かれ、40ページほどの解説が続く。

〇ヘビを屋敷或いは家の守り神と考えている地方は広い。だから、屋敷の周りや屋敷内のヘビは殺してはならぬ(埼玉・山梨・長野・新潟)ものとする。富山県小矢部市では
(後略)
「蛇(1) 家の守り神 神秘の蛇」より


こんな感じで各地の言い伝えを網羅していきます。
読み通すというよりは、好きな部分をひいて調べる感じの本。
たかが迷信とあなどるなかれ。食べあわせの良し悪しや、天気の予測、健康の秘訣など、生活の知恵が存分にこめられている……はず。

カエルを箱に入れて置くと消え失せる
「蛙(2)」より


こんなのもあるけど。
どういう意味なんだろうこれ。なんの手品?
(跳んで箱をあけて逃げちゃうから気をつけて、かな)

 神隠し


民話や伝承で語り継がれてきた「神隠し」譚を分析していきます。
何者が、いつ、どうやって”隠す”のか。捜索は? 失踪者は戻ってくるのか? 帰還した者が語る異世界は?

類型や約束ごとを丁寧に整理していくと、かなりパターン化されたテンプレがみえてくる。
泉鏡花や大江健三郎など、文学に描かれた神隠しの具体例も。
怪異のヴェールにつつまれた物語の外で「本当は何があったのか」についても推理しています。
神隠しとは何かを探る興味深い本。参考文献も豊富にあがっています。

 民俗宗教


学部生・大学院生の強い味方、世界思想社の「学ぶ人のために」シリーズより1冊。
12人の研究者がそれぞれの得意分野を概説。
↑で紹介した小松和彦さんも「ノロイ・タタリ・イワイ」の項目で執筆しています。

その小松和彦さんが、『日本書紀』の記述をひいて「タタリ」の構造をとらえている部分が面白かったので、まとめ。
あらすじとしては……

大物主神「私をまつれ。さすれば災厄はおさまる」
崇神天皇「言われた通りにしたのに、おさまらないじゃないですかやだー」
大物主神「おまえじゃだめだ。我が子、大多々根子に私をまつらせろ」
崇神天皇「さ、先に言ってよー」

こんな感じのお話です(いろいろひどい笑)。
ちょっとマニアックで申し訳ないのですが、私的メモ。

 この話には、災厄の発生→巫女の神がかり・託宣→大物主の祟り→大物主の祀り上げ→祀り上げの失敗→夢占い→大物主の夢告→祟り神による祭主(神主)の指定→祭主による祀り上げ→マツリの受納、というように、日本のタタリ信仰の構造・メカニズムが集約された形で表現されている。
「3 ノロイ・タタリ・イワイ」より


本書は、考古学やジェンダーなど周辺領域もおさえていてオススメ。
神仏、霊、魂、他界、血、性、祭、夢……民間信仰・民俗宗教でかならず出てくるテーマがひと通り論じられています。
もちろん参考文献も豊富。興味をひろげていく足がかりになります♪

 みうらじゅん


以前の記事(最近読んだ「好きを仕事に」する本10冊)で『「ない仕事」の作り方』を紹介したみうらじゅんさん。
”なかったジャンル”を”一人電通”的に流行らせていくサブカリストです。
「勝手に観光協会」を結成しご当地ソングを”勝手に”リリースするなど、地方を応援する立役者でもあります。
”勝手に応援”活動はとどまることを知らず、もはやフォークロワの域に!?

天狗、仏像、奇祭。
銅像、菊人形、即身仏。
なぜか日本にあるキリストの墓、鍾乳洞……。


研究対象は多岐にわたり、サックス吹く銅像ゴムヘビ(ヘビのおもちゃ)の”生態系”までリサーチまでしはじめる。
飛び出し坊や(飛び出し注意を喚起する、子供をかたどった看板ね)なども。
無駄で無益なエネルギーにしびれる、みうらじゅんさんワールドv

関連本として、各地のへんなお祭りを集めた『とんまつり』と、もらってもあまり嬉しくないお土産を蒐集した『いやげもの』もどうぞ♪




 柳田国男


日本の民俗学の始祖、柳田国男の代表作ふたつを収録したオトクな1冊。
「遠野物語」は岩手県遠野に伝わる民話伝承を聴き書きした説話集。
サムトの婆や、ザシキワラシ、マヨイガ、オシラサマなど、有名なお話がたくさん。

「山の人生」(と「山人考」)は、怪異もふくめ山で生きる人・モノたちのエピソードを集め考察をくわえています。
『神隠しと日本人』でもたびたび引用されています。

誰にも頼れない人が一種の選択として「山に入る」例がある……と説きながらも、柳田国男は続けます。

それだけならよいが、人にはなおこれという理由がなくて、ふらふらと山に入って行く癖のようなものがあった。少なくとも今日の学問と推理だけでは、説明することの出来ぬの人間の消滅、ことにはこの世の執着の多そうな若い人たちが、突如として山野に紛れ込んでしまって、何をしているかも知れなくなることがあった。
「三 凡人遁世の事」より


「山の人生」のメインテーマはこのあたりだ、と柳田国男は言います。
そして自分も「神隠しにあいやすき気質」だと語る。

あらゆる本で言及され続けている、フォークロア文学の名著。
未読の方はぜひ。


☆★☆



柳田国男や遠野が出てきたところで。ここからは東北にまつわる民俗学を。
伝承と民間信仰の宝庫、東北地方特集! です。
ふかく踏みいった先には、得体のしれないセカイがあった……。
(青森・岩手・秋田が中心です。福島・宮城・山形の方はすみません><)

 イタコとオシラサマ


東北地方の土着文化を「イタコ」「オシラサマ」にフォーカスして綿密に取材した1冊。
イタコは、自身に死者を憑依させる”口寄せ”を行なうシャーマン。
オシラサマは、東北を中心に広く信仰されている、服を着た木の棒。民俗神です。

イタコとオシラサマがメインですが、「V 東北彷徨」ではほかの民間信仰の様子もレポートされます。

地蔵信仰、百万遍の数珠送り(念仏回し)、虫送り。
稲荷、能舞、冥婚(死霊結婚)、絵馬……。


れっきとした伝統ある信仰だけど、なんだかオカルトの香りがするのがこの地方かもしれない。
じつは私自身、東北に縁があるのですが、こういう豊かで怪しげな(!)習俗の数々はぜんぜん知りませんでした。
死者に婚礼をあげる風習があるなんて……。
(ちなみに、全編とことん誠実なルポタージュですが、「川倉の冥婚式」の場面では怪奇現象が出てきます)

レアな写真や、イタコの生の声も収録されている、貴重な本。
東北の民間信仰を知るなら、この1冊から。

 寺山修司

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本10冊とは別に、いっこだけ映像作品を。
寺山修司の歌集「田園に死す」(↓『寺山修司全歌集』に収録されています)を原作というかモチーフにした映画です。監督も寺山修司。


舞台はなんと、恐山。
閉鎖的な村で育った少年の、思春期のもやもやが描かれていきます。

ぜんたい的におどろおどろしい色使いで、くらくらするほど。
主人公の顔が不気味な白塗りだったり、かなりアートな作品です。
なんともいえない不思議なレトロ感。お笑いのくっきーさんとか日本エレキテル連合はこのへんがルーツなのかな〜なんてふと思いました。
サーカス(見世物小屋)の雰囲気も怪しすぎて好きv

でね。
イタコの口寄せもそうだし、長〜い数珠をみんなでまわす場面があったり。
知っていると「あっ」って想う民俗的なシーンが散りばめられています。
ひな壇がまるごと川を下ってくる場面は……流し雛!?

↓ラストの独白にしびれます。

新宿区新宿字恐山。


もちろん、新宿に恐山っていう字(あざ)はないわけで。
都会に生きている自分だけど、ほんとうの心の住所は、幼少期を過ごした「恐山」にあるのだ……みたいな。
アルタ前の交差点がずっと映し出される、じわじわと鳥肌が立つエンディングです。
(私信。観ました♪ アングラでレトロな雰囲気、なんでいままで観なかったんだろうってくらい、好みのど真ん中でした!)

 青森

津軽のカミサマ―救いの構造をたずねて (自然誌選書)
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カミサマは、神のことじゃなくて、東北地方の祈祷師たち。
↑の『イタコとオシラサマ』でも言及されています。
オカミサンやゴミソなどとも呼ばれる「民間巫者(巫女)」です。

巫術をもって相談者の悩みに答える霊能者……イタコのような存在ですが、いちおう区別されていて。
たとえば、イタコの多くは盲目で、口寄せを行なうけれど、ゴミソはそうでもない。
「成巫過程」(霊能力を得るプロセス)は、イタコは師弟制だけどゴミソは自発的、など。
(イタコを含めた拝み屋の総称としてカミサマを用いる場合もアリ)

たんにフィールドワークだけでなく、宗教学として信仰の構造を分析しています。
著者のスタンスは↓こんな感じ。

どんな社会でも、宗教の専門家を自称したり、自分をとりまく世界に統一的な原理や秩序を求め、これを体系的に説明したがる人はいる。
(中略)
しかし、ひとたび一般の人びとが実際にこれらの神々を拝んだり祀ったりしている場所へ入ってみると、かならずしもそれほど体系化された神観念が共有されているとは限らない。
「第二章 救いの構造」より


人びとは明確な他界観や霊的世界の見取図を十分に理解し、これに納得したから礼拝するのではなく、むしろ単なる慣例であるという理由だけで儀礼に参加したり、願いが叶えられるであろうという期待だけで神々を拝むのだ、という方が真相に近いこともあるだろう。
「第二章 救いの構造」より


安易に結論に飛びつくことなく、研究者らしい慎重な手つきで構築されていくロジック。
提示されたモデルはものすごく面白くて、なんというか、統一理論がふいにあらわれた感じです。
救いとはなにか、を普遍的にとらえていく刺激的な1冊。

 岩手


以前の記事(【奇習邪宗】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(前編)【民俗神】)で『隠し念仏』を紹介した門屋光昭さんの、宮沢賢治研究書です。

鹿踊りや鬼、馬、河原の坊……賢治の文学に出てくる民話的なモチーフにスポットをあてる。
といっても、たんに近隣の伝承との類似を指摘するのではなく、作品の世界そのものを民俗学的な手つきでさぐっていくようなおもむきです。
門屋光昭さんはこの方法を「イーハトーブ・ふぉくろあ」と名づけています。

賢治と交流のあった佐々木喜善(鏡石)も登場。座敷童の話など「遠野物語」も引用されています。
宮沢賢治ファンはもちろん、フォークロアが好きなひとも楽しめる文学研究書。

 秋田

秋田むがしこ
秋田むがしこ
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秋田県全域に散らばる昔話を採集してまとめた、資料的価値の高い1冊。
表記が原話の方言のままなので、なんだか現地のじいちゃんばあちゃんからお話を聴いているようなあったかさがありますv
わかりにくい言葉は、カッコつきのルビで標準語を併記しているので安心。

ダジャレのお話がけっこう多い。
たとえば「旅人とわだしッコ」という物語。
ある娘にわだしッコ(焼き網)を借りて返した木綿売りがいたのね。
すると、娘は……

貴方にくっついで行く。


と、彼を追いかけていく。
まさか求婚されているのか!? と思い、彼が走って逃げても。
「私はあなたについていく!」と、娘は追いかける。

わだしが 貴方にくっついで行く。


じつは、彼の荷物の上に、返したつもりの焼き網(わだしッコ)が引っかかっていましたとさ。
(秋田弁では、カ行やタ行は濁音になります。名詞には〜ッコがよくつきます)

「これ、わだしッコ このとおり、貴方さ くっついで来たのし。」
「六 旅人とわだしッコ」より


縁側で民話を味わうような気分でどうぞ♪




ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(冒頭の写真は河口湖ミューズ館・与勇輝館です)

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【奇習邪宗】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(前編)【民俗神】
【記紀神話】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(後編)【古神道】
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【禁忌】読んではいけない本10冊【超刺激】
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秋田のことば
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posted by 姉崎あきか at 21:08| 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月29日

【奇習邪宗】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(前編)【民俗神】


今日のなぞなぞ
「日本人のフシギな信仰をかいまみる10冊は?」

P1240866done.jpg

「トトロ」と「千と千尋」が好き。
「ラピュタ」や「ナウシカ」よりも。

なぜだろうととくに深く考えたことはなかったのですが。
もしかしたら、日本の土着的な”あやしさ”に惹かれるのかもと、ふと気づきました。

雨の夜に妖怪バスを待つ、土着の神。
日が暮れると廃墟に集う、八百万の存在たち。

ありがたいだけじゃなくて、ときには災いをもたらすような。
あるいは、ただ”そこにいるだけ”の。

気まぐれな日本の神々は、なんだかキャラが立っていて愛嬌があると想う。



そんなわけで。
今日は最近読んだなかから、「日本の土着・民間信仰」を学べる本を紹介していきます。

いろいろと面白いのがいっぱいあって、一度にオススメしきれないくらい。
なので、このテーマでは記事を複数に分けてアップしていきますね。

追記)「中編」「後編」をアップしました♪
【民話伝承】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(中編)【フォークロア】
【記紀神話】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(後編)【古神道】



土俗の信仰と外来の宗教が習合・共存し、ほとんど”闇鍋”状態になっているのがこの国かも。

ちなみに記事のタイトルでは「奇習」だの「邪宗」だの煽っちゃいましたが。
ほんとは、ある風習を”奇妙”と感じるかどうかは、そのひとがいる社会の”常識”しだいなわけで。

たとえば、短冊に願いをこめて笹に飾るのだって、七夕を知らない人にとっては

「ちょw なに変なことやってんのwww」

ってことになるかもだし。

その信仰が”邪”かどうかも、なにが”正統”とされているかによって、いくらでも左右されるよね。


……と、多様性の時代っぽいことを言ってみる。
「ミステリと言う勿れ」の久能整(くのうととのう)きゅんふうにまとめるならば……


真実はひとつじゃない。
人の数だけある!



ということになります。
(私信、読みました♪ 脱線しまくりの雑学トークがツボv)


それでは。

日本人の感性にダイレクトに響く、
不思議でどこか懐かしい10冊
をど〜ぞ〜♪



 わけがわからないよ


現在も残る日本の奇祭・珍祭を集めた1冊。

米俵にくるまって”雨がやむこと”を願う「水止舞い」
女装して”ない毛が生えた!”と歌う「お札まき」
異形の蓑のおばけが跋扈する「カセ鳥」
新婚さんを崖から落とす「むこ投げ」

……カオスすぎて、もう「わけがわからないよ」と言うしかない。
じっさい、歴史に埋もれて起源が不明のまま、ただ”伝統”として続いている行事もあるようです。

混沌をあおる文章でレポートされる、ナンセンスな世界。
写真が満載のにぎやかな1冊。

このような現実を知ると、僕らの思っている「常識」というものがいかに小さなものであり、「非常識」なものであるかがわかるだろう。
「はじめに」より


以前の記事(幻想と異形の獣人写真集――シャルル・フレジェ『WILDER MANN (ワイルドマン)』)で紹介したシャルル・フレジェの写真↓に心惹かれる方にもオススメですv




 キャラ、立ってます


クリエイターさんの強い味方、新紀元社の「Truth In Fantasy」シリーズより1冊。
日本で信仰されている神々を、デッサン風の綺麗なイラストとともに紹介しています。
神話の登場人物(イザナギ・イザナミなど)ではなく、土着的な”民俗神”のほう。

七福神、招き猫、疱瘡神、要石。
お地蔵さん、鬼子母神、カマド神、オシラ様。
照る照る坊主。犬神。牛神。役行者……。


いろいろな名前で呼ばれている神は別称も網羅。系統(ルーツ)や”何にご利益/祟りをもたらすか”など、情報量が膨大です。
神様だけでなく、宝船や天狗面、だるまなど、アイテムを解説したコラムも。

ものすごい種類の神がいて、それぞれみんなキャラが立っている。
あなたのなかの”日本的な感受性”をちくちくと刺激する、どこか懐かしくて幸せな気持ちになれる資料集。

 失われゆく土着

民間信仰と現代社会―人間と呪術 (1971年) (日本人の行動と思想〈9〉)
桜井 徳太郎
評論社
売り上げランキング: 1,427,935

ハヤリ神。田の神、山の神。ジンクス。雨乞い。憑き物。呪術。口寄せ。シャーマン。トウビョウもち。村落共同体……。
民間信仰にかかわるあらゆるトピックを紹介しながら、俗信の本質を考えていく。
事例が豊富なのにもかかわらず、通低音のように著者の思想がずっと流れていて、とても良い本です。古いけどオススメ。

たとえば、新興宗教の台頭について……

都市住民が地域社会から浮きあがっていること、周囲から隔絶した生活を送らざるをえないことは、人々に深い孤独を与える。
(中略)
この孤独感、不安から逃れ、精神的な安定をうるための要求が湧然として起こってくる。そうした民衆の要望に応える形で出てきた一つが、今日都市の底辺層に喰いこみ大きな勢威を振るっている、もろもろの新興宗教である。


と、さらっと分析していたり。
進んでいく文明と失われゆく自然や土着性……ジブリ映画がくり返し描いてきたテーマを感じさせる文章も多いです。

もうひとつ。
たとえば、のろい針(夜中にわら人形に釘を打つアレね)についても……

自分の意見を自由に開陳できない構造をもつ地域社会でおこる呪法である。


と、やっぱり社会との関連のなかで説明される。
「コンピューター情報」や「スポーツとナイター」など意外な項目もあって、民俗学と社会学を同時にあじわえる良書です♪

 猫さん


猫の神様がまつられている神社やお寺、祠を集めた本です。
実際に足を運んで由緒や伝承をひとつひとつレポートしていきます。写真もたくさん。

ネズミを捕ってくれるため、養蚕が盛んな地域でありがたがられている猫さん。
猫又(化け猫)のエピソードや、報恩譚(猫の恩返し)、猫と姫の伝説など、それぞれの地域にいわれが残っています。
でね。場所はぜんぜん違っても、驚くほど似たような伝承が各地に伝わっているのが面白い。

神通力で棺桶を宙に浮かせる。
和尚のいないあいだに袈裟を着て出かける。
斬られた首が飛び、天井裏にひそんだ大蛇を退治する。
かわいがっていた猫を殺されてしまう姫。


おどろおどろしかったり、かなしい民話も多いけれど、全体としてはほっこりする、ユニークなテーマの1冊。猫好きなあなたはぜひv
(私信。読みました♪ 民話の数々がかなり興味ぶかかったです)

 動物さんたち大集合


こちらは猫だけじゃなく、神社に祭られているさまざまな動物たちを紹介しています。
生息地によって章分けがされていて。陸、水辺、空……さらに、河童や龍、鵺(ぬえ)など想像上の「霊的な生き物」も。

それぞれの動物がどんなご利益をもたらしてくれるのかを丁寧に解説。
どこの神社に行けば”逢える”のかも載っています♪
狛犬だけじゃなく、いろんな動物が「ア・ウン」のポーズをとっていてほっこり。

岡崎体育さんふうに言うならば……

どうぶつさんたちだいしゅうごうだわいわい!

という感じです。

感情のピクセル
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他愛ない生き物にも、それぞれユニークな伝承や信仰がある。
敬虔な気持ちになれる1冊です。
(私信。読みました♪ クマやカメもアウン!)


☆★☆



ここまでは教祖も仕掛け人も(ほぼ)いない俗信でしたが。
翻って、こんどは”開祖がいる”タイプの信仰を取りあげていきます。
世界宗教である仏教やキリスト教も、この国では変容し土俗化してく……。

 隠れ念仏と隠し念仏


「隠れ念仏」と「隠し念仏」を題材に庶民の精神史を考えていく、紀行&エッセイ。
両者はどちらも浄土真宗系の一派。ですが、別物です。

「隠れ念仏」は九州。幕藩権力によって弾圧され、”隠れて”信仰を守った人々です。京都の本願寺からは認められているので、いちおう”正統”。
「隠し念仏」は東北。こちらは藩の圧力からも本願寺からも信仰を”隠して”きた”異端”の存在です。

神棚の裏に仏壇を隠す、ちょっと異形な「カヤカベ」教も登場。
宮沢賢治や高村光太郎、柳田國男と隠し念仏との関わりにも触れています。
研究書ではなく、作家らしくのびのびと想像力を羽ばたかせていて魅力的。オススメです。

 隠し念仏

隠し念仏 (民俗宗教シリーズ)
門屋 光昭
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その「隠し念仏」の、数少ないまとまった研究のひとつがこれです。
東北地方にひそやかに息づいている、秘密主義の信仰「隠し念仏」。

ほとんど酸欠になりながらタスケタマエと唱え続ける「オトリアゲ」
生まれたばかりの子供を入信させる「オモトヅケ」
その信仰内容は、けっして部外者には語ってはならないと戒められる……。

怪談として語られることも多い「隠し念仏」を、しっかり民俗宗教として研究した論文集です。
地誌などを集めた文献リスト。信者による貴重な体験談。地域による差異。オシラサマなど古くからある土俗の風習との共存、融合。
専門書ではありますが、土着信仰系(※)が好きなひとはかなり面白く読めるかも。

※ 秘境の村など地方を舞台に語られる、奇妙な習俗や信仰、祭などを題材にした怪談・都市伝説。

 隠し念仏(小説)


そんな「隠し念仏」を題材にした小説がこちら。ミステリです。
これはずごい。隠し念仏だけでなく仏教全般、かくれキリシタンもふくむキリスト教や民族史……埋もれてしまった”歴史の闇”をひき金に起こる、不可解すぎる連続殺人。

主人公は女子大で教鞭をとっている食文化人類学の専門家。アイヌの血をひく人物です。
3部構成で、第一部は、安藤昌益にまつわる歴史ミステリといった色合い。
第二部は、ある教育者が牛耳る閉鎖的な街を描いた、カルト的なサスペンスです。
第三部は、主人公や失踪した妹の出自があきらかになり、すべての謎がひとつにまとまっていく……。

四〇〇字詰め原稿用紙換算で1854枚の、大長編です。すごくぶ厚い単行本で……はかってみたら、厚さ4センチもありましたΣ(・ω・ノ)ノ
読み進めるほどに、加速度的に面白くなっていきます。ムーアの法則のように。
調査や推理の場面では、文化人類学や宗教学の専門的な話が展開されていて、とてもアカデミック。
ミステリの面白さを歴史・文化探求の魅力にまで拡張させていく徹夜本ですv

 真言立川流


「立川流(たちかわりゅう)」は、仁寛という開祖(流祖)のいる真言宗系の密教です。
(落語の立川談志一門のほうは「立川流(たてかわりゅう)」ね)
その教えはまさに”邪教”っぽくてすごい。

男女が「交合」して、その「和合水」を「髑髏(ドクロ)」に何べんも塗りつけて、これを「本尊」とする……。
反魂香をたき、ひたすら真言を唱える……。

反魂? ドクロ本尊!? 和合水ってなに。///
仏教ではあるのですが、お釈迦様の教えからはずいぶん遠く。
「なんでこんなに異形の信仰が!?」と思うけれど、<性>と<死>をめぐる秘術の内にはなにかしらの”真理”がふくまれているようにも感じられて……。

曼荼羅(マンダラ)美術など写真の資料も豊富。
史料や、著者の想像もまじえて、立川流の”宗教的なロジック”に肉迫していく学術書です。

 真言立川流(小説)


その「真言立川流」を題材にしたミステリがこちら。
『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』に続く、「百鬼夜行シリーズ(京極堂シリーズ)」の第3弾です。

海辺の断崖に棲む朱美の、幻覚とも妄想ともつかない奇妙な記憶。
朱美の話を聴いた登場人物たちは、それぞれの”解釈”をつくりあげていくが……。
坊主も神主も牧師も登場する、宗教大集合! なミステリ。
フロイトやユングなど心理学的うんちくもたっぷり。

立川流をたんに”邪”であると斬り捨ててしまうわけではない、京極堂の歴史観を私的メモ。

立川流が邪法として貶められたのは、その特異な教義の所為ではない。立川流以前にも性を取り入れた宗教は沢山あったし、髑髏を呪術に利用する民間宗教や左道密教は存在した。天台からも玄旨帰命壇が出ている。立川流が不当に指弾されるのは文観が権力に固執したからです。現世利益の茶吉尼の邪法などに耽ったからです。


海からドクロが発見されたり、謎めいた集団自殺が起こったり。
バラバラすぎる事件が次第につながっていく、読み応え抜群の大長編ですv




ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(冒頭の写真は御殿場の時之栖にある「ありがとう寺」です)

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