2019年04月26日

最近読んだ「未来の社会・経済を予測する」本10冊

 
今日のなぞなぞ
「未来のセカイはどうなる?」

P1400641done.jpg
ビル・ゲイツ「パソコンのメモリは永遠に640キロバイト以下だろう。うはははは!」


……なにこの出オチ?



えっと。
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツさんは、1981年の段階では「メモリはずっと640キロバイトを超えない」と語っていたそうな。

関連記事:
【私的メモ】未来予測はむずかしいという実例「世界10大失敗ハイテク予言」




今日は、最近乱読したなかから、「未来の社会や経済を予測する」10冊をぷちレビューしていきます。

未来予測本は以前の記事(最近読んだ「未来を予測する」本10冊)でもまとめましたが。すこし古くなってきた感じなので、改元にともない最新版を♪
(未来予測が「古くなる」というのも妙な話ですが)


未来予測はたいてい当たらない。
当たらないけれど、当たらないとわかったうえで未来を考えてみるの、私はけっこう好きです。

ピンポイントな未来は予測できなくても、
おおまかにみえた方向性が「今の行動」に、なにかしらの洞察を与えてくれるかもしれない。

とつぜんの技術革新で、世界は思いもよらないベクトルに舵をきる可能性だってあるけれど。でも。

いろいろな未来が予測されているのを知れば、たったひとつの”予言”だけを妄信してしまうあやうさからは自由になれるはず。
(ちなみに今日の記事で扱う「未来予測」はあくまで社会的な現象のみを指しているつもりです)


今を生きるための羅針盤として。
さまざまな「未来」を描く豊饒な10冊をど〜ぞ〜♪



 ネットの次


原題は“The Inevitable”(不可避、必然)。人工知能を語るときにたまに出てくる Cognify(コグニファイ)という造語の生みの親、ケヴィン・ケリーさんの名著です。
コグニファイは、ざっくりといえば、膨大なデータや知能とつながることによって、モノやコトがより洗練された賢い存在になっていくイメージかな。
(地図帳がコグニファイするとカーナビとかグーグルマップになる……みたいな感じです)

本書はコグニファイもふくめた、12個の”避けようのない”未来の方向性を提示しています。

BECOMING(ビカミング、なっていく)
COGNIFYING(コグニファイング、認知化していく)
FLOWING(フローイング、流れていく)
SCREENING(スクリーニング、画面で見ていく)
ACCESSING(アクセシング、接続していく)
SHARING(シェアリング、共有していく)
FILTERING(フィルタリング、選別していく)
REMIXING(リミクシング、リミックスしていく)
INTERACTING(インタラクティング、相互作用していく)
TRACKING(トラッキング、追跡していく)
QUESTIONING(クエスチョニング、質問していく)
BEGINNING(ビギニング、始まっていく)


まるで近未来小説のような詳細な描写もあるのですが。当たった/外れたという単純な予測ではなく、おおきな流れや変化の本質が浮かびあがってくる濃厚な1冊。

 もっとケヴィン・ケリー


↑の『〈インターネット〉の次に来るもの』がすごく良かったので、もう1冊ケヴィン・ケリーを読みました。
テクノロジーの進化の歴史をまるで生物学のように描きだし、それが”必然の方向性”をはらんでいると指摘する。

テクニウム(Technium)もケヴィン・ケリーの造語です。
科学技術だけでなく、芸術や学問、社会組織まで、人間の知が生んだあらゆるものをふくむ概念。
人間がつくったはずの文明なのに、<テクニウム>は、まるで独立した生態系のようにふるまっている。世界の観方を変えてくれる刺激的な本です。

 ジャンル横断


ゼミにことごとく落ちてしまい、人気のない内村教授の個人授業を受けることになった絵玲奈。教授がはじめに出した課題は、マンガ「進撃の巨人」を読んでくることだった……。

主人公が講義を受けていく、小説形式です。歴史や宗教といったおおきな視点から、現代にただよう漠然とした不安の正体をあぶりだしていく。
経済学の解説がはじまったかと思えば、「セックス・アンド・ザ・シティ」について語り。一神教と多神教の違いを説きながら、RADWIMPS の歌詞を味わう。

ニューヨークへ行き、現代アートにふれまくるシーンも。
基本的には「世界の経済」についての本なのですが、縦横無尽にジャンルを横断していてすごく面白いv

↑の増補版で読むのがオススメです(ソフトカバー版は「前期」の講義しか収録していないので注意)。

 シンギュラリティ


シンギュラリティ(※)が本当にあるかどうかはわからないけれど、あると思って行動しても損はないはずだよね……そんなスタンスで、起こるかもしれない「革命」をひもといていきます。

※ 人工知能がとんでもない速度で進化をはじめてしまう、技術的特異点(テクノロジカル・シンギュラリティ)のこと。2045年頃と予想されていますが、「もっと遅いのではないか」あるいは「シンギュラリティなんてないんじゃないか」など、様々な意見がわかれています。

原子プリンター、強いAI、エネルギー問題の解決、水や食料不足の解決、ゲノム編集、働かなくていい社会、ベーシックインカム……。
どんなビジネスや企業が成長するかだけでなく、「シンギュラリティを前提にしない努力や工夫は無駄になる」など個人の生き方についても言及しています。

 未来の業界地図


AI、シェアリング・エコノミー、IoT(モノのインターネット化)、フィンテックの4つの視点から、今後の経済を考えていく。描かれるのはさながら「未来の業界地図」です。
よく出てくるGAFA(※)や Uber だけでなく、身近な日本の会社の”未来図”が盛りだくさん。

※ Google、Amazon、Facebook、Apple の4社。

ヤマト、佐川、日立、三菱、東芝、日本電産、ソフトバンク、楽天、すき家(ゼンショー)、ベネッセ……。
すでにみえている現状の分析からスタートして未来の可能性を探っているので、とてもロジカル。未来予測のお手本のような1冊です。

 東京オリンピック以降の日本


ずいぶん先の未来の話が続いてしまったので、もうすこし近い将来を。
2020年の東京五輪が終わったあとの日本は、かなり厳しい時代を迎えるのではないか……そんな危機意識にもとづいて、本書は”改革を急げ”と警鐘を鳴らす。
前半は日本がどう持続的に成長していけばいいか。後半は個人がいかに生き抜くかを考えていきます。

 東京オリンピック以降の日本と世界


2020年以降の日本を案じて、政府・企業・個人の三者いずれにもイノベーションが必要と説く。
↑の『オリンピック恐慌』ととてもそっくりな構成の本です。
五輪は日本が変わる”最後のチャンス”……など、言いまわしも似ていて、両方ともマクロ経済のトピックが多め。
どちらも、いたずらに危機感をあおるのではなく、「じゃあどうするのか」と前向きな視点で書かれています。2冊セットでど〜ぞv

 未来の年表


2027年まで1年ごとに、以後2065年までは数年刻みに、起こる出来事を記した、まさに「年表」。
……というと「そんなの当たるかよ!」みたいに思ってしまうけれど、本書が語るのは日本の人口減少とその影響についてです。
(人口の推移は統計的な現象なので、高い精度で予測できるジャンルだったりします)

東京の人口も減りはじめ、輸血用血液が不足し、国土の大部分が無人に……。
思いもしない技術革新や、それこそシンギュラリティがあればまったく違う世界線をたどる可能性もぜんぜんあるけれど。
現時点ではこれほど壮絶な未来さえ推定されている……。
”日々の生活になにが起こるか”に重点をおいた続編↓も出ています。


 メディアがつくる未来

メディアはマッサージである
マーシャル マクルーハン クエンティン フィオーレ
河出書房新社
売り上げランキング: 467,142

うってかわって、みんな大好きマクルーハンのメディア論を。
そこでなにが語られているかではなく、メディアの”形式”こそが、人々を変容させていく。

本書は「どんなアート雑誌だよ!」っていうくらい写真やイラストなどビジュアルイメージに満ちています。文章が鏡文字になったり、天地が反転したり、めっちゃアヴァンギャルド。
上梓は1967年なのでインターネットの普及以前の本ですが、現代にもふつうに応用できる普遍的な議論が展開されています。

今日が”不安の時代”であるなら、その原因の大半は、今日の仕事を昨日の道具――つまり、昨日の概念で処理しようとする結果である。
『メディアはマッサージである』より


私は旧版で読みましたが、↓新訳・新装の文庫版のほうが手にはいりやすいかも。



にぎやかですごく楽しいけれど、断片的&実験的な本なので、マクルーハンをじっくり学びたいなら平凡社ライブラリーの『マクルーハン理論』↓がオススメです。
(もちろんマクルーハンの”実践”をダイレクトに味わいたいなら『〜マッサージ』を♪)


メディアがもたらす未来を考えるとき、マクルーハンは絶対に外せない。まだマクルーハンにふれたことのない方は、ぜひ!

 なぜ未来は予測できないのか


「イングランド銀行を破産させた」伝説のトレーダー、ジョージ・ソロスによる哲学書です。
抽象的な議論も多いのですが、ある意味では”なぜ未来は予測できないのか”という問いに答えてくれる本。
私たちは、現実を「認知」するとともに「操作」する主体でもある。
観察者でもあり参加者でもある「再帰性」のせいで、社会は不確実性のかたまりになる。

現実は「再帰的」であるがゆえに、きちんと理解することが難しく、そのいっぽうで、人間は単純で簡単な回答へと、たとえそれが間違っていようとも容易に誘導されてしまいます。ある予測が正しかったからといって、その予測のもとになっている理論もまた正しいとは限らない
『ソロスの講義録』第三講義 開かれた社会 より


……再帰性、重要な概念かも。
たとえば↑であげたマクルーハンは、自分たちが発明したメディアじたいが人々の思考を変容させると言っていますし。
ケヴィン・ケリーも、文明の発達が人類の身体(歯や筋肉や体毛)を変化させた例をあげて↓こんなふうにおっしゃっています。

道具を作り直したとたん、それがわれわれ自身をも作り直していた。
『テクニウム』 第2章 われわれ自身を発明する より


でね。
不確実性に対する鋭い考察を重ねながらもソロスさん、本書のラストでは未来の大胆予測! をはじめてしまいます。ちょ、ソロスさん><;。
ここは思想家としてというよりも、数々の予測を的中させてきた投資家としての自負なのかな。

「アメリカが最大の敗者になる」と予測する「第五講義」。
信じるか信じないないかは、アナタ次第。




ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(冒頭の写真は江の島で撮った仁王像です)

【関連記事】

【私的メモ】未来予測はむずかしいという実例「世界10大失敗ハイテク予言」
最近読んだ「未来を予測する」本10冊
未来は予測なんてできないし、売れてる本が良い本とはかぎらない
2010年代を見通す7つの大胆予測
「PSYCHO-PASS(サイコパス)」はノベライズから先に読んでもいいかもしれない
小説版『PSYCHO-PASS<0>(サイコパスゼロ)』の心理描写がスゴくてほとんどBL(ボーイズラブ)
心の時代を生きるための本10冊






posted by akika at 23:22| 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月29日

最近読んだ「幸せについて考える」本10冊〜三大幸福論を中心に〜

 
今日のなぞなぞ
「”幸せ”を考える10冊は?」

P1220198done.jpg

こうなったら幸せだろうな、と考えてそれを目指すのだけど。
”こう”なったときにほんとうに幸せと感じるかどうかは、いまの自分にはわからない。だって自分は”こう”なったことがまだ一度もないものね。

目指すその状況は、ホントに幸せなのか。
想い描いていた未来が訪れたとき、今度はどう生きていけばいいのか。
それを知るために、人は幸福論を学ぶ。


……そんな感じかな。


今日は最近乱読したなかから、「幸せについて考える」10冊をぷちレビューしていきます。
おぉ、壮大v
でも直球な幸福論や哲学だけでなく、マンガや小説、投資までバラエティに富んだセレクトにしてみました。


「今のじぶんの感覚や知識」だけですべてを判断してしまうと、いろいろと見落としてしまうものがあるかもしれない。
じゃあ、どうずれば別の視点を持てるかっていうと……。


いっぱい
本読もうよぉ〜☆(*´∇`*)ミ☆



って、このブログは基本、それしか言っていません(笑)。


というわけで。
誰もが向きあうべきテーマ「幸せ」について考える10冊をど〜ぞ〜♪



 三大幸福論はラッセルから


世界三大幸福論(ラッセル・アラン・ヒルティ)のひとつ。幸せにまつわる様々な本でよく引用されています。前半は「不幸の原因」、後半は「幸福をもたらすもの」。ひとは誰でも幸福になれる。競争がもたらす弊害、退屈や興奮に対する考え方、熱意や愛情や”幅広い興味”の大切さ……幸せについて考えるときに普遍的なテーマがぎゅっと詰まっていて、色あせない名著です。幸福論は、まずはラッセルを♪

 アラン幸福論は文学・哲学的


三大幸福論のひとつ。アランの幸福論は、無数のプロポ(哲学断章)を集めた1冊です。どこから読んでもOKなつくりですが、書き散らばっているわけでは全然なく。むしろどの断片にも一貫したテーマが流れています。文章が文学・哲学的でかっこいいv

情念から自由になる方法として身体的な体操(運動や行動)をとくに重視。幸福になることは義務、しかも自分ではなく「他人にたいする義務」だと言い切っています。↓以下、好きな一節。

幸福を世界の中に、自分自身の外に求めるかぎり、何ひとつ幸福の姿をとっているものはないだろう。
(中略)
君が将来幸福であるように思うとしたら、それはどういうことかをよく考えてみたまえ。それは今、君はすでに幸福をもっているからだ。期待を抱くこと、それはつまり幸福であるということなのだ。
『アラン幸福論』87 克服 より


幸福は外からもたらされるものじゃない……みたいなことはアランもラッセルもヒルティも共通して述べています。金言♪

 ヒルティ幸福論は宗教・道徳的




三大幸福論のひとつ。ヒルティの幸福論はめっちゃキリスト教推し! です。キリスト教圏じゃない私たちにはちょっととっつきにくいかもしれないけれど、厚めの3冊を通して語ってくれるので、じっくりつきあえば大丈夫。ラッセルもアランもあまりふれていない「信仰と幸福」のテーマをどこまでも深く掘り下げます。私は新装版で読みましたが、持ち歩きやすい文庫版↓も出ています。

『幸福論 第1部』
『幸福論 第2部』
『幸福論 第3部』


 幸福力


幸せになるには「幸福力」が必要。生きるうえで大切なことをこれ以上ないくらいストレートに伝え、「これしかないよね」と締めくくる斎藤一人先生の教えに心が洗われます。「よい本は7回読め」と読書を強くすすめているのも素敵♪ 斎藤一人先生のトークを味わえるCDつき。

 アーリーリタイアをするには?


経済的自由を達成して早期リタイアを実現するための方法を手取り足取り教えてくれます。早めのリタイアというと「そんな、早々に何もやることのない人生を手に入れてどうするの?」みたいな議論も起こりがちですが、本書はそのへんにも先まわりして、リタイア後も幸せに生きる秘訣を伝授してくれます(あえてリタイアしない選択もアリ)。

好奇心。持続性。楽観性。柔軟性。冒険心。ヒントでなく「答え」がまるごとのっている感じですごい。ラッセル等の幸福論にもしっかり目配せされています。金融リテラシーもあり幸福論も充実の良書。
(私信。手にとるきっかけをくださってありがとうございます。何度でも読み返したい本ですv)

 つみたて投資


↑の『幸せの確率』でインデックス投信の積み立て(※)がオススメされていたので、関連して読みました。積み立てが一般的でなかった時代から研究に研究を重ねていた”つみたてへの情熱”がすごいv 長期間の積み立てがなぜ有利なのかを完全解説してくれます。いくらで買ったかよりも、何口買えたかが重要。

※ 市場平均に連動する投資信託を定期的に一定額を買い増していく投資手法。安い時にたくさん買えて、高い時には少ししか買えないので、期間が長くなればなるほど、リスクを抑えながらリターンが見込めるとされています。ドルコスト平均法。

 もっと、つみたて投資


おなじく星野泰平さんの”つみたて本”をもう1冊。相変わらずの情熱ですv 『半値になっても〜』では架空の値動きのグラフで積み立て投資の有利さを説明していましたが、こちらは日経平均株価など実際の市場でもちゃんと有効なことを解説しています。低迷もまた良し。

 投資本の名著中の名著


本書もインデックスファンドへの長期投資を強く推奨しています。およそ4年に1度改訂を重ねているロング&ベストセラー。↑最新版です。以前の記事(マネーのスペシャリスト3氏(竹中平蔵・竹川美奈子・勝間和代)のオススメ本7冊投資をはじめる前に読みたい15冊)でも、金融のスペシャリストたちがこぞって推薦している、名著中の名著。


……金融関連の本が続いてしまいましたが、幸せについて考えるとき、どうしてもお金は避けては通れないテーマだよね。もちろん、お金がそのまま幸せに直結するわけじゃないと、ラッセルもアランもヒルティも言っています。ただ、ある程度のお金があることで”不幸を避ける”ことができる……ラッセルはそうも言っています。できることも増えるし。

金というものが、ある一点までは幸福をいやます上で大いに役立つことも、私は否定しない。
『ラッセル幸福論』第1部 不幸の原因 第3章 競争 より


あと、ヒルティさんもするどい観方を展開しています。

金銭に対して非常にきびしい誠実さを持ち、人生の目的としてはこれを完全にまた率直に蔑視するが、しかしより高い目的を達成するための手段としてはこれを正しく評価する
『ヒルティ幸福論 U』 教養とは何か より


「幅広い興味を持つことの大切さ」はラッセルさんも強調していますし。あまりなじみがない方も、食わず嫌いせず、金融リテラシーの本をがんがん読んでみて!

 仕事と幸福の関係


幸福論そのものではないけれど。度をこえた疲労は、人から判断力を奪ってしまう。コミックエッセイなので、多忙ななかでもさくっと読めます。本書のラストでも『ラッセル幸福論』が引用されていました。

人間疲れれば疲れるほど、仕事をやめることができなくなる。ノイローゼが近づいた徴候の一つは、自分の仕事はおそろしく重要であって、休暇をとったりすれば、ありとあらゆる惨事を招くことになる、と思いこむことである。
『ラッセル幸福論』第1部 不幸の原因 第5章 疲れ より


三大幸福論のなかではとくに『ヒルティ幸福論』が、仕事について多く筆をさいています。幸せについて考えるとき、”仕事”もまた外せないテーマ。

 年をとったら人はどう感じる?


ラストは話題の本を。主人公は78歳。帯にある反響の言葉の数々も高齢者だらけで「新『終活』小説」とのキャッチコピー。いわゆるシニア小説なのですが、かなりエンターテイメントしていて、年齢関係なく楽しく読めます。

主人公のハナさんは、ものすごく外見に気をつかっていて、雑誌にも載っちゃうほどのオシャレ。ときおり娘に「これ以上気合いいれるとイタくなっちゃうからね」的なことを言われていたりします(笑)。みんなキャラが立っていて、ユーモアも効いているし面白いのだけど、やっぱりシニアならではの描写がもちろんあって。たとえば将来、親や自分が”歩幅の狭さ”を気にするようになったりするのかなぁ……みたいな視点で読むといろいろな発見があるかも。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(冒頭の写真は横浜の里山ガーデンで撮ったシーズーたちです)

【関連記事】

心の時代を生きるための本10冊
非二元(ノンデュアリティ)の本は「読んでも読まなくてもかまわない」?
最近読んだ「考える力を鍛える」本10冊
マネーのスペシャリスト3氏(竹中平蔵・竹川美奈子・勝間和代)のオススメ本7冊
投資をはじめる前に読みたい15冊






幸福論
幸福論
posted with amazlet at 19.03.28
椎名林檎
EMI Records Japan (1999-10-27)
売り上げランキング: 43,810

posted by akika at 01:31| 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月27日

最近読んだライトノベル10冊〜恋愛・ミステリ・異世界〜

 
今日のなぞなぞ
「おすすめライトノベル10冊は?」

955_large.jpg

今日は、最近乱読したなかから、
ライトノベル10冊をぷちレビューしていきます。


えっと。
「ラノベを月1冊以上読む」……これが私の毎年の目標でした。
いつも達成できていなかった目標です。

やば、読むの忘れてた、っていう月がどうしても発生してしまっていて。


なので、今年は目標を変えました。


ライトノベルを年間12冊以上読む!


私にとっては、こっちの方がやりやすい。
達成のために、目標自体を変更してしまう力技(笑)。

でも、おかげで達成できました。
(シリーズ全巻読んだりしていたので、けっきょく12冊をゆうに超えてしまいました)
私信。目標変更のきっかけをくださってありがとうございます♪
私信2。オススメの作品を教えてくださってありがとうv 面白かったです♪



好きなひとはいくらでも大量に読むジャンルですが、
もしかしたらラノベにあまり縁がない読書家さんもいるかもしれません。

”ラノベ特有のノリ”が薄く、一般文芸がメインの読書家さんにとっても読みやすいものを多くセレクトしました。


ライトノベル好きも、そうでないひとも、
読みやすくて心にぐっと残る10冊をど〜ぞ〜♪



 源氏物語×学園


ヤンキー風の見た目で怖れられている少年にとり憑いたのは……早すぎる死をとげた学園の王子様、ヒカルだった。キャラクターや設定は源氏物語を下敷きにしています。書き出しも「いつのときだっただろう」と、まさに源氏そのまま。もちろん、源氏をまったく知らなくても楽しめます。友情も恋愛も、心の動きが丁寧に描かれていて◎。

以前の記事(最近読んだ「読書術」10冊)で紹介した“文学少女”シリーズの野村美月さんの作品です。

 夕顔、紫、朧月夜……


『葵』の続編。この巻のヒロインは引きこもりの少女、夕雨です。散りばめられた伏線と二転三転する物語。”怨霊”をめぐる謎など、ミステリ&サスペンス仕立てでイッキ読みしてしまいます。主人公とヒカルの友情にもほっこり。↓シリーズ続編にも源氏のヒロインたちがひとりずつ登場しますv


『“朧月夜” ヒカルが地球にいたころ……(4)』
『“末摘花" ヒカルが地球にいたころ……(5)』
『“朝顔" ヒカルが地球にいたころ……(6)』
『“空蝉" ヒカルが地球にいたころ……(7) 』
『“花散里" ヒカルが地球にいたころ……(8)』
『“六条" ヒカルが地球にいたころ……(9)』
『“藤壺" ヒカルが地球にいたころ……(10)』


 泣いちゃうけどオススメ


これ、すごく良かったです。4人の高校生の、恋愛もふくめた青春小説。元カレ・元カノという関係もあるのですが、ドロドロな話ではまったくありません。うつりゆく関係性の変化を美しく描きだしていて、とにかく切ない;;

喋るような語り口はしっかりライトノベル文体なのですが、一般の文学作品に負けないほどの観察眼や、こまかいところまで拾うていねいな心理描写。キャラも魅力的。以前の記事(最近読んだ純文学(J文学・L文学)10冊〜青山七恵さんの”ぼっち文学”について)で紹介したような、”ライトな純文学”が好きなひとはきっとお口にあうと思います。泣いちゃうけど、めちゃオススメ。


 子育てちゅうのお母さんへ


ライトノベルレーベルではないけれど。名作映画「おおかみこどもの雨と雪」の、監督の手による原作小説です。狼と人の間にうまれた子供たちを育てる母のお話。私も母子家庭で育ったので、この、なにかが欠けている感じの家庭の空気感が懐かしい。わが子の成長を願いつつ拒む……みたいなシーンもあるので、子育てちゅうのお母さんにオススメです。おみやげみっつたこみっつ。


 逢えばきっとわかる


名作「君の名は。」の映画制作と並行してかかれた原作小説(ノベライズ)です。不思議な力で入れ替わってしまったふたりが出逢うまでの物語。映像的で音楽的な文章が沁みる。↓以下、私の好きな一節v

こんなのは間違ってると、私は強くつよく思う。私たちが見知らぬ人同士だなんて、ぜったいに間違っている。宇宙の仕組みとか、命の法則みたいなものに反している。
「第八章 君の名は。」より


 チートってレベルじゃない


異世界のスライムに転生してしまった主人公。はじめはものを見ることすらできないのだけど、すさまじいスピードでできることが増えていく。”捕食者”という対象の能力を得られるスキルがすごすぎて、すぐに魔王レベルに。さすがにこれ以上はないだろ……そう思っても、まだまだ、さらに強くなります。

魔物たちの街をつくるところからはじまって、国家樹立、内政・外交、戦争も……。読み進めるほどに物語は壮大になり、加速度的に面白くなっていきます♪ もはやチート(※)ってレベルじゃない。次々にとんでもないスキルを獲得していくのが快感v

※ バグを利用するなどのズルをして、ゲームを有利にすすめようとする行為のこと。



 ゲーム好き歓喜


プレイ中のゲームの世界にはいってしまったふたりの高校生。序盤の村に超高レベルでたどつき、無双状態に……。でね。このふたり、かなりのゲーマーなので、知識量がすごい。地の文もセリフも、実在するゲームのネタのオンパレードです。

ドラクエ・FF・ウィザードリィ・メガテン・ゼルダ・オブリビオン・アトリエ・ときメモ・メタルギア・ルナティックドーン・グランドセフトオート・テイルズ・サモンナイト・イース・サイレントヒル・零……などなど。知るハズもないネタを振られて異世界の住人(NPC)たちが「???」みたいな(笑)。ゲーム好き大歓喜のポップな物語です♪


 ボーイ・ミーツ・天使


ボーイ・ミーツ・天使。その天使は、打たれた者の時間を巻きもどす注射器を持っていた……。ポップで読みやすいライトミステリ。巻きもどされた時間はべつのアイテムを使うことで逆に進めることもできる。タイムトラベルものというよりは、不思議な注射器の争奪をめぐるサスペンスがメインです。


 巨編、完結。


以前の記事(最近読んだ西尾維新5冊――メタフィクショナルな西尾試論)で紹介した西尾維新さんの「伝説シリーズ」。ミステリではなくファンタジーです。<地球>と戦う運命を背負わされてしまった、感情を持たない少年の活劇。

どの巻も分厚くて壮大な巨編。だけどあっという間に読み終えてしまう面白さ。キャラも「ルール」も展開も面白い”四国編”がオススメですが、できれば1冊目の「悲鳴伝」から順番に読むのが◎。

『悲鳴伝』
『悲痛伝』
『悲惨伝』
『悲報伝』
『悲業伝』
『悲録伝』
『悲亡伝』
『悲衛伝』
『悲球伝』
『悲終伝』


……どれが何巻だかわかりにくい?
それぞれのタイトルをよくみてみて。ツー、さん、フォー、ごー……。


 旅をする理由


再読です。喋る二輪車と旅人キノがさまざまな国を訪れる、短編連作。それぞれの国に独自の規律があり個性的。ときにはその”ルール”ゆえに滅びてしまった国も……。星新一さんのショートショートが好きな方にもオススメですv まだ見ぬ美しさと出逢うために、人は旅をする。





お口にあう本はございましたでしょうか?


ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(↑冒頭の写真はうちの愛犬モモが産んだ5匹の男の子のなかの、3男です。名前は”ライト”)

【関連記事】

最近読んだ「読書術」10冊
最近読んだ純文学(J文学・L文学)10冊〜青山七恵さんの”ぼっち文学”について
最近読んだ西尾維新5冊――メタフィクショナルな西尾試論
【泣ける】女性作家が描く切ない恋愛小説10冊【沁みる】
面白いライトノベル見つけました――土橋真二郎『扉の外』
【文学】ライトノベルを「研究」するための参考文献19冊【社会学】
【電子書籍】異世界ファンタジー『魔女と双子のポリティクス』をリリースしました





posted by akika at 02:13| 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月23日

面白いお話、買いました。――新潮社編「Story Seller」シリーズ

 
今日のなぞなぞ
「"面白いお話"が詰まった文庫アンソロジーは?」




文庫アンソロジーには傑作しか収録してはならない。
……そんな暗黙の掟でもあるのか、
文庫の選集というジャンルには良い本がたくさんあります。


今日紹介するのは、なかでも
「面白い物語」に特化したアンソロジー。

新潮社ストーリーセラー編集部の「Story Seller」シリーズです。

これまで3冊出ています。

「面白いお話、売ります。」
「読み応えは長編並、読みやすさは短篇並」

そのキャッチコピーにいつわりなく
、ほんとに全作品が面白かった。
順番に、ぷちレビューします♪


 Story Seller



冒頭を飾るのは、『アヒルと鴨のコインロッカー』を想い出させる、伊坂幸太郎さんらしいミステリ。近藤史恵さんが描く、自転車ロードレースの世界もひきこまれます。ロードレースについては、私はまったく詳しくないのですが、ぜんぜん知らない競技の物語にここまで夢中になれるなんて思いませんでした。

東京タワーへ行ったことがあるひとならニヤリとする描写が満載の佐藤友哉さん「333のテッペン」。有川浩さんの「ストーリ・セラー」は、書下ろしの「Side:B」を加えて単行本化されています(『ストーリー・セラー』)。有川さんらしいベタアマな恋からはじまる、感動作。




イチオシは米澤穂信さんの「玉野五十鈴の誉れ」と道尾秀介さん「光の箱」。

「玉野五十鈴〜」は『氷菓』の千反田えるのような、旧家の娘と侍女のミステリ。この「玉野五十鈴〜」をふくめ、名家のお嬢様ばかりがでてくる短編が集まって単行本化されています(『儚い羊たちの祝宴』)。



「光の箱」は、傑作ちゅうの傑作です。傑作短編とはこのことだ! と叫びたい。クリスマスの同窓会のお話なのですが、2重3重の謎と仕掛けがはりめぐらされ、ラストにすべてが回収されたときには、驚きとともにカタルシスとしか言いようのない読後感がある。名品です。

本多孝好さんの「ここじゃない場所」は、高校生の日常にサイキッカー(超能力者)という”非日常”がからんでくる物語。面白いけど、本多孝好さんに限っていえば、「Story Seller 2」に収録されている作品のほうが素晴らしすぎます。


【Story Seller 収録作品一覧】(敬称略)
伊坂幸太郎「首折り男の周辺」/近藤史恵「プロトンの中の孤独」/有川浩「ストーリ・セラー」/米澤穂信「玉野五十鈴の誉れ」/佐藤友哉「333のテッペン」/道尾秀介「光の箱」/本多孝好「ここじゃない場所」



 Story Seller2




冒頭に沢木耕太郎さんのエッセイを収録。沢木さんを迎えたことで、このアンソロジー・シリーズのファン層がさらに広がったかもしれません。カクテルのブラッディ・メアリーのお話です。

伊坂幸太郎さんの「合コンの話」は、はじめに「この物語のあらすじ」を語ってしまうという異色作。肉付けをしたあらすじ、メールの文面、辞書からの引用……など、視点、というよりは語りのトーンじたいがめまぐるしく変わっていきます。そのなかから、だんだんと濃厚な物語が立ちあがってくる。実験的だけど、ちゃんと”面白いお話”してます。

近藤史恵さんは今回も自転車ロードレースの物語。ハマる。米澤穂信さんの作品は、伝奇ものの舞台でありそうな地方都市(こじんまりとした商店街があって、神社があって、児童・生徒のすくない学校があって……というあの感じです)にたちあがる、不思議な物語。

佐藤友哉「444のイッペン」は今度は東京ビックサイトで、犬たちがイッペンに消えるという難事件が発生です。


イチオシは有川浩さん「ヒトモドキ」と本多孝好さん「日曜日のヤドカリ」。

「ヒトモドキ」はすごいです。いわゆるゴミ屋敷をつくってしまう伯母さんのお話なのですが、そのキャラクター造形たるや。ものすごいリアルで、不気味さや悲しさがひとつひとつの言動からひしひしと伝わってきます。こういう、”一般的には理解されがたいようなひと”にしっかりと寄りそうことができるのが小説というジャンルだと思うし、それこそが小説の使命のひとつだと私は思っています。傑作!

「日曜日のヤドカリ」は本多孝好さんらしい、情感のあるミステリで、「家族」というテーマを真正面から描いています。ラストのなにげない会話シーンの素晴らしさと言ったら! 以前の記事(【恋愛】10代のうちに読んでおきたい小説10冊【青春】)では『MISSING』を紹介しましたが、『MISSING』のような本多さんのリリカルなミステリが好きなら「日曜日のヤドカリ」はハズせません。せつないけど、あったかい。



【Story Seller 2 収録作品一覧】(敬称略)
沢木耕太郎「マリーとメアリー ポーカー・フェース」/伊坂幸太郎「合コンの話」/近藤史恵「レミング」/有川浩「ヒトモドキ」/米澤穂信「リカーシブル――リブート」/佐藤友哉「444のイッペン」/本多孝好「日曜日のヤドカリ」



 Story Seller3




前回に引き続き沢木耕太郎さん、さらにさだまさしさんを執筆陣に加え、またまた読者層が広がったかも。沢木さんはエッセイ。『深夜特急』の沢木さんだよな〜という感じの、旅のお話から、「いままでの人生で、大事なことは男と女のどちらに教えてもらったか」というテーマに移ります。さだまさしさんについては、じっくり語りたいので後述。

近藤史恵さんは今回もロードレース。ちなみに「Story Seller」(1〜3)に収録された作品も含め、サクリファイスシリーズとして単行本になっています(『サクリファイス』『エデン』『サヴァイヴ』)。





湊かなえさん「楽園」はトンガ王国を舞台にした、南国のかおりのする物語。米澤穂信さんの「満願」は、居候学生……昔ふうに言えば書生が主人公。題材からか、どこか夏目漱石とかあの時代の雰囲気がありますが、現代小説です。ミステリ。

有川浩さんの「作家的一週間」は、ウソともホントともつかない、作家生活の素描。作中でまるきり別のショートショート作品が読めるというオマケつきです(笑)。佐藤友哉さん「555のコッペン」、今度は東京駅です。この東京名所シリーズも、単行本化されています(『333のテッペン』)。




イチオシはさだまさしさんの「片恋」。

音楽はもちろん知っているけど、さだまさしさんの小説にふれるのは私は初めてでした。「片恋」は中編と言ってもいいくらいの長さなのだけど、読みやすく……というか、ユーモアたっぷりで軽い文体は、とてもライトノベルっぽいです。収録作品のなかで一番ラノベっぽい文章がさだまさしさんでした。意外なことに。

テレビ番組の制作会社で働く女性、南が主人公。ひき逃げされて死んだ見ず知らずの男性が、南の連絡先を握っていて……。という不可解きわまるサスペンスです。驚きの真相とともに男性のある”想い”があきらかになる。

なにより物語として面白いのですが、報道という行為に葛藤する南の描きこみが素晴らしかったです。 作中で、秋葉原通り魔事件をモデルにしているであろう場面が出てきます。凄惨な現場に、職業的な使命からカメラを向ける南。「そんな場合じゃねえだろう! 邪魔だ!! どけバカ」と怒鳴る救助隊員。振りむけば、通行人たちが好奇心にみちた眼で携帯のカメラをこちらに向けていた……。


たった今あなたの目の前に瀕死の人がいます。
何か他にしたいことはないのですか?
”記念撮影” (431ページより)


……すごいシーンですよね。

私も報道やマスコミに多少は関わっている身として、その無遠慮さや暴力性には無関心ではいられないのですが。今回、さだまさしさんの作品にざくりとやられた気がします。


【Story Seller 3 収録作品一覧】(敬称略)
沢木耕太郎「男派と女派 ポーカー・フェース」/近藤史恵「ゴールよりももっと遠く」/湊かなえ「楽園」/有川浩「作家的一週間」/米澤穂信「満願」/佐藤友哉「555のコッペン」/さだまさし「片恋」



 Fantasy Seller・Mystery Seller


……以上。


「Story Seller」っていうシリーズは
オススメだよぉ☆(*´∇`*)ミ☆



というお話でした。ちなみに、

ファンタジーに特化した『Fantasy Seller』
ミステリに絞った『Mystery Seller』


というのも出ています。
キャッチコピーは

「もうひとつの世界、売ります。」
「とっておきの謎、売ります。」







今後の展開がかなり楽しみなアンソロジー。
至福の読書タイムを約束するシリーズです。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか
 


【関連記事】

【恋愛】10代のうちに読んでおきたい小説10冊【青春】



posted by akika at 01:18 | TrackBack(0) | 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月19日

【徹夜本】地下東京に広がる腐海――貴志祐介『新世界より』の社会システムと生態系がすごい

 
今日のなぞなぞ
「生態系と社会システムがユニークすぎるジャンル分け不能の徹夜本は?」



不毛の大地・東京の地下。
古代の遺物であるメトロ網を食い散らかすように、無尽の洞窟が伸びている。


動物の生き血を求めるナメクジ。
細長い身体を光らせ、獲物の吸着を待ちわびるヒル。
うごめく影の正体は、集団で壁を這うダニの行進。

……そこは、独自の進化をとげた生物たちが織りなす「地獄」だ。


本書のクライマックスは、こんな地下東京を舞台にしています。



☆★☆





今日紹介するのは、『新世界より』

以前の記事(徹夜本見つけました――貴志祐介『悪の教典』〜あわせて読みたい「倒叙ミステリ」)にひき続き、貴志祐介さんの徹夜本です。


『悪の教典』は文句なしのノンストップ・サスペンスでしたが、『新世界より』は一筋縄ではいかない。
なんというジャンルに分類したらいいのかわからない作品です。

たいていの本は、ちょっと手に取れば
本読みの勘で「こんな内容なんだろうな〜」というのがだいたいわかるものだけど。

本書は、さらっとページをめくってみても、
帯のコピーを見てみても、どんなジャンルなのか予想がつきませんでした。
それどころか、実際読みはじめてもどんな展開になっていくのかが見通せないのが凄いです。



舞台は、未来の日本。
人類は科学を手放し、”村”単位の原始的な生活を送っている。
でも、人間はみな「呪力」をあやつる術を身につけている。

主人公は魔法学校ならぬ呪力学校みたいなところに通ってるのね。
人は攻撃的な感情が持てないよう遺伝子操作されているから、
とても平和で。ストレスフリーな社会なんだけど。
ひとつの掟があって。


八丁標(はっちょうじめ)の外に出てはならない……。


少年少女は未開の地を冒険するうちに、
「大人達が隠しているもの」の正体に気づいていく……。



☆★☆





伝奇っぽいといえば伝奇っぽい。
冒険・青春小説でもあり、ファンタジーといえばファンタジーなんだけど。
ミノシロモドキという異形の生物が「古代の図書館のデータ端末」になっていたり、
いろいろな生態系や進化の具合が細かく説明されていたり、SFらしさもある。
独自の社会システムもよくわかるように描かれていて、


ほんと、
なんて言ったら言いんだろうね。

「名づけようのないエンターテイメント小説」

としか言えません。


主人公たちは、おおげさではなくどのページでも危険にさらされています。
深呼吸する暇もない。息を切らしながらページをめくってしまう、
極上のエンターテイメント
であるのは確かです。



でも
本書の魅力は、ユニークすぎる社会システムと生態系
これでもかというくらい濃厚に作られています。


攻撃性を芽生えさせぬよう、厳重に管理された教育システム。
ストレスを感じると、人は
ボノボ(ピグミーチンパンジー)のように互いに性的接触をして興奮を抑える。

アリのようにコロニーを作り、なわばり争いを繰り返すバケネズミ。
危険因子を排除するため、品種改良されたフジョウネコ……。


↑冒頭の地下東京の世界は、たとえるなら
「風の谷のナウシカ」の「腐海」みたいな感じかな。

さまざまに進化した異様な生物たちが
おそましくも美しい。


コウモリの糞を起点とする
ユニークな食物連鎖が成り立っていて面白いです。


あ、『蟲師』の世界とかが好きなひとにもオススメかも。

風の谷のナウシカ [DVD]
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2014-07-16)
売り上げランキング: 368




↓アニメ化。漫画化もされているようです♪





☆★☆



……なんだかこれだけ書いても
本書の魅力の一割も伝えられてないような気が今日はします^^;


とにかく、

この濃厚な世界観にどっぷりひたってくださいね(笑)。




『新世界より』っていう本が
オススメだよぉ〜☆(*´∇`*)ミ☆



というお話でした。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか


【関連記事】

徹夜本見つけました――貴志祐介『悪の教典』〜あわせて読みたい「倒叙ミステリ」
『エンタテインメントの作り方』を読んでびっくりした話
【ミステリ】読み始めたら止まらない徹夜本10冊【SF】
【新しい脳】進化心理学を学びたい人のための11冊【究極要因】
徹夜本見つけました――新堂冬樹『カリスマ』〜あわせて読みたい「カルト宗教」本
【電子書籍】異世界ファンタジー『魔女と双子のポリティクス』をリリースしました








posted by akika at 15:47 | TrackBack(0) | 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ブログパーツ アクセスランキング