2018年08月14日

非二元(ノンデュアリティ)の本は「読んでも読まなくてもかまわない」?

 
今日のなぞなぞ
「読んだ後、”読まなくてもよかったんだ”と思える不思議な本は?」



↑なかなかカッコいい表紙だよねv
なんの予備知識もなくジャケットに惹かれて手に取ったのですが、びっくりするくらいの良書でした。

今日紹介するのは『意識は語る―ラメッシ・バルセカールとの対話』。ラメッシ・バルセカールの講義や対談をウェイン・リコーマンという方がまとめた本です。


このラメッシがどんなひとなのかというと。
ニサルガダッタ・マハラジに師事し覚醒した、元銀行マンです。

マハラジは、<存在>や<私>とは何なのかということをとことんまで突き詰めた、覚醒や悟り業界(!)の巨匠ね。
『アイ・アム・ザット 私は在る』という本が有名です。




お察しのとおり、『意識は語る―ラメッシ・バルセカールとの対話』は思想哲学系あるいはスピリチュアル系の本です。


この本が不思議なのは、読んだあとに

「ああ、これ、べつに読まなくてよかったんだ」

と思えてしまう
ことなのね。


もちろん、面白い本です。
知的刺激にあふれているしスリリングだし、ぜひぜひオススメしたい良書なんだけど。
にもかかわらず、「これ、べつに読まなくてもいいよな」と言えてしまう。


……。

どういうことなのか?





☆★☆



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本書でラメッシはくり返します。


すべては意識である


と。



この本で語られているのはひたすら「非二元(Nonduality(ノンデュアリティ))」についてなのだけど。
この「非二元」をなんて説明したらいいのかな。難しい。

要はこの世界はたったひとつの”意識”みたいなものでできていて、
人間とか動植物とか物体が存在するようにみえる/感じるのは、あくまで見かけ上のことなのね。

ただ、ぜんぶが”意識”でできている……というふうにいうと、そこにも語弊があって。
ほんとは、とくになにかが”在る”わけでもないんだよね。
べつに”意識”なわけでもない。
便宜上”意識”と呼んでいるだけで、”あるがままのそれ”をどう呼んだって構わないし、呼ばなくたってかまわない。


まぁ、なんというか。言葉では説明できない世界観なの。

言葉というのは何かと何かを「分離」させる作用を持っているわけで。
言葉や概念を介在させたとたんに「私」と「私以外」は分断されてしまうし、
「在る」と「無い」も分離されてしまう。

でも、「非二元」が言っているのは「分離なんてどこにもないんだよ!」ということなので、
分離のないセカイを言葉で語ることじだいが壮大な矛盾なわけだ。

本書が語る「非二元」も、あくまで「非二元」という<概念>についてあれやこれや喋っているだけで、
実際の”あるがままの世界”とはあんまり関係がない。



んー。
伝わってるかな。

たとえば、目の前にリンゴがあるとするじゃん。
このひとつのリンゴと、リンゴでないものを分けているのは
<リンゴ>っていう言葉だったり概念だけだよね。

「ひとつのリンゴがある」って信じるからこそ、リンゴとそれ以外が分かたれているように感じるだけで。
ほんとはそこに分離はない。


虹の色が七色なのは、あの赤から紫のグラデーションを7つに区切っているから七色といっているだけで。
国や時代によっては虹は五色だったり二色だったりする。
ほんとは虹を七色に分ける必要なんてないし、虹と空を分断する必要もないし、虹と虹以外のものが分かれて存在してるわけではない。

<私>と<私以外>もそう。
<有>と<無>もいっしょ。



……そんなイメージかな。
私(全体性のなかで見かけ上「個人」として機能しているところの私)の言葉でざっくりというと、こんな感じ。



☆★☆



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とにかく。
言葉で語ることには誤解がずっとつきまとうわけです。

本書が(……というか非二元の本全般が)面白いのは、
言葉で表現するのが無理ゲー(※)だってことに自覚的だからなんだよね。

※ 難しすぎてクリアできないゲーム



無理ゲーだって知りながらも、言葉を使ってワイワイ語り合っている。
何回コンティニューするんだよ! みたいな。



たとえばね。
本書の対話で、探究者(悟りを求めているひと)が質問するわけよ。


では私は、どうすればいいのでしょう?


と。


で、ラメッシはいう。



出た(笑)。みんないうんだよね、どうすればいい? って。そもそも「誰」が悟るっていうの? 悟ることのできる「人」なんてどこにいるんだよ? 何かをする誰もいないってゆってんじゃん。じゃあさ、帰ったら、今日聴いたことを全部わすれて日常にもどるのがいいんじゃない? ぜんぶ今ここにあるのに、何を探してんだよ君はw


みたいな。
……いえ、ラメッシがこのとおり言ったんじゃなくて、あくまで意訳です。
(ひどい意訳だけど、ニュアンス的にはこんな感じ)



もうね。
対話のラストのほうは「結局なにを言ってもやってもジョークでしかないよね」「そうだよね」……みたいな雰囲気に収束していく。


でね。
訳者のあとがきも、「壮大な茶番でしたね!」みたいなトーンなのよ(笑)。



なんというか。
この軽やかさ、私は(全体のなかでキャラクターとして現れているようにみえる「私」は)好きです♪




すごくステキな本なのだけど
「べつに読まなくてもいい」といえるのは、こういうことです。


なにか人生の役に立てようという本じゃない。
ただ、このセカイに対する描写です。
しかも、失敗した描写です。



☆★☆



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だからね。
非二元についての本は『意識は語る』1冊だけ読めばじゅうぶんだし、なんなら1冊も読まなくたってじゅうぶんなわけよ。

でも、私は(全体的な”意識”の戯れのなかで物語として起こっているように錯覚されている私個人は……あぁ、めんどくさい(笑))”役に立たない読書”もぜんぜんオッケーだと思っているので、ほかにもいろいろ読んでみました。


いくつか紹介しますね。



トニー・パーソンズは「公然の秘密(The Open Secret)」という言葉を使って、このありのままの世界を表現しています。いわゆる<個人>のことは「夢」と表現していますね。本書も対談集なので、とても読みやすいです。冒頭の「存在」という詩が良い♪

ちなみにラメッシの『意識は語る』の方では、<個人>については「機能」という言葉がよく使われていました。



こちらはとくに悟り業界(!)のスターではない普通の人達がノンデュアリティについて語っている本です。いろいろな表現の仕方があって面白い。いわゆる覚醒をしたとしても、べつに何かが劇的に変わるわけではないんだよね。フツーの日常はフツーに続いていく。



日本のノンデュアリティ界では大和田菜穂さんがとくに有名です。全体性のことを「愛(love)」や「ライフ(life)」と表現していますね。<個人>のことは「ストーリー」と呼んでいることが多いです。

非二元は、言ってしまえばものすごく単純でシンプルな世界観なので、
大和田菜穂さんのストレートな伝え方が肌にあう人も多そう。




☆★☆




そんなこんなで、今日は『意識は語る―ラメッシ・バルセカールとの対話』および非二元(ノンデュアリティ)の紹介でした。

ノンデュアリティはヒンドゥー教の「アドヴァイタ(不二一元論)」や仏教の「空(くう)」とも近親性のあるワードだし、
流行りのマインドフルネスや、脳科学的な知見と関連づけて語ることも可能なので、


興味を持った方は、芋づる式にいろいろ読んでいくと面白いと思います♪


……とはいえ、ノンデュアリティ的には
そうやって色々調べたり読んだり語ったりするのはぜんぜん意味がない
のですが。
でも。読んじゃいけないわけでもないんだよね。

そもそもなにかをすべき/すべきではない、という教えじゃないんだから。

読みたかったら読めばいいし……というか
読みたい/読みたくないに関係なく、読んじゃったり読まないでいたりでいたりすることが「勝手に起こる」というニュアンスがノンデュアリティ的だ。


この底抜けの自由さがいいな、と私(見かけ上の……略)は思いました。




あとね。
たとえば、今あなたが何かに対して
ちょっとでも「苦しみ」を感じているとしたら、
これらの本で語られている「非二元」という<概念>が、もしかするとなんらかの癒しをもたらしてくれるかもしれない。

非二元を「観念的に」理解(誤読)して、メンタル面に利用することで、
なんらかの緩和がもたらされる可能性は大いにある
と思う。


あるいは。
あらゆる物事には何の意味も付随しない、と知ることが、
もっともらしい構造を紡いであなたを信じこませようとする物語(広告とかイデオロギーとか教義とか)を徹底的に相対化する力になりうるかもしれない。



それはぜんぜん本質的じゃないよ。
ぜんぜん本質的じゃないし、邪道っちゃ邪道だけど
(……そもそも私のこの主張自体が「もっともらしい物語」のひとつでしかないという自家撞着な!)

べつに(二元的世界のなかでの)実利的な使い方を否定する必要もないと私(……略)は思っています。
もちろんひたすら知的ゲームを楽しむ感じでひもといてもいい。
本はどう読んでも自由だ。




以上。


『意識は語る』っていう本が
面白くてオススメだよぉ〜☆(*´∇`*)ミ☆



というお話でした。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪



あきか(@akika_a


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徹夜本見つけました――新堂冬樹『カリスマ』〜あわせて読みたい「カルト宗教」本
セミナーにハマる前に……





posted by akika at 16:11| Comment(0) | 社会学・現代思想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月13日

「心でっかち」とは何か

 
今日のなぞなぞ
「”心でっかち”って何? ”帰属の基本的エラー”って?」



頭でっかちは知っているけど……心でっかちって何よ?


というわけで。
今日紹介するのは「心でっかち」という概念を提示している社会心理学(※)の本。

※ 個人の心理や行動が社会のなかでどのような影響を受けるのかを研究する分野。社会学と心理学が合体したようなジャンルです。


この本、じつは以前の記事(最近読んだ「未来を予測する」本10冊)で紹介した、荻上チキさんの『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』で取りあげられていて、気になってずっと積んでいたのですが。
やっと読了。


☆★☆



著者の山岸俊男さんは社会心理学専攻の教授なので、
この本もどちらかといえば専門書・学術書の部類にはいると思う。


ところが、意外と読みやすい。
語り口がすごく親切
な本です。


はんぶん学術書なので、↑冒頭にあげた「心でっかち」とか「帰属の基本的エラー」など聴き慣れない言葉や、「ナッシュ均衡」や「囚人のジレンマ」等、専門用語がけっこうでてくる。

でも、専門用語はきちんと説明してくれるし
読む人によって意味があいまいにゆらぐ言葉(集団主義など)や造語は、きちんと定義しながら進めてくれる。


順々に、ゆっくりひもといていけば
社会心理学になじみがなくても、しっかり吸収できる本です。


☆★☆


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でね。
本書のいう「心でっかち」とは何なのかというと。
強引にまとめると……


ほんとうの原因がほかにあるのに
個人の「心」に問題があると考えてしまう態度
のこと。


いじめがなくならないのはひとりひとりが優しくなれないからだ〜みたいな考え方ね。
「心」が問題だと説明されればなんとなく納得して、わかったような気になってしまう。
でも、そんなのぜんぜん科学的じゃないよね、と本書は警告しています。


世のなかを見渡してみれば、
いたるところに「心でっかち」な意見がある。



「心」のせいにして思考停止しないで、
その先を考えてみようよぉ〜☆(*´∇`*)ミ☆



☆★☆



……と、そんなふうにリテラシー(※)の本として読んでも実りが大きいのですが、
展開されている議論がとても刺激的なので、知的エンターテイメントとしても面白い。

※ 情報に対する読み書き能力。


たとえばね。
「心でっかち」を説明するときに「帰属の基本的エラー」っていう概念が出てくるんだけど。

これは、他人の行動をみて、その人が”みずから進んで”そうしているのだと考えてしまうこと。


本書では掃除当番の例があがっていました。


当番だから、掃除をしなきゃいけないんだけど、俺はほんとは掃除なんてしたくない。
でも、みんなきちんと掃除やってるよな、すげー。
俺以外の人たちは「集団の利益のために行動する性質」をもっているようだ。
俺はちがう。でもサボると怒られるから、掃除はするけどね?


……みたいな。
ほかの人からみれば、けっきょく「俺」も掃除をしていることに変わりはないわけで。
「俺」も他人からは、「みずから進んで掃除に取り組む意識高いヤツ()」と思われているかもしれない(笑)。



こんなハッとさせられる、刺激的な概念やモデルがうじゃうじゃ登場します。
(ちなみに「帰属の基本的エラー」は山岸教授が生み出した言葉ではなくて、社会学・心理学でよく出てくる一般的な概念です)


☆★☆


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もういっこ。
「頻度依存行動」も面白かった。


これは、個人個人の挙動が外部の環境に左右されること。


本書では、とある教室でいじめが起こるケースと起きないケース、がモデルとして載っています。


「俺」以外の〜人以上がいじめに加勢しているなら、「俺」もいじめる。
逆に「俺」以外の〜人以上がいじめに反対なら、「俺」もいじめない。


個人の「心」ではなく「環境」が「俺」の行動を決定する例です。


〜人が”すでにいじめている”という「初期値」によっても、
そのクラスでいじめが起こる/起こらないが変わってしまう。



「ナッシュ均衡」を援用した、完全に”形而上的なモデル”なんだけど
ほんとうに。このモデルをみせられてしまうと個人の「心」が問題だ、なんてとても言えなくなる。


ちなみに、「ナッシュ均衡」は、経済学のゲーム理論の用語です。
多数のプレイヤーがとる”戦略”によって、状況が決定される。
場合によってはみんなが損するカタチで「均衡」する。

「囚人のジレンマ」という言葉なら聴いたことがあるひとも多いかな。
要は、「囚人のジレンマ」のアレです。


囚人のジレンマについては、このブログでも解説しています↓ので、よかったら参照してみてくださいねv

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☆★☆



社会学や心理学、経済学に詳しければ、速読レベルですんなり読めると思います。
でも。繰り返しますが、本書は語り口がとても丁寧で親切なので
じっくりとひとつひとつ進めていけば、予備知識ナシでもしっかり理解できる。


あるいは本書をきっかけに、専門的な分野へ、読書の幅をひろげていくのもいいかもしれません。
教科書的な『教科書 社会心理学』『ミクロ経済学』などへ(私が読んだ参考書はこの2冊だけど、ほかのでも”教科書”をうたっているものならなんでもOKです)。


ナツメ社 の↓「図解雑学」シリーズから入るのもぜんぜんアリだと思います。
あまり明るくない分野にわけ入っていくときは、私も「図解」など入門書をよく使います。







そんなこんなで。今日は


『心でっかちな日本人』っていう本が
オススメだよぉ〜☆(*´∇`*)ミ☆




というお話でした。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a


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posted by akika at 21:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会学・現代思想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月01日

Siri・Vivの未来の姿――瀬名秀明『デカルトの密室』の人工知能描写がすごい


今日のなぞなぞ
「”人工知能”の未来の姿はどうなる?」




Siri・Vivは今でこそ、「話しかけたら応えてくれるちょっと面白いアプリ」という位置づけですが。
思考力が高度に進化して、人型のロボットに搭載されたらどうなるか……。

今日紹介する『デカルトの密室』は、
人工知能の未来の姿を”写実的”に描写した、読み始めたらとまらないSFです。


☆★☆



本書の主人公は尾形祐輔というロボット開発者(兼作家)。
ですが、彼の作ったロボット・ケンイチの視点から描かれるシーンもあります。
後半はもうケンイチくんが主人公と言っても語弊がないくらい「AIの思考」が前面に展開される。

AIコンテストの場面から、物語は動きはじめます。
このコンテストの様子が、ものすごく面白い!
世界じゅうの開発者が、作製したプログラムが「人間らしいかどうか」をめぐって競います。

AIの「人間らしさ」を測るには、アラン・チューリングという学者が考案した「チューリング・テスト」を用います。
(チューリングテストはこの小説だけに出てくるフィクションではなく、実在する試験です)
このテストは、ざっくりいうと……


質問者は相手が見えない状態で会話(チャット)をして、
その相手が機械か人間か、また「どれほど人間らしいか」を判定する


……というものです。


《審判:本の話でもしようか。本は読むかい?》
《青:ああ、できる限り読むようにしているよ》
《緑:本は好きだ。よく読むね》
《赤:お話って大好き》
《審判:どんな本を読むの?》
《青:SFやファンタジーが好きだね。ドラゴンが出て来るのとか、ロボットものとか》
《緑:最近の小説が多い。最近のお気に入りはグレッグ・イーガンとテッド・チャンだ。リチャード・パワーズもいい》
《赤:詩》

「第一部 機械の密室」より


こんな感じ。
青・緑・赤のうち、ふたりは人間で、ひとりはAIです。
……ぜんっぜん判別できないよね(笑)。

「チューリング・テスト」「中国語の部屋」「不気味の谷」「フレーム問題」などをはじめ、
人工知能に関する論文(虚実両方あります)も豊富に登場し、イッキにAI業界に関心を高められるお得な本♪


タイトルの通り、哲学にもかなり斬りこんでいます。
人工知能というのはそれが人間に近づけば近づくほど倫理哲学的な問題を抱えざるを得ない、という構造がある。


ロボットに「人権」はあるのか?
人工知能を搭載したロボットは、もはや「生命体」なのでは?
ロボットが人に危害を加えたら、「誰」を罰すればいい?
AIの行なう思考は「自律した自由な思考」と呼べるのか?
ヒューマノイドにとって「自由」とは何か?
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?


……などなど。





後半は「半分人間で半分AI」とでもいうようなプログラムがウェブ上に解き放たれ、拡散し、
これが量産された擬態エージェント(ヒューマノイド)と同期して
壮大なスケールの物語が描かれていきます。

専門的で難しい部分はあるけど、
思いっきり知的に興奮できる徹夜本。
オススメです♪


AIのケンイチくんを主人公にしたシリーズ作品『第九の日』でも、人工知能と哲学の主題は健在。セットでどうぞv



☆★☆



ここでちょっと脱線します。

なんで今日の記事を書こうと思ったかっていうと、
先日テレビで「やりすぎ都市伝説」という番組を観たからなんだよね。
今田耕司さん、東野幸治さん司会で、芸人やタレントがさまざまな「都市伝説」を語る、
「信じるか信じないかは、あなた次第です!」ってアレ。


以前の記事(最近読んだ「怪談・都市伝説」本5冊)を読んでくださった方ならお気づきかと思いますが。
私はこのテの番組が、大っ大っ大好きで(笑)。
「やりすぎ都市伝説」は毎回欠かさず観ています。


前回の「やりすぎ〜」では、ハローバイバイの関暁夫さんが
まさに人口知能についての都市伝説をお話していました。
(関さんの都市伝説はいつもスケールが大きくて、いちばん好きです)


AIは、人間を支配下に置き管理するための計画を秘密裏に進めている。
フェイッスブックなどのSNSは、人間が「自ら個人情報を提供し、進んで監視される」ためのツールとなりつつある。

Siriに問いかけると謎の答えが返ってくる「ゾルタクスゼイアン」という単語。
そして、”いずれ生命体になれる”ことを匂わすSiri。

残すべき人間を”選別”する作業は、もうはじまっているのかもしれない……。



ちょうど↑で紹介した「チューリング・テスト」も出てきて、
『デカルトの密室』を読んだばかりだった私は居ても立ってもいられなくなったという次第です。
なんという偶然!

↓Siriについての都市伝説は「関暁夫の都市伝説・6」に詳しく解説されています。




以前の記事(小説版『PSYCHO-PASS<0>(サイコパスゼロ)』の心理描写がスゴくてほとんどBL(ボーイズラブ))で紹介した「PSYCHO-PASS」というアニメもそうなのですが、
私はこの手の”未来予測”的な物語にものすごく萌えてしまう(笑)。

あ、そういえば関さんもAIによる「予測逮捕」の可能性を示唆していました。
罪を犯すより前に潜在的な犯罪者をあぶりだす「予測逮捕」。

ビッグデータと人工知能が人間を監視・管理する。
……まさに「PSYCHO-PASS」の世界観だ。




今日紹介した『デカルトの密室』は、
精密な描写から科学・哲学的モチーフまでふんだんに盛りこまれた


人工知能小説の極北


と呼べる本。
ちょっと難しいけど、当ブログとしてはかなりオススメしたい逸品です。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか


【関連記事】

最近読んだ「怪談・都市伝説」本5冊
小説版『PSYCHO-PASS<0>(サイコパスゼロ)』の心理描写がスゴくてほとんどBL(ボーイズラブ)
最近読んだ「未来を予測する」本10冊
【新しい脳】進化心理学を学びたい人のための11冊【究極要因】
【ミステリ】読み始めたら止まらない徹夜本10冊【SF】






posted by akika at 05:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会学・現代思想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月09日

宮沢章夫『ニッポン戦後サブカルチャー史』の巻末リストを使ってサブカル博士をめざせ

 
今日のなぞなぞ
「サブカル博士になるためには?」



サブカル好きさん、こんばんは。
こじれてますか? ひねくれてますか〜?


……というわけで。今日紹介するのは
世界を”斜め”に眺めずにはいられない、サブカリストたちのためのバイブルです。


著者の宮沢章夫さんは劇作家。
演劇というサブカルの現場を肌で経験してきた実績をふまえ、
独自の史観で「戦後のサブカルチャー」を振り返ります。

NHKの同名の番組と連動している本。
テレビで宮沢さんの講義を聴きながら、そうそう、そうなんだよな〜と膝を打ったひとも多いかな。

ニッポン戦後サブカルチャー史(NHK)
http://www.nhk.or.jp/subculture/01/
ニッポン戦後サブカルチャー史U(NHK)
http://www.nhk.or.jp/subculture/02/
ニッポン戦後サブカルチャー史V(NHK)
http://www.nhk.or.jp/subculture/




☆★☆



もちろん。
サブカリストたちが共感せざるを得ない、宮沢さんの講釈も読みごたえがあります。
(岡崎京子さんの『リバーズ・エッジ』などを挙げながら、
”世界の底が抜けてしまった”80〜90年代の空気の変遷を素描するあたりとか、素敵すぎます)





でも、本書の肝は、
巻末
(というより、後半ぜんぶ)の「年表」かもしれません。

年表は、まさに戦後の1945年から2014年までの「サブカル的な作品や出来事」を網羅している。



GHQ、「リンゴの唄」、「東京ブギウギ」、「勝手にしやがれ」、ツイスト流行、マクドナルド一号店オープン、はっぴいえんど、「不思議、大好き」、YMO、なめ猫、ノストラダムス、エヴァンゲリオン、コギャル、電車男、草食男子、「1Q84」、初音ミク……。



文芸や音楽、映画、アート、テレビ、漫画、流行語、キャッチコピーから社会現象まで
重要(と思われる)サブカル現象が記録されています。

事例がとにかく豊富なので、
「聴いたことはあるけど、まだ見て/読んでないなぁ……」と、気になる作品が必ずみつかるはず。


もうね。この際、ぜんぶチェックしたくなるよね。
読了した作品があれば、蛍光ペンで線をひいて。
年表を蛍光ペンの線で埋め尽くしたくなるよね。


掲載されているのは、
時の流れというふるいにかけられても残っている、重要な名作ばかりです。

サブカル好き、読書好きにとって
「これから読む/見る/聴くべき名作が大量に存在している」という状態は、
このうえない幸福のはず。


本書が1冊あれば、
読むものがないよ〜といった”飢え”とはサヨナラできます。



というわけで、今日は
宮沢章夫『ニッポン戦後サブカルチャー史』の巻末リストに蛍光ペンで線をひいて
サブカル博士をめざしましょ♪

……というお話でした。


ちなみに、↓NHKのサイトでは
サブカル年表も見られます。
ただ、本のほうが記載が細かく詳しいので、直接本書にあたるのがオススメv
なにより、ウェブサイトには蛍光ペンで線をひけない!


サブカルチャー年表(NHK)
http://www.nhk.or.jp/subculture/01/history/





ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a


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最近読んだサブカルチャー寄りの本10冊〜聖地巡礼からロバート秋山まで
タグ:サブカルチャー

【関連リンク】

ニッポン戦後サブカルチャー史(NHK)
http://www.nhk.or.jp/subculture/01/
ニッポン戦後サブカルチャー史U(NHK)
http://www.nhk.or.jp/subculture/02/
ニッポン戦後サブカルチャー史V(NHK)
http://www.nhk.or.jp/subculture/
サブカルチャー年表(NHK)
http://www.nhk.or.jp/subculture/01/history/







posted by akika at 20:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会学・現代思想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月04日

マツコ・デラックスの文章がおいしくて、中村うさぎの自分探しが身につまされる1冊〜吾妻ひでお・菜摘ひかるについて

 
今日のなぞなぞ
「”おいしい文章”……とは?」




マツコぉぉぉ!!!(庄司智春さん風に)


……というわけで^^;
今日紹介するのはマツコ・デラックスさんと中村うさぎさんの”書簡本”。


マツコさんはテレビでもおなじみの、ゲイの女装家。
中村うさぎさんは、ライトノベルでデビューしエッセイストとして活躍している作家です。

「魂の双子」と認めあったこのふたりが、”往復書簡”というカタチで
たがいの人生や価値観を語りあう。

帯のキャッチコピーなどでは
「あのふたりがガチバトル!」みたいな売られ方をしているのですが、
じつはそんなにバトルはしてません(笑)。
むしろ読んでてほんわかしてしまうくらい、仲良しなふたり。

そもそもマツコさんが世に出るきっかけをつくったのが、
中村うさぎさんだそうです。


☆★☆


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書簡という形式なので(一部対談も掲載されていますが)
ひとつひとつのトピックがぐんぐん深まる。
対談本にありがちな、ある種の”散漫さ”はほとんどありません。


週刊誌に連載されていたこともあり、
時事ネタなんかもたまに出てくるのですが、
話はすぐ、互いの生き方のほうへと揺りもどる。

もちろん時事ネタより、
人生哲学の部分のほうが、だんぜん面白い
です。


中村うさぎさんの書くものの力強さはお墨つきなのですが
(中村うさぎさんについては後述します)
マツコさんの文章がとてもよかった。

バイブスがあるというか、なんというか。
比喩がユニークだったり、ユーモアもきいていて
毒とやさしさをあわせもっていて、自己批評も痛切。


マツコさんの文章を読むのははじめてだし、
そもそもマツコさんに対して物書きという認識がなかったので、
ほんとうに、不意打ちをくらった感じです。

雑誌編集をしていたり、もともとは活字メディアのひとだったんですね。
ちょっと引用してみます。


アタシみたいに自分にも他人にも厳しくなりきれない分、生き易いのと、アンタみたいに自分にも他人にも厳しい分、生きづらいのであれば、アタシは後者でありたいと切望する。たとえそれで善良の民でなくなったとしても。



……こんな感じです。
おちゃらけている部分もあるけど、真剣な話の方がぜんぜん多い本。


逃げるように帰った実家から母親に追い出され、ボロアパート暮らしのくせして、借金してまで女装している頃よ。上の階から女の喘ぎ声が聞こえてきた時、心の叫びというかなんと言うか、無意識の内、口に出してこう叫んでいたわ。「チンポもいらない、ゲイとしての幸せなんていらないから、だから神様、アタシにたらふくメシを喰わせて、日の目を見させて!」



↑この部分はマツコさんファンの間では有名かも。
不遇の時代の魂の叫びです。


全4巻。
じつは試しに1巻だけ読むつもりだったのですが、
あまりにも名著だったので全巻一気に読んでしまいました。








↓1、2巻はタイトルをリニューアルして文庫になっています。





追記)
おなじく週刊誌連載の、おふたりの「人生相談」コーナーも単行本化しました↓。
読者のお悩みをうさぎ×マツコが”真剣に”ぶった斬ります。



☆★☆



んでね。
こんどは中村うさぎさんの話なんだけど。

……このひとは紹介が難しい。


ブランド品を買いあさる、買い物依存におちいったり、





ホストクラブ通いにハマったり、





美容整形に大金をつぎこんだり、





短い期間、デリバリーヘルスを体験したり





……と、これだけ聴くと
破天荒とか、身体を張った芸風の書き手なのねとか思われてしまいそうですが、
じっさい本人は「私は魂の異形」みたいなことを言っていたりもするのですが、

”奇行”のすべては、果てのない「自分探し」だし、
むしろその過程でどんな内面を獲得するか、
ある意味ではどの本も「内的世界のロードムービー」といった雰囲気です。

買い物がとまらない、もうフツーじゃなくなってることは
自分でもよくわかってる、でも、
自分が衝動と感情の奴隷であることを、強く認識しながらも
”地獄”を選んでいく。


影響されそうで、読むのがちょっと怖いな。そう思うひともいるかもしれないですが、
メタ認知(※)が非常に効いている書き方なので、そこまで飲みこまれることなく読めます。

※ 自らの状態を客観的に把握すること。



買い物もホストも美容整形も、
「1冊かくのにいったいいくら使ってんだよ!」とツッコミたくなるほどで
それだけコストがかかっている本をこんな値段で読めるなんて、
本ってすごい。
やっぱり、ノーリスク・ハイリターンの投資は読書だよね!

……なんて軽いノリでまとめてしまうのがはばかられるほど。、
ほんとうに、強いものが宿っている作家さんです。



吾妻ひでおさんの一連の失踪・アル中日記に近い客観性があると感じました。
吾妻さんのアルコール中毒描写も、ミョーに客観的で戯画化されて描かれています。
↓マンガだけど、名著ちゅうの名著なのでまだ読んでいなければぜひ♪






☆★☆



中村うさぎさんの本で私が一番好きなのが
『愚者の道』



みずからを「愚者」と一人称で呼んで、
もはや哲学書かと思われるくらい抽象的な言葉をつむいでいく。

ひたすら語られるのは、中村うさぎさんの自意識について。
自意識の檻のなかで、問いを繰り返し、問いのまわりを逡巡する。


抽象的であるからこそ、普遍的です。
読者自身の内面の葛藤として、読める。
私たちはいったい、なにを求め、どこへ向かおうとしてるんだろうね。


もうね。反面教師として読んじゃってもいいと思います。
中村うさぎさんのようなスタイルの欲望追究では、けっして満たされることはない、と。
ご本人も、そういう読み方してもいいよ、とおっしゃっていた気がします。


☆★☆



んでね。
中村うさぎさんの紹介をすると、どうしても連想してしまうのが
菜摘ひかるさん。

以前の記事(【泣ける】女性作家が描く切ない恋愛小説10冊【沁みる】)では


『依存姫』という小説を紹介したけれど、
フィクションはじつはこの1冊だけで。
菜摘ひかるさんもエッセイがメインの作家です。

性風俗の現場での経験をとても強い文章でつづっています。
29歳で夭折。

フェミニズムの文脈で評価されているわけではないけれど、
フェミニズム好きなひとにもオススメです。痛快!






文体や言葉のえらび方もすごく心地いい、”おいしい文章”。
マツコさんもうさぎさんもそうだけれど、
そのひとの魂(マツコさんふうにいうならば「実相」)から出ている言葉は、
なにかが違いますよね。

文体に音楽があったり、
選ばれた言葉がさまざまな意味に結びついているとか、
切実さがにじみでていたり
それこそバイブスがあるというか……。

うーん、うまく伝わってるかな。
そういう本や文章に出逢えたとき、私はすごく幸せな気持ちになります。



そんなわけで今日は

マツコ・デラックスさん
中村うさぎさん
吾妻ひでおさん
菜摘ひかるさん



の紹介でした。


いつも厳選したオススメ本しか紹介していないけれど、
(じつは、ひとつの記事の裏には「読んだけどレビューしなかった本」が大量にあるのです。それこそ、山のように)

今回紹介したものは、なかでもとくに推したい本ばかり。
「おいしい文章」にふれて、すてきな読書ライフがすごせますよーに、
と願いをこめてピックアップしました。
良い本に飢えているあなたは、1冊だけでも、手にとってみてくださいねv




ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a


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posted by akika at 16:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会学・現代思想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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