
皇帝の妃や側室たちが住まう場所。
そこでは陰謀や策略がめぐり。
金や物、地位、ときには命までもがやりとりされる……。
さまざまな思惑がからまりあう”心理戦のコロシアム”。
それが、後宮――という名の魔窟。
というわけで。
「後宮が舞台の小説10冊」をまとめました。
前半は、一般エンターテイメント小説。
後半は、ライトノベルやライト文芸(キャラ文芸)からピックアップ。
あ。べつに私が内容をみて「これはライトだ!」と判断したわけではなくてね。
ラノベやライト文芸とされているレーベルからリリースされている小説を、後半は選んでいます。
追記)
後宮小説特集、第2弾↓もまとめました。
ライト文芸(キャラ文芸)とライトノベルに絞った10冊です♪
後宮が舞台のライト文芸とライトノベル10冊
↑冒頭で”魔窟”などとあおってしまいましたが。
後宮ものといっても、もちろん雰囲気はさまざま。
中国や中華風ファンタジーから、中央アジアや琉球といった変わり種。
恋愛ものも。謎解きミステリも。ファンタジーも。
歴史や料理がメインだったりするものもあります。
さまざまなジャンルをのみこむ後宮小説。
読みはじめたらとまらない10冊をど〜ぞ♪
後宮小説
田舎で生まれ後宮へ入った少女・銀河を主人公に据え、素乾国の興亡を描く歴史ファンタジー。
素乾国の後宮は独特で、「女大学」という”性の技法”と”哲学”を教える学校が存在しています。
……素乾国?
ものすごく中国っぽいけれど、実在しない国です。「素」も「乾」も”からっぽ”の意。
背景や細部、登場する史料(これも架空です)などがとても細かくて。
史実にもとづいた小説だと言われたら、完全にだまされてしまいそう。
銀河をはじめキャラクターが魅力的。「女大学」の様子は、後宮のヒミツをのぞき見ているようで刺激的です。
ページをめくれば緻密な世界がそこにある。「雲のように風のように」というタイトルでアニメ化↓されています。東洋ファンタジーの古典的名作。
雲のように風のように [DVD]
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烏に単は似合わない
後宮もののなかでも、とりわけ異色なのが本書。
後宮というか、”後宮入りの直前”を描いてます。皇子の后を、四人のなかから選ぶお話。
以前の記事(【記紀神話】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(後編)【古神道】)で紹介した『玉依姫』とおなじ”八咫烏シリーズ”の第1弾です。
舞台は山間の異界。人と鳥、どちらの姿をとることもできる”八咫烏”たちが飛び交う、和風の世界です。
くせものぞろい、それぞれの背景をもつ四家の姫が、后の座をめぐって争ったり争いから降りたりする。
この争いが策略と陰謀に満ちていて、韓流ドラマや華流時代劇が好きなひとにはぜひオススメ♪
ラストには怒涛の伏線回収があってびっくりします。「序章」からミスリードが仕掛けられていたとは……。
後宮ものとしてもファンタジーとしてもユニークな1冊。
↑は文庫版です。四家の姫を描いた単行本版↓の表紙も綺麗なので紹介v
とはずがたり
舞台は鎌倉時代の日本。
……といっても幕府ではなく、朝廷側の後宮事情を描いた古典文学です。
佐々木和歌子さんによる現代語訳。
逐語訳ではなく、物語としての読みやすさを優先した文章がありがたい。
古典文学が原作とは思えないほど、すらすら読めます。敬遠不要。
語り手の二条は、事情もわからないまま14歳で御所に入る。
後深草院の女になるわけですが、正妻や側室でもなく「女房」としてお世話をすることに……。
登場人物たちが入り乱れる(性的な意味でも)、目が離せないスピード展開。
二条が女房であるせいで、いろいろとやっかいなことになっています。
「女房」は妻ではなくて使用人。ほかの後宮ものでいう”侍女”や”女官”のような役割です。
ゆえに二条は後深草院に抱かれながらも、彼がよその女と逢うのを手引きしたり、ときには他の男にみずからを差し出すことになったりする。
たびたび出産をするのですが……父は毎回違う。
前半は「どこの海外ドラマだよ!」というくらいのドロ沼の日記文学です。
ニガテな方は注意><
後半、二条が出家すると雰囲気はガラリと変わります。
憂いを帯びつつ諸国を旅する紀行文学の様相に。
壮絶な半生があるからこそ、ひとつひとつの風景のわびしさ、無常さが心に刺さる。
前半とは違った魅力があります。
二条の詠む和歌も面白いものが多い。
歌を鑑賞するのをメインにして読むのも楽しいかもv
いけそうな方は原文↓でどうぞ><
講談社学術文庫版は、あらすじも訳も、注釈も解説もついているので安心。
逆に、初読は漫画版↓で大筋を把握しておくのもアリかも。
あとは野となれ大和撫子
今日紹介するなかで、もっとも異色なのが本書です。
舞台は「アラルスタン」。大部分が陸と化したアラル海に興った架空の国。
中央アジアの後宮というだけでもなかなかレア。
さらに後宮のあり方も、ほかの物語とはひと味違います。
アラルスタンの後宮は、”王の世継ぎを残す”という当初の機能を失い、女性たちの”高等教育機関”としての役割を担っています。
この国の大統領が暗殺されてしまい、後宮の少女たちが政権をにぎるお話。
現実にはない国ですが、大量の資料を用い、アジアのリアルな地政学を詳細に描き出しています。
ちなみに、この後宮。
かつてはフツーの後宮だったので、以前の大統領の妃たちがまだ居座ってたりするのね。
教育施設としての後宮で育ったジェネレーションと、古参たちとで、世代間の対立もあったりします。
一風変わった後宮をのぞいてみたいあなたにオススメ♪
テンペスト
続いて、琉球の首里城です。後宮が舞台というより、”後宮も舞台”といったほうが正確かも。
幕末にあたる時代。日本に属す前の琉球王朝のお話です。
龍がさかり狂う嵐の夜、望まれぬ女児として生まれた少女・真鶴。彼女は女の身でありながら男しか受けてはいけない科試に合格し、宦官といつわって王府にあがることになる……。
史実をベースに、呪術や龍などファンタジー要素もとりいれて描かれる濃厚な物語。
真鶴のジェットコースターのような人生もさることながら、首里城の内部や、政教が混然となった琉球のまつりごとの雰囲気など、細部の描写も面白い。
ところどころで琉歌が挿入されていて風流です。
”表”の政治の世界が主ですが、表と裏、男の世界と女の世界が一体となっているのが首里城。とくに後半は、後宮での出来事がおおきな役割をもつ展開になっていきます。
でね。
この壮大な物語、ラストの無常観がすごい。
ネタバレというか史実なので書いてしまうけれど、日本の開国とともに琉球王国も終焉を迎えます。
それぞれの立場で王府にかかわってきた登場人物たちが、おのれの人生を振り返る。
いやおうなく流れていく時間を感じさせます。一生をささげたはずの「国」は、時代の流れによってあっけなく崩れてしまう幻。ただの概念である、と。
↑文庫版の表紙からわかるように、仲間由紀恵さんや 谷原章介さん、GACKTさん出演でドラマ化↓されています。
琉球の魅力がたっぷりとつまった大長編。沖縄にあこがれるあなたはぜひv
テンペスト DVD BOX
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☆★☆
ここからはライトノベル、ライト文芸(キャラ文芸)を。
とくに少女小説系のレーベルから、豊富な後宮ものがリリースされています。
↓レビューは1巻に対してですが、すべての作品が2巻、3巻……とシリーズ展開されています。
気になるシリーズがあれば、続きもど〜ぞ♪
薬屋のひとりごと
中国をモデルとした架空の国の後宮が舞台です。
主人公は猫猫(マオマオ)という少女。妓楼育ちの後宮勤めですが、遊女でも妃でもなく「薬師」。
後宮で起こるさまざまな事件を名探偵風に、ときには暗躍して、解決していく……。
猫猫の冷めた語り口が魅力的。
後宮のうわさ話や、美貌の宦官にもまるで興味を示さないのですが、毒や酒を前にすると豹変。
危険な毒を口にふくみ、その味にうっとりと頬を染めるヤバイ奴。それが猫猫です(笑)。
ひとつひとつのエピソードがこまかく分かれています。
全部で31話+終話を収録。
完全に独立しているわけでない続きもののですが、スキマ時間に読み進められるのが嬉しい構成になっています。
主婦の友社のラノベレーベル、ヒーロー文庫より。
コミック版↓も大人気。
いまもっともホットな後宮ライトノベル♪
一華後宮料理帖
こちらは薬ではなく料理!
「崑国」という架空の国の後宮を舞台にした中華風ファンタジーです。
主人公の理美は、古代日本を思わせる「和国」から献上されて崑国に来た少女。
神にささげる食事をつくっていた経験を活かし、新天地を生き抜いていく。
異国の姫なので理美の位は低く、女官として後宮に仕えることになります。
後宮ものとはいえ、皇帝の寵愛を争うようなお話では全然ありません。
いかにして崑国の者に和国の出汁の味わいを理解させるか……みたいな、ほっこりとしたミッションに挑みます♪
いちおう命の危機があったりするのですが、全体的にほんわか(笑)。
少女向けレーベルならではのキュンキュンなシチュエーションがたっぷり。
ラノベらしい読みやすい文章……なのですが、丁寧に置かれた伏線やサブストーリー等々、物語のカタチがとても綺麗な小説です。オススメv
少女向けライトノベルの角川ビーンズ文庫より。
↓コミック版♪
威風堂々惡女
架空の「瑞燕国」を舞台にした中華風ファンタジー。
転生というかタイムスリップというか、ちょっと不思議な構造のお話です。
下女として報われない人生を終えたかに思えた主人公の少女。
しかし、まるで別人の姿になって目を覚まします。しかも、時間をさかのぼって。
少女はかつての皇帝の側室・柳雪媛として、すでに確定したはずの歴史を変えようと策をめぐらす……。
序盤からどんでん返しに満ちていて、目が離せない。
過去と未来が交差する壮大な史劇です。
手段を選ばない、堂々たる惡女のほんとうの心は……。
ライト文芸レーベルの、集英社オレンジ文庫。
↓コミック版♪
彩雲国物語
うってかわって、古き良き1冊を。
舞台は「彩雲国」。中華風の架空の国です。
主人公の秀麗は名家のお姫さま。だけど、家計は火の車。アルバイトをいくつもかけもちして、その日その日を暮らしています。
あるとき秀麗に妙な仕事が舞いこみます。それは、即位したばかりの王の教育をするため、”妃”として後宮にあがることでした……。
お嬢さまのくせに、使用人よりもなんでもできる秀麗。
宮中の調度品を”売り払ったらいくらになるか”計算していたり、貧乏キャラが魅力的です。
男色家だとウワサされている王さまのキャラクターも、ページが進むごとにどんどん深みを増していく。
アニメ↓にもなった、後宮ライトノベルの古典的名作♪
↑は角川文庫版ですが、もとは少女向けラノベレーベルの角川ビーンズ文庫から出版された作品です。
後宮の烏
「霄(しょう)」という架空の国の後宮が舞台です。
主人公の寿雪(じゅせつ)は、後宮にいながらも夜伽をすることはない、侍女も置かない、孤独な「烏妃」。
烏妃は”不思議な術”で祈祷し、幽鬼を祓う力をもつ存在です。
あるとき、帝が彼女のもとをおとずれ、頼みごとをするが……。
架空の国ですが、これも中華風ファンタジーと呼んでいいと思います。
雰囲気もキャラクターとても魅力的。
気位が高く、ツンデレというよりツンツン、お菓子に目がない寿雪。
優しいがときに強引で、めったに感情を表に出さない皇帝、高峻。
皇帝を守る、忠実すぎて融通がきかない宦官、衛青。
なりゆきで寿雪の侍女になってしまった九九。
さわがしい鶏、星星。
みずから孤独であろうとする寿雪の心を、まわりの人物が溶かしていく。
心の交流が丁寧に描かれていて素敵。
心理だけでなく、小道具などや建物、植物などの描きこみも濃厚なファンタジー。
いずれアニメ化してもおかしくなさそう。青田買いするなら今。
ライト文芸レーベルの、集英社オレンジ文庫です。
追記)
ほんとうにアニメ化が決定しました! びっくり><
白川紺子「後宮の烏」シリーズ、アニメ化決定! - 集英社 オレンジ文庫
http://orangebunko.shueisha.co.jp/news/20211214.html
ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪
あきか(@akika_a)
(冒頭の写真は大和市上草柳の「ふれあいの森」の四阿”台湾亭”です)
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