2020年04月30日

真実とは何か。(フェイク)ドキュメンタリー映画と関連本10コから考える


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時事ネタからは距離を置いている(つもりの)ブログなので、だいぶ遠まわりな方法で一石を。
(いつもぜんぜんタイムリーじゃない記事ですみません><)


今日はドキュメンタリー映画フェイクドキュメンタリー作品関連本を紹介していきます。


フェイクドキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)とは……

”虚構のドキュメンタリー”のこと。
「記録映像っぽくフィクションを撮る」手法、作品です。
モック(mock・まがいもの)との造語で「モキュメンタリー」とも呼ばれます。
もきゅ。

いかにも本物のような体裁で、架空の物語が展開していく形式。
大好きなジャンルですv


日々、いろんな情報が更新されて、
社会がすごい速度で変わっていく気配があるけれど。

「事実と虚構の間で揺らぐ作品」たちをみていくことで、あふれる情報に対するみずからのスタンスを洗練させていくことができる。
かもしれない。

あなたの「世界に対するリテラシー」をアップさせる
スリリングな10作品
をど〜ぞ〜♪



 A、A2



まずはフェイクでない方のドキュメンタリー映画を。
オウム真理教の広報担当者さんに密着し、教団の内部を記録した作品です。
地下鉄サリン事件の後のお話。

教団の実情をあばき非難する……という内容ではまったくありません。
むしろ逆です。知れば知るほど、単純に「悪」のレッテルを貼ることはできなくなる。

「A」に登場する警察の”転び公妨”(不当逮捕)のシーンは必見。
権力を行使することのひどさが、これ以上ないほど鮮明に映し出されている衝撃映像です。

「A2」では地域住民と信者との対立が描かれています。
これもひと筋縄ではいかない。
対立しているはずの住民と信者が、しだいに仲良くなっていきます。本の貸し借りとかしたり。

個別の事情をこえて、”差別”や”偏見”といった普遍的な問題におおきく斬りこんでいる傑作映画です。

 FAKE


おなじく森達也監督のドキュメンタリー映画をもうひとつ。
ゴーストライター問題で一時メディアを賑わせた作曲家、佐村河内守さんに密着取材した記録です。
(タイトルは「FAKE」ですが、ジャンルとしてはフェイクドキュメンタリーではありません。ややこし)

佐村河内守さんに寄りそって、彼の葛藤と再生を描く物語……かと思いきや。
エンドロールも終わったラストで、ものすごい展開が待っています。

ネタバレしないように濁していうと、「これまで観てきた(はずの)ものが本当なのかどうかわからなくなる」シーンで終わる。

実際の映像をつなぎあわせても、編集しだいでいくらでも意味は変わってしまう。
記録映像でさえ、いくつでも”真実”が偽造できることを構造的にあきらかにした問題作。

 ドキュメンタリーは嘘をつく


その森達也監督のエッセイ本です。

しつように監督本人が登場したり。
”言わせたいセリフ”をわざとらしく引きだすプロセスまで、あえてカットせずに残していたり。
「A」「A2」でも「FAKE」でも、”作り手の存在”を強く感じさせるドキュメンタリーをつくってきた森達也さん。

本書では、広く映画論を語りながらも、自身の問題意識を明確に提示しています。
ドキュメンタリーはあくまで”主観”で”一人称”である。そして、”嘘をつく”。

<映像>にはありのままの事実が映っていると思ってしまうけれど、提示の仕方しだいで、いくらでも意味は歪む。
世界に対するリテラシーを高めてくれる1冊です♪

 放送禁止歌


もう1冊、森達也さんの本を。

「自衛隊に入ろう」(高田渡)
「網走番外地」(高倉健)
「竹田の子守唄」(赤い鳥)等々……。

テレビ業界には、”放送できない歌”が存在している。
ところが、それらの曲がなぜ放送禁止なのか、明確に答えられるひとは誰もいない……。

……なんだか、まるで小説の紹介みたいですが、本書はノンフィクション。ルポタージュ風の取材記録です。
放送禁止歌が放送禁止になった理由に迫っていくと、ものすごい事実が浮かびあがってきます。

じつは、誰が禁止しているわけでもなかった……。

サスペンス小説のようなスリリングさで、「メディアの自主規制」の問題があぶりだされていきます。
誰も真実を見ようとしない場所が、ある。


☆★☆



ここからは「フェイクドキュメンタリー」作品をピックアップしていきます。

ありのままを映したドキュメンタリーでさえ、”嘘つき”であることを避けられない。
一方で、はじめから「ウソだよ」と宣言しているのがフェイクドキュメンタリー。

名作ぞろいで、私も大好きなジャンルです♪
フィクションだとわかっていても、衝撃的なシーンでは驚いてしまいます。

虚構の世界は、こんなにも本物っぽく構築できる……。

 放送禁止



「あなたには真実が見えましたか?」

以前の記事(最近読んだ「怪談・都市伝説」本5冊【禁忌】読んではいけない本10冊【超刺激】)でも紹介した、フェイクドキュメンタリードラマ。
「隣人トラブル」や「大家族」など、リアルな題材を扱っていて、ぱっと見るとホンモノのドキュメンタリーと誤解してしまうつくりになっています。

映像のなかにはいろんな仕掛けがあって、意味がわかったときに壮大などんでん返しが起こる。
ミステリファンも大満足の作品です。

このシリーズ、実在するデータや専門家へのインタビューなど、”虚構ではないもの”が随所にまぎれこんでいます。
この演出が”ホンモノ”っぽさに拍車をかける。

このドラマが問いかけるテーマは……

事実を積み重ねる事が
必ずしも真実に結びつくとは限らない


表層にまどわされない眼を養うことができる、傑作モキュメンタリー♪

 出版禁止


その長江俊和さんの小説です。
ある映像作家の心中事件の謎に迫った、ジャーナリストの物語。
フェイクドキュメンタリーならぬ”フェイクルポタージュ”のような形式です。

↑「放送禁止」シリーズの面白さをそのまま小説に移植したといえる読後感。
一般的な推理小説以上に”ミステリ”してます♪
緻密な仕掛けとどんでん返しがすごい。
真実はいつも、書かれていない見えない場所にある。

↓第2弾。



 世界残酷物語


今日の記事は邦画が中心ですが、いっこだけ洋画を。
1962年の作品。「モンド映画」と呼ばれるジャンルです。見世物趣味的なフェイクドキュメンタリー。

ゲテモノメニューを出すレストラン。
無理やりビールを飲まされ育てられる牛。
未開の地で、ときおり空に見える飛行機を信仰する部族……。

世界の各国の”衝撃的な”映像をあつめた映画。
デタラメすぎる東京の風呂屋も登場します。

もちろん捏造やヤラセだらけのフェイクなのですが、古い映像とあいまって、なんだか虚実の境を見失ってしまう。
日本の映像こそデタラメだとわかるけど、自分がぜんぜん知らない国の映像の場合、どこまでがウソなのか判断できない……みたいな。
真偽が不明な情報への耐性を養うために、ど〜ぞ♪

↓続編。



ちなみに。
洋画のモキュメンタリーといえば、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」「Rec」「パラノーマル・アクティビティ」などが有名です♪
海外のフェイクドキュメンタリー作品の一覧は、↓後述の『フェイクドキュメンタリーの教科書』に掲載されている「年表」がとても詳しくてオススメ。

 戦慄怪奇ファイル コワすぎ!


フェイクドキュメンタリーを得意とする白石晃士監督のホラー。オリジナルビデオ作品です。
心霊ドキュメンタリーを制作するスタッフたちを襲う怪異の数々を、劇中のカメラによるPOV(主観映像)で描きます。

テレビでよくみる心霊ドキュメントは、不思議な現象が起こったとしてもあくまで「事実」として放送されるけれど。
この作品は「フェイク」なので、記録映像を装いながらも、ありえないことがどんどん起こっていきます。
カメラははっきりと妖怪をとらえ、ときには時空をこえる。

いかにも本物っぽい映像が、”絶対に本物ではありえない出来事”をうつしている。
なんともいえない感覚をおぼえる傑作シリーズですv

「戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-02 震える幽霊」
「戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-03 人喰い河童伝説」
「戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-04 真相!トイレの花子さん」
「戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 劇場版・序章 真説・四谷怪談 お岩の呪い」
「戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版」
「戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 最終章」


 オカルト


もうひとつ白石晃士監督の映画を。
ある通り魔事件の生き残りの男性に密着取材するフェイクドキュメンタリー。
通り魔に刺された後に、彼が受けた天啓とは……。

あちらの世界とつながってしまった人間は、こちらの世界では「狂人」や「変人」に見えてしまう。
映画ですが、以前の記事(【超心理学】真冬に読みたいオカルト本10冊【ノンフィクション】)で紹介した本たちにつけ加えたい1本です。

でね。
殺人や事故もふくめ、この映画には”衝撃的な映像”がたくさんあるのね。
そのなかのひとつに、

渋谷の上空をカラスの大群が飛ぶシーン

があって。
ものすごいブキミなの。

すごい数のカラス。
フィクション映画だし、「どうせCGで加工された映像でしょ」って思うじゃん。
ところがこれ、本物のカラスたちらしいのです。

↓次に紹介する本で知って、びっくりしました。
呼び寄せる方法があるらしい。

ぜったいにウソだと想っていたことが真実だったりもする。
世界を正確に見るのは、ものすごく難しい……。

 フェイクドキュメンタリーの教科書


その白石晃士さんがフェイクドキュメンタリーの撮り方を解説した1冊。
演出や撮影テクニックがメイン。映像クリエイターのためのハウトゥー本です。
もちろん、白石監督の作品のファンもどっぷりと楽しめる内容。

序章に掲載されている、岡本淳史さん監修の「フェイクドキュメンタリーの歴史」がよくまとまっていて、年表もとても参考になる。

監督は何を意図してどう表現しているのか。
映画づくりの裏側がわかる良書です♪

どう見ても本物にしか見えないUFO映像を作ってフィクションですよと明かして見せた場合、「本物みたい」と喜ぶ人もいれば、「私は本物のUFOが見たかった」と思う人もいる。
「第1章 フェイクドキュメンタリー頂上作戦!」より


あなたは前者? 後者?
それとも、「フィクションですよ」と明かされたその言葉さえ、いったん疑ってみるタイプ?



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(冒頭の写真は昭和記念公園で撮ったうちの愛犬です)

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posted by akika at 00:41| ネット・情報リテラシー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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