今日のなぞなぞ
「日本のフシギな神話を学ぶ10冊は?」

石神村に降りたったのは6柱の神々でした。
村人たちは、この神々の末裔です。
神は百の物語を遺しました。
この物語を後世に伝えるのが、巫女であるわたしの役目。
病におかされながら、
来る日も来る日も、おつとめをはたしていたのです。
あるとき。
石神千空(いしがみせんくう)という少年が村をおとずれました。
その名を、わたしはよく知っておりました。
なぜって。
その名前は、百の物語の、最後の段に登場するのですから。
彼は、わたしたちの村をおこした氏神様の御子なのでしょうか……。
「100億万点やるよ!」
……と、「Dr.STONE」の話はさておき。
(未読の方、すみません>< 本格的な科学が楽しいファンタジー漫画です♪)
今日は以前の記事(【奇習邪宗】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(前編)【民俗神】、【民話伝承】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(中編)【フォークロア】)にひきつづき、日本の信仰を学ぶ10冊を紹介していきます。
今回は神話や古神道(後述)にまつわる本でまとめてみました。
後半は、日本の神話をモチーフにした小説を紹介していきます。
国家神道という言葉もあるので、”公式”っぽいイメージがわきますが、
おおもとをたどれば各地の原始的な信仰からはじまっていたりするのが、かんながらの道。
日本人の感性にダイレクトに響く、
ありがたくてカオスな10冊をど〜ぞ〜♪
古事記・日本書紀
原文で読もうとしたらかなり骨の折れる「古事記」。
本書は、とても読みやすい語り口ですべての物語をあじわえる良書です。
なにもなかったのじゃ……、言葉で言いあらわせるものは、なにも。「神代篇 其の一」より
こまかい注釈がついているので、背景もしっかり学べる。
けっこう厚いです。なので、もっとさくっと読みたい方は↓こういうのでも。
「古事記」「日本書紀」を新書1冊の分量でわかりやすくまとめた入門編です。
すべてのページに地図や図表があって、理解を助けてくれます。
年表、神や天皇の系譜(系図)も付録。全体を見渡すのに◎。
あらためて読むと、知っているようで知らないことだらけで新鮮。
類書
荒ぶりすぎ! な神々の物語を駆け抜けろ♪
やまと教
神道ってちょっとわかりづらいですよね。
明治時代にお上が整えた国家神道と、記紀が整理した神話と、いにしえからの素朴な信仰とがごっちゃになって、ややこしすぎる。
さらに仏教もふかく関わって習合したり分離したり、カオス感がすごい。
そのへんのぐちゃぐちゃを綺麗にほどいてくれるのがこの本です。
日本の「民族宗教」として、古神道(後述)と似たような意味で「やまと教」という造語がつかわれています。
わかりやすくてオススメ。
ひろさちやさんは、以前の記事(心の時代を生きるための本10冊)でも『面白いほどよくわかる 世界の宗教/宗教の世界』を紹介しました。
1 ホンモノ宗教
2 ニセモノ宗教
3 インチキ宗教
4 インポテ宗教
の大胆な分類は本書でも健在(4つめは、前は「オドカシ宗教」だったような)。
読みやすい語り口で、神道のセカイを案内してくれる良書です。
古神道
神職さんが「古神道」の”こころ”をわかりやすく教えてくれる1冊。
古くから……それこそ仏教や儒教がはいってくる前から、わが国に存在した原初の信仰のカタチ。日本の精神的な底流。それが古神道。
一文字にも意味がある大和言葉。神が降りる神籬(ひもろぎ)。
言霊。数霊。身を清める禊(みそぎ)の意味。お供えもの。記紀に登場する神々。
などなど。たんなる説明ではなく、奥にある”精神”を見据えつつ語ってくれます。
ヒモロギというのは、「霊天降る樹」という言葉がつづまっています、古語では、日、霊、火、水、氷もみな「ひ」と読みますが、天界にいらっしゃる神々の火・霊という「ミタマ」がこの地上に降りて来られる聖なる域をヒモロギといいました。「第二章 日本文化の源泉は古神道」より
こんな感じ。
ちょっとスピリチュアルっぽいね。本来の意味でのスピリチュアル。霊性。
ちなみに、この本。末尾ではムー大陸が出てきたり、ピラミッドと失われた文明について語られていたりします。
「それって神道なの!?」みたいな(笑)。このへんは著者の雑談としてとらえて大丈夫。
聴き書きでつくられた本でよくある”話の脱線”だと思います。……たぶん。
禁足地
オカルト研究家の吉田悠軌さんが、”行ってはいけない場所”をレポート。
詳細な取材によって外堀を埋めつつ、じゃあ禁足地って本質的には何なのだろう、と問うていく姿勢がとても面白いです。
神職の者しか入れない、沖ノ島。
原生林の繁る、対馬のオソロシドコロ。
男子禁制の、沖縄の御嶽。
将門の首塚。ニソの杜。シガイの森。天狗の森……。
ルポタージュであると同時に、社会学的な視点も。
天皇陵についても言及していたり、末尾では「犬鳴村」「杉沢村」「異界駅(きさらぎ駅)」など、ネットロア(※)に登場する”実在しない禁足地”にも目をくばっています。
※ おもにインターネット上で広まる都市伝説。ネットワーク+フォークロワ。
巫女論
民俗学の第一人者、柳田国男が”妹萌え”を語る。
……わけでなくて。ここでいう「妹」は女性全般のこと。
玉依姫、巫女石、姥石、人柱、小野於道、稗田阿礼……。
神話や民話に登場する”霊的な力をもつ”巫女的な女性を考察した論文集です。
たくさんの事例がとりあげられる、濃厚な1冊。
一つ意外であった話は、兄妹の親しみが深くなってきたということである。その中でも兄が成人するにつれて、妹をたよりにして仲よくつき合うこうとは、今はほとんど世間一様の風であって、しかも以前にはまるで知らなかったことであるという。「妹の力」より
と、ちゃんと妹ラブコメ(?)もあります。巫女や妹が気になるお兄ちゃんはど〜ぞv
フォークロアにジェンダーの視点を導入した、シャーマニズム研究書。
☆★☆
後半はフィクション作品をピックアップしました。
「日本の神話を題材にした小説」特集。
神話からつむがれる、あらたな物語……。
出雲
大学院で民俗学を専攻する新米研究者、橘樹雅。
研究テーマを「出雲」に定め、縁結び祈願をかねて島根をまわるさなか、奇妙な殺人事件に遭遇する……。
といっても、犯罪ではなく民俗学的な”謎とき”のほうに重きが置かれています。
出雲大社、黄泉比良坂、スサノオ、もちろんオオクニヌシも。
神話や神道、神社をめぐる雑学が盛りだくさんで、ふつうの小説だと思って読むと、その情報量の多さに圧倒されてしまうくらい。
謎の多い出雲神話に挑む、歴史ミステリ。
奥出雲
その続編。
こんどは舞台を「奥出雲」にうつし、神話に頻出する「櫛」の意味を探る。
さらなる殺人事件が発生しますが、今回もメインとなるのは犯罪ではなく歴史、民俗学的な謎のほう。四柱推命もからみます。
スサノオやヤマタノオロチ、たたら製鉄にゆかりのあるスポットをめぐる。
旅情ミステリのような味わいもあって、主人公と一緒に旅をしている気分です♪
玉依姫
記紀に登場する女神、タマヨリヒメをモチーフにした物語。
志帆は祖母の故郷の村に足を踏みいれ、おそろしい儀式に巻きこまれる。
そして、異形の”山の神”を育てることに……。
八咫烏や神の使いである猿なんかも登場し、異界の雰囲気が素敵な小説。
ちなみに、冒頭のエピグラフには↑で紹介した柳田国男の『妹の力』が引用されています。↓この部分。
玉依姫という名はそれ自身において、神の眷顧をもっぱらにすることを意味している。親しく神に仕え祭に与った貴女が、しぼしばこの名を帯びていたとてもちっとも不思議はない。「玉依姫考」『妹の力』より
神武天皇の母。大物主の妻。賀茂の玉依姫。そして柳田国男のいうような”巫女”全般をさす一般名詞……。
この女神には様々な姿があって、イメージをかきたてられます。
タマヨリビメファンの方はアニメ「緋色の欠片」↓もど〜ぞv
スサノオのオロチ退治
ある片親の兄弟の運命と、べつの兄妹の犯罪計画がからみあい、もつれ、謎を生んでいく……。
現代が舞台のミステリですが、神話が下敷きにされています。
ヤマタノオロチを退治するスサノオの、あの有名なエピソード。
全編にわたって雨の降るシーンが多くて、描写がすごく綺麗です。
降り方や場所によっていろんな表情をみせてくれる。
イッキ読みしてしまうストーリーもさることながら、雨のシーンを味わう目的で読んでもいい。そんな本。
イザナキ・イザナミ
こちらは、イザナキ・イザナミの国生み&黄泉の国訪問が出てきます。
これはすごいです。もうひとつの神話がここにある、という感じ。
主人公はある南国の島に生まれた女の子。島の掟を破って、ある男を愛してしまい、命を落とす。
そして黄泉の国へ行き、イザナミに出逢う。
まさに神話の時代を描いた物語。
ファンタジーといえばファンタジーなんだけど、なんというか、「オトナの事情で古事記に収録できなかった物語を電撃掲載!」みたいな。
かなり引いた視点、登場人物から距離を取った語り口も神話っぽい。
古事記のエピソードをなぞる場面もあるので、記紀を知らなくても平気。オススメです。
ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪
あきか(@akika_a)
(冒頭の写真は諏訪大社下社秋宮。神楽殿のしめ縄です)
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