2019年09月29日

【奇習邪宗】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(前編)【民俗神】


今日のなぞなぞ
「日本人のフシギな信仰をかいまみる10冊は?」

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「トトロ」と「千と千尋」が好き。
「ラピュタ」や「ナウシカ」よりも。

なぜだろうととくに深く考えたことはなかったのですが。
もしかしたら、日本の土着的な”あやしさ”に惹かれるのかもと、ふと気づきました。

雨の夜に妖怪バスを待つ、土着の神。
日が暮れると廃墟に集う、八百万の存在たち。

ありがたいだけじゃなくて、ときには災いをもたらすような。
あるいは、ただ”そこにいるだけ”の。

気まぐれな日本の神々は、なんだかキャラが立っていて愛嬌があると想う。



そんなわけで。
今日は最近読んだなかから、「日本の土着・民間信仰」を学べる本を紹介していきます。

いろいろと面白いのがいっぱいあって、一度にオススメしきれないくらい。
なので、このテーマでは記事を複数に分けてアップしていきますね。


土俗の信仰と外来の宗教が習合・共存し、ほとんど”闇鍋”状態になっているのがこの国かも。

ちなみに記事のタイトルでは「奇習」だの「邪宗」だの煽っちゃいましたが。
ほんとは、ある風習を”奇妙”と感じるかどうかは、そのひとがいる社会の”常識”しだいなわけで。

たとえば、短冊に願いをこめて笹に飾るのだって、七夕を知らない人にとっては

「ちょw なに変なことやってんのwww」

ってことになるかもだし。

その信仰が”邪”かどうかも、なにが”正統”とされているかによって、いくらでも左右されるよね。


……と、多様性の時代っぽいことを言ってみる。
「ミステリと言う勿れ」の久能整(くのうととのう)きゅんふうにまとめるならば……


真実はひとつじゃない。
人の数だけある!



ということになります。
(私信、読みました♪ 脱線しまくりの雑学トークがツボv)


それでは。

日本人の感性にダイレクトに響く、
不思議でどこか懐かしい10冊
をど〜ぞ〜♪



 わけがわからないよ


現在も残る日本の奇祭・珍祭を集めた1冊。

米俵にくるまって”雨がやむこと”を願う「水止舞い」
女装して”ない毛が生えた!”と歌う「お札まき」
異形の蓑のおばけが跋扈する「カセ鳥」
新婚さんを崖から落とす「むこ投げ」

……カオスすぎて、もう「わけがわからないよ」と言うしかない。
じっさい、歴史に埋もれて起源が不明のまま、ただ”伝統”として続いている行事もあるようです。

混沌をあおる文章でレポートされる、ナンセンスな世界。
写真が満載のにぎやかな1冊。

このような現実を知ると、僕らの思っている「常識」というものがいかに小さなものであり、「非常識」なものであるかがわかるだろう。
「はじめに」より


以前の記事(幻想と異形の獣人写真集――シャルル・フレジェ『WILDER MANN (ワイルドマン)』)で紹介したシャルル・フレジェの写真↓に心惹かれる方にもオススメですv




 キャラ、立ってます


クリエイターさんの強い味方、新紀元社の「Truth In Fantasy」シリーズより1冊。
日本で信仰されている神々を、デッサン風の綺麗なイラストとともに紹介しています。
神話の登場人物(イザナギ・イザナミなど)ではなく、土着的な”民俗神”のほう。

七福神、招き猫、疱瘡神、要石。
お地蔵さん、鬼子母神、カマド神、オシラ様。
照る照る坊主。犬神。牛神。役行者……。


いろいろな名前で呼ばれている神は別称も網羅。系統(ルーツ)や”何にご利益/祟りをもたらすか”など、情報量が膨大です。
神様だけでなく、宝船や天狗面、だるまなど、アイテムを解説したコラムも。

ものすごい種類の神がいて、それぞれみんなキャラが立っている。
あなたのなかの”日本的な感受性”をちくちくと刺激する、どこか懐かしくて幸せな気持ちになれる資料集。

 失われゆく土着

民間信仰と現代社会―人間と呪術 (1971年) (日本人の行動と思想〈9〉)
桜井 徳太郎
評論社
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ハヤリ神。田の神、山の神。ジンクス。雨乞い。憑き物。呪術。口寄せ。シャーマン。トウビョウもち。村落共同体……。
民間信仰にかかわるあらゆるトピックを紹介しながら、俗信の本質を考えていく。
事例が豊富なのにもかかわらず、通低音のように著者の思想がずっと流れていて、とても良い本です。古いけどオススメ。

たとえば、新興宗教の台頭について……

都市住民が地域社会から浮きあがっていること、周囲から隔絶した生活を送らざるをえないことは、人々に深い孤独を与える。
(中略)
この孤独感、不安から逃れ、精神的な安定をうるための要求が湧然として起こってくる。そうした民衆の要望に応える形で出てきた一つが、今日都市の底辺層に喰いこみ大きな勢威を振るっている、もろもろの新興宗教である。


と、さらっと分析していたり。
進んでいく文明と失われゆく自然や土着性……ジブリ映画がくり返し描いてきたテーマを感じさせる文章も多いです。

もうひとつ。
たとえば、のろい針(夜中にわら人形に釘を打つアレね)についても……

自分の意見を自由に開陳できない構造をもつ地域社会でおこる呪法である。


と、やっぱり社会との関連のなかで説明される。
「コンピューター情報」や「スポーツとナイター」など意外な項目もあって、民俗学と社会学を同時にあじわえる良書です♪

 猫さん


猫の神様がまつられている神社やお寺、祠を集めた本です。
実際に足を運んで由緒や伝承をひとつひとつレポートしていきます。写真もたくさん。

ネズミを捕ってくれるため、養蚕が盛んな地域でありがたがられている猫さん。
猫又(化け猫)のエピソードや、報恩譚(猫の恩返し)、猫と姫の伝説など、それぞれの地域にいわれが残っています。
でね。場所はぜんぜん違っても、驚くほど似たような伝承が各地に伝わっているのが面白い。

神通力で棺桶を宙に浮かせる。
和尚のいないあいだに袈裟を着て出かける。
斬られた首が飛び、天井裏にひそんだ大蛇を退治する。
かわいがっていた猫を殺されてしまう姫。


おどろおどろしかったり、かなしい民話も多いけれど、全体としてはほっこりする、ユニークなテーマの1冊。猫好きなあなたはぜひv
(私信。読みました♪ 民話の数々がかなり興味ぶかかったです)

 動物さんたち大集合


こちらは猫だけじゃなく、神社に祭られているさまざまな動物たちを紹介しています。
生息地によって章分けがされていて。陸、水辺、空……さらに、河童や龍、鵺(ぬえ)など想像上の「霊的な生き物」も。

それぞれの動物がどんなご利益をもたらしてくれるのかを丁寧に解説。
どこの神社に行けば”逢える”のかも載っています♪
狛犬だけじゃなく、いろんな動物が「ア・ウン」のポーズをとっていてほっこり。

岡崎体育さんふうに言うならば……

どうぶつさんたちだいしゅうごうだわいわい!

という感じです。

感情のピクセル
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感情のピクセル - 岡崎体育(iTunes)


他愛ない生き物にも、それぞれユニークな伝承や信仰がある。
敬虔な気持ちになれる1冊です。
(私信。読みました♪ クマやカメもアウン!)


☆★☆



ここまでは教祖も仕掛け人も(ほぼ)いない俗信でしたが。
翻って、こんどは”開祖がいる”タイプの信仰を取りあげていきます。
世界宗教である仏教やキリスト教も、この国では変容し土俗化してく……。

 隠れ念仏と隠し念仏


「隠れ念仏」と「隠し念仏」を題材に庶民の精神史を考えていく、紀行&エッセイ。
両者はどちらも浄土真宗系の一派。ですが、別物です。

「隠れ念仏」は九州。幕藩権力によって弾圧され、”隠れて”信仰を守った人々です。京都の本願寺からは認められているので、いちおう”正統”。
「隠し念仏」は東北。こちらは藩の圧力からも本願寺からも信仰を”隠して”きた”異端”の存在です。

神棚の裏に仏壇を隠す、ちょっと異形な「カヤカベ」教も登場。
宮沢賢治や高村光太郎、柳田國男と隠し念仏との関わりにも触れています。
研究書ではなく、作家らしくのびのびと想像力を羽ばたかせていて魅力的。オススメです。

 隠し念仏

隠し念仏 (民俗宗教シリーズ)
門屋 光昭
東京堂出版
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その「隠し念仏」の、数少ないまとまった研究のひとつがこれです。
東北地方にひそやかに息づいている、秘密主義の信仰「隠し念仏」。

ほとんど酸欠になりながらタスケタマエと唱え続ける「オトリアゲ」
生まれたばかりの子供を入信させる「オモトヅケ」
その信仰内容は、けっして部外者には語ってはならないと戒められる……。

怪談として語られることも多い「隠し念仏」を、しっかり民俗宗教として研究した論文集です。
地誌などを集めた文献リスト。信者による貴重な体験談。地域による差異。オシラサマなど古くからある土俗の風習との共存、融合。
専門書ではありますが、土着信仰系(※)が好きなひとはかなり面白く読めるかも。

※ 秘境の村など地方を舞台に語られる、奇妙な習俗や信仰、祭などを題材にした怪談・都市伝説。

 隠し念仏(小説)


そんな「隠し念仏」を題材にした小説がこちら。ミステリです。
これはずごい。隠し念仏だけでなく仏教全般、かくれキリシタンもふくむキリスト教や民族史……埋もれてしまった”歴史の闇”をひき金に起こる、不可解すぎる連続殺人。

主人公は女子大で教鞭をとっている食文化人類学の専門家。アイヌの血をひく人物です。
3部構成で、第一部は、安藤昌益にまつわる歴史ミステリといった色合い。
第二部は、ある教育者が牛耳る閉鎖的な街を描いた、カルト的なサスペンスです。
第三部は、主人公や失踪した妹の出自があきらかになり、すべての謎がひとつにまとまっていく……。

四〇〇字詰め原稿用紙換算で1854枚の、大長編です。すごくぶ厚い単行本で……はかってみたら、厚さ4センチもありましたΣ(・ω・ノ)ノ
読み進めるほどに、加速度的に面白くなっていきます。ムーアの法則のように。
調査や推理の場面では、文化人類学や宗教学の専門的な話が展開されていて、とてもアカデミック。
ミステリの面白さを歴史・文化探求の魅力にまで拡張させていく徹夜本ですv

 真言立川流


「立川流(たちかわりゅう)」は、仁寛という開祖(流祖)のいる真言宗系の密教です。
(落語の立川談志一門のほうは「立川流(たてかわりゅう)」ね)
その教えはまさに”邪教”っぽくてすごい。

男女が「交合」して、その「和合水」を「髑髏(ドクロ)」に何べんも塗りつけて、これを「本尊」とする……。
反魂香をたき、ひたすら真言を唱える……。

反魂? ドクロ本尊!? 和合水ってなに。///
仏教ではあるのですが、お釈迦様の教えからはずいぶん遠く。
「なんでこんなに異形の信仰が!?」と思うけれど、<性>と<死>をめぐる秘術の内にはなにかしらの”真理”がふくまれているようにも感じられて……。

曼荼羅(マンダラ)美術など写真の資料も豊富。
史料や、著者の想像もまじえて、立川流の”宗教的なロジック”に肉迫していく学術書です。

 真言立川流(小説)


その「真言立川流」を題材にしたミステリがこちら。
『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』に続く、「百鬼夜行シリーズ(京極堂シリーズ)」の第3弾です。

海辺の断崖に棲む朱美の、幻覚とも妄想ともつかない奇妙な記憶。
朱美の話を聴いた登場人物たちは、それぞれの”解釈”をつくりあげていくが……。
坊主も神主も牧師も登場する、宗教大集合! なミステリ。
フロイトやユングなど心理学的うんちくもたっぷり。

立川流をたんに”邪”であると斬り捨ててしまうわけではない、京極堂の歴史観を私的メモ。

立川流が邪法として貶められたのは、その特異な教義の所為ではない。立川流以前にも性を取り入れた宗教は沢山あったし、髑髏を呪術に利用する民間宗教や左道密教は存在した。天台からも玄旨帰命壇が出ている。立川流が不当に指弾されるのは文観が権力に固執したからです。現世利益の茶吉尼の邪法などに耽ったからです。


海からドクロが発見されたり、謎めいた集団自殺が起こったり。
バラバラすぎる事件が次第につながっていく、読み応え抜群の大長編ですv




ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(冒頭の写真は御殿場の時之栖にある「ありがとう寺」です)

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posted by akika at 22:53| 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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