2017年03月16日

「PSYCHO-PASS(サイコパス)」はノベライズから先に読んでもいいかもしれない

 
今日のなぞなぞ
「アニメを観るより先にノベライズを読んでもいい作品は?」



オススメのアニメは? と訊かれたら、私は真っ先に「PSYCHO-PASS(サイコパス)」を挙げる。
大好きな作品です♪(ジブリは別腹)

あなたがもし、「サイコパス」をまだ観ていないとしたら、
先に↑ノベライズから入るのもいい
かもしれない。
今日はそんなお話。



☆★☆



今日紹介する本は、名作アニメ「PSYCHO-PASS(サイコパス)」のノベライズ版。
アニメ版の物語を忠実に再現し、”ボーナストラック”をくわえた小説です。

以前の記事(小説版『PSYCHO-PASS<0>(サイコパスゼロ)』の心理描写がスゴくてほとんどBL(ボーイズラブ))で紹介した



↑この本は、アニメでは詳細が語られなかった事件を描いた”スピンオフ”作品ですが。
本日取りあげる「小説 PSYCHO-PASS」はわりと原作(アニメ版・第一期)どおりです。


SF&サスペンスの名作「PSYCHO-PASS」。
どんな世界観なのかというと……。


「そのひとが”犯罪に手を染める潜在的な確率”」をシステムが絶えず計測、管理している近未来が舞台なのね。

システムの判断によっては、罪を犯していない人でも「潜在的な犯罪者」として”予測逮捕”される。

ほとんどの犯罪は未然に防がれるので、
警察のカタチもすっかり様変わりしていて。少数精鋭の組織となっています。


☆★☆



市民のメンタリティを常に監視しているこの制度は「シビュラシステム」と呼ばれています。これが社会のすみずみにまで影響を与えている。

このシビュラが、すごい。
シビュラが予測してくれるのは、犯罪にかかわることだけじゃなくて。


職業適性。
結婚相手。


働き方や生き方に関わることまでシステムが”ご宣託”してくれるわけよ。
で、みんなその提案に従って生きている。

シビュラの予測の精度はすごいので、
かなりの確率でその人は”幸せ”に生きることができる。
ある意味「理想郷」が実現しているともいえる世界です。
(システムからはじかれた「潜在的な犯罪者」以外の人にとっては……)



これ、どう思います?


あなたの性格傾向や才能をみて、自動的に最適な仕事が振りわけられる。
AI(人工知能)が、理想的なパートナーを割りあててくれる。

ぜんぶ。
ぜんぶ、機械が決めてくれる。


なにも考えなくても”幸せ”になれる。


そんな社会に生きてみたいと思うかもしれない。

そんなのぜんぜん人間的じゃない! と思うひともいるかもしれない。




本書に登場するキャラクターたちも、立場によって
いろいろな「シビュラに対する葛藤」を抱いています。

「PSYCHO-PASS」はひと口に言ってしまえば、”近未来の刑事もの”なのですが、
テーマとしては超管理型社会の是非を問う物語かもしれません。


☆★☆



でね。
以前の記事(最近読んだ「未来を予測する」本10冊)でもお話ししたんだけど、
「PSYCHO-PASS」の設定を語るとき、どうしても私が連想してしまうのが「パノプティコン」というモデルなのね。

パノプティコンは、監獄です。
中央に監視塔があって、個室(独房)がそのまわりを囲っている。
看守はすべてを見通せるけれど、囚人は監視者の姿も、ほかの囚人の姿も見えない。

この状態だと、たとえ監視塔に看守がいなくても、
「見られてるかもしれないから……」と囚人は規律に従って行動するようになる。

ポストモダン哲学の雄、↑ミシェル・フーコーが「管理・監視社会」の比喩として用いたモデルです。
(建築としてのパノプティコンの提唱者はジェレミー・ベンサム)


「PSYCHO-PASS」の世界も、べつに看守という権力者がいるわけではありません。
シビュラというシステムが社会インフラになっているだけ。

でも人々は「シビュラにどう判断されるか」を常に気にしていて
日々のメンタルケアにいそしみ、色相(潜在的な犯罪者度を色で表したもの)が曇らないよう努力している。
監視者は不在なのに、自分で自分を監視している。規律は「内面化」している。



☆★☆



えっとね。
なにも私が勝手にパノプティコンと「PSYCHO-PASS」と結びつけているわけではなくて。
本書のなかで、まさにフーコーやベンサムの話がでてきます。


「マックス・ウェーバーの言葉を借りれば、理想的な官僚とは『憤怒も不公平もなく』さらに『憎しみも激情もなく』、『愛も熱狂もなく』、ひたすら『義務』に従う人間のことだという。シビュラシステムは、そういう意味では理想の官僚制的行政に近いかもしれない。

(中略)

「あいつは……マックス・ウェーバーを持ちだされた次の瞬間には、フーコーやジェレミー・ベンサムの言葉を引用して返すでしょう」

『小説 PSYCHO-PASS サイコパス (下)』 「第十九章 透明な影」より


犯人を追いながら、シビュラについて議論する場面です。
最初のセリフは雑賀譲二(さいがじょうじ)という教授。
ふたつめのセリフは狡噛慎也(こうがみしんや)。公安局の刑事です。
「あいつ」とは槙島聖護 (まきしましょうご)のこと。最凶の犯罪者。


マックス・ウェーバーは、実在の社会学者です。
社会学というジャンルを打ち立てたと言ってしまってもいいくらいの重要人物。
資本主義の発展が、欲望の追求ではなく、じつは宗教的な「禁欲」に基づいていると示した↓『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』がとても有名です。



↑雑賀教授の「理想的な官僚〜」のくだりは↓『権力と支配』の引用です。





ジェレミー・ベンサムは「功利主義」(もたらされる効用・満足度の大きさによって社会制度を設計するべしという態度)の始祖

「最大多数個人の最大幸福」という言葉が有名ですね。
それぞれの人の”幸せ感”の総和が最大になるように分配されている状態。
経済学でいう「パレート最適」(※)のこと。

※ 最大の”満足度”が追求された最適な配分状態のこと。誰かの”満足度”あげるためには、ほかの誰かの”満足度”を悪化させなくてはならないくらい、資源等が行きわたっている状態。



☆★☆



本書では(アニメでも)、こんなふうにいろいろな本が引用されているのね。
このシーンだけが特別なわけじゃなくて。


シェイクスピアとか寺山修司とか、ジョゼフ・コンラッド、ジョージ・オーウェル、フィリップ・K・ディック、聖書まで……。


あらゆる場面で、いろんな本が登場
します。
あと、キャラクターが本を読んでいるシーンがやたらと多い!

もちろん電子書籍がじゅうぶん普及している社会なのですが、
狡噛慎也も槙島聖護も、”紙の本”を好んでいる。



↑の雑賀と狡噛のやり取りだけをみても感じると思うのですが……



『PSYCHO-PASS』は情報量がものすごく多い作品


です。

ひとつひとつのセリフもそうだし。
シビュラシステムについての言及も、多岐に渡る。
警察組織をはじめ、社会の姿が今とまるで違うので、描写の奥を読んでいかないといけない。


↑冒頭で「アニメより先にノベライズを読んでいい」とお話ししたのはこういう理由からです。
さらっとアニメ版を観ただけでは、世界を味わいつくせない。
ときには立ちどまり、考えながら楽しめる”本”という形式が合っている作品ですv

本書に登場する槙島聖護のセリフにのっとっていうならば……



「紙の本を買いなよ」


……ということになります。

ほんとに。
ほんとに、こんなセリフが出てくるの。
槙島聖護きゅんは

みんな本読もうよぉ〜☆(*´∇`*)ミ☆

ってずっと言っているような気がします(笑)。


☆★☆




名著からの引用が多いので、
このブログでいつも推奨している「芋づる式読書」(その本に出てくるほかの本を、リンクをたどるようにして読んでいく)の起点にもなる本



……なんだか今日は、『PSYCHO-PASS』の設定や細かい点についてばかり語っている、ちょっとマニアックなレビューになってしまいました。
常守朱(つねもりあかね)(主人公)の名前すら一度も出てこないとか、どうなのよ。

まあ、以前の記事(小説版『PSYCHO-PASS<0>(サイコパスゼロ)』の心理描写がスゴくてほとんどBL(ボーイズラブ))があまりにも物語に寄りすぎて
ほとんどボーイズラブなレビューになってしまったので(^^;)、バランスが取れたかも?


そんなこんなで。


『小説 PSYCHO-PASS サイコパス』っていう本は
アニメを観るより先に読んでもいいかもよぉ☆(*´∇`*)ミ☆



というお話でした。

↓文庫版も出ています。






ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a


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