2017年02月13日

「心でっかち」とは何か

 
今日のなぞなぞ
「”心でっかち”って何? ”帰属の基本的エラー”って?」



頭でっかちは知っているけど……心でっかちって何よ?


というわけで。
今日紹介するのは「心でっかち」という概念を提示している社会心理学(※)の本。

※ 個人の心理や行動が社会のなかでどのような影響を受けるのかを研究する分野。社会学と心理学が合体したようなジャンルです。


この本、じつは以前の記事(最近読んだ「未来を予測する」本10冊)で紹介した、荻上チキさんの『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』で取りあげられていて、気になってずっと積んでいたのですが。
やっと読了。


☆★☆



著者の山岸俊男さんは社会心理学専攻の教授なので、
この本もどちらかといえば専門書・学術書の部類にはいると思う。


ところが、意外と読みやすい。
語り口がすごく親切
な本です。


はんぶん学術書なので、↑冒頭にあげた「心でっかち」とか「帰属の基本的エラー」など聴き慣れない言葉や、「ナッシュ均衡」や「囚人のジレンマ」等、専門用語がけっこうでてくる。

でも、専門用語はきちんと説明してくれるし
読む人によって意味があいまいにゆらぐ言葉(集団主義など)や造語は、きちんと定義しながら進めてくれる。


順々に、ゆっくりひもといていけば
社会心理学になじみがなくても、しっかり吸収できる本です。


☆★☆


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でね。
本書のいう「心でっかち」とは何なのかというと。
強引にまとめると……


ほんとうの原因がほかにあるのに
個人の「心」に問題があると考えてしまう態度
のこと。


いじめがなくならないのはひとりひとりが優しくなれないからだ〜みたいな考え方ね。
「心」が問題だと説明されればなんとなく納得して、わかったような気になってしまう。
でも、そんなのぜんぜん科学的じゃないよね、と本書は警告しています。


世のなかを見渡してみれば、
いたるところに「心でっかち」な意見がある。



「心」のせいにして思考停止しないで、
その先を考えてみようよぉ〜☆(*´∇`*)ミ☆



☆★☆



……と、そんなふうにリテラシー(※)の本として読んでも実りが大きいのですが、
展開されている議論がとても刺激的なので、知的エンターテイメントとしても面白い。

※ 情報に対する読み書き能力。


たとえばね。
「心でっかち」を説明するときに「帰属の基本的エラー」っていう概念が出てくるんだけど。

これは、他人の行動をみて、その人が”みずから進んで”そうしているのだと考えてしまうこと。


本書では掃除当番の例があがっていました。


当番だから、掃除をしなきゃいけないんだけど、俺はほんとは掃除なんてしたくない。
でも、みんなきちんと掃除やってるよな、すげー。
俺以外の人たちは「集団の利益のために行動する性質」をもっているようだ。
俺はちがう。でもサボると怒られるから、掃除はするけどね?


……みたいな。
ほかの人からみれば、けっきょく「俺」も掃除をしていることに変わりはないわけで。
「俺」も他人からは、「みずから進んで掃除に取り組む意識高いヤツ()」と思われているかもしれない(笑)。



こんなハッとさせられる、刺激的な概念やモデルがうじゃうじゃ登場します。
(ちなみに「帰属の基本的エラー」は山岸教授が生み出した言葉ではなくて、社会学・心理学でよく出てくる一般的な概念です)


☆★☆


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もういっこ。
「頻度依存行動」も面白かった。


これは、個人個人の挙動が外部の環境に左右されること。


本書では、とある教室でいじめが起こるケースと起きないケース、がモデルとして載っています。


「俺」以外の〜人以上がいじめに加勢しているなら、「俺」もいじめる。
逆に「俺」以外の〜人以上がいじめに反対なら、「俺」もいじめない。


個人の「心」ではなく「環境」が「俺」の行動を決定する例です。


〜人が”すでにいじめている”という「初期値」によっても、
そのクラスでいじめが起こる/起こらないが変わってしまう。



「ナッシュ均衡」を援用した、完全に”形而上的なモデル”なんだけど
ほんとうに。このモデルをみせられてしまうと個人の「心」が問題だ、なんてとても言えなくなる。


ちなみに、「ナッシュ均衡」は、経済学のゲーム理論の用語です。
多数のプレイヤーがとる”戦略”によって、状況が決定される。
場合によってはみんなが損するカタチで「均衡」する。

「囚人のジレンマ」という言葉なら聴いたことがあるひとも多いかな。
要は、「囚人のジレンマ」のアレです。


囚人のジレンマについては、このブログでも解説しています↓ので、よかったら参照してみてくださいねv

関連記事:
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☆★☆



社会学や心理学、経済学に詳しければ、速読レベルですんなり読めると思います。
でも。繰り返しますが、本書は語り口がとても丁寧で親切なので
じっくりとひとつひとつ進めていけば、予備知識ナシでもしっかり理解できる。


あるいは本書をきっかけに、専門的な分野へ、読書の幅をひろげていくのもいいかもしれません。
教科書的な『教科書 社会心理学』『ミクロ経済学』などへ(私が読んだ参考書はこの2冊だけど、ほかのでも”教科書”をうたっているものならなんでもOKです)。


ナツメ社 の↓「図解雑学」シリーズから入るのもぜんぜんアリだと思います。
あまり明るくない分野にわけ入っていくときは、私も「図解」など入門書をよく使います。







そんなこんなで。今日は


『心でっかちな日本人』っていう本が
オススメだよぉ〜☆(*´∇`*)ミ☆




というお話でした。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a


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posted by akika at 21:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会学・現代思想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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