2016年12月07日

じつは読書案内? 『狼ゲーム』に出てくる定番推理小説10冊

 
今日のなぞなぞ
「定番ミステリ10冊は?」



以前の記事(【電子書籍】ソリッドシチュエーション・ミステリ『狼ゲーム』をリリースしました)で紹介した↑『狼ゲーム』ですが、
じつは「読書案内」といえるほど、いろいろな推理小説に言及しています。

主人公(語り手)のエミルが”ミステリ音痴”で。
ミステリ研究会の伴田院(ばんだ・いん)部長や初瀬教授がレクチャーするシーンが多々ある。


言及されている本は、定番中の定番といってもいいくらい有名な推理小説ばかり。
今日は『狼ゲーム』にでてくる10冊を紹介します。


ミステリファンの基礎教養ともいうべき
鉄板推理小説10冊
をど〜ぞ〜♪


※ 引用は『狼ゲーム』より。ネタバレを避けるため、どんなシーンで言及されているかをあいまいに濁しているものもあります。

 1.

「ヴァン・ダインだ。僕は幸運にして、偉大なるミステリ作家と同じ姓名を得たのさ。神と両親にはいくら感謝してもたりない」
「親もなにも、ただのペンネームじゃないですか」

エミルと伴田先輩のかけあい。
ミス研部長の伴田院(ばんだ・いん)。筆名の由来は、ヴァン・ダインという作家です。
以前の記事(【名探偵】ミステリの古典的名作30冊【名推理】)で紹介した『僧正殺人事件』が傑作。




 2.

「心という密室は、たとえファイロ・ヴァンスにもひもとくことができない。心理学や精神分析が解釈する『心』も、ひとつの仮説、ストーリーに過ぎないからな」
「ファイロ・ヴァンス」は伴田の口から幾度か耳にしたことがある。彼が尊敬している名探偵だという。実在する人物なのかどうかは、エミルは知らない。

エミルは知らないようですが、ファイロ・ヴァンスは架空の名探偵。
↑の『僧正殺人事件』や↓『グリーン家殺人事件』で活躍します。



 3.

「クリスティの『そして誰もいなくなった』はもちろん読んでいるね?」
「はい」
 入部したての頃に慌てて読んだことは、わざわざ報告しなくてもいいだろう。

初瀬教授が、エミルに「クローズド・サークル」の解説をするシーン。
クローズド・サークルとは、「吹雪の山荘」や「嵐の孤島」など外界との接触が断たれた舞台のことです。
アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』が非常に有名。非常に名作。

『狼ゲーム』では人狼の館のホールをクローズド・サークルとして扱っていますが
定義によってはこの程度の狭い空間はクローズド・サークルと呼ばない場合もあります。



 4.5.

「カーター・ディクスンが『三つの棺』のなかで登場人物に密室に関する講義を行わせている。さらに、江戸川乱歩がこれを変奏したエッセイを書いている。未読なら探してみるといい」

初瀬教授が”密室とはなにか”をエミルにさとす場面。
カーの「密室講義」はあらゆる推理小説や評論で言及されています。

初瀬のいう乱歩のエッセイは「類別トリック集成」のこと。
古今東西のあらゆる”トリック”を分類した評論です。
『江戸川乱歩全集 第27巻 続・幻影城』に収録されています。




 6.

「江戸川乱歩の『赤い部屋』は読んでいるかい?」
「まだです」

エミルとバン先輩のかけあい。
「赤い部屋」は、怪しげな部屋に集まった怪しげな男たちな怪しげな談話をするお話。
”プロバビリティの犯罪”がテーマです。

以前の記事(【絵本】クリスマスに恋人に贈りたくない本10冊【小説】)でも紹介した『江戸川乱歩傑作選』に収録。この本はほかの短編も傑作ぞろいで一切ハズレがない。とてもオススメですv

プロバビリティは未必の故意のこと。人が死ぬかもしれない状況を作り出したり放置したりする犯罪のカタチ。↑「類別トリック集成」でも扱われているテーマです。



 7.

「綾辻行人の『時計館の殺人』で詳しく解説されている。未読の人は読んでみるといい」

ユーサピア・パラディーノのトリックについて解説する、初瀬教授のセリフです。
パラディノのトリックは、交霊会で用いられるイカサマ手法。

『時計館の殺人』は以前の記事(【ミステリ】読み始めたら止まらない徹夜本10冊【SF】)でも紹介しました。





 前作でも……



ところで。
この綾辻行人さんですが、前作『アトカタモナイノ国』でもちらっと言及しています。

『アトカタ〜』でふれているのは、アニメ化もされたホラー小説『Another』
主人公の妹のまりあが”最近読んだ本”として話しているのですが
直接タイトルを出しているわけではありません。わかるひとはわかる、という書き方。
『アトカタ〜』ではダン・ブラウンの『ダヴィンチ・コード』やクリスティの「エルキュール・ポアロ」シリーズにも言及しています。









 8.

 ありえない線をまず、消していく。そして残った可能性が、たとえどんなに突飛な解だとしても、それが真実なのだ、といつか先輩が語っていた。

エミルの独白です。
エミルはたぶん気づいていないでしょうが、バン先輩が語ったというこの論法は、
かの有名なシャーロック・ホームズの方法論です。

オリジナルの文面は……

When you have eliminated the impossible, whatever remains, however improbable, must be the truth.

など。

「緑柱石の宝冠」「ブルース・パーティントン型設計図」「白面の兵士」等の作品でホームズはこの信念を語っています。
「シャーロック・ホームズ」シリーズはアーサー・コナン・ドイルの代表作。近代探偵小説の始祖。



 9.

「ところで田中さんはどんな作家が好きなんだい? カー? クリスティー? それとも、チェスタトンかい?」
(中略)
「シェイクスピア、とか……」
「……なるほど。奥深い答えだ」

初瀬教授に問われ、とまどうエミル。
カーは↑で紹介した『三つの棺』のジョン・ディクスン・カー(カーター・ディクスン)。
クリスティは『そして誰もいなくなった』のアガサ・クリスティー。

チェスタトンは「ブラウン神父」シリーズがとても有名です。
みんな大好きチェスタトンv





 10.

「不審なものである可能性のある時は、スペードをスペードと言えないのさ」
――エセル・リナ・ホワイト『らせん階段』

『狼ゲーム』冒頭のエピグラフ。
『らせん階段』は映画化もされている、古き良きミステリ(サスペンス)です。
あるお屋敷でメイドとして働くことになったヘレン。付近ではいまだ犯人のつかまらぬ連続殺人が……。
疑いだすとなにもかもが”怪しく”みえてしまう。雰囲気も物語もすばらしい逸品。



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 番外編


『狼ゲーム』では推理小説以外の本にも言及している箇所があります。
番外編として、ふたつの場面をピックアップ。


「名前とは個々を便宜的に区別するための、記号に過ぎない。君が識別不能な名を挙げないかぎり、僕らはそれを許容する」
「でしょ? ボクはX、この狼ゲームの支配者だ」

「X(えっくす)」としか名乗らない少年を肯定する伴田のセリフ。
”近代言語学の父”ソシュールの記号論、あるいはソシュールを出発点としたその後の現代思想についての言及です。

以前の記事(【語り手】文学理論を学びたい人のための15冊【テクスト論】)で紹介したジル・ドゥルーズや、ロラン・バルト、ジュリア・クリステヴァなど一連のポストモダン思想家はソシュールの記号論の影響を少なからず受けています。




「憶えがあるという表現は正確でないな。人間が個々を識別する際、その個人が持つイデアと照らし合わせているとするなら……」
「イデア? プラトンですか?」

見憶えがある。ただそれだけのことを、わざわざ難解に言おうとする伴田への、
エミルのツッコミ。
イデア論は、古代ギリシアの哲学者プラトンの思想『パイドン』『国家』などで展開されています。








ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪ 


あきか(@akika_a


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【関連リンク】

狼ゲーム-ソリッドシチュエーション本格ミステリ-特設サイト 狼ハ、ダレダ。
http://okamigame.16mb.com/






 
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posted by akika at 00:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 10冊シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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