今日のなぞなぞ
「”おいしい文章”……とは?」
マツコぉぉぉ!!!(庄司智春さん風に)
……というわけで^^;
今日紹介するのはマツコ・デラックスさんと中村うさぎさんの”書簡本”。
マツコさんはテレビでもおなじみの、ゲイの女装家。
中村うさぎさんは、ライトノベルでデビューしエッセイストとして活躍している作家です。
「魂の双子」と認めあったこのふたりが、”往復書簡”というカタチで
たがいの人生や価値観を語りあう。
帯のキャッチコピーなどでは
「あのふたりがガチバトル!」みたいな売られ方をしているのですが、
じつはそんなにバトルはしてません(笑)。
むしろ読んでてほんわかしてしまうくらい、仲良しなふたり。
そもそもマツコさんが世に出るきっかけをつくったのが、
中村うさぎさんだそうです。
☆★☆

書簡という形式なので(一部対談も掲載されていますが)
ひとつひとつのトピックがぐんぐん深まる。
対談本にありがちな、ある種の”散漫さ”はほとんどありません。
週刊誌に連載されていたこともあり、
時事ネタなんかもたまに出てくるのですが、
話はすぐ、互いの生き方のほうへと揺りもどる。
もちろん時事ネタより、
人生哲学の部分のほうが、だんぜん面白いです。
中村うさぎさんの書くものの力強さはお墨つきなのですが
(中村うさぎさんについては後述します)
マツコさんの文章がとてもよかった。
バイブスがあるというか、なんというか。
比喩がユニークだったり、ユーモアもきいていて
毒とやさしさをあわせもっていて、自己批評も痛切。
マツコさんの文章を読むのははじめてだし、
そもそもマツコさんに対して物書きという認識がなかったので、
ほんとうに、不意打ちをくらった感じです。
雑誌編集をしていたり、もともとは活字メディアのひとだったんですね。
ちょっと引用してみます。
アタシみたいに自分にも他人にも厳しくなりきれない分、生き易いのと、アンタみたいに自分にも他人にも厳しい分、生きづらいのであれば、アタシは後者でありたいと切望する。たとえそれで善良の民でなくなったとしても。
……こんな感じです。
おちゃらけている部分もあるけど、真剣な話の方がぜんぜん多い本。
逃げるように帰った実家から母親に追い出され、ボロアパート暮らしのくせして、借金してまで女装している頃よ。上の階から女の喘ぎ声が聞こえてきた時、心の叫びというかなんと言うか、無意識の内、口に出してこう叫んでいたわ。「チンポもいらない、ゲイとしての幸せなんていらないから、だから神様、アタシにたらふくメシを喰わせて、日の目を見させて!」
↑この部分はマツコさんファンの間では有名かも。
不遇の時代の魂の叫びです。
全4巻。
じつは試しに1巻だけ読むつもりだったのですが、
あまりにも名著だったので全巻一気に読んでしまいました。
↓1、2巻はタイトルをリニューアルして文庫になっています。
追記)
おなじく週刊誌連載の、おふたりの「人生相談」コーナーも単行本化しました↓。
読者のお悩みをうさぎ×マツコが”真剣に”ぶった斬ります。
☆★☆
んでね。
こんどは中村うさぎさんの話なんだけど。
……このひとは紹介が難しい。
ブランド品を買いあさる、買い物依存におちいったり、
ホストクラブ通いにハマったり、
美容整形に大金をつぎこんだり、
短い期間、デリバリーヘルスを体験したり
……と、これだけ聴くと
破天荒とか、身体を張った芸風の書き手なのねとか思われてしまいそうですが、
じっさい本人は「私は魂の異形」みたいなことを言っていたりもするのですが、
”奇行”のすべては、果てのない「自分探し」だし、
むしろその過程でどんな内面を獲得するか、
ある意味ではどの本も「内的世界のロードムービー」といった雰囲気です。
買い物がとまらない、もうフツーじゃなくなってることは
自分でもよくわかってる、でも、
自分が衝動と感情の奴隷であることを、強く認識しながらも
”地獄”を選んでいく。
影響されそうで、読むのがちょっと怖いな。そう思うひともいるかもしれないですが、
メタ認知(※)が非常に効いている書き方なので、そこまで飲みこまれることなく読めます。
※ 自らの状態を客観的に把握すること。
買い物もホストも美容整形も、
「1冊かくのにいったいいくら使ってんだよ!」とツッコミたくなるほどで
それだけコストがかかっている本をこんな値段で読めるなんて、
本ってすごい。
やっぱり、ノーリスク・ハイリターンの投資は読書だよね!
……なんて軽いノリでまとめてしまうのがはばかられるほど。、
ほんとうに、強いものが宿っている作家さんです。
吾妻ひでおさんの一連の失踪・アル中日記に近い客観性があると感じました。
吾妻さんのアルコール中毒描写も、ミョーに客観的で戯画化されて描かれています。
↓マンガだけど、名著ちゅうの名著なのでまだ読んでいなければぜひ♪
☆★☆
中村うさぎさんの本で私が一番好きなのが
↓『愚者の道』。
みずからを「愚者」と一人称で呼んで、
もはや哲学書かと思われるくらい抽象的な言葉をつむいでいく。
ひたすら語られるのは、中村うさぎさんの自意識について。
自意識の檻のなかで、問いを繰り返し、問いのまわりを逡巡する。
抽象的であるからこそ、普遍的です。
読者自身の内面の葛藤として、読める。
私たちはいったい、なにを求め、どこへ向かおうとしてるんだろうね。
もうね。反面教師として読んじゃってもいいと思います。
中村うさぎさんのようなスタイルの欲望追究では、けっして満たされることはない、と。
ご本人も、そういう読み方してもいいよ、とおっしゃっていた気がします。
☆★☆
んでね。
中村うさぎさんの紹介をすると、どうしても連想してしまうのが
菜摘ひかるさん。
以前の記事(【泣ける】女性作家が描く切ない恋愛小説10冊【沁みる】)では
『依存姫』という小説を紹介したけれど、
フィクションはじつはこの1冊だけで。
菜摘ひかるさんもエッセイがメインの作家です。
性風俗の現場での経験をとても強い文章でつづっています。
29歳で夭折。
フェミニズムの文脈で評価されているわけではないけれど、
フェミニズム好きなひとにもオススメです。痛快!
文体や言葉のえらび方もすごく心地いい、”おいしい文章”。
マツコさんもうさぎさんもそうだけれど、
そのひとの魂(マツコさんふうにいうならば「実相」)から出ている言葉は、
なにかが違いますよね。
文体に音楽があったり、
選ばれた言葉がさまざまな意味に結びついているとか、
切実さがにじみでていたり
それこそバイブスがあるというか……。
うーん、うまく伝わってるかな。
そういう本や文章に出逢えたとき、私はすごく幸せな気持ちになります。
そんなわけで今日は
マツコ・デラックスさん
中村うさぎさん
吾妻ひでおさん
菜摘ひかるさん
の紹介でした。
いつも厳選したオススメ本しか紹介していないけれど、
(じつは、ひとつの記事の裏には「読んだけどレビューしなかった本」が大量にあるのです。それこそ、山のように)
今回紹介したものは、なかでもとくに推したい本ばかり。
「おいしい文章」にふれて、すてきな読書ライフがすごせますよーに、
と願いをこめてピックアップしました。
良い本に飢えているあなたは、1冊だけでも、手にとってみてくださいねv
ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪
あきか(@akika_a)
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