今日のなぞなぞ
「面白いソリッドシチュエーションライトノベルは?」
閉ざされた空間。
謎めいた存在から提示される、一定のルール。
信頼、そして裏切り。
疲弊してゆく精神。
つぎつぎと生まれる、脱落者たち……。
映画『SAW』や漫画『LIAR GAME』、
小説だと『インシテミル』とか、
そんなソリッドシチュエーションな物語が大好きな私ですが。
今日は、
ライトノベルですっごい面白いソリッドものを見つけたのでご紹介。
ライトノベル最大の新人賞、第13回電撃小説大賞で「金賞」を受賞した『扉の外』です。
土橋真二郎さんのデビュー作。
☆★☆
修学旅行に行くはずだったのに、灰色の閉鎖空間で目を覚ました二年四組の高校生たち。
手首には腕輪がはめられていた。
ソフィアと名乗る謎の存在がここでの「ルール」を説明し、
生徒たちは”配給”をめぐるゲームに巻きこまれてゆく……。
……こんなシチュエーションです。
1巻で展開されるゲームは、
いわゆる「戦略(国取り)ゲーム」。
拠点を守りつつ勢力を広げていくような、アレです。
生徒たちは
一定時間ごとに生産されるダイヤを使って、
スペード(偵察や戦闘ができる兵士)やクラブ(食べ物や生活用品に替えることができる)を入手します。
☆★☆
この作品も、例によって
「囚人のジレンマ」がおおきなモチーフになっています。
囚人のジレンマとは、経済学のゲーム理論の用語。
一言でいうと
「協力した方がお互いの利益となるはずなのに
相手の出方がわからない以上、裏切った方が合理的」
である状況のこと。
警官「お前らふたりの囚人のうち、自白した方を無罪にしてやろう」
囚人A「まじすか!?」
囚人B「心の声(実は俺たち共犯なんだべなぁ)」
警官「ただし、自白しなかった方は懲役10年の刑に処す」
A「ふたりとも自白したらどーするんすか?」
警官「その場合、ふたりとも懲役5年だ」
B「じゃあ、ふたりとも黙っていたら、どうなるんだべ?」
警官「懲役2年ずつでカンベンしてやる。さあ来い、別々の部屋で取り調べるぞ!」
この場合、ふたりの懲役年数の合計がいちばんすくなくなるのは、
両者とも黙っているケース。
でも、囚人Bにとって、Aが自白するかどうかは未知数。
Bは「心の声(Aが自白したら、おら10年もムショ暮らしだわ。Aには悪いけっども、
正直に話しちまうべか〜)」と考える。
Aもおなじように考えるので、
AもBも自白する……という結果で均衡する。
☆★☆
ちょっとネタバレになるけど
『扉の外』では、物資に直結するダイヤの生産を守るため、
出方がわからない相手から、みずからを守るために
争う
という方向に均衡してしまいます。
国境はなぜできるのか。
とか
どうして戦争が起こるのか。
その原理が、
シンプルに、システマティックに明らかになってゆく。
さらに、おなじ国のなかでも
腕輪をしている者(=配給を受けることができる人)と
腕輪が外れている者(=めぐんでもらうしかない人)との間で
支配被支配という立場の違い、格差もうまれる。
たんにバトルロワイヤルなだけでなく、
「経済」や「社会」の要素がからんでくる、ものすごい面白い作品でした。
ちなみに、主人公は
目覚めるとすぐ、衝動的に腕輪を外してしまった男の子です。
ルールに飲まれず、ほかの国へも移動できる
「越境者」としてふるまう。
物語上、これがおおきなポイント。
☆★☆
1巻ずつ完結しますが、
本作はぜんぶで3巻あります。
第2巻は「天使・人間・悪魔」からなるカードゲームです。
こちらも配給と腕輪がからみ、1巻より殺伐と……。
3巻はサバイバルゲームです。
といっても、実際に銃で撃ちあうわけではなく、オンライン上。仮想空間です。
配給と腕輪をめぐり、バーチャルな血も流れる。ちょっと百合百合。
以前の記事(碇シンジは夜神月を止められない――宇野常寛『ゼロ年代の想像力』)で紹介した
『ゼロ年代の想像力』は、
ゼロ年代の空気を
決断主義・サヴァイブ系
という言葉で表現していました。まさに『扉の外』も、
生き残りのためにどんどん前に進んでいかなければならない。そんな物語です。
第3巻では、
人間の本質は変わらない。
協調か裏切りか。
そんな人間のコミュニケーションは変化することはない。
という言葉も出てきます。
ほんとに、ゼロ年代らしい小説。
とにかく面白かった。
キャラクターは魅力的ですが、
ライトノベル特有のノリはほとんどないので、
ラノベを読み慣れていない方にもオススメです♪
1日で3冊ぜんぶ読んでしまいました。徹夜本!
ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪
あきか
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