今日のなぞなぞ
「文学理論を学ぶために必読の15冊は?」
「文学理論を学びたい人のための15冊」をまとめました。
↓リストは『文学理論』の訳者あとがきで、富山太佳夫さんがオススメしている15冊。
(短い紹介文はこのブログのオリジナルです)
「理論意識の明確な、文学批評の本」としてチョイスしたそうですが、
文学研究を超えて、現代思想や哲学を学ぶうえでも役立ちそうなラインナップ。
数えきれないくらいの書籍や論文で引用・言及されている、鉄板本ともいえるリストです。
すこし専門的ですが、「言葉」を身近なものとしている読書家のあなたなら、
意外なくらいすんなり読めると思います。
(文学部の学生や文系の大学院生なら必携!)
読書の秋。
ちょっと背伸びして、専門書をひもといてみてはいかがでしょ♪
1.ニュークリティシズム
曖昧の七つの型〈上〉 (岩波文庫)
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ウイリアム・エンプソン 岩崎 宗治
岩波書店
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曖昧の七つの型〈下〉 (岩波文庫)
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ウィリアム エンプソン
岩波書店
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ニュークリティシズム(※)を切り拓いた、文学理論家ウイリアム・エンプソンの代表作。シェイクスピアなどの詩の分析をとおして、”多義的”であろうとするテクストの性質と向かい合う。近代文学理論の始祖ともいうべき名著。
※ 1930〜40年代にアメリカで興った新しい文学批評の流れ。作者の意図や歴史状況などを離れ、作品(テクスト)じたいを「客観的」に分析することを志向する。
2.現象学
人間的時間の研究 (1969年) (筑摩叢書)
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井上 究一郎 ジョルジュ・プーレ
筑摩書房
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筑摩書房
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作品内の時間や空間は、「意識の世界」で起こっていることが記述されたものである。主体と客体、意識と世界の分離を問題にする、現象学(※)的批評の代表作。ぜんぶで4巻ありますが、手にはいりにくいので古本か図書館で。
※ 20世紀初頭、おもにフランスの哲学者フッサールによって打ちたてられた学問的方法論。我々の認識の外に現実世界が存在するという”常識”をいったん判断停止(エポケー)し、純粋な意識をとおしてものごとを知覚する。
3.比較文学
ミメーシス―ヨーロッパ文学における現実描写〈下〉 (ちくま学芸文庫)
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エーリッヒ アウエルバッハ
筑摩書房
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文学における描写は現実の模倣(ミメーシス)であるとし、新旧の文芸作品の文体分析を行う。ホメロスからプルーストまで、ヨーロッパの精神史を俯瞰。
4.構造主義
バルザックの中編「サランジーヌ」の文学理論的分析。テクストの”意味”がいかに産出されるかについて、言語・精神・社会など読者が前提としているコード(※)に目を向けます。構造主義(※)的分析の実践。
※ 情報伝達において、その社会の人々が共有している約束ごとのようなもの。
※ 1950〜60年代におもにフランスで展開された知的態度の総称。ソシュールの言語学を起点とする。レヴィ・ストロース(文化人類学)、ロラン・バルト(文化研究)、ジャック・ラカン(精神分析学)、ミシェル・フーコー(思想哲学)など。
5.テクストの空白
テクストはそれ自体が直接言及していないものを内部に持つ。余白こそを読みこむ、今日の文学研究の理論的礎。
6.ポスト構造主義
芸術はそこで習得されるシーニュ(※)によって本質、真理へと接続していく。プルースト『失われた時を求めて』の分析です。知識や全体性、主体に懐疑の目を向けるポスト構造主義(※)的な文学批評の代表。
※ 記号論では、シニフィアン(意味するもの)とシニフィエ(意味されるもの)の対としての言語的記号をいう。本書ではこの概念をさらに広く芸術全般に応用している。
※ 構造主義というレッテルから距離をとりはじめた思想家たちの一連の仕事をいう。1960〜70年代、おもにフランスにおける思想運動。バルト、ラカン、フーコー、デリダ、ドゥルーズ、リオタールなど。
7.脱構築(ディスコンストラクション)
現代思想や文学作品と対峙し、言語であらわせないものを言語であらわそうと尽力する「テクストの狂気」について論じます。イェール学派(※)の才媛による刺激的な文学理論書。
※ ジャック・デリダの脱構築(ディスコンストラクション)理論を文学理論として確立したアメリカのイェール大学の思想家グループ。ポール・ド・マンを中心とする。
8.イェール学派
小説における「反復」論。ヴァージニア・ウルフなどイギリス文学の分析です。↑のフェルマンとおなじくイェール学派。
9.ポストモダン
テクストは原理的にはあらゆる解釈をゆるす「開かれた」ものである。一義的に閉じようとする態度に対し異議を申し立てる、ポストモダン(※)的文学理論。
※ 機能や合理性に重きを置く近代主義(モダニズム)を批判する運動の総称。建築の分野で興ったが、現在ではあらゆるジャンルの知的創作的態度について用いられる用語。
10.ポリフォニー(多声楽)、カーニバル
ポリフォニーとカーニバル。現代文学理論においてとても重要なふたつの概念を提示しています。前者は真に異なる価値や人格が”多声的(ポリフォニック)”に作品内に存在していること。後者は聖と俗などの対立が反転・無化する物語空間。
11.新歴史主義(ニューヒストリシズム)
ルネサンス(※)の分析をとおし、文化の盛り上がりに即興演技(アドリブ)をみる。既存のものを利用し、散らばる素材を都合よく自らの言説にまとめあげ、できあがったものが再帰的に既存のものすらも変容させていく。文学は社会の反映ではなく、ときには社会に敵対するエネルギーを秘める。新歴史主義(※)批評の代表作。
※ 14世紀にイタリアで興った文化復興の運動。
※ 従来の歴史主義を批判する歴史記述の態度。言説と主体、文学と歴史の階層的因果関係や対立性を否定する。フーコーの影響を強く受けている。
12.作家性
『カフカの衣装』
マーク・アンダーソン(著)、三谷研爾(訳)、武林多寿子(訳)
高科書店
フランツ・カフカの作家論。いかにしてモチーフや文体を獲得するにいたったかを試行錯誤を含めて追いかけ、その作家性を論じます。非常に手にはいりにくいので、本書訳者の三谷研爾さん『境界としてのテクスト』も紹介します。同書の第2章「歴史/受容」で「覚え書き」として『カフカの衣装』が言及されています。
13.ポストコロニアル理論
文化や社会においても西洋の言説が覇権をふるうポストコロニアル(植民地主義後)の時代、文化的支配は被支配地に雑種(ハイブリッド)なアイデンティティを形成させる。支配の手段として、あるいは抵抗の武器として用いられる”言葉”の作用を浮き彫りにします。ポストコロニアル理論(※)の代表作のひとつ。
※ ヨーロッパによる植民地化とその余波が提起した問題系を理論的に捉えようとする思想の総称。
14.ジェンダー研究、フェミニズム理論
シェイクスピアなどイギリス文学の分析をとおし、社会に存在するホモソーシャル(異性を暗黙裡に排除しようとする同性同士の”絆”)な制度とホモフォビア(ヘテロセクシャル(異性愛者)がもつ同性愛嫌悪の感情)の脅迫をあぶり出します。マイノリティ研究やクィア理論(※)に通じる、ジェンダー(社会的性別)研究のバイブル。
※ 同性愛者への蔑称である「クィア(Queer)」を自ら肯定的に引き受けることで、社会が内にかかえる差別的制度の構造を明らかにし相対化する。マイノリティ解放の理論的実践方法。
15.都市空間
江戸〜明治の日本文学を”都市”をキーワードに精読する。明確な理論意識のもと、物語世界を都市空間のなかに捉えなおす方法論を提示した、あるいは新たな都市論を構築した、名著です。
あきか(@akika_a)
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