2014年02月14日

バレンタインデーにはロックを聴け!〜アルカラロックの「本質」

 
003.JPG

リア充のみなさま、こんにちは。
あんど、ふぁっくゆー。


……というわけで、
バレンタインデーの今日は、本ではなくロック特集だぜ。


臓腑に響くドラムス。
魂をふるわせる、ベースの振動。
社会の濁りを表象する、ギターのひずみ。
既存の世界を破壊する、ボーカル。

……高まる。


ヘッドホンして、
大怨霊でロックを聴いて、

くだらないイベントに踊らされてるヤツらを
嗤いとばしましょ♪




☆★☆




フィクションを科学する - アルカラ(iTunes)


そんなわけで。
今日紹介するのは「アルカラ」というアーティスト。
大怨霊で……とか書いておいてあれですが、
わりとさわやかなJロックサウンドです。

ただ、音や詞の本質が、ものすごくロック。
最近お気に入りのアーティストです。


このアルカラが、すごい。


なにがすごいって、
マジメにロックしている人たちが気の毒になるくらい、
歌詞やメロディが引用
(パクリとは言うまい)のオンパレードなんです。

ロックすら破壊してしまう、スピリッツ。
バレンタインデーにぴったり♪ です。



☆★☆




アルカラは2002年神戸で結成されたバンド。
稲村太佑(ボーカル、ギター、バイオリン)田原和憲(ギター)下上貴弘(ベース)疋田武史(ドラム)の4人から成るグループです。



……まあ、そんなことはどうでもいい。

私は音楽も小説も「作品がすべて」というスタンスなんで、
アーティストさんの経歴とかルックスとか、あんまり興味ないです。
(その曲をつくったのが聴覚障害者だろうが大学の先生だろうがどっちでもいいじゃん
……と最近のニュースをみるたびに思ふ)


ではでは。
このアルカラがどんなふうにトンデモナイのか、見ていきましょ。



☆★☆




BOY NEXT DOOR - アルカラ(iTunes)


『BOY NEXT DOOR』というアルバムの7曲目。


「♪探し物はなんですか〜」とはじまる。


ものすごい出オチ。
思わず、ずっこけてしまう。


Jポップの歌はもう「探し物はなんですか〜」ではじまっちゃいけないわけです。
井上陽水さん「夢の中へ」という名曲があるから。
これはもう、暗黙の掟です。

だけど、自称「ロック界の奇行師」は、
とんでもない禁じ手をやる。

たまたま似ちゃった……というわけではもちろんない。
ほかの曲でも、あきらかな引用をやっているわけですから。


このアルバムは邦楽の引用、本歌取り(※)のオンパレードです。

※ 本歌取り : 和歌の作成法のひとつ。既存の歌の句を取り入れて、新たな歌をつくる。


たとえば。

「4. 散らかった部屋とわたし」は、
「部屋」と「わたし」が出てきている時点で
平松愛理さんの「部屋とYシャツと私」を連想させるし、

「2. 夢見る少女でいたい。」は、
相川七瀬さんの「夢見る少女じゃいられない」への返歌。



さらにさらに。
引用元はJポップだけに限りません。


「3. マゾスティック檸檬爆弾」は、
「レモン」と「爆弾」といえば、梶井基次郎の「檸檬」だ。




おかわりください - EP - アルカラ(iTunes)


『おかわりください』というシングルの
「ミックスジュース」は、NHKの「おかあさんといっしょ」で流れていた名曲「ぼくのミックスジュース」をあきらかに意識した歌詞世界。
またこの曲では、


♪まりまりもるもる飲みたいな〜


という節があります。
マルモのおきての主題歌「マル・マル・モリ・モリ!」とリズムまで一緒!
だいじょぶか。


さらにさらにさらに。
元ネタは、音楽だけにとどまらない。



そうきたか - アルカラ(iTunes)


『そうきたか』というアルバムの
「2. チクショー」は、お笑いの小梅太夫さんのネタを彷彿とさせるし、



ドラマ - アルカラ(iTunes)


『ドラマ』というアルバムのシークレットトラックでは、
「ボーイスカウトの誓いと掟」が歌われる。
もはや音楽でも文学でもなんでもないテクストからの引用です。そのまんま。




むにむにの樹 - アルカラ(iTunes)


童謡を意識させる曲が多い(機関車しゅっぽっぽー♪ とか)
『むにむにの樹』というアルバムのシークレットトラックは
もう、なんでもアリです。


この曲はシムシティ、スペランカー(ファミコンゲーム)
のことを歌っています。


で。
サビでは、「♪どんなときも〜どんなときも〜」

メロディこそ異なるものの、槇原敬之さん「どんなときも」の引用。

ワンフレーズならまだしも、
続くのは「♪僕が僕らしくあるために」。
さらに「♪好き〜」とつながる。


やばいんじゃないのと冷や汗が出たところで、
「♪好き〜嫌いは〜」とぜんぜんべつの展開になっていきます。


コーラスが終わると、いきなり
アルカラ自身の曲「半径30cmの中を知らない」の詞とメロディが流れます。
これ、かなりいい曲なので、
おっ、と思って耳を向けたとたん……。



「ぴこぴこ!」



なんじゃそりゃ。



この曲には「♪8ビートの音楽にかんしゃく玉のお母さん」
という詞があるのですが、
これは、アルカラ自身の楽曲「癇癪玉のお宮ちゃん」の本歌取り。

まあ、「癇癪玉のお宮ちゃん」だって、
リズムと音(おん)をみれば、元ネタは童謡「げんこつやまのたぬきさん」なんだけど^^;







そしてそして。
極めつけは、『こっちを見ている』というアルバムのシークレットトラックです。



☆★☆




こっちを見ている - アルカラ(iTunes)


このアルバムのシークレットトラックは、あまりにもヒドい(笑)。


どうしてそんなところで一人で凍えているの?
こっちへ来てあったまろうよ


とはじまる軽快なトラックです。
犬や猫の鳴き声がはいっていたり、
小ネタや言葉遊び(follow me ニャロメ とか)が満載でおもちゃ箱をひっくり返したように楽しい曲。


童謡の引用が3連続ででてきます。


♪ある日 パパとふたり語り合ったさ


は童謡「グリーングリーン」。
この曲でパパと語り合っているのは「生きる喜び、悲しみ」のほかに
「隣の家の人の顔のこと」。なんだそれ(笑)。



♪カラスはなぜなぜ鳴きますの


は「七つの子」。
「カラスの勝手でしょ」と、替え歌バージョンの引用です。


♪迷子の迷子の子猫ちゃん


は「いぬのおまわりさん」。



そしてサビでは……なんと。



♪あの素晴らしい〜


と、加藤和彦さん・北山修さんの不朽の名曲「あの素晴しい愛をもう一度」が
引用されてしまいます。

歌詞やリズムどころか、メロディまで一緒!
やばいやばいw


しかも

♪あの素晴らしい〜あい〜


と続く。
ついにやっちゃったか……と思ったところで、
「あい〜つはお母さん」と、べつの展開になっていきます。



これだけ読んでいると、
「どんな曲だよ」って思いますよね。

でも、曲を聴いた後も結局、あなたは言ってしまうでしょう。


「どんな曲だよ!」


って。



☆★☆




なんだか、今日のエントリはレビューというより、
”アルカラ大好きファンブログ”になっちゃってますが。

JポップやJカルチャー好きには、
至福の時間をもたらしてくれるアルカラ。


考えてみれば、HIP HOP や Jラップにも「引用」の文化はあります。
過去の名曲をサンプリングしてループさせて、新しいものを生み出すという手法があります。
和歌にも、「本歌取り」という作法がある。

でも、それらは本家へのオマージュという要素が強かった。
でもアルカラの場合、縦横無尽すぎて”リスペクト”というよりは、
コピペ、コラージュだ。



ここでひるがえって、Jポップ全体を俯瞰してみると。
王道進行(※)という言葉があるくらい、
日本の歌謡曲は、どこかで聴いたような曲が多いです。
歌詞のテーマやフレーズも似通ったものがとても多くなってきている。
(まあ、私はベタな王道も大好きなのですが)

※ 邦楽でよく使われるコード進行。感情にうったえかけてくるため、さまざまな楽曲で用いられる。クリシェ。


音楽に限らず、映画や小説もおなじような状況です。
飽和した市場では、どんなものにも既視感がつきまとってしまう。

そんな"オリジナルなきコピー"にあふれた現代を、ボードリヤールが「シミュラークル(simulacre)」と呼んだのは
以前の記事(オリジナルのない世界――ネット上の拡散文化と”シミュラークル”)でもお話しました。



どうしても既視感がつきまとってしまう楽曲。
それを、アーティストたちは、「いかにもオリジナルですよ」という顔をしてリリースしなければならない。



アルカラのロックは、その欺瞞を突いています。


「いかにもオリジナルじゃありませんよ」という顔をすることで、
逆に、オリジナルなものができあがっている。
そんな感じ。


とってもポストモダン批評にあふれた音楽です。
自身の曲ですらすぐさま引用して変容させてしまう、再帰性。



……まあ、こんなふうにロックを批評のことばで語ってしまうのは、
ものすごいつまんないことなので、このへんで。



そもそもロックは、”ひとまわり”しないとなにも言えない
めんどくさい人種
です(笑)。
たとえば、青春パンクだって「どうだ青臭いだろう、カッコ悪いだろ、ドン引きだろ。でもあえて俺はやるぜ」というメンタリティがある。



”ネタ”であるはずのものが”ベタ”になってしまうと、
音楽はつまらなくなる。


……と思います。
最近の家族大好きJラップなどに、ちょっとその危険を感じているのは私だけじゃないはず。



稲村さんが「求めすぎんなよ」と言ってるのは、
そういうことなんじゃないかな。




だからさ。
バレンタインもいいけどさ。

エンジョイする人は、ベタにはなんなよ。


「踊らされてんのわかってて、踊ってんだぜ?」


って、心のどこかでは思っていてほしい。
じぶんがものすごい”ベタ”なことをしている
……そこをちゃんとわかっててほしいな。


じゃないと、キミのロック魂は、死んじゃうよ?



このブログでいつも言っている
ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書" という言葉は、
「カンタンに踊らされるだけの人間にはなるな」というイミでもあるのです。



そんなこんなで。今日は
バレンタインデーにはロックを聴け! ……というお話でした。



あきか(@akika_a



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カテゴリ:音楽



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posted by akika at 15:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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