2014年02月13日

ネットいじめ、スクールカースト、キャラ戦争

 
今日のなぞなぞ
「スクールカースト関連本は?」



今日紹介するのは、荻上チキさんの本。
「ネットいじめ」や「学校裏サイト」をテーマに据えています……が、
インターネットを活動フィールドとされているチキさんらしく、
”リテラシー”(読み書き閲覧能力)の本として秀逸です。

なんのリテラシーか。
ネットやメディアはもちろん、情報全般に対する、識別能力。



☆★☆




本書の前半は、「学校裏サイト」に対する偏見誤解をとく作業に費やされています。


いじめの温床として語られる「学校裏サイト」。
しかし実態は、雑談や情報交換など、平和に利用されているケースが圧倒的に多い
そもそも「裏サイト」という名称がおかしい。
「学校勝手サイト」と呼ぶべきだ。


……という感じに。
「勝手サイト」は、公式ではないウェブサイトのことです。
iモードの黎明期にドコモの公式ページではない「勝手サイト」で
着メロや待ち受け画像をゲットするのが流行ったりしました。
ひとによっては懐かしい響きを感じるかも。

それはさておき。
学校勝手サイトがほとんど平和なのは、考えてみれば当然の話で。
フェルミ推定(※)的に推論するまでもなく簡単に予想できるはずです。ほんとうは。

※ 「日本に美容室は何軒あるか」などの問題を、調査をせず、総人口などから推測する方法。


LINEでもツイッターでもフェイスブックでもいいんですが、

あなたが利用してるネットコミュニティサービスって、
ほとんど荒れてないですよね?


ここから推測すれば、
学校サイトだけが大荒れしてるはずはない。



ところが、「裏サイト」という名称や一面的な報道の仕方もあいまって、
学校勝手サイトが犯罪の温床みたいにイメージされてしまう。

だからこそ、荻上チキさんたちがしっかりデータを示して反論しなきゃならない……。



☆★☆




じゃあ、マスメディアが悪いのかというと、そうとも言い切れない。
諸悪の根源をなにかに押し付けてしまえば、それもまた、一面的な見方になってしまう。


私は新聞記者の経験があるので、ちょっと言えるのですが。

「非公式の学校サイトでは、
みんな平和にしりとりや連想ゲームで盛り上がっています!」

ではニュースにならない
んです。
良い悪いはべつとして、
報道にはどうしても報道価値(事件性や物語性?)が必要になる。

(もっとも、「学校裏サイト」のほとんどはいじめとは無縁であるという情報は、
定着したイメージをくつがえすという意味で
それなりにニュースバリューを持つと思うのですが、
みんな不安を煽るようなニュースを望んでしまうんですよね。なぜか)


「学校裏サイトが害悪だ」という短絡的な論調を
チキさんは「有害メディア論」と呼んで、排しています。



☆★☆




本書後半は、スクールカースト(校内で自然発生する序列)やキャラ戦争(キャラクターを立てて自分のポジションを確立するコミュニケーション)といった現実の力関係が
ネット上のミュニティとどう絡む/絡まないのかを紹介しています。

そして、未成年のネット参加を社会がどうチュートリアルしていくか、
という提案にうつります。

ここでも議論が深まっている箇所は、じつは「いじめ」そのものはなく、
メディア、リテラシーです。

冒頭で私が「これはリテラシーの本」と言ったのはそういう理由です。
本書は、「いじめ論」ではない。



☆★☆




でも。
せっかくなので、本書をきっかけに


いじめをどうするか


について、ちょっと考えてみましょ。


ネットがない時代からいじめはあったわけだし、
学校に限らず大人社会でだって、いじめはある。
根絶するなんて、無理じゃない? ……と感じているひとは多いはず。

以前の記事(なぜお金を稼ぐのか?)でもお話しましたが、
こういう「答えのない問題」に向かいあうとき、
参照すべきだと私が思うのは、評論ではなく<物語>です。

誤解のないようにつけくわえると、べつに
道徳的な物語によって子供を啓蒙しろ……という政治的な方法を提案しているわけじゃありません。
(その種の物語の「うさん臭さ」をいちばん敏感に感じるのは子供だし)


良い<物語>は読者に「答え」ではなく「問い」を投げる。
内発的に生まれた「問い」によって、読者は世界に対するいろいろな向き合い方を獲得する。

……それが読書の快感だと私は思います。


そんなわけで、
いじめやスクールカースト、キャラ戦争など、
学校内のコミュニケーションを描いている小説を紹介させてください。



☆★☆






いわゆるイケてるグループに属するアンと、クラスの最下層にいる徳川。
「死の香りに惹かれる」という共通項がふたりを結びつけ、
少女は少年に「自分を殺してほしい」と依頼する……。

夢中になってページをめくってしまう、ものすごく吸引力のある物語です。
描き出される人間関係が生々しくて、苦しいくらい。

頽廃的な美を志向している主人公たちという点で、
ビジュアル系やゴスロリファン、乙一さんの『GOTH』が好きなひとにもオススメ。




スクールカーストの物語というと、
『野ブタ。をプロデュース』『桐島、部活やめるってよ』『りはめより100倍恐ろしい』などが有名です。






『オーダーメイド殺人クラブ』はスクールカーストの文脈よりも、
「中二病」(※)の物語として紹介されることが多いのですが、私は
カーストを描いた本としてすごく評価しています。

※ 中二病 : 中学二年生に代表される、思春期らしい趣味嗜好や言動。


本書は序列が決まるメカニズムや、
キャラが強化される瞬間を、丁寧に描きだしています。

さらに。
集団の力関係も、めまぐるしく入れ替わる。

『野ブタ〜』でも、
信子は人気者になり、修二はキャラを保てなくなる……といった
上下の変動が描かれていましたが、
『オーダーメイド〜』はもっと頻繁です。
アンは、ささいな出来事をきっかけに変動する人間関係に、
翻弄されまくります。


(※ 以下、若干ネタバレ)

アンとは対照的に、徳川は一貫して下層にいるのですが、
物語のラストでは、数年後の世界が描かれる。
そこでは、徳川はむしろ、一目置ける、イケてる人間にみえます。

徳川自身が「キャラチェンジ」をしたわけではありません。
学校を卒業してカーストが解体した……「地形効果」が変わっただけです。

物語は、
「今のその関係性が絶対的なものではない」ことを、
何度も何度も証明してくれるわけです。


追記)
スクールカーストではありませんが、桐野夏生さんの↓『ハピネス』が”ママ”たちの階級を描いているので追加紹介します。タワーマンションに住み、互いを”格付けしあう”ママ友コミュニティ。この作品でも、タワマンという「場」がささいな違いをカースト化してしまう構造がみられます。



☆★☆




様々な本を読むことで、
いろいろな考え方を獲得できると思います。

「いじめは永遠には続かない」というのもそうだし、
「俺ってじつはめっちゃヒドイことしてたかも」という気づきや
「やべ、もしかしたら無意識にアイツを傷つけてね?」という自問。


まあ、場合によっては
「いじめは正義だ!」とか「弱いやつは生き残れなくて当然」みたいな価値観が育っちゃう場合もあるかもしれないけど、総じて


世界に対するリテラシーを高めて、
自分のなかに複合的で豊かな価値観が育てば

いじめのアホくささがよくわかるし。
カーストやキャラ戦争下の、準いじめ的ないじりの残酷さにも気づける。
人を傷つけるようなコミニケーションをする、自省の足りない人間が薄っぺらくみえる


そういうの、ぜんぶわかった上で
「あえて俺はいじめっ子になるぜ」という選択をするひともいるかもしれないけど
……まあ、あんまり意味はないよね。



そういえば、最近読んだ『螺鈿迷宮』という小説で、
気になる言葉を見つけました。

今ドラマでもやってますよね。
柳葉敏郎さん演じる巌先生のセリフです。



人は誰でも知らないうちに他人を傷つけている。存在するということは、誰かを傷つける、ということと同じだ。だから、無意識の鈍感さよりは、意図された悪意の方がまだマシなのかも知れない。このことがわからないうちは、そいつはまだガキだ。







この言葉をどう解釈すべきか……という流れではありません。


この言葉が、
あなたにどういう「問い」を投げかけてくるのか。



……今日はそういうお話です。
(ちょっと抽象的かな^^;)



まとめると。
要は、



みんな、たくさん
本読もうよぉ☆(*´∇`*)ミ☆




と、毎回それなのですが。

いじめに対してこのブログができるのは、政策提言やディスカッションでなく
いい本を紹介して「みんな読もうよ」ということなのかな〜と。

読書の力、物語の力はほんとうにすごい。
とくに今がつらく苦しい人ほど「物語」を摂取してほしい、
と個人的に思います。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a


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posted by akika at 20:47| Comment(0) | TrackBack(0) | ネット・情報リテラシー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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