2013年01月24日

面白いお話、買いました。――新潮社編「Story Seller」シリーズ

 
今日のなぞなぞ
「"面白いお話"が詰まった文庫アンソロジーは?」




文庫アンソロジーには傑作しか収録してはならない。
……そんな暗黙の掟でもあるのか、
文庫の選集というジャンルには良い本がたくさんあります。


今日紹介するのは、なかでも
「面白い物語」に特化したアンソロジー。

新潮社ストーリーセラー編集部の「Story Seller」シリーズです。

これまで3冊出ています。

「面白いお話、売ります。」
「読み応えは長編並、読みやすさは短篇並」

そのキャッチコピーにいつわりなく
、ほんとに全作品が面白かった。
順番に、ぷちレビューします♪


 Story Seller



冒頭を飾るのは、『アヒルと鴨のコインロッカー』を想い出させる、伊坂幸太郎さんらしいミステリ。近藤史恵さんが描く、自転車ロードレースの世界もひきこまれます。ロードレースについては、私はまったく詳しくないのですが、ぜんぜん知らない競技の物語にここまで夢中になれるなんて思いませんでした。

東京タワーへ行ったことがあるひとならニヤリとする描写が満載の佐藤友哉さん「333のテッペン」。有川浩さんの「ストーリ・セラー」は、書下ろしの「Side:B」を加えて単行本化されています(『ストーリー・セラー』)。有川さんらしいベタアマな恋からはじまる、感動作。




イチオシは米澤穂信さんの「玉野五十鈴の誉れ」と道尾秀介さん「光の箱」。

「玉野五十鈴〜」は『氷菓』の千反田えるのような、旧家の娘と侍女のミステリ。この「玉野五十鈴〜」をふくめ、名家のお嬢様ばかりがでてくる短編が集まって単行本化されています(『儚い羊たちの祝宴』)。



「光の箱」は、傑作ちゅうの傑作です。傑作短編とはこのことだ! と叫びたい。クリスマスの同窓会のお話なのですが、2重3重の謎と仕掛けがはりめぐらされ、ラストにすべてが回収されたときには、驚きとともにカタルシスとしか言いようのない読後感がある。名品です。

本多孝好さんの「ここじゃない場所」は、高校生の日常にサイキッカー(超能力者)という”非日常”がからんでくる物語。面白いけど、本多孝好さんに限っていえば、「Story Seller 2」に収録されている作品のほうが素晴らしすぎます。


【Story Seller 収録作品一覧】(敬称略)
伊坂幸太郎「首折り男の周辺」/近藤史恵「プロトンの中の孤独」/有川浩「ストーリ・セラー」/米澤穂信「玉野五十鈴の誉れ」/佐藤友哉「333のテッペン」/道尾秀介「光の箱」/本多孝好「ここじゃない場所」



 Story Seller2




冒頭に沢木耕太郎さんのエッセイを収録。沢木さんを迎えたことで、このアンソロジー・シリーズのファン層がさらに広がったかもしれません。カクテルのブラッディ・メアリーのお話です。

伊坂幸太郎さんの「合コンの話」は、はじめに「この物語のあらすじ」を語ってしまうという異色作。肉付けをしたあらすじ、メールの文面、辞書からの引用……など、視点、というよりは語りのトーンじたいがめまぐるしく変わっていきます。そのなかから、だんだんと濃厚な物語が立ちあがってくる。実験的だけど、ちゃんと”面白いお話”してます。

近藤史恵さんは今回も自転車ロードレースの物語。ハマる。米澤穂信さんの作品は、伝奇ものの舞台でありそうな地方都市(こじんまりとした商店街があって、神社があって、児童・生徒のすくない学校があって……というあの感じです)にたちあがる、不思議な物語。

佐藤友哉「444のイッペン」は今度は東京ビックサイトで、犬たちがイッペンに消えるという難事件が発生です。


イチオシは有川浩さん「ヒトモドキ」と本多孝好さん「日曜日のヤドカリ」。

「ヒトモドキ」はすごいです。いわゆるゴミ屋敷をつくってしまう伯母さんのお話なのですが、そのキャラクター造形たるや。ものすごいリアルで、不気味さや悲しさがひとつひとつの言動からひしひしと伝わってきます。こういう、”一般的には理解されがたいようなひと”にしっかりと寄りそうことができるのが小説というジャンルだと思うし、それこそが小説の使命のひとつだと私は思っています。傑作!

「日曜日のヤドカリ」は本多孝好さんらしい、情感のあるミステリで、「家族」というテーマを真正面から描いています。ラストのなにげない会話シーンの素晴らしさと言ったら! 以前の記事(【恋愛】10代のうちに読んでおきたい小説10冊【青春】)では『MISSING』を紹介しましたが、『MISSING』のような本多さんのリリカルなミステリが好きなら「日曜日のヤドカリ」はハズせません。せつないけど、あったかい。



【Story Seller 2 収録作品一覧】(敬称略)
沢木耕太郎「マリーとメアリー ポーカー・フェース」/伊坂幸太郎「合コンの話」/近藤史恵「レミング」/有川浩「ヒトモドキ」/米澤穂信「リカーシブル――リブート」/佐藤友哉「444のイッペン」/本多孝好「日曜日のヤドカリ」



 Story Seller3




前回に引き続き沢木耕太郎さん、さらにさだまさしさんを執筆陣に加え、またまた読者層が広がったかも。沢木さんはエッセイ。『深夜特急』の沢木さんだよな〜という感じの、旅のお話から、「いままでの人生で、大事なことは男と女のどちらに教えてもらったか」というテーマに移ります。さだまさしさんについては、じっくり語りたいので後述。

近藤史恵さんは今回もロードレース。ちなみに「Story Seller」(1〜3)に収録された作品も含め、サクリファイスシリーズとして単行本になっています(『サクリファイス』『エデン』『サヴァイヴ』)。





湊かなえさん「楽園」はトンガ王国を舞台にした、南国のかおりのする物語。米澤穂信さんの「満願」は、居候学生……昔ふうに言えば書生が主人公。題材からか、どこか夏目漱石とかあの時代の雰囲気がありますが、現代小説です。ミステリ。

有川浩さんの「作家的一週間」は、ウソともホントともつかない、作家生活の素描。作中でまるきり別のショートショート作品が読めるというオマケつきです(笑)。佐藤友哉さん「555のコッペン」、今度は東京駅です。この東京名所シリーズも、単行本化されています(『333のテッペン』)。




イチオシはさだまさしさんの「片恋」。

音楽はもちろん知っているけど、さだまさしさんの小説にふれるのは私は初めてでした。「片恋」は中編と言ってもいいくらいの長さなのだけど、読みやすく……というか、ユーモアたっぷりで軽い文体は、とてもライトノベルっぽいです。収録作品のなかで一番ラノベっぽい文章がさだまさしさんでした。意外なことに。

テレビ番組の制作会社で働く女性、南が主人公。ひき逃げされて死んだ見ず知らずの男性が、南の連絡先を握っていて……。という不可解きわまるサスペンスです。驚きの真相とともに男性のある”想い”があきらかになる。

なにより物語として面白いのですが、報道という行為に葛藤する南の描きこみが素晴らしかったです。 作中で、秋葉原通り魔事件をモデルにしているであろう場面が出てきます。凄惨な現場に、職業的な使命からカメラを向ける南。「そんな場合じゃねえだろう! 邪魔だ!! どけバカ」と怒鳴る救助隊員。振りむけば、通行人たちが好奇心にみちた眼で携帯のカメラをこちらに向けていた……。


たった今あなたの目の前に瀕死の人がいます。
何か他にしたいことはないのですか?
”記念撮影” (431ページより)


……すごいシーンですよね。

私も報道やマスコミに多少は関わっている身として、その無遠慮さや暴力性には無関心ではいられないのですが。今回、さだまさしさんの作品にざくりとやられた気がします。


【Story Seller 3 収録作品一覧】(敬称略)
沢木耕太郎「男派と女派 ポーカー・フェース」/近藤史恵「ゴールよりももっと遠く」/湊かなえ「楽園」/有川浩「作家的一週間」/米澤穂信「満願」/佐藤友哉「555のコッペン」/さだまさし「片恋」



 Fantasy Seller・Mystery Seller


……以上。


「Story Seller」っていうシリーズは
オススメだよぉ☆(*´∇`*)ミ☆



というお話でした。ちなみに、

ファンタジーに特化した『Fantasy Seller』
ミステリに絞った『Mystery Seller』


というのも出ています。
キャッチコピーは

「もうひとつの世界、売ります。」
「とっておきの謎、売ります。」







今後の展開がかなり楽しみなアンソロジー。
至福の読書タイムを約束するシリーズです。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか
 


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posted by akika at 01:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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