2012年12月07日

最近読んだ西尾維新5冊――メタフィクショナルな西尾試論

 
今日のなぞなぞ
「西尾維新の”メタフィクション性”とは?」


ishin


総選挙ですねぇ。
というわけで、今日は政治ネタ

……では全然なく。


最近私がハマっている作家、西尾維新さんのお話です。
↑の画像はタームリーな話題から西尾維新さんを引っ張るための前フリなだけで。

今日は選挙について語ろうという記事ではないし、
私の支持政党を表明したわけでもありません。
時事ネタを期待した方は、すみません^^;
(ちなみに↑維新の会のロゴは「骨太2013-2016」のプレスリリースからいただきました)



西尾維新さんは、小説家。
「受賞すれば最初からコアなファンがつく」と言われるミステリ系新人賞、
メフィスト賞でデビューした作家さんです。
↓デビュー作はこれ。

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)
西尾 維新
講談社
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アニメ化された「化物語」「偽物語」も有名です♪

化物語(上) (講談社BOX)
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西尾 維新
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化物語(下) (講談社BOX)
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偽物語(上) (講談社BOX)
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今日は、最近私が読んだ5冊をぷちレビューしながら、
西尾維新作品の試論をやってみたいと思います。
キーワードは「メタフィクション」。


試論とはいっても、基本的にはブックレビューだし、扱う作品はどれもミステリなので
ネタバレには配慮したつもりです。

とりあげるのは、
『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』『少女不十分』『きみとぼくの壊れた世界』『不気味で素朴な囲われた世界』『きみとぼくが壊した世界』の5冊。
とことんまでネタバレを嫌う方は、念のため、
作品読了後まではこのエントリを読まないほうがいいかもしれません。



メタフィクションとは……
その物語が虚構(フィクション)であることにいろいろな方法で言及している作品のこと。

ちなみに、「西尾維新」という名前じたいにも、
メタな仕掛けがほどこされています。


NISIOISIN


ローマ字で書いてみると、不思議。
順に読んでも逆からなぞってもおなじ。回文になるって気づきました?
(私はごく最近知りました)


ひとたび気づいてみれば、
「西尾維新」という名前じたいが、ペンネーム=虚構=フィクションであると雄弁に語っている。
そんな仕掛け。

こういうひっかけが、
作品の特徴と見事な相似形を描いている。
……今日はそんなお話です。


 原作ファンを利用するメタフィクション

DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件
西尾 維新
集英社
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「デスノート」という漫画のノベライズです。といっても、原作のストーリーをなぞっているわけではなく、オリジナル。原作に登場する、ある元FBI捜査官の過去を描いた物語です。マンガでは事件の名称だけ登場していた「ロサンゼルスBB連続殺人事件」から想像をふくらませた、サイドストーリー。「この小説の読者は原作を必ず読んでいるはずだ」という状況を利用して読者をひっかける、メタな仕掛けがあります。「作品の外の状況」を利用するという仕掛けは、次に紹介する「少女不十分」でも健在です。



 西尾維新ファンを利用するメタフィクション

少女不十分 (講談社ノベルス)
西尾 維新
講談社
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以前の記事(碇シンジは夜神月を止められない――宇野常寛『ゼロ年代の想像力』)でも、ちらっと紹介した本です。一人称の語り手は小説家。デビュー前のお話があったり、キーとなる人物を、個人情報を保護するかのようにイニシャルであらわしたり、西尾さんの作品「世界シリーズ」「戯言シリーズ」などをみずから解説したと思われる箇所があったり……「もしかして私小説か?」という創りになっています。西尾さん作品の読者は、どうしても語り手を作者自身としてみなしてしまう……という仕掛けなのだけど……。

 ありえないフェアプレイ

きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)
西尾 維新
講談社
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「世界シリーズ」の第1弾です。本格ミステリとうたわれるだけあって、かっちりと事件が起こり、推理と解決がある。手掛かりもフェアに提示されています。パズラーの体裁。最初は、「いったいいつになったら事件は起こるんだよ」という感じだけど、キャラのかけあいが面白すぎるので夢中になっているうちに”問題編”を読み終えてしまうはず。一気読みしているうちに、重要な手掛かりを、心にとめることなく流してしまうかも!?

フェアではあるのだけど、どこかが正当なフィクションから逸脱している……そんな魅力があります。具体的には、魅力的なキャラクターたちが、まあありえないくらいの破天荒で。重度のシスコンで、妹と一線をこえつつある櫃内様刻(ひつうちさまとき)。と、それに応え、兄に依存している妹。保健室でひきこもっている病院坂黒猫(びょういんざかくろねこ)の想像を越える饒舌と、その正体……。作品内で、推理小説とはあーだこーだと語る部分も面白かったりするのだけど、まだこのシリーズの"メタフィクションっぷり"は開花前です。

 メタフィクショナルなフェアネス

不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス)
西尾 維新
講談社
売り上げランキング: 199104

「世界シリーズ」の第2弾。短針のとまった時計塔で起こる殺人。退屈な日常を憂う串中弔士(くしなかちょうし)は、病院坂迷路(びょういんざかめいろ)を探偵役に、犯人探しに乗りだす……。ミステリです。たしかに。フェアです。真犯人の動機すら、しっかりと(ヒントとしてではなく、そのまま)、事前に提示されている。でも。↑前作以上に"ありえなさ"の度合いが高い。

串中弔士は、そのキャラクターもさることながら、ずいぶんとメタフィクショナルな存在です。弔士は自分の語り、セリフに傍点が振られていることを知っている。傍点をつけてまで言うほどのことじゃないが……みたいな語りがあります。それから、病院坂迷路。彼女は一言も喋らないのに、饒舌です。どういうことかというと、迷路は言いたいことすべてを表情で語れる。それこそ数ページにわたる独白ですら、一瞬の顔つきで語れるし、弔士はそれを正しく読解することができる。ちょっと例をあげると、どこを引用してもいいのだけど……

もしも私に告白しようとしているのでしたら串中くん、残念なことにあなたは失恋を経験することになるだろうからやめておくことをお勧めしますよ。
病院坂先輩はそんな意思を孕んだ目線をぼくに送ってきた。


こんな感じ。これくらいならありそうだけど、だんだんエスカレートして「もしも私に〜お勧めしますよ」の部分が数ページにわたる論考(推理、トリックの解明、犯人の指摘)になっても、串中くんは正確に迷路の言わんとすることを理解できる。どんな以心伝心だよ! って話です(笑)。ライトノベルは、もともと手続きを踏まずにさくっとメタフィクションっぽい描写ができるジャンルだったりしますが、この作品はミステリ部分が誠実にフェアであろうとしているので、ずいぶん面白いことになっています。謎ときとしてフェアなのに、メタフィクションとしてどこまでも逸脱している。メタフィクショナルなフェアネス……という感じの1冊。

 メタフィクションの王道回帰

きみとぼくが壊した世界 (講談社ノベルス)
西尾 維新
講談社
売り上げランキング: 175538

「世界シリーズ」の第3弾。「奇妙な相談を受け、シャーロック・ホームズが愛した街・ロンドンへと誘われた病院坂黒猫と櫃内様刻」……裏表紙の、このあらすじ自体が正しいのかどうか、もうよくわかりません。具体的に書くとネタバレになるのでアレですが、この小説もメタフィクションです。わりと王道的なメタフィクションの仕掛けがほどこされています。いえ、そもそもメタフィクションをやる時点で"王道"からはほど遠いのですけど(笑)。



そんなこんなで。
ネタバレを回避しながら"試論"をやるのは、ずいぶん難しいと感じた今日この頃。

とにかく。
西尾維新さん作品を読むときの”めまい”のような感覚に
最近ハマっています、というお話でした。


ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか
 



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posted by akika at 18:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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