2019年09月30日

今月(2019年9月)もっとも売れた本は『おしりたんてい ラッキーキャットはだれのてに!』(`・ω・´)


今日のなぞなぞ
「2019年9月の月間ベストセラーは?」



9月30日(2019年)、「今月日本でもっとも売れた本」が発表されました。

去年(2018年)の年間ベストセラーは↓こちら。
(2018)今年の年間ベストセラー本20冊
先月(2019年8月)のランキングは↓こちら。
今月(2019年8月)もっとも売れた本は『大家さんと僕 これから』σ(・・*)
最新のランキングは↓こちら。
カテゴリ:ベストセラー




 『おしりたんてい』新作が1位


出版取次会社の日本出版販売(日販)によると、
9月のベストセラーは、『おしりたんてい ラッキーキャットは だれの てに!』

先月にリリースされた「おしりたんてい」シリーズの新刊です。どんな事件もププッと解決♪
2位には樹木希林さんの『一切なりゆき 樹木希林のことば』がランクアップしています。

おしりとキリンのおおいなる戦い。
今月はおしりたんていに軍配があがりました。

先月のトップだった、カラテカ矢部太郎さんの『大家さんと僕 これから』は6位。
注目の『もっとざんねんないきもの事典』は今月は8位です。


総合部門の月間ベストセラートップ10は以下のとおり。

 2019年9月の月間ベストセラー 総合

(日販調べ。「全集」「文庫」「ゲーム攻略本」を除く総合ランキング。9月30日時点)

1位
『おしりたんてい ラッキーキャットは だれの てに!』トロル
2位
『一切なりゆき 樹木希林のことば』樹木希林
3位
『日向坂46ファースト写真集 立ち漕ぎ』
4位
『世界一美味しい手抜きごはん 最速! やる気のいらない100レシピ』はらぺこグリズリー
5位
『ケーキの切れない非行少年たち』 宮口幸治
6位
『大家さんと僕 これから』矢部太郎
7位
『天気の子』新海誠
8位
『おもしろい! 進化のふしぎ もっとざんねんないきもの事典』今泉忠明・監修
9位
『医者が考案した「長生きみそ汁」』小林弘幸
10位
『上級国民/下級国民』橘玲





 芥川賞受賞作がフィクション部門8位



今月は、第161回芥川賞の受賞作、今村夏子さん『むらさきのスカートの女』がフィクション部門の8位に位置しています。
直木賞や本屋大賞関連作品のエントリはありませんでした。

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第161回芥川龍之介賞候補作品

(受賞!)今村夏子『むらさきのスカートの女』「小説 TRIPPER (トリッパー) 2019年春号」に掲載)
高山羽根子『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』「すばる 2019年5月号」に掲載)
古市憲寿『百の夜は跳ねて』「新潮 2019年6月号」に掲載)
古川真人『ラッコの家』「文學界 2019年1月号」に掲載)
李琴峰『五つ数えれば三日月が』「文學界2019 年6月号」に掲載)

芥川龍之介賞(公益財団法人日本文学振興会)
http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/akutagawa/

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第161回直木三十五賞候補作品

朝倉かすみ『平場の月』
(受賞!)大島真寿美『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』
窪美澄『トリニティ』
澤田瞳子『落花』
原田マハ『美しき愚かものたちのタブロー』
柚木麻子『マジカルグランマ』

直木三十五賞(公益財団法人日本文学振興会)
http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/naoki/

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2019年本屋大賞

大賞
瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』
2位
小野寺史宜『ひと』
3位
深緑野分『ベルリンは晴れているか』
4位
森見登美彦『熱帯』
5位
平野啓一郎『ある男』
6位
木皿泉『さざなみのよる』
7位
三浦しをん『愛なき世界』
8位
知念実希人『ひとつむぎの手』
9位
芦沢央『火のないところに煙は』
10位
伊坂幸太郎『フーガはユーガ』

翻訳小説部門

1位
アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』
2位
トーン・テヘレン『きげんのいいリス』
3位
陸秋槎『元年春之祭』

本屋大賞
https://www.hontai.or.jp/

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 橘玲『上級国民/下級国民』が新書ノンフィクション部門3位



このブログでもよく登場している橘玲さんの新刊『上級国民/下級国民』が、総合部門の10位にニューエントリしています。単行本ビジネス部門でのエントリはありませんが、新書ノンフィクション部門では3位です。

おおまかいにいうと、橘玲さんの本は”金融リテラシー”系と”不都合な真実”系にわかれるかな。かなりざっくり(笑)。
本書はもちろん後者。美しき残酷な世界を素描していきます。

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ビジネス書部門の1位はロルフ・ドベリ『Think clearly』
2位は稲盛和夫さんの『心。』です。


ビジネス書部門の月間ベストセラートップ10は以下のとおり。

 2019年9月の月間ベストセラー 単行本ビジネス
(日販調べ)

1位
『Think clearly』ロルフ・ドベリ
2位
『心。』稲盛和夫
3位
『読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術』田中泰延
4位
『学び効率が最大化するインプット大全』樺沢紫苑
5位
『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』ハンス・ロスリング
オーラ・ロスリングほか
6位
『メモの魔力 -The Magic of Memos-』前田裕二
7位
『学びを結果に変えるアウトプット大全』樺沢紫苑
8位
『「会社四季報」業界地図 2020年版』
9位
『サードドア 精神的資産のふやし方』アレックス・バナヤン
10位
『一瞬で人生を変える お金の秘密 happy money』Ken Honda





 フィクションは湊かなえ『落日』が1位に新着



フィクション部門では、湊かなえさんの新作『落日』が新着1位です。
映画の企画をきっかけに、過去とじっくり向きあっていく物語。
湊かなえさんも、当ブログでよく紹介している作家さんです。

関連記事:
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「フェイクニュース」にだまされないための小説3冊と新書2冊
面白いお話、買いました。――新潮社編「Story Seller」シリーズ



2位は、浜崎あゆみさんの人生を描いた『M 愛すべき人がいて』
3位は、テレビドラマが熱い最終回を迎えた『ノーサイド・ゲーム』です。


フィクション部門の月間ベストセラートップ10は以下のとおり。

 2019年9月の月間ベストセラー 単行本フィクション
(日販調べ)

1位
『落日』湊かなえ
2位
『M 愛すべき人がいて』小松成美
3位
『ノーサイド・ゲーム』池井戸潤
4位
『わたしを支えるもの すーちゃんの人生』益田ミリ
5位
『むらさきのスカートの女』今村夏子
6位
『希望の糸』東野圭吾
7位
『本好きの下剋上 第四部「貴族院の自称図書委員」(8)』香月美夜
8位
『いけない』道尾秀介
9位
『劇場版おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜 シナリオブック』徳尾浩司
10位
『神達に拾われた男 (7)』Roy






日販のサイト(http://www.nippan.co.jp/)で各ジャンルのトップ10が確認できます。この記事では取りあげていない「ノンフィクション」「実用」「文庫」「ゲーム攻略本」などのランキングも。
ぜひ”一次情報”にもあたってみてくださいね。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a


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【関連リンク】

日本出版販売株式会社
http://www.nippan.co.jp/
本屋大賞
https://www.hontai.or.jp/
芥川龍之介賞(公益財団法人日本文学振興会)
http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/akutagawa/
直木三十五賞(公益財団法人日本文学振興会)
http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/naoki/




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posted by akika at 22:51| ベストセラー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月29日

【奇習邪宗】日本の土着・民間信仰を知る本10冊(前編)【民俗神】


今日のなぞなぞ
「日本人のフシギな信仰をかいまみる10冊は?」

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「トトロ」と「千と千尋」が好き。
「ラピュタ」や「ナウシカ」よりも。

なぜだろうととくに深く考えたことはなかったのですが。
もしかしたら、日本の土着的な”あやしさ”に惹かれるのかもと、ふと気づきました。

雨の夜に妖怪バスを待つ、土着の神。
日が暮れると廃墟に集う、八百万の存在たち。

ありがたいだけじゃなくて、ときには災いをもたらすような。
あるいは、ただ”そこにいるだけ”の。

気まぐれな日本の神々は、なんだかキャラが立っていて愛嬌があると想う。



そんなわけで。
今日は最近読んだなかから、「日本の土着・民間信仰」を学べる本を紹介していきます。

いろいろと面白いのがいっぱいあって、一度にオススメしきれないくらい。
なので、このテーマでは記事を複数に分けてアップしていきますね。


土俗の信仰と外来の宗教が習合・共存し、ほとんど”闇鍋”状態になっているのがこの国かも。

ちなみに記事のタイトルでは「奇習」だの「邪宗」だの煽っちゃいましたが。
ほんとは、ある風習を”奇妙”と感じるかどうかは、そのひとがいる社会の”常識”しだいなわけで。

たとえば、短冊に願いをこめて笹に飾るのだって、七夕を知らない人にとっては

「ちょw なに変なことやってんのwww」

ってことになるかもだし。

その信仰が”邪”かどうかも、なにが”正統”とされているかによって、いくらでも左右されるよね。


……と、多様性の時代っぽいことを言ってみる。
「ミステリと言う勿れ」の久能整(くのうととのう)きゅんふうにまとめるならば……


真実はひとつじゃない。
人の数だけある!



ということになります。
(私信、読みました♪ 脱線しまくりの雑学トークがツボv)


それでは。

日本人の感性にダイレクトに響く、
不思議でどこか懐かしい10冊
をど〜ぞ〜♪



 わけがわからないよ


現在も残る日本の奇祭・珍祭を集めた1冊。

米俵にくるまって”雨がやむこと”を願う「水止舞い」
女装して”ない毛が生えた!”と歌う「お札まき」
異形の蓑のおばけが跋扈する「カセ鳥」
新婚さんを崖から落とす「むこ投げ」

……カオスすぎて、もう「わけがわからないよ」と言うしかない。
じっさい、歴史に埋もれて起源が不明のまま、ただ”伝統”として続いている行事もあるようです。

混沌をあおる文章でレポートされる、ナンセンスな世界。
写真が満載のにぎやかな1冊。

このような現実を知ると、僕らの思っている「常識」というものがいかに小さなものであり、「非常識」なものであるかがわかるだろう。
「はじめに」より


以前の記事(幻想と異形の獣人写真集――シャルル・フレジェ『WILDER MANN (ワイルドマン)』)で紹介したシャルル・フレジェの写真↓に心惹かれる方にもオススメですv




 キャラ、立ってます


クリエイターさんの強い味方、新紀元社の「Truth In Fantasy」シリーズより1冊。
日本で信仰されている神々を、デッサン風の綺麗なイラストとともに紹介しています。
神話の登場人物(イザナギ・イザナミなど)ではなく、土着的な”民俗神”のほう。

七福神、招き猫、疱瘡神、要石。
お地蔵さん、鬼子母神、カマド神、オシラ様。
照る照る坊主。犬神。牛神。役行者……。


いろいろな名前で呼ばれている神は別称も網羅。系統(ルーツ)や”何にご利益/祟りをもたらすか”など、情報量が膨大です。
神様だけでなく、宝船や天狗面、だるまなど、アイテムを解説したコラムも。

ものすごい種類の神がいて、それぞれみんなキャラが立っている。
あなたのなかの”日本的な感受性”をちくちくと刺激する、どこか懐かしくて幸せな気持ちになれる資料集。

 失われゆく土着

民間信仰と現代社会―人間と呪術 (1971年) (日本人の行動と思想〈9〉)
桜井 徳太郎
評論社
売り上げランキング: 1,427,935

ハヤリ神。田の神、山の神。ジンクス。雨乞い。憑き物。呪術。口寄せ。シャーマン。トウビョウもち。村落共同体……。
民間信仰にかかわるあらゆるトピックを紹介しながら、俗信の本質を考えていく。
事例が豊富なのにもかかわらず、通低音のように著者の思想がずっと流れていて、とても良い本です。古いけどオススメ。

たとえば、新興宗教の台頭について……

都市住民が地域社会から浮きあがっていること、周囲から隔絶した生活を送らざるをえないことは、人々に深い孤独を与える。
(中略)
この孤独感、不安から逃れ、精神的な安定をうるための要求が湧然として起こってくる。そうした民衆の要望に応える形で出てきた一つが、今日都市の底辺層に喰いこみ大きな勢威を振るっている、もろもろの新興宗教である。


と、さらっと分析していたり。
進んでいく文明と失われゆく自然や土着性……ジブリ映画がくり返し描いてきたテーマを感じさせる文章も多いです。

もうひとつ。
たとえば、のろい針(夜中にわら人形に釘を打つアレね)についても……

自分の意見を自由に開陳できない構造をもつ地域社会でおこる呪法である。


と、やっぱり社会との関連のなかで説明される。
「コンピューター情報」や「スポーツとナイター」など意外な項目もあって、民俗学と社会学を同時にあじわえる良書です♪

 猫さん


猫の神様がまつられている神社やお寺、祠を集めた本です。
実際に足を運んで由緒や伝承をひとつひとつレポートしていきます。写真もたくさん。

ネズミを捕ってくれるため、養蚕が盛んな地域でありがたがられている猫さん。
猫又(化け猫)のエピソードや、報恩譚(猫の恩返し)、猫と姫の伝説など、それぞれの地域にいわれが残っています。
でね。場所はぜんぜん違っても、驚くほど似たような伝承が各地に伝わっているのが面白い。

神通力で棺桶を宙に浮かせる。
和尚のいないあいだに袈裟を着て出かける。
斬られた首が飛び、天井裏にひそんだ大蛇を退治する。
かわいがっていた猫を殺されてしまう姫。


おどろおどろしかったり、かなしい民話も多いけれど、全体としてはほっこりする、ユニークなテーマの1冊。猫好きなあなたはぜひv
(私信。読みました♪ 民話の数々がかなり興味ぶかかったです)

 動物さんたち大集合


こちらは猫だけじゃなく、神社に祭られているさまざまな動物たちを紹介しています。
生息地によって章分けがされていて。陸、水辺、空……さらに、河童や龍、鵺(ぬえ)など想像上の「霊的な生き物」も。

それぞれの動物がどんなご利益をもたらしてくれるのかを丁寧に解説。
どこの神社に行けば”逢える”のかも載っています♪
狛犬だけじゃなく、いろんな動物が「ア・ウン」のポーズをとっていてほっこり。

岡崎体育さんふうに言うならば……

どうぶつさんたちだいしゅうごうだわいわい!

という感じです。

感情のピクセル
感情のピクセル
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Sony Music Labels Inc. (2017-06-14)
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感情のピクセル - 岡崎体育(iTunes)


他愛ない生き物にも、それぞれユニークな伝承や信仰がある。
敬虔な気持ちになれる1冊です。
(私信。読みました♪ クマやカメもアウン!)


☆★☆



ここまでは教祖も仕掛け人も(ほぼ)いない俗信でしたが。
翻って、こんどは”開祖がいる”タイプの信仰を取りあげていきます。
世界宗教である仏教やキリスト教も、この国では変容し土俗化してく……。

 隠れ念仏と隠し念仏


「隠れ念仏」と「隠し念仏」を題材に庶民の精神史を考えていく、紀行&エッセイ。
両者はどちらも浄土真宗系の一派。ですが、別物です。

「隠れ念仏」は九州。幕藩権力によって弾圧され、”隠れて”信仰を守った人々です。京都の本願寺からは認められているので、いちおう”正統”。
「隠し念仏」は東北。こちらは藩の圧力からも本願寺からも信仰を”隠して”きた”異端”の存在です。

神棚の裏に仏壇を隠す、ちょっと異形な「カヤカベ」教も登場。
宮沢賢治や高村光太郎、柳田國男と隠し念仏との関わりにも触れています。
研究書ではなく、作家らしくのびのびと想像力を羽ばたかせていて魅力的。オススメです。

 隠し念仏

隠し念仏 (民俗宗教シリーズ)
門屋 光昭
東京堂出版
売り上げランキング: 875,597

その「隠し念仏」の、数少ないまとまった研究のひとつがこれです。
東北地方にひそやかに息づいている、秘密主義の信仰「隠し念仏」。

ほとんど酸欠になりながらタスケタマエと唱え続ける「オトリアゲ」
生まれたばかりの子供を入信させる「オモトヅケ」
その信仰内容は、けっして部外者には語ってはならないと戒められる……。

怪談として語られることも多い「隠し念仏」を、しっかり民俗宗教として研究した論文集です。
地誌などを集めた文献リスト。信者による貴重な体験談。地域による差異。オシラサマなど古くからある土俗の風習との共存、融合。
専門書ではありますが、土着信仰系(※)が好きなひとはかなり面白く読めるかも。

※ 秘境の村など地方を舞台に語られる、奇妙な習俗や信仰、祭などを題材にした怪談・都市伝説。

 隠し念仏(小説)


そんな「隠し念仏」を題材にした小説がこちら。ミステリです。
これはずごい。隠し念仏だけでなく仏教全般、かくれキリシタンもふくむキリスト教や民族史……埋もれてしまった”歴史の闇”をひき金に起こる、不可解すぎる連続殺人。

主人公は女子大で教鞭をとっている食文化人類学の専門家。アイヌの血をひく人物です。
3部構成で、第一部は、安藤昌益にまつわる歴史ミステリといった色合い。
第二部は、ある教育者が牛耳る閉鎖的な街を描いた、カルト的なサスペンスです。
第三部は、主人公や失踪した妹の出自があきらかになり、すべての謎がひとつにまとまっていく……。

四〇〇字詰め原稿用紙換算で1854枚の、大長編です。すごくぶ厚い単行本で……はかってみたら、厚さ4センチもありましたΣ(・ω・ノ)ノ
読み進めるほどに、加速度的に面白くなっていきます。ムーアの法則のように。
調査や推理の場面では、文化人類学や宗教学の専門的な話が展開されていて、とてもアカデミック。
ミステリの面白さを歴史・文化探求の魅力にまで拡張させていく徹夜本ですv

 真言立川流


「立川流(たちかわりゅう)」は、仁寛という開祖(流祖)のいる真言宗系の密教です。
(落語の立川談志一門のほうは「立川流(たてかわりゅう)」ね)
その教えはまさに”邪教”っぽくてすごい。

男女が「交合」して、その「和合水」を「髑髏(ドクロ)」に何べんも塗りつけて、これを「本尊」とする……。
反魂香をたき、ひたすら真言を唱える……。

反魂? ドクロ本尊!? 和合水ってなに。///
仏教ではあるのですが、お釈迦様の教えからはずいぶん遠く。
「なんでこんなに異形の信仰が!?」と思うけれど、<性>と<死>をめぐる秘術の内にはなにかしらの”真理”がふくまれているようにも感じられて……。

曼荼羅(マンダラ)美術など写真の資料も豊富。
史料や、著者の想像もまじえて、立川流の”宗教的なロジック”に肉迫していく学術書です。

 真言立川流(小説)


その「真言立川流」を題材にしたミステリがこちら。
『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』に続く、「百鬼夜行シリーズ(京極堂シリーズ)」の第3弾です。

海辺の断崖に棲む朱美の、幻覚とも妄想ともつかない奇妙な記憶。
朱美の話を聴いた登場人物たちは、それぞれの”解釈”をつくりあげていくが……。
坊主も神主も牧師も登場する、宗教大集合! なミステリ。
フロイトやユングなど心理学的うんちくもたっぷり。

立川流をたんに”邪”であると斬り捨ててしまうわけではない、京極堂の歴史観を私的メモ。

立川流が邪法として貶められたのは、その特異な教義の所為ではない。立川流以前にも性を取り入れた宗教は沢山あったし、髑髏を呪術に利用する民間宗教や左道密教は存在した。天台からも玄旨帰命壇が出ている。立川流が不当に指弾されるのは文観が権力に固執したからです。現世利益の茶吉尼の邪法などに耽ったからです。


海からドクロが発見されたり、謎めいた集団自殺が起こったり。
バラバラすぎる事件が次第につながっていく、読み応え抜群の大長編ですv




ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(冒頭の写真は御殿場の時之栖にある「ありがとう寺」です)

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posted by akika at 22:53| 日記・最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月04日

最近読んだ「生産性を上げる」本10冊

 
今日のなぞなぞ
「生産性を高めるためには?」



今日は、最近乱読したなかから
”生産性をあげる本10冊”をぷちレビューしていきます。


仕事の能率を向上させる直球な本はもちろん、
ちょっとした意識・習慣・考え方のカイゼンをもたらす変化球まで、雑食読書家ならではのラインナップに仕上げました。

生産性は、さまざまなアプローチでアップさせることができる。

なるほど言われてみれば。この方法があったのか!
そんな発見があればうれしいかぎりですv




 「生産性」とは何か


生産性とは何なのか、を知りたいあなたに。マッキンゼー出身の伊賀泰代さんが「生産性」を明確に定義。生産性はリソース(コスト)/アウトプットにおける改善/革新のマトリクスで表現できる。人材採用なら「たった10人の応募しかなく、全員内定」という最高パフォーマンスを目指せ。後半は”ムダのかたまり”である会議・プレゼン・資料づくりを狙い撃ちします。

 がむしゃらに、はNG


なんでもかんでも手をつけてしまうあなたに。生産量のひくい仕事をカットしていくことで、どんどんみずからの時給をあげていけ、という本。文章にスピード感があるので、リズムに乗って脳がショートするほどの速さで読むのを推奨♪

 スマホのトップ画面を見直して!


スマートフォンに時間を奪われているかも……と感じるあなたへ。逆に、時間やアウトプットを生み出すスマホの使い方を教えてくれます。本書で推薦されている「lino」という付箋アプリは、私もめちゃめちゃオススメです。使い方も小山竜央さんのおっしゃるとおりでOK。「5キロやせたい」とか書いてちょこちょこ眺めるだけでいいんだけど、「何の魔法だよ!」っていうくらい夢や目標がかないます。

 何もしない時間が集中力をやしなう


集中力がとぎれやすいなぁ……と思っているあなたに。”今”に集中するマインドフルネスを伝授。起業家にはなぜか瞑想を習慣にしているひとが多いですよね。オフィスに「瞑想室」をつくっているベンチャー企業もあるくらい。ただ呼吸だけに意識を向ける時間が、とんでもない集中力をやしなうことにつながる。レッツ・只管打坐♪

 ゲームの”本質”を見抜け!


今の努力が”見当違いかも”とあやぶんでいるあなたに。億単位のお金を奪いあう過酷なゲームを描いたマンガです。どのエピソードにも共通していえるのは……ルールの”本質”を見抜くのがなにより重要ということ。見えてないヤツはまるで意味のない頑張り方をして沈んでいく……。怖いね。「少数決」はチーム戦だし、イス取りゲームは「国盗り」だ。コミックですが、このブログでいつもオススメしている良書ですv

 小技だけどチリも積もる


ファイルの上書き保存をマウスで操作しているあなたへ。コピー&ペーストだけじゃない、パソコンのショートカット操作を網羅して教えてくれます。意外と知らないワザも多い? ちょっとした時短テクニックですが、チリも積もれば山になる。早いうちに身につけておくべし。

 こんまりっ!


探しものがいつも見つからないあなたへ。みんな大好きこんまりさんの片づけ本。「片づけはこの1冊でOK」といえるほどの名著です。どこが生産性? と思うかもしれませんが、じつは今日一番のオススメが本書。ヘタなビジネス書や啓発本を読むより、こんまり流に部屋の片づけをしたほうがよっぽど効果があります。決断力も段取り力もあがる。こんまりっ!

 グーグル時代の情報整理エッセイ


情報の扱い方について考えたいあなたに。元グーグルCIO(最高情報責任者)によるエッセイです。ツールの使い方……みたいな実践的な話よりも、増えつづける情報にいかに接していくか、俯瞰的な視点に寄っています。何を捨て、何をどう選ぶべきか。

 生産性は「省エネ」とは違うよ



ここですこしカウンターパンチぎみに『ユダヤ人大富豪の教え』をセレクトしました。原作↓も名著だけど、コミック版↑も秀逸。ダイナミックなコマ割りが素敵で、ケンの物語にうるっときます。

生産性というと「効率化」や「コスト削減」みたいな話につながってしまいがちだけど、本書が教えてくれるのは熱量の大切さです。気持ち、熱意、ヴィジョン……数字で測れないものが小手先の改善に勝る瞬間が必ずある。大切なものまで「コストカット」しないで。ぜったいに。


 反脆さ(はんもろさ)



ラストは私の大好きなタレブの著作から1冊。本書のいう「反脆弱性・反脆さ」とは、予期せぬ事態に対する強さのことです。強さといっても、頑丈さとは異なる。むしろ常でない出来事が追い風になるような存在こそが”反脆い”といえます。たとえば、誹謗中傷が知名度アップにつながるアーティストなど。

それは、いわゆる生産性とは真逆の世界です。リソースを減らしアウトプットを極限まで高めていくと、そこに残るのはブラックスワン(統計からはずれるような想定外の出来事)にとても脆いシステムだ。でも、黒鳥はいつかかならずあらわれる。そのときに輝くのは”いままで生産性がひくいと思われていたもの”なのかもしれません。


……じゃあ、どうすればいいの? って話じゃないよ。タレブは哲学だから。でも。たとえすぐには役に立たないとしても「反脆さ」という”概念”を手にいれておくことは、とても重要だと私は思います。時代はがんがん変わってくのだし。『反脆弱性』はとっておきのオススメ本です♪





お口にあう本はございましたでしょうか?




ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a



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読書家5氏(伊藤真・本田直之・勝間和代・土井英司・和田裕美)の厳選オススメ本
最近読んだ「好きを仕事に」する本10冊






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2019年08月30日

今月(2019年8月)もっとも売れた本は『大家さんと僕 これから』σ(・・*)


今日のなぞなぞ
「2019年8月の月間ベストセラーは?」



8月30日(2019年)、「今月日本でもっとも売れた本」が発表されました。

去年(2018年)の年間ベストセラーは↓こちら。
(2018)今年の年間ベストセラー本20冊
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 『大家さんと僕』続編が新着1位


出版取次会社の日本出版販売(日販)によると、
8月のベストセラーは、『大家さんと僕 これから』

お笑いユニット、カラテカの矢部太郎さんのコミックエッセイです。
第22回(2018年)の手塚治虫文化賞短編賞を受賞した『大家さんと僕』の続編。

先月1位だった『おもしろい! 進化のふしぎ もっとざんねんないきもの事典』は3位。

また今月は『わけあって絶滅しました。』の続編、『続 わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』が9位にニューエントリしています。

ざんねん&わけありな生き物ブームは続く♪


そしてそして。
春から夏にかけて激しく首位を争っていた、おしりとキリンの戦いの結果は……

『一切なりゆき 樹木希林のことば』が6位。
新作の『おしりたんてい ラッキーキャットは だれの てに!』は7位。
『おしりたんてい かいとうと ねらわれた はなよめ』が8位。

でした。

おしりとキリンの大いなる戦いも続く♪


総合部門の月間ベストセラートップ10は以下のとおり。

 2019年8月の月間ベストセラー 総合

(日販調べ。「全集」「文庫」「ゲーム攻略本」を除く総合ランキング。8月30日時点)

1位
『大家さんと僕 これから』矢部太郎
2位
『M 愛すべき人がいて』小松成美
3位
『おもしろい! 進化のふしぎ もっとざんねんないきもの事典』今泉忠明・監修
4位
『時間(とき)の花束 Bouquet du temps』三浦百惠
5位
『天気の子』新海誠
6位
『一切なりゆき 樹木希林のことば』樹木希林
7位
『おしりたんてい ラッキーキャットは だれの てに!』トロル
8位
『おしりたんてい かいとうと ねらわれた はなよめ』トロル
9位
『続 わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』今泉忠明、丸山貴史ほか
10位
『むらさきのスカートの女』今村夏子





 芥川賞受賞作が総合10位



7月に決まった芥川賞・直木賞の受賞作関連では、芥川賞の今村夏子さん『むらさきのスカートの女』が総合部門10位、フィクション部門2位でした。
また、直木賞受賞作の大島真寿美さん『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』がフィクション部門の10位にニューエントリしています。

4月に発表された「2019年本屋大賞」関連では、大賞に輝いた瀬尾まいこさん『そして、バトンは渡された』が、フィクション部門4位と先月と変わらず。

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第161回芥川龍之介賞候補作品

(受賞!)今村夏子『むらさきのスカートの女』「小説 TRIPPER (トリッパー) 2019年春号」に掲載)
高山羽根子『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』「すばる 2019年5月号」に掲載)
古市憲寿『百の夜は跳ねて』「新潮 2019年6月号」に掲載)
古川真人『ラッコの家』「文學界 2019年1月号」に掲載)
李琴峰『五つ数えれば三日月が』「文學界2019 年6月号」に掲載)

芥川龍之介賞(公益財団法人日本文学振興会)
http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/akutagawa/

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第161回直木三十五賞候補作品

朝倉かすみ『平場の月』
(受賞!)大島真寿美『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』
窪美澄『トリニティ』
澤田瞳子『落花』
原田マハ『美しき愚かものたちのタブロー』
柚木麻子『マジカルグランマ』

直木三十五賞(公益財団法人日本文学振興会)
http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/naoki/

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2019年本屋大賞

大賞
瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』
2位
小野寺史宜『ひと』
3位
深緑野分『ベルリンは晴れているか』
4位
森見登美彦『熱帯』
5位
平野啓一郎『ある男』
6位
木皿泉『さざなみのよる』
7位
三浦しをん『愛なき世界』
8位
知念実希人『ひとつむぎの手』
9位
芦沢央『火のないところに煙は』
10位
伊坂幸太郎『フーガはユーガ』

翻訳小説部門

1位
アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』
2位
トーン・テヘレン『きげんのいいリス』
3位
陸秋槎『元年春之祭』

本屋大賞
https://www.hontai.or.jp/

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 ビジネス書は『読みたいことを、書けばいい。』が4位に新着



ビジネス書部門では、田中泰延さんの『読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術』が4位に新着。
文章術の本がランクインするのはひさびさかも。
テレビ番組で取りあげられたことなどもあり、発売からひと足遅れてチャートに登場しました。

また今月は『学び効率が最大化するインプット大全』が5位にニューエントリ。
ロング&ベストセラー『学びを結果に変えるアウトプット大全』の樺沢紫苑さんの新刊です。


ビジネス書部門の月間ベストセラートップ10は以下のとおり。

 2019年8月の月間ベストセラー 単行本ビジネス
(日販調べ)

1位
『心。』稲盛和夫
2位
『Think clearly』ロルフ・ドベリ
3位
『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』ハンス・ロスリング
オーラ・ロスリングほか
4位
『読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術』田中泰延
5位
『学び効率が最大化するインプット大全』樺沢紫苑
6位
『メモの魔力 -The Magic of Memos-』前田裕二
7位
『学びを結果に変えるアウトプット大全』樺沢紫苑
8位
『一瞬で人生を変える お金の秘密 happy money』Ken Honda
9位
『捨て本』堀江貴文
10位
『新聞という病』門田隆将





 フィクションは道尾秀介『いけない』が5位



フィクション部門では、道尾秀介さんの新作ミステリ『いけない』が5位にニューエントリしています。
映像作品を凌駕するほど夢中になれる小説を、と意気込んで練りあげた短編連作。
あなたには、真実がみえるだろうか……。

道尾秀介さんは、このブログでもちょくちょく著作を取りあげています♪
行間にひそむ緻密なロジック。幻想的な世界観。情感たっぷりな文章表現。お気に入りの作家さんですv

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今月の1位は、歌手の浜崎あゆみさんの人生を描いた『M 愛すべき人がいて』
テレビドラマが放映中の『ノーサイド・ゲーム』は7位です。


フィクション部門の月間ベストセラートップ10は以下のとおり。

 2019年8月の月間ベストセラー 単行本フィクション
(日販調べ)

1位
『M 愛すべき人がいて』小松成美
2位
『むらさきのスカートの女』今村夏子
3位
『希望の糸』東野圭吾
4位
『夏の騎士』百田尚樹
5位
『いけない』道尾秀介
6位
『デスマーチからはじまる異世界狂想曲 17』愛七ひろ
7位
『ノーサイド・ゲーム』池井戸潤
8位
『ヴェールドマン仮説』西尾維新
9位
『てんげんつう』畠中恵
10位
『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』大島真寿美






日販のサイト(http://www.nippan.co.jp/)で各ジャンルのトップ10が確認できます。この記事では取りあげていない「ノンフィクション」「実用」「文庫」「ゲーム攻略本」などのランキングも。
ぜひ”一次情報”にもあたってみてくださいね。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a


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http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/naoki/





posted by akika at 22:59| ベストセラー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月29日

あなたの盲点をあばく「叙述トリックミステリ」10冊


今日のなぞなぞ
「叙述トリック小説のおすすめベスト10は?」

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「叙述トリック」が仕掛けられたミステリ10冊をまとめました。


叙述トリックとは……

ある要素を意図的に”語らない”ことで読み手のミスリードをさそう、ミステリの手法です。

通常の物理トリックやアリバイ偽装などとは異なり、「プロット(構成)」や「文章そのもの」に仕掛けられる、小説ならではの方法ですが、映像作品やマンガでも叙述トリック的などんでん返しがみられることがあります(後述)。



人の脳は、足りない情報を勝手に補完する。
私たちは補完したことに気づかず、「すべて見えている」と思いこむ。
その視界には、ほんとうは「盲点」がある……。


日本の推理小説のなかから、
”面白さ”と”驚き度”を基準にセレクト。

あなたの先入観に狙いをさだめ、固定観念を撃ちぬく、
巧みなミステリ達をど〜ぞ〜♪


※ 犯人やトリック等、ネタバレには配慮していますが、叙述トリック小説は「叙述トリックが仕掛けられている」と事前に知ってしまうこと自体がネタバレともいえます。
この意味での”ネタバレ”を避けたい方は、じゅうぶんにご注意くださいね。※




 第10位


ある夏の日、ミチオは小学校の友人S君が首を吊って死んでいるのを目撃してしまう。
彼の”死体消失の謎”をめぐって、ミチオと妹とS君は調査をはじめる……。

……あれ。死んだはずのS君が調査に?
じつは、この物語には「生まれ変わり」があります。S君はクモの姿に転生して、喋ったり推理したりしている。
理を超えた世界が情感たっぷりに描かれる幻想的な小説。とはいえミステリとしての”ロジック”がおろそかにされているわけではないのでご安心を。

終盤は「これでもか!」というくらい固定観念をくつがえしまくる展開です。
夏の終わりに読みたい1冊♪

 第9位


元私立探偵の主人公はある日、地下鉄で自殺をしようとしていた女性を助ける。
およそ一週間後、フィットネス仲間から依頼されたのは……詐欺まがいの商品を売りつけ、保険金殺人にも関わっている可能性のある、悪徳な会社の調査だった。

叙述トリックとは別におおきなどんでん返しも仕掛けられています。二度驚かされる終盤はイッキ読み必至。
ひと昔前の本ですが現在にも通じる〇〇〇(ネタバレになってしまうので伏せ字><)の問題が描かれていて、社会派ミステリでもあります。

 第8位


孤島に集まった男女を襲う、不可解な失踪と殺人事件。
犯人当てでもトリック当てでもなく、史上初の「タイトル当て」小説です。

エロミス、いやバカミスといってもいいかも。でもえっちシーンすら周到な伏線になっている、本格的なミステリ。
これはなかなか気づけない。叙述トリックはいつも<思考の外>からやってくる不意打ちだ。

 第7位


函館にひっそりと建つ洋館。母が亡くなり、父も病におかされた。
「わたし」は、継母やその娘たちの、遺産相続をめぐる不穏な空気に巻きこまれていく……。

シンデレラを下敷きにした、情感たっぷりの継子譚です。
「独白」「手記」「手紙」の3つからなる構成。鋭いひとは早くに仕掛けを見抜けるかも?
宝石や絵画、ティアラ、水妖(ウンディーネ)など小道具や、文章の雰囲気がとても美しくて素敵な小説です。

 第6位


そのサイコ・キラーは、次々と女性たちを残虐に殺していく……。
犯行のシーンがけっこうエグいのでご注意を。凄惨な場面が多いけれど、怖いものみたさでページをめくる手がとまらなくなります。

周到にはりめぐらされたミスリードに、あなたは必ずだまされる。
叙述トリックの仕掛け自体に問題提起がふくまれているともいえる、本格&社会派ミステリです。

 第5位


主人公は「ハサミ男」。女性をターゲットに、猟奇的な殺人をくり返すシリアルキラーです。
ある日、ハサミ男は自分の手口を真似て殺された死体を発見してしまい……。

倒叙ミステリ(※)でありながら、殺人犯自身がべつの犯罪の調査をすることになる、奇妙な設定です。
雑学やユーモアたっぷりの文章がおいしいv

※ 犯人側の視点も含めて語られるミステリ。警察や探偵に追いつめられていくドキドキ感や、展開される駆け引きなどが魅力。「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」「DEATH NOTE」など名作の多いサブジャンルです。

 第4位


ロートレックの絵が飾られた洋館で、美しき女性たちが次々と銃殺されていく……。
とても重要な要素が伏せて語られています。わかってみるとびっくり。
叙述トリックはある意味では「アンフェア」な仕掛けともいえますが、本書は文章も構成も間取り図も、とことんフェアであろうとしています。

登場人物たちが個性的で、皮肉っぽい語り口が魅力。
なぞるように事件をふりかえっていく「第十七章 解」以降がとても丁寧ですv



……ところで、余談なのですが。
こうしてみると、”美しき女性たちがどんどん殺されていくミステリ”ってけっこう多いですね。
このへん、フェミニズム分析的になにか言えそう、と思ったところで、前に読んだ……


という本を想い出しました。
まるで”シリアルキラーにならないための心構え!”みたいなタイトルだけど、文芸評論です。
物語のなかの<女の子>には<下降>の力学がはたらく。物理的にも、社会的にも。
逆に、<男の子>には<上昇>するチカラがはたらく。

ちなみに女性が物理的に落下するミステリといえば……。


社長令嬢が、文字どおり塔から墜落するお話です。
これも叙述トリック。プロット・構成におおきな仕掛けがほどこされています。
以上、余談おわり!



 ランキング圏外


トップ3の前に、ランキング圏外から4作品を紹介。




大雪のなか、ある特急列車で起こった殺人事件の真相は……!?
漫画です。ですが、叙述トリックと呼んでかまわないミスリードが仕掛けられています。
鉄道ファンをニヤリとさせる描写がたっぷり。雰囲気がステキなミステリ。
小説ではなくコミックなので今回は圏外です。



以前の記事(最近読んだライトノベル10冊〜恋愛・ミステリ・異世界〜)で『6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。』を紹介した、大澤めぐみさんのライトノベルです。
これといって特徴のない地味な梓には、「男あさりをしているらしい」というウワサが立っていて。彼女はまさにウワサどおりに……。

序盤に大どんでん返しがあります。この設定だとこんなミスリードが成り立つんだ、とハッとする。後半にも叙述トリック的な仕掛けがあります。
ジャンルじたいはミステリではないので圏外にさせていただきました。



6本(7本)の短編を収録。最初に「読者への挑戦状」として「叙述トリックが使われております」と宣言されます。
叙述トリックはたいてい”不意打ち”で驚かされることが多いけれど、本書はフェアに”出題”しているのがユニーク。
ひとつひとつの作品はとても短く、濃厚な読み応えという点ではどうしてもほかの長編に引けをとってしまう。なので圏外にさせていただきました。



映像化は不可能だったはずの同名の小説を、みごと映画として成立させてしまったすごい作品です。
映画ならではの”文法”を逆手にとった”叙述”トリックが仕掛けられています。
本ではなく映像作品なので圏外。まさかこんな方法があるとは……。



 第3位


第3位は、その『イニシエーション・ラブ』。
合コンの席で出逢った女の子に、僕はしだいに惹かれていき……。

男の子の気持ちを描いた上質な恋愛小説なのですが、最後の1ページ。ラブストーリーだったはずの物語がミステリに一変する。
「必ず二回読みたくなる」とのキャッチコピーのもと、たくさんの読者を夢中にさせた名作です。未読ならぜひ♪

 第2位


”憑き物”の血が流れる旧家が対立する、閉鎖的な田舎の村。
ここでは昔から”この世ならざるもの”が跋扈しているとしか思えないような怪事件が相次いでいて……。

神隠し。憑依。蛇神。案山子神。迷い家。
旧家の奇妙な家系図。入り組んだ村の地形。
すべてがおどろおろどしくて、濃厚な世界に飲みこまれてしまいそうなほど。

叙述トリックとして、類例の少ない大仕掛けがほどこされています。
本格ミステリと民俗学的な本格ホラーが融合したすごい作品。オススメですv

 第1位


孤島に集まったミステリマニアの面々。いわくつきの建築家がたてた「十角館」で、ひとりずつ順番に……。

抜群の読みやすさ。驚愕のトリック。心を惹きつけられる、面妖な雰囲気。
推理小説ファンはひとり残らず本書を読んでいるはず。そう断言してもいいくらい。
新本格(※)ムーブメントの嚆矢となった不朽の名作です。

※ 新本格ミステリ。1980〜90年代に日本でおこった新しいミステリの流れのこと。具体的な作風というよりは、以前の記事(【ロジック】新本格ミステリの名作100冊【プロット】)で紹介したような一連の作家たちを指していうニュアンスです。新本格推理小説。



 番外編


ベスト10のあとは、「番外編」としてキラリと光る名品をご紹介。
小説ではなく、叙述トリックにまつわるエッセイや評論をピックアップしました。



「叙述トリック試論」という我孫子武丸さんの文章が収録されています。
叙述トリックの定義論、フェア/アンフェアについての考察、創作にあたっての心構えも。
かっちりとした論考というよりは、ユーモアたっぷりのエッセイです。くすりと笑えて、タメになる♪
電子書籍版のみでリリースされている試論は↓こちら。

叙述トリック試論とか (e-NOVELS)
e-NOVELS (2017-02-08)
売り上げランキング: 126,127




まるまる1冊ミステリ作品の「叙述」について論じた、本格的な文芸評論です。
アクロイド殺し、二銭銅貨、達也が嗤う、殺人交叉点、十角館の殺人、イニシエーション・ラブ……。
芋づる式の読書案内にもなる本。ネタバレをいとわず古今東西のさまざまな作品について論じているので、気をつけてくださいね。

ミステリ以外の小説も取りあげています。たとえば、田山花袋『蒲団』のテクストの「言い落とし(レティサンス、黙話法)」を指摘する……など。
末尾には笠井潔さんと巽昌章さんと法月綸太郎さんの鼎談(途中、我孫子武丸さんも乱入)が収録されています。

叙述トリックは<語り>=<騙り>の操作が如実に意識されるスタイル。
以前の記事(【語り手】文学理論を学びたい人のための15冊【テクスト論】)で紹介したような文学理論に興味がある方も、とても面白く読める1冊です。



叙述トリックをテーマにした本ではありませんが、「第4章 ミステリーをより面白くする」で、折原一さんと我孫子武丸さんが叙述トリックの作り方を指導しています。
↑『十角館の殺人』の綾辻行人さんも寄稿しています。叙述トリックの鬼才が本書で語るのは……物理トリック指南。どうしてこうなった(笑)。

「ミステリ作家、勢ぞろい!」な43名が集結している豪華な1冊。
インタビューを読むようなつもりで楽しめます♪



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪


あきか(@akika_a

(冒頭の写真は箱根園水族館のホシエイです)

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